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1 株式会社インターネットイニシアティブ ネットワークサービス部 モバイルサービス課 佐々木 太志 <[email protected]> IIJmio高速モバイル/Dサービスについて

IIJmio高速モバイル/Dについて

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Page 1: IIJmio高速モバイル/Dについて

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株式会社インターネットイニシアティブ

ネットワークサービス部 モバイルサービス課

佐々木 太志 <[email protected]>

IIJmio高速モバイル/Dサービスについて

Page 2: IIJmio高速モバイル/Dについて

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目次

MVNO事業者としてのIIJ

MVNOのビジネスモデル

携帯電話のデータ通信方式の概要

レイヤ3接続によるMVNO

レイヤ2接続によるMVNO

IIJmio高速モバイル/Dサービスのコンセプト

(蛇足)プロトコル制限について

IIJmio高速モバイル/Dサービスを支える技術要素

MVNOのネットワークモデル

IIJの品質への取り組みについて

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MVNO事業者としてのIIJ

MVNO=Mobile Virtual Network Operator

– 直訳すると「仮想移動体通信事業者」

ドコモ/KDDI等の「移動体通信事業者」(Mobile Network Operator)と比べ、以下の特徴を持つ

– 無線インフラを持たない

– 無線インフラを持つMNOから必要なインフラを借り

– 自社ブランドで移動体通信事業を展開する

IIJのMVNO事業の沿革

– 2008年1月よりNTTドコモ3G網との事業者間接続(レイヤ3接続)を行う 法人向けMVNOサービス「IIJモバイル/タイプD」を開始

– 2009年11月にNTTドコモとの接続方式をレイヤ2接続に移行

– 2012年2月にNTTドコモLTE網とのレイヤ2接続を開始 個人向けMVNOサービス「IIJmio高速モバイル/D」を開始

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MVNOのビジネスモデル

MNOからインフラを借りるための手法の違いにより、MVNOのビジネスモデルが決まる – 代表的な手法は以下の2つ

回線卸

– MNOから回線サービス(ex. FOMAやXiの特定の料金プランのもの)を卸してもらい、MVNOのマージンを乗せてエンドユーザに提供する

– MNOとMVNOのネットワークを接続する必要はない • MVNOはネットワーク設備を持つ必要もない

– 手数料ビジネスとなり、ビジネスとして成功するためには販売力が重要 – 家電量販店がMVNOとしてWiMAXを売るケースは、ほとんどがこちらのビジネスモデル

• イー・モバイルのMVNOもほとんどこちら

帯域卸 – MNOとMVNOのネットワークを接続し、MVNOの客がMNOのネットワークリソースを使った

分だけ、MVNOがMNOに料金を払う • 実際の精算においては、MNOとMVNOの間の接続帯域による課金が一般的

– MVNOはネットワーク設備を持つ必要があり、設備を運営できる技術力が求められる – 帯域に対し客を収容する効率によって利益率が決まる

• ネットワークの品質とコストという相反するパラメータをどう設定するか? • 料金プランをどう設計するか? • トラフィックリスクをどう回避するか?

– これらはMNOも頭を悩ます問題であり、MVNOも同じ土俵で勝負する

IIJmio高速モバイル/Dサービスは帯域卸を採用しており、次ページ以降はこのタイプ

のMVNOについて説明する

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MNO

MVNO

MVNO

MNO

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携帯電話のデータ通信方式の概要

レイヤ2、レイヤ3とは? – ネットワークの7階層モデル(OSI参照モデル)の中の2番目、3番目の「層(レイヤ)」に

対する呼び方

– よくあるIPネットワークでは、レイヤ3は「IP」、レイヤ2は「Ethernet」で概ね正しい

– 携帯電話の世界では、レイヤ3は「IP」、レイヤ2は「GTP」となる

GTPとは? – GPRS Tunneling Protocolの略

– トンネルとは、ネットワークの雲の中に作成された仮想的なPeer-to-Peerの通信路のことを指す比喩的表現

GPRSって? – Generic Packet Radio Serviceの略で、元は日本以外の国における2G携帯(GSM)の中のデータ通信の規

– 3G(UMTS)、3.9G(LTE)に対しても拡張されながら使われている

簡単にまとめると – 携帯電話でIPによるデータ通信を行う場合、端末は基地局の向こうにいる「誰か」(*)との間でGTPという仮

想的な通信路(トンネル)を作成する

– そのトンネルの中で、データがIPによって運ばれる

(*)の装置(パケット交換機) – 2G/3GではGGSNと呼ぶ

– LTEではPDN-GW、略してPGWと呼ぶ

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GGSN Gateway GPRS Support Node

PGW Packet Data Network Gateway

物理層

データリンク層

ネットワーク層

トランスポート層

セッション層

プレゼンテーション層

アプリケーション層 7

6

5

4

3

2

1

Page 6: IIJmio高速モバイル/Dについて

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レイヤ3接続によるMVNO

MNO MVNO

IP

Ethernet

エンドユーザ

携帯電話網の中の通信路であるGTPセッションは、MNOの中で閉じている

契約関係

GTP

GGSN/PGW

MNOとエンドユーザの間でGTPセッションが閉じているケースがレイヤ3接続

– MVNOは、レイヤ3の通信サービスを提供する機能を備えた通信機器(IPルータ)を用意すれば良い

• ルータの運用が得意な通信事業者(ISPなど)にとっては参入が容易というメリットがある

– MVNOは、GGSN/PGWを直接運用することはできない

• IPのレイヤでの通信制御は可能だが、IPレイヤでの通信制御の難易度は高く、高度な通信制御は実現が難しい

• 課金に必要なMNOからのパケット通信量情報の提供は、多くの場合、日次処理(もしくは月次処理)であり、リアルタイムの課金コントロールは難しい

router

レイヤ3

レイヤ2

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レイヤ2接続によるMVNO

MNO MVNO

IP

エンドユーザ

携帯電話網の中の通信路であるGTPセッションは、MVNOまで伸びている

契約関係

GTP

GGSN/PGW

エンドユーザのGTPセッションがMVNOまで伸びているケースがレイヤ2接続

– MVNOは、パケット交換機(GGSN/PGW)を導入する必要がある

• パケット交換機は、携帯電話事業者向けの非常に専門性の高い装置である

• 価格を含め、運用コストの総額はIPルータに比べて高く、参入は容易ではない

– MVNOは、GGSN/PGWを直接運用することができる

• 高度な通信制御やリアルタイムの課金コントロールを直接行うことが可能となり、MVNOにとって、より自由に通信サービスをデザインできる

レイヤ3

レイヤ2

Page 8: IIJmio高速モバイル/Dについて

IIJmio高速モバイル/Dサービスのコンセプト

個人向けLTE新サービスの開発コンセプト

– トラフィックリスクを避け、高品位なサービスを提供する

• トラフィックリスク

– 一部ヘビーユーザの過大なトラフィックによりサービス全体の品質が著しく低下するリスクのこと

• トラフィックリスクに対する対応を誤るとサービスの品質を保つことが出来ない

• ヘビーユーザの正当なコスト負担とライトユーザへの還元を実現し、公平性を確保するためには、従量制の採用が望ましい

• ただし通信制御のない従量制(青天井方式)では、事業者のリスクを顧客の「パケ死」リスクに転嫁するだけ

– リアルタイムの通信量監視システムと通信制御システムの構築により、「パケ死」の心配のない従量制データ通信サービスを実現する

• これらのシステムはレイヤ2接続の実現によって可能になったもの

結果として、従量制と定額制のハイブリッドモデルという、これまで日本の携帯事業者にない料金プランを作ることができた

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Page 9: IIJmio高速モバイル/Dについて

(蛇足)プロトコル規制について

プロトコル規制

– トラフィックリスク回避のもう一つの方法論

• MVNO事業者だけでなく、MNOや固定系の通信事業者でもトラフィック規制を実施する例が多く見られる

プロトコル規制に対するIIJの考え方

– 現時点では、以下の理由により、従量制導入の方が望ましい

• プロトコル規制では、規制に該当しないプロトコルを用いるお客様が大量のトラフィックで設備を専有することを見逃すことになり、結果的に実効性に欠ける

• プロトコル規制に該当する通信は少量でも規制し、プロトコル規制に該当しないヘビーユーザは見逃すのは、公平とは言えない

• プロトコル規制では、連綿と続いてきたインターネットの新しい利用法の開発やインターネットの発展を阻害することになる

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Page 10: IIJmio高速モバイル/Dについて

IIJmio高速モバイル/Dサービスを支える技術要素

IETF/3GPPにより、以下の技術は既にRFC/TS化している

– RFC4006 ”Diameter Credit-Control Application”(DCCA)

– 3GPP TS32.299 “Diameter Charging Applications”(Gy)

– 3GPP TS29.212 “Policy and Charging Control over Gx reference point” (Gx)

3GPP Reference Modelより抜粋

OCS/PCRFおよびそれらの連携は独自のApplicationにて実現

– 本サービスのために全て新たなApplicationを開発し、以下のようなIIJ独自の料金プランを実現

• 3枚のSIMでクーポンシェアを行う仕組み

• クーポン枯渇時に低速通信に切り替える仕組み

• DNSに対する通信は速度制限の対象外にするなど、低速通信状態でも快適に利用できる仕組み

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Policy and Charging Rules Function(PCRF)

Policy and Charging Enforcement Function(PCEF)

GGSN/PDN-GW SGSN/Serving-GW Public Data Network(PDN)

Gx

Gn Gi

Online Charging System (OCS)

Gy

(S5) (SGi)

Applicationによる連携

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NTTドコモとIIJとの接続構成概念図 インターネット

IIJバックボーン

PCEF PCEF

UTRAN E-UTRAN

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MVNO事業者のネットワークモデル

RNC

SGSN

GGSN

RADIUS OCS

NTTドコモ

IIJ

NodeB

エンドユーザ(3G)

GGSN Gateway GPRS Support Node

SGSN Serving GPRS Support Node

PGW Packet Data Network Gateway

SGW Serving Gateway

RNC Radio Network Controller

UTRAN UMTS Terrestrial Radio Access Network

E-UTRAN Evolved UTRAN

eNodeB

SGW

PCRF

エンドユーザ(LTE)

PGW

Page 12: IIJmio高速モバイル/Dについて

IIJの品質への取り組みについて

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MVNOとMNO(NTTドコモ)のデータ通信サービスには、無線区間ではほとんど差がない

– 事業者間接続の混雑、およびGGSN/PGWを含めたバックボーンネットワークの品質によりMVNOのネットワークサービスの品質は決まる

IIJでは、品質と公平性を保つために以下の取り組みを実施

– 相互接続区間の混雑具合のモニタリングと適切な帯域増強

– ヘビーユーザに対する直接的な規制(3日間で366MB以上の利用者を対象)

• 128kbpsの通信時のみ計測・規制対象

– よりヘビーな利用をされている回線に優先的に品質低下を引き受けてもらう公平制御実施

皆様に選択していただけるデータ通信サービスであり続けるため、様々なサービス向上施策を検討していますので、今後ともご期待ください