JAPANESE FASCIOLA SP. AND AMERICAN …Infection of Rabbits with Japanese Fasciola sp. and American Fasciola hepatica) 著者 Author(s) 河野, 潤一 / 木村, 重 / 清水, 晃

Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

家兎における日本産およびアメリカ産肝蛭の実験的感染(ExperimentalInfect ion of Rabbits with Japanese Fasciola sp. and American Fasciolahepat ica)

著者Author(s) 河野, 潤一 / 木村, 重 / 清水, 晃 / 宇治, 達哉

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学農学部研究報告,19(2):171-182

刊行日Issue date 1991-01

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/00200533

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00200533

PDF issue: 2020-06-30

神大農研報 (Sci.Rept. Fac. Agr. Kobe Univ.) 19: 171-182， 1991

家兎における日本産およびアメリカ産肝蛭の実験的感染

清水晃事・宇治連哉事*.河野潤ー*.木村重*

(平成 2年8月10日受理)

EXPERIMENTAL INFECTION OF RABBITS WITH JAPANESE FASCIOLA SP. AND AMERICAN FASCIOLA HEPATICA

Akira SHIMIZU， Tatsuya UJI， Junichi KAWANO and Shige KIMURA

Abstract

Rabbits were experimentally infected with metacercariae of the Japanese F，αsciola sp. and

the American F，αsciola hepαticαby oral route. The results obtained are summarized as

follows.

1) The relation between the number of parasites in the liver and death of the rabbit were

examined. Eight of 10 rabbits infected with Japanese F. sp. died 43-96 days after infection，

while 7 of 10 rabbits infected with American F. hepαticαsurvived for 209繍 213days when the

experiment was terminated. Japanese F. sp. showed a stronger lethal effect on rabbits.

2) Flukes were recovered from the liver of all rabbits infected with both of the F，αsciola

species. The flukes were mostly found in the bile ducts. The predominant site of recovery

was ductus choledochus， followed by right lobe， and left lobe. N 0 fluke was recovered from

caudate lobe.

3) The flukes recovered from the rabbits that were infected with Japanese F. sp. were

significantly larger in body length， breadth and wet weight than those from the rabbits infec-ted with American F. hepαticα.

4) Mean prepatent period was 75 (71仏86days) and 52 (49-55 days) days in the Japanese F. sp.

infected group and American F. hepαticαinfected group， respectively.

5) Precipitating antibodies were first detected in sera at the 3 rd post infection week in

both of the infected groups.

6) Gross lesions showing adhesions， haemorrhages， necroses， nodules， scars， abscesses，

hyperplasia of connective tissue and thickening of the bile duct were found in the liver of

rabbits infected with both Japanese F. sp. and American F. hepαticαThe lesions induced

by Japanese F. sp. were generally more severe than those induced by American F. hepαticα.

7) Remarkable oligocythemia， hypochromia， leukocytosis， eosinophilia， hypoalbuminemia

and hyperglobulinemia appeared from 7 to 12 weeks after infection when flukes migrated

away from the liver parenchyma to the bile ducts， in both of the infected groups. The time

of the elevation of GOT and GPT activities corresponded well to the time when the flukes

began to enter the bile ducts.

緒雷

肝蛭属 (GenusF，αsciola) には、 F.hepαticαと

* 家畜衛生学研究室ホ*大鵬薬品工業(株)

F.gigαnticαの2種が知られており、前者は主として

ヨーロッパ、南北アメリカ、オーストラリアに、後者は

アフリカ、中近東、東南アジアに分布するといわれてい

る。また、 VARMA21)はインド産のヤギ、ウシより得

られた肝蛭について形態学的観察を行い、虫体の外部形

172 清水晃・宇治達哉・河野潤ー・木村重

態、腸管分枝、度腕、生殖器などの内部構造および虫卵

の形態、大きさから、 F.hepαticαとF.gigαnticαの中

間の形を呈する種類として、 F.indicαを報告したが、

現在ではF.gigαnticαと同一種であるとし、独立種とし

て扱われていない。

日本に分布する肝蛭については、古くより虫体の外部

形態7.12. 15)、虫卵の大きさ7.12. 15. 16)、精子形成19)、

核型13)などの各方面から種々検討されてきたが、 F.

hepαticαとF.gigαnticαの中間を呈する要素が多く、

その最終的同定は極めて困難であるのが現状である。

日本産肝蛭を家兎に実験的に感染させ、その臨床症

状11)、メタセルカリア感染率9)、肝における肝蛭の寄生

分布9)、寄生数と感染家兎の艶死との関係9)、糞便内肝

蛭虫卵排出状況10)、血液性状1.11)、血清の生化学的性

状3.4)、免疫性状2.17. 18)、肝病変14)を検討した報告は

数多くある。しかし、日本産肝蛭の生物学的特性および

宿主に及ぼす影響を明らかにするためには、外国産のF.

hepαticαあるいはF.gigαnticα と比較検討することが

必要である。今回、著者らはアメリカ産肝蛭F.hepαticα

メタセルカリアを入手する機会を得た。

そこで本研究では、日本産およびアメリカ産肝蛭メタ

セルカリアを、それぞれ家兎に実験感染させ、肝におけ

る肝蛭の寄生分布状況、回収虫体の外部形態、虫卵排出

時期、沈降抗体検出時期、血液性状、血清の生化学的性

状、肝の肉眼病変について比較検討した。

材料および方法

1.肝姪メタセルカリア

日本産肝蛭 (FαsciolaSp.) メタセルカリアは、自

然感染牛の胆嚢より採集した肝蛭卵を僻化し、遊出した

ミラシジウムをヒメモノアラガイ (Lymnαea ollulα)

に感染させて得た。アメリカ産肝蛭 (F.hepαticα) メ

タセルカリアは、 BaldwinAquatics (Monmouth，

Oregon) より入手した。

2.供試動物

供試した家兎は、日本白色種の雌、体重約 2kgのもの

22頭であり、日本産およびアメリカ産肝蛭メタセルカリ

アを各10頭に感染させ、 2頭は対照とした。また、メタ

セルカリアを、日本産肝蛭では30個、 10個および6個、

アメリカ産肝蛭では30個または10個をそれぞれ経口的に

投与した。なお、供試家兎は肝蛭メタセルカリア投与前

に、糞便検査および寒天ゲル内沈降反応により、肝蛭の

感染が陰性であることを確認した。

感染実験期間は25週とした。

3.虫卵検査

虫卵検査は渡辺法22)によって行った。

4.寒天ゲル内沈降反応

二次元拡散法を用いた。寒天ゲルはリン酸緩衝食塩液

(pH 7.2)で、 Specialagar noble (Difco) 1 %寒天

液(窒化ナトリウム 0.1%の割合に添加)を作り、ス

ライドグラス (76X 26mm)に3.3mlを流下して作製した。

抗原はKAWANOet αl8)の方法に準じ、肝蛭虫体を 10

倍量 (w/v)の5%トライトン X100で、 37"<:、4時間

抽出したものである。血清は使用時まで-20.Cにf某存した。

5.病理学的検査

肝蛭感染家兎は、艶死または屠殺後すみやかに剖検を

行い、肝の肉眼病変と肝蛭寄生部位について検索した。

6.寄生肝蛭虫体の形態学的観察

回収した肝蛭は、生理食塩水で洗浄し、湿重量を測定

した後、スライドグラスで圧扇し、 70%エチルアルコー

ルで固定した後、体長および体幅を測定し、さらに体長

/体幅比を算出した。

7.血液学的検査

血液検査は、感染後13週までは 1週間隔、それ以後は

2週間隔で行った。赤血球数はHyem液で200倍に希釈

した血液をTHOMA-ZEISS計算板を用いて算定し、白血

球数はTUrki夜で10倍に希釈した血液について、赤血球

数と同様に算定した。血色素量はSAHLI の血色素計を

用いて算定した。好酸球百分率は血液塗抹標本をギムザ

染色して算定した。

8.血清の臨床生化学的検査

臨床生化学検査は、感染後13週までは l週間隔、それ

以後は 2週間隔で行った。検査した項目は、総タンパク

質、グロプリン、アルブミン、グルタミン酸オキザロ酢

酸トランスアミナーゼ (GOT)、グルタミン酸ピルピン

酸トランスアミナーゼ (GPT)、アルカリホスファター

ゼ (ALP)、総ピリルピンおよび総コレステロールであ

り、これらはすべてRapidBlood Analyser Super

(中外製薬)を用いて測定した。

成績

1 .寄生肝蛭教と宿主の艶死との関係

日本産肝蛭感染群では10頭中 8頭が、感染後43-96日

に、アメリカ産肝蛭感染群では10頭 3頭が96-138日に

艶死した。回収された肝蛭数は、日本産肝蛭感染群では

2 -12隻、アメリカ産肝蛭感染群では 3-28隻であった

(Table 1)。

2.肝臓(胆管)における肝蛭の寄生分布

173 家兎における日本産およびアメリカ産肝艦の実験的感染

1. Experimental infections of rabbits orally with metacercariae of Japanese F，αsciola sp. and American F. hepαticα

Table

Appearance of

preclpl・

tating antibodies帯

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1

8

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Prepatent period (days)

No.of flukes

recovered

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infection

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Japanese F. sp.

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EA噌

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American F.hepαticα

3.間収肝蛭虫体の外部形蝦

日本産およびアメリカ産肝艦感染群より回収された成

熟肝蛭虫体の測定値はTable3に示した。日本産およ

びアメリカ産肝蛭の平均体長は、それぞれ26.7mm、17.6

mm、体幅は9.5mm、8.7mm、漉重量は215mg、96mg、体長

/体幡比は3.1、2.1であり、日本産肝粧が統計学上有

意に大型で、細長かった (Fig.1)。

4.肝蛭虫卵の検出状況

日本産肝蛭感染群では、感染後73日以上生存した 4頭

において、糞便内に初めて肝蛭卵を検出したのは感染後

70-86日、平均75日であった。アメリカ産肝蛭感染群10

頭では感染後49-55日、平均52日であった (Table1)。

* Numerals denote post infection weeks. ** D: Dead， A : Autopsy.

*** Not done.

日本産およびアメリカ産肝蛭の肝における寄生部位を、

肝を左葉、右葉、尾状葉および総胆管に分け、検索した

(Table 2)。日本産肝蛭感染群のうち、感染後52日ま

でに姥死したNos.1，3， 10では、虫体は肝実質中の左

葉と右葉に寄生していた。また、日本産肝藍感染群の

Nos.4-6， 8およびアメリカ産肝蛭感染群の全例 (Nos.

11-20)では、虫体はすべて胆管内に寄生していた。胆

管内より回収された日本産およびアメリカ産肝蛭の寄生

部位は、両肝蛭ともに総胆管が最も多く、それぞれ66.6

% (12/18隻)、 43.3%(61/141隻)であった。ついで

右葉で22.2%(4/18)、30.5% (43/141)、左葉で5.6

% (1/18)、26.2% (37/141)の順であった。

重木村晃・宇治違哉・河野潤ー清水174

Tab1e 2. Recovery of flukes from the 1iver of rabbits infected Japanese Fαsciola sp. and American F. hepαticα

Gall-b1adder

Bile duct

1eft lobe

ductus cho1e-dochus

caudate lobe

right lobe

Parenchyma

caudate lobe

right lobe

1eft lobe

No.of flukes reco-vered

No.of rabbit

Fαsciolα specles

O

ハUnununu

l

。0471 。

O

O

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O

O

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O

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O

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Japanese F. sp.

。American F. hepα-ttcα

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EA唱

EAnJU

* Not done.

Table 3. Measurements of flukes recovered from rabbits infected with Japanese Fαsciola sp. and American F. hepαticα

American F. hepαticα

113

Japanese F. sp.

13 No. flukes examined

17.6土2.7

8.7土1.3

2.1土0.5

26.7 :1:8.7*申

9.5:1:1.4*

3.1土0.5**

215土85*事

Body 1ength (mm)

Body breadth (mm)

Body length/Body breadth

Body weight (mg) 96士27

* *P<0.001 * P<0.05

家兎における日本産およびアメリカ産肝蛭の実験的感染

Fig. 1. Flukes recovered from rabbits infected with

Japanese F. sp. (A) and American F. hepαticα(8) .

175

Fig. 2. Liver of a rabbit (No. 5) infected

with Japanese F. sp.

Fig. 3. Liver of a rabbit (N o. 11) infected

with American F. hepαticα.

176 清水晃・宇治達哉・河野潤ー・木村重

X104/mm3

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25

Weeks after infection

Fig. 4. Changes of average erythrocyte counts

in rabbits infected with Japanese F.

sp. (・) and American F. hepαticα

(企).Uninfected control， O.

5.沈降抗体の出現状況

沈降線を初めて認めたのは、日本産肝蛭感染群では感

染後 2-4週、アメリカ産肝蛭感染群では 3週または 4

週であったO 両肝蛭感染群とも、感染後 3週に沈降線が

出現するものが多かった (Table 1)。なお、沈降糠は

実験終了時まで継続してみられたO

6.肝病変

1)日本産肝蛭感染群の肉眼的所見

感染後43-52日で艶死した 4頭 (Nos. 1-3， 10) で

は、腹水は淡赤色、混濁して増量し、大綱は肝、胃、牌

および小腸と癒着していたO 肝は著しく肥大し、肝表面

には凹凸がみられ、黄白色の限局性病変を密発して硬度

を増し、線維素の付着もみられたO また、出血斑、結節

および結合組織の増生は、特に左葉に多く認められた。

胆管および胆嚢に変化はみられなかった。

感染後71-96日に艶死した 4頭 (Nos.4，6，8，9)では、

前記の病変のほかに、左葉の萎縮および右葉の肥大が顕

著であり、さらに、結合組織の増生が著しく、肝の硬度

は著しく増していた。また、 Nos.4，8，9ではソラ豆大

あるいは鳩卵大の膿蕩も認められた。総胆管はエンピツ

大ないし小指大に腫大し、粘調、凝塊となった胆汁を容

れていた。また、小胆管にも同様の胆汁を容れ、胆管壁

は著しく肥厚し、胆管の周囲には結合織の増生が高度で

あった。

慢性に経過した 2頭 (Nos. 5，7)では、外右葉は対照

例に比較して数倍に肥大し、他の各小葉の萎縮が著しく、

%

100

50

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25


Fig. 5. Changes of average hemoglobin conte勾

nts in rabbits infected with Japanese

F. sp. (・)and American F. hepαticα

(...). Uninfected control， O.

葉問の癒着が顕著であった。結合組織の増生は左葉全体

におよび、結節も認められ、正常の肝組織は極めて少な

かった。また、総胆管の拡張および管壁の肥厚が著しく、

胆汁は粘閥、凝塊となって充満し、肝蛭 (No. 5) を

容れていた。大綱は、一部に出血性の炎症がみられ、淡

褐色を呈し、肝、胃、牌、小腸および横隔膜と癒着して

いた (Fig.2) 0

2 )アメリカ産肝蛭感染群の肉眼的所見

ほとんどのものが慢性に経過し、肝の肥大は多数寄生

例において顕著であったが、左葉の萎縮および右葉の肥

大は比較的軽度であったO 大綱は淡褐色、半透明であり、

主として肝の辺縁部、胃および小腸と癒着していた。ま

た、肝の病変は左葉に多く認められ、結合組織の増生は

小胆管の周囲に高度であり、特に、虫体の棲息する部位

において顕著であった。結節は多数寄生例においてみら

れ、左葉に多く、肝小葉聞の癒着は左葉においてわずか

に認められたが、各小葉の区別が困難なほどではなかっ

た。各小葉聞の結合組織の増生も軽度であった。総胆管

はエンピッ大もしくは小指大に肥大し、肝内小胆管とと

もに、赤褐色、粘桐の胆汁を容れていたO 肝管壁の肥厚

も高度であった。これらの所見は、すべて多数寄生例に

おいて顕著であったが、日本産肝蛭感染群の慢性に経過

したNos.5，7の病変と比較すると、かなり軽微であっ

た (Fig.3)。

7.血液の変化

血液の変化は、日本産およびアメリカ産肝蛭感染家兎

家兎における日本産およびアメリカ産肝蛭の実験的感染 177

/醐3

12000

1似削

8縦訓D

政削

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2000

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25


Fig. 6. Changes of average leukocyte counts

% 10

4





Fig. 7. Changes of a verage eosinophil percen・

tages in rabbits infected with Japanese

F. sp. (・)and American F. hepαticα


各10頭における赤血球数、血色素量、白血球数および好

酸球百分率の平均測定値を比較した。また、対照として

肝蛭非感染の家兎 2頭についても調べた。

1)赤血球数

日本産肝蛭感染群では、感染後5週より急激に減少し、

10週には約340万と最低傭を示したが、その後は漸次回

復した。アメリカ産肝蛭感染群では、感染後8週より徐々

に減少し、 12遡以後実験終了まで500-550万の範闘で推

g/cW 7

6

5

4

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 幻 25


Fig. 8. Changes of average total protein co-

ncentration in rabbits infected with

Japanese F. sp. (・1)and American F.

hepαticα(A.). Uninfected control， O.

g/cW

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25


Fig. 9. Changes of average globulin concent-

ration in rabbits infected with Japa-

nese F. sp. (・)and American F. he-

pαticα(企).Uninfected control， O.

移した (Fig.4)。

2)血色素量

日本麗肝蛭感染群では、感染後9週より減少しはじめ、

12週には44%と最低傭を示したが、その後は回復に向かっ

た。アメリカ産肝蛭感染群では、感染後6週より漸次減

少し、 13週には最低値を示したが、その後は回復に向かっ

た (Fig.5)。

3) 白血球数

178 清水晃・宇治達哉・河野潤一・木村重

s/de 4

2

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25


Fig. 10. Changes of average albumin concent-

ration in rabbits infected with Japa-

nese F. sp. (・)and American F. he-

paticα(.A.). Uninfected control， O. a 1164

1..---ム

E g 咽

凶1∞

2∞

.a15O p

ω

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25


Fig. 11. Changes of average GOT activities in

rabbits infected with Japanese F. sp.

(・)and American F. hepαticα(A) .

Uninfected control， O.

日本産肝蛭感染群では、感染後 5週より増加しはじめ、

7-11週には9，000-10，000を算定したが、その後は漸次

減少し、回復に向かった。アメリカ産肝蛭感染群では、

感染後 3週より増加しはじめ、 6週には最高値に達し、

その後は漸次減少し、回復に向かった (Fig.6) 0

4 )好酸球百分率

日本産肝蛭感染群では、感染後3週より上昇しはじめ、

6-9週に最高となり、その後は漸次減少し、回復に向

3∞

200

閉

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芯ロロロωE国一凶

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o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25


Fig. 12. Changes of average GPT activities in


(・)and American F. hepαticα(.A.) .


15

ロロ凶ロ申

告10E 〈

皆:'::5

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25


Fig. 13. Changes of average ALP activities in


(・)and American F. hepαticα(.A.) .


かった。アメリカ産肝蛭感染群では、感染後 2週より上

昇しはじめ、 6-9週には8.8-9.3%と高い値を示した

が、その後はj斬次減少し、回復に向かった (Fig.7)。

8.血清の生化学的性状の変化

日本産 (8頭)およびアメリカ産(4頭)肝蛭感染家

兎計12頭について、血清の生化学的性状の変化を調べた。

また、対照として肝蛭非感染の家兎 2頭の血清について

も調べた。

家兎における日本産およびアメリカ麗肝蛭の実験的感染 179

時 /de1.0

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 幻 25


Fig. 14. Changes of average bi1irubin levels



(....). Uninfected control， O.

1)血清タンパク質の変化

総タンパク質濃度:日本産およびアメリカ産肝蛭感染

群ともに、対照群よりやや高い値で推移したが、顕著な

上昇は認められなかった (Fig.8)。

グロプリン濃度:日本産肝蛭感染群では、感染後 2週

より上昇しはじめ、 9週には最高に達し、その後は漸次

低下した。アメリカ産肝蛭感染群も同様、感染後 2週よ

り上昇しはじめ、 7週には最高に達した後、低下した

(Fig. 9)。

アルブミン濃度:日本産肝蛙感染群では、感染後8週

より減少しはじめ、 10週には最低値を示し、その後は打

ずかに増加した。アメリカ産肝蛭感染群では13週におい

て一時低下したが、実験期間を通して著しい変化はみら

れなかった。両肝蛭感染群とも対照群より低い値で推移

した (Fig.10)o，

2 )肝機能の変化

GOT活性:対照群は実験期間中ほほ同様の値で推移

した。日本産肝蛭感染群では、感染後8週から13週にか

けて高い値を示し、それ以後は対照群とほぼ同様の値で

推移した。アメリカ産肝蛭感染群では 3峰性を示したが、

17週以後は対照群とほぼ同様の値で推移した (Fig.l1)。

GPT活性:日本産肝蛭感染群では、感染後7濁から

13週にかけて高い値を示し、それ以後は対照群とほぼ同

様の値で推移したO アメリカ産肝蛭感染群では、感染後

6週に最高値を示し、それ以後は対照群とほぼ同様の値

で推移した (Fig.12)。

時 /dt200

150

1∞

関

o 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25

W開 ksafter infection

Fig. 15. Changes of a verage cholesterol levels




ALP活性:日本産およびアメリカ産肝蛭感染群とも

に実験期間中著しい変化はみられず、対照群とほぼ同様

の値で推移した (Fig.13)。

総ピリルピン濃度:日本産肝蛭感染群では、感染後10

週に高い活性がみられた。アメリカ産肝蛭感染群では、

実験期間中対照群とほぼ同様の値で推移した (Fig.14)。

総コレステロール漉度:日本産肝蛭感染群では、感染

後 9週と 13週に高い活性がみられた。アメリカ産肝蛭感

染群では、実験期間中対照群とほぼ同様の値で推移した

(Fig.15)。

考療

肝臓における肝蛭寄生数と宿主家兎の鱒死との関係に

ついては、日本産肝蛭感染群では急性症状を毘し、舞死

するものが多かったのに対し、アメリカ産肝蛭感染群で

は日本産肝蛭感染群に比べて寄生肝蛭数が多かったにも

かかわらず、ほとんどのものが慢性に経過し、舞死する

ものは少なかった。このことより、日本産肝蛭はアメリ

カ産肝蛭よりも家兎に与える影響は、かなり強いものと

考えられた。

日本産肝蛭およびアメリカ産肝蛭の胆管内侵入後にお

ける寄生部位は、両肝蛭ともに総胆管が最も多く、つい

で右葉胆管、左葉胆管のj眠であり、両肝蛭の家兎肝内に

おける寄生部位には速いはなかった。

虫体の外部形態の特徴は、肝蛭属の分類を行ううえで、

現在でも重要な基準のひとつとされている。今回、感染

180 清水晃・字治達哉・河野潤ー・木村重

家兎より回収した肝蛭虫体の外部形態を計測したところ、

日本産肝蛭はアメリカ産肝蛭に比べて大型で、体長、体

幅、体重などの形質は統計学的にもその差が有意であっ

た。

肝蛭感染家兎における肝蛭卵の排出時期は、日本産肝

蛭では感染後55-88日10)、平均65日、 70-91日17，18)、

アメリカ産肝蛭 (F.hep似たα) では感染後49ー55日5)、

42-56日18)であるとされている。本研究でもほぼ同様

の成績が得られ、日本産肝蛭感染群において初めて虫卵

を検出したのは、感染後70-86日、平均75日であり、ア

メリカ産肝蛭感染群では49-55日、平均52日であった。

今回の成績と前述の報告とを考え合わせると、日本産肝

蛭の虫卵排出時期は、アメリカ産肝蛭のそれに比べて、

かなり遅いものと考えられた。このことより、日本産肝

蛭の肝実質に棲息する期間は、アメリカ産肝蛭よりも長

いことが推察され、また、このことが肝障害が強く現れ

る原因のひとつと考えられた。

肝蛭感染家兎における沈降抗体の出現時期は、日本産

肝蛭では早いもので感染後2週、大部分のものは 3-5

週17，18)、F.hepαticαでも 4週6)に認められている。本

研究でも、沈降線の出現する時期は、日本産およびアメ

リカ産肝蛭感染家兎のほとんどのもので、感染後3週で

あり、両肝蛭の聞には沈降抗体の出現時期に差異はみら

れなかった。

日本産肝蛭感染家兎における肝病変については、小野・

磯田14)は肝の肉眼病変として、肝表面の出血斑、虫道形

成、肝被膜の肥厚、線維素の付着、大網との癒着、空洞

形成、壊死、膿蕩形成と、肝蛭の胆管侵入・定着による

胆管の拡張、胆管壁の肥厚、結合組織の増生などが認め

られることを報告した。 URQUHART20)は、 F.hepαticα

感染家兎における病理学的変化を経時的に詳細に観察し

ている。それによると、感染後 2週に歪り、出血斑およ

び限局性の病巣がみられ、 3-7週にはさらに線維素の

付着、肝小葉問および肝と胃、小腸の癒着、虫道形成、

壊死巣を生じ、 8週以後では、これらの病変のほかに左

葉の萎縮、右葉の肥大、胆管壁の肥!享および胆嚢の腫大

などが認められることを報告している。本研究でも、ほ

ぽ同様の所見が日本産およびアメリカ産肝蛭感染家兎で

みられた。日本産とアメリカ産肝蛭家兎の肝病変を比較

すると、前者で高度であった。その原因のひとつとして、

すでに述べたように、 B本産肝蛭の家兎肝実質内棲息期

間が、アメリカ産肝蛭のそれに比較して長いことによる

ものであると考えられる。両肝蛭の家兎に及ぼす影響の

差異の原因については、今後さらに検討されるべき課題

である。

肝蛭の寄生に起因する血液性状の変化は赤血球および

血色素量の減少、白血球数および好酸球数の増加などが

古くより知られている L11)。本研究でも同様の所見が

観察され、また、これら血液性状の変動する時期は、日

本産とアメリカ産肝蛭感染群との聞にはほとんど差がみ

られなかった。

肝蛭感染動物における血清中のタンパク質、酵素、代

謝物などの変動は、虫体の体内移行に伴う肝および胆管

の障害を知るうえで、有力な指標であることが知られて

いる3，4)。本研究では肝実質障害の指標として GOT、

GPT、胆管障害の指標としてALP、総ピリルピン、

総コレステロールを用い、測定した。

AKAHANE et αZ4)、は日本産肝蛭感染家兎における

血清タンパク成分と虫体の体内移行との関連を検討し、

アルブミンの減少とグロプリンの増加は虫体が肝実質か

ら胆管への移行する感染後60-70日に顕著であると報告

している。本研究でも同様の所見が観察された。これら

血清タンパク成分の変動する時期は、日本産とアメリカ

産肝蛭感染群の聞にはほとんど差がみられなかった。総

タンパク質濃度についても、両肝蛭感染群の聞に著しい

差はなかった。

AKAHAI'叩 etαZ3)は、また、日本産肝蛭感染家兎に

おける各種血清酵素と虫体の体内移行との関連について

も検討している。それによると、 GOTとGPT活性の

上昇は感染後20-90日の聞に、また、 ALP、総コレス

テロール、総ピリルピン値は50-60日の聞に高値を示し、

虫体が胆管に定着後は正常値に復したと述べている。本

研究でも、 GOTとGPT活性の上昇がみられたが、そ

の上昇する時期は、日本産肝蛭感染群がアメリカ産肝蛭

感染群に比べてやや遅かった。

ALP活性は日本産およびアメリカ産肝蛭感染群とも

に著しい変化はみられず、宿主の胆管障害を示す指標に

はなり得なかった。

総コレステロールと総ピリルピン値の上昇は日本産肝

蛭感染群で感染後 9-11週の問に一過性にみられたが、

アメリカ産肝蛭感染群では著しい変化はみられなかった。

URQUHART20)は、 F.hepαticα感染家兎において、総

コレステロールと総ピ 1))レピンが胆管障害の指標となり

得ないことを指摘している。

肝蛭メタセルカリアは、宿主動物に経口的に摂取され

ると、小腸腔内で脱嚢して幼肝蛭となり、ついで腸援を

突破して腹腔に出て肝表面に達する。肝被膜を突破した

幼肝蛭は肝実質内を遊走、破壊して胆管内に侵入し、こ

家兎における日本産およびアメリカ麗肝蛭の実験的感染 181

こに定着する。このような肝蛭の体内移行に伴い、宿主

には種々の変化がおこる。血液性状および血清の生化学

的性状の変化を虫体の体内移行との関連でみると、赤血

球および血色素量の減少、白血球数および好酸球数の増

加、アルブミンの減少およびグロプリンの増加が著しい

のは感染後 7-12週頃にみられたが、この時期は虫体が

肝実質から胆管系へ移行し定着する時期に相当している。

また、この時期には肝実質蹄害を示すGOTとGPTの

活性値も著しく高い債を示した。

要約

日本産およびアメリカ産肝蛭メタセルカリアを家兎に

感東させ、肝蛭寄生分布状況、回収虫体の外部形態、虫

卵排出時期、沈降抗体検出時期、血液性状、血清生化学

的性状、肝病変について比較検討した。

1.日本康肝蛭感染群では急性症状を呈し、舞死する

ものが多かった。一方、アメリカ産肝蛭感染群では日本

産肝蛭感染群に比べて寄生肝臨数が多かったのにもかか

わらず、ほとんどのものが慢性に経過し、艶死するもの

が少なかった。

2.肝における肝蛭の寄生部位は、日本産およびアメ

リカ藤肝蛭感染群ともに、総胆管が最も多く、ついで右

葉、左葉胆管の順であった。

3. 回収肝蛭虫体は、日本産肝蛭がアメリカ産肝蛭に

比べて、統計上有意に大型で細長かった。

4.虫卵を初めて検出したのは、日本産肝蛭感染群で

は感染後70-86日、アメリカ産肝蛭感染群では49-55日

であった。日本産肝蛭の胆管内侵入時期はアメリカ産肝

蛭よりも避いことが推察された。

5.沈降抗体の出現時期は、日本産肝蛭感染群では感

染後 2-4週、アメリカ麓肝蛭感染群では 3-4週であっ

た。両肝蛭感東群とも、感染後 3週に沈降線が出現する

ものが多く、沈降抗体の出現時期には差異はみられなかっ

た。

6. 肝の肉眼的病変は、出血、壊死、結節、膿場、結

合組織の増生などの実質病変および胆管の拡張、胆管壁

の肥厚などの胆管病変、また、左葉の萎縮、右葉の肥大

などを、日本産およびアメリカ産肝蛭感染群において認

めたが、これらの病変は前者で高度であった。

7. 血液性状は、赤血球数と血色素量の減少、白血球

数および好酸球数の増加を認めた。これら血液性状の変

動する時期は、日本産とアメリカ産肝蛙感染群との問に

はほとんど差がみられなかった。

8.血清タンパクの性状は、アルブミンの減少とグロ

プリンの増加を認めた。これら血清タンパク成分の変動

する時期は、日本意とアメリカ産肝蛭感染群との聞には

ほとんど差がみられなかった。

9.血清酵素の性状は、 GOTとGPT活性の上昇を

認めた。両活性の上昇する時期は、日本産肝蛭感染群は

アメリカ産肝蛭感染群に比べると、やや避かった。総コ

レステロールと総ピリルピンの上昇は日本産肝蛭感染群

でのみ一過性に認められた。

10. 日本産肝蛭はアメリカ産肝蛭よりも家兎に与える

影響はかなり強いものと考えられた。

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JAPANESE FASCIOLA SP. AND AMERICAN …Infection of Rabbits with Japanese Fasciola sp. and American Fasciola hepatica) 著者 Author(s) 河野, 潤一 / 木村, 重 / 清水, 晃