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30 11 1962年生まれ。秋田大学医学部卒業後、小児科研修を経 て、米ジョンズ・ホプキンス大学大学院に留学(公衆衛生 学 修 士 号 取 得 )。NGO「アジア医 師 連 絡 協 議 会 」( 現 AMDA)のソマリア難民支援に参加。国立国際医療研究セ ンターに在籍しながら、国際協力機構(JICA)や世界保健 機関(WHO)の事業としてイエメン、バングラデシュ、パキ スタン、インドネシア、カンボジアなどで結核対策、母子保 健を中心に保健政策に取り組む Profile Egami Yuriko世界の人々の健康を守る 沿パキスタンの結核対策プロジェクト関係者と▶ 結核対策と母子保健 医療協力 Globalに生きる 5 011 010 国際協力キャリアガイド201617

Globalに生きる 結核対策と母子保健 世界の人々の健康を守るkyokuhp.ncgm.go.jp/press_room/media/2017/DrEGAMI_2016kkg.pdfProfile 〈Egami Yuriko〉 江上 由里子

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Page 1: Globalに生きる 結核対策と母子保健 世界の人々の健康を守るkyokuhp.ncgm.go.jp/press_room/media/2017/DrEGAMI_2016kkg.pdfProfile 〈Egami Yuriko〉 江上 由里子

医学生の時にアジアの学生と交流したり、イ

ンドのマザー・テレサの施設を訪ねたりするう

ちに、開発途上国の保健医療に携わりたいと考

えるようになりました。勤務していた病院を休

職し、米国の大学院で公衆衛生学を学んだ後、医

療NGOによるジブチのソマリア難民救援に短

期派遣されたのが、初めての海外の現場です。難

民キャンプの診療所で保健スタッフの指導を行

いましたが、他の途上国から来た医師たちが検

査器具がなくても診断し、限られた薬を最大限

に活用するのを見て、教わることばかりでした。

今から振り返ってみると、小児科医としての専

門性や日本の保健行政経験など、自分の知識・

経験をもっと深めてから国際協力に進むべき

だったかもと思うこともありますが、この頃は

早く海外に出たい一心でしたね……。

30代以降は結核対策と母子保健を中心に、途

上国の保健医療サービス改善のための保健政策

に従事してきました。結核はエイズ、マラリア

と並ぶ3大感染症のひとつです。旧厚生省の若

手育成事業で11カ月在籍したジュネーブの世界

保健機関(WHO)本部の結核対策部では、検

査による患者発見と服薬管理などをパッケージ

化した「DOTS」(直接監視下短期化学療法)

戦略を進めていましたが、その後、国際協力機

構(JICA)のイエメン結核対策プロジェク

ト専門家やパキスタンのWHO医務官として、

WHO本部でかかわった戦略を現場で実施する

機会を得ることができたのは幸運でした。母子

保健分野では、JICA事業として現場のニー

ズに合った保健人材の研修内容を改善する仕組

みを作ったり、患者中心の助産ケアを導入した

りしました。

日本の保健医療協力は、相手国に改革案や教

材を作って渡すだけではなく、長期的視野に

立って自立に向けて人材を育成し、組織を作っ

て動かすための支援をしているのが特長です。

「一緒に仕事をしながら教えてくれるので、日本

に支援してほしい」「各ドナーが国内でバラバラ

に活動する中で、日本には中央で保健政策やシ

ステムを作り上げる支援を期待している」など

と言われるのは、これまでの長い支援の成果に

1962年生まれ。秋田大学医学部卒業後、小児科研修を経て、米ジョンズ・ホプキンス大学大学院に留学(公衆衛生学修士号取得)。NGO「アジア医師連絡協議会」(現AMDA)のソマリア難民支援に参加。国立国際医療研究センターに在籍しながら、国際協力機構(JICA)や世界保健機関(WHO)の事業としてイエメン、バングラデシュ、パキスタン、インドネシア、カンボジアなどで結核対策、母子保健を中心に保健政策に取り組む

Profile 〈Egami Yuriko〉

江上

由里子

さん

国立国際医療研究センター

国際医療協力局/小児科医

世界の人 の々健康を守る基づく信頼関係の反映であり、大いに誇れるこ

とだと思います。WHOでの経験から、国境を

超える感染症対策の政策・戦略を世界規模で広

げていく国際機関ならではの仕事は魅力的です

し、その戦略の方向性に沿って組織を作り、人

材を育成することにもやりがいを感じます。

新興国・途上国を含めて、世界では高齢化や

生活習慣病が急速に進行しつつあります。日本

はこうした課題に最初に直面し、対策のノウハ

ウを持つ国として、感染症対策や母子保健と

いった従来の分野に加え、ステージの異なる保

健医療分野への支援が求められています。グ

ローバルなパートナーシップを意識するととも

に、自分たちの立ち位置を常に確認しながら、今

後も国際医療協力に取り組んでいきたいと思い

ます。

パキスタンの結核対策プロジェクト関係者と▶

結核対策と母子保健 医療協力Globalに生きる

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011 010国際協力キャリアガイド2016~17