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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 第二次大戦後タイの人口統計と人口変動(Evaluation of Population Statistics and Population Estimates in 1950-1995 in Thailand) 著者 Author(s) 高橋, 眞一 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸大學經濟學研究年報 = The annuals of economic studies,47:49-74 刊行日 Issue date 2001-03-05 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/00074101 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00074101 PDF issue: 2020-07-17

Kobe University Repository : Kernel調査(Family Survey for the Kingdom of Thailand, 1950), 労働力統計,人ロセンサス (1970, 1980, 1990年) 5)' それに他の政府統計(タイ安全保障委員会,タイ空軍,

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

第二次大戦後タイの人口統計と人口変動(Evaluat ion of Populat ionStat ist ics and Populat ion Est imates in 1950-1995 in Thailand)

著者Author(s) 高橋, 眞一

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大學經濟學研究年報 = The annuals of economic studies,47:49-74

刊行日Issue date 2001-03-05

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/00074101

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00074101

PDF issue: 2020-07-17

第二次大戦後タイの人口統計と人口変動

高橋員一

1 . はじめに

タイの人口は, 20世紀初頭以降現在までの100年弱の間に,少なくとも800万から6,000万

まで増加している。一般に先進国が18-19世紀に「人口爆発」を経験したのに対して,開発

途上国の人口は20世紀以降著しい増大を示し,いわば第二の人口爆発を経験した。タイもそ

の例外ではなく,タイの経済発展をみていく上で,この著しい人口増加を考慮に入れていく

ことが大切であることはいうまでもない。

ところでタイの人口統計は,開発途上国一般にみられるのと同様に,それほど正確ではな

ぃ。タイの人口を知る上で重要な人ロセンサスは, 20世紀になってはじめて行われたが,第

二次大戦後でも,正確性の点で必ずしも満足のいくものではない。また,やはり20世紀前期

に始まった人口動態登録による統計も,著しい届け出漏れ等の問題があり,そのままでは利

用できない。その結果,正確な人口や人口動態を求めるために種々の人口調査や推計が行わ

れ,センサスや動態統計の不完全性をカバーしている。

19世紀以降第二次大戦前までの人口統計の性格と人口推計については,すでに拙稿で試論

を展開した(高橋 1997)。ここでは,第二次大戦後を中心に, タイのおもな人口統計の内

容,特色,及び問題点を明らかにし,人口総数,年齢別人口,出生率,死亡率などの最も基

本的な人口指標のより正確な値を導くための検討を行う。さらにそれらの結果をもとに,

1950-1995年の修正出生率•死亡率および年齢別推計人口を求める。そして,それらを基礎

に,戦後タイ人口の変化の概要を明らかにするとともに,今後の課題を述べる。

2. 第二次大戦後の人口統計

まず最初に,おもに第二次大戦後のタイの人口に関する統計について,人口静態,人口動

態,そして人口移動の順に概要を明らかにする。

①人口静態

人口静態に関するおもな統計は,人ロセンサスと登録人口統計,それに後にみる人口変動

調査 (SPC)によるセンサス間の推計人口である。

50 神戸大学経済学研究 47

1)人ロセンサス

人ロセンサスは, 1909-11年に実質的に初めて行われ叫以降第二次大戦前では1919年,

1929年,そして1937年に実施された。戦後は1947, 1960, 1970, 1980, 1990年と続き,最新

の人ロセンサス調査は, 2000年 4月に行われた。 1947年までは内務省 (Ministryof

Interior)によって行われたが, 1960年センサスでは,担当部局が中央統計局 (Central

Statistical Office)に変わった。 1970年以降のセンサスは,中央統計局の後身である総理

府国家統計局 (NationalStatistical Office, Office of the Prime Minister)によって行

われている。 1960年センサスは,合衆国の援助機関のUSOMから派遣された専門家の指導

のもとでおこなわれ(末廣, 1998,51頁),これ以降,調査方法や集計において近代的セン

サスの仲間入りをしたといえる。 1970年以降は住宅統計も同時に調査されている。

2)登録人口

タイでは,個人や家族が,郡役所や市役所に,出生,死亡,結婚,移動等を申告すること

が義務づけられている。内務省 (Bureauof Registration Administration, Department

of Local Administration, Ministry of Interior)は, 1947年センサスをもとに,郡役所

の届け出を基礎に内務省登録人口を毎年数え上げることになった。住民登録人口は1960年以

降 StatisticalYearbook of Thailandに毎年公表されている。

1983年に個人番号制が発布され,それ以降,これに基づいた登録人口のデータベース化が

行われ,届け出登録による増減を登録人口に加えて登録人口が計算された(永井, 1999)。

個人番号は,様々な生活上の手続きに必要で,その結果,今まで多かった登録漏れが,とく

に出生の登録淵れが徐々に改善されていったと考えられる。

②人口動態

出生や死亡などの人口動態のデータは,登録に甚づいた統計と後にみる人口変動調査や出

生力調査によって得られる。

出生・死亡の登録制度は1916年にバンコクで始まり, 1917年から全国的な登録が実質的に

義務づけられた 2) 。出生•死亡などの動態発生について, 3部の書類が作られ, 1 部は出生•

死亡の証明書, 1部は市や郡に保管され, さらに 1部が県を通じて保健省 (Ministryof

Public Health)で集約され,そこで動態統計が作成される (Thailand,1976, p.189)。

人口動態統計は, 1920年からえられる (Thailand,1969, p. 2)が,その後保健省に引き

1) 1904年に一部地域で暫定的なセンサスが実施された(高橋, 1996,p.19)

2)出生は発生後15日以内に,死亡は24時間以内に届け出義務がある。

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 51

継がれ, PublicHealth Statistics (保健統計)として毎年公表されることになった。 1967

年以降,内務省統計と保健省統計が,異なった結果を発表することになった (US,・1980,

p.l4)3l。

③ 人口調査

人ロセンサスの中間年の人口や人口動態の把握およびそれらの不完全性を補う目的で,人

口変動調査や出生力調査などの抽出調査が行われている。

人口変動調査の前身は, 1954-56年に行われた Demographicand Economic Surveyで,

その目的は, 1947年センサス以降の人口,経済に関するデータを得ることにあった。その後,

最初の人口変動調査 (TheSurvey of Population Change, SPC)が, 1964-1967年に行わ

れた。以降おもにセンサス間の年次に実施され,最新の調査結果は, TheSurvey of

Population Change, 1995-1996として公刊されている。

出生力調査 (SOFT)および避妊普及調査 (CPS)は,タイの出生力低下の実態を把握す

るために行われている抽出調査である。したがって,調査の内容は,出生力の変化,家族計

画の受容の変化が主体で,最初の調査は, 1969-70年に実施された LongitudinalStudy of

Social, Economic and Demographic Changeであるが,本格的調査として, 1975年に世

界出産力調査の一環として,最初の出生力調査 Surveyof Fertility in Thailand (SOFT)

が行われた。それに引き続いて避妊普及調査 (ContraceptivePrevalence Survey, 1978)

が行われ,以降数年に 1回の調査が行われてきた。また,世界規模の出産力調査である

Thailand Demographic and Health Survey 1987 (TDHS)も実施された。

④ 人口移動

1)国内移動

国内人口移動統計は,人ロセンサス,登録人口,および人口移動調査から得られる。

1960, 1970, 1980, 1990年センサス結果の統計項目には,出生地人口と過去5年以内の移

動がある。

登録人口移動統計については,県・郡・市別の流入人口および流出人口が毎年調査されて

いるが,タイ人口統計年鑑 (StatisticalYearbook Thailand)にはまだ掲載されていない。

人口移動調査は, 出生地と前住地が調査された前述の NationalDemographic and

Economic Surveyが喘矢といえる (Visidand Penporn, ・1974, p.19)が,本格的調査とし

3)タイ統計年鑑 (StatisticalYearbook Thailand)では, 1986年以降について,量保健省と内務省

の両方の人口動態統計が示されている。

52 神戸大学経済学研究 47

ては,バンコク都について1974年に行われた TheSurvey・of Migration in Bangkok

Metropolisが最初であろう。その後1980年代に入って,バンコク近郊地域も調査対象にな

り,また各地域からバンコクヘの移動をみる上で重要な県の調査も行われるようになった 4)。

1992年になって,全国的な移動調査である The1992 Migration Surveyが実施され, ほぼ

2年に一回行われている。

2)国際移動

第二次大戦後の国際移動の統計は以下のようなものがある (Stern,1997)。タイ王国家族

調査 (FamilySurvey for the Kingdom of Thailand, 1950), 労働力統計,人ロセンサス

(1970, 1980, 1990年)5)' それに他の政府統計(タイ安全保障委員会,タイ空軍, タイ外務

省によるものがあるが,一般には公表しない)などである。現在,国際移動のデータの整備

は、 Institutefor Population and Social Research, ・Mahidol University, Thailand

Develo・pment Research Institute, Asian Research Center, ・Institute of Asian Studies,

Chulalongkorn Universityなどによって行われている。

3. 第二次大戦後の人口統計評価

センサスをはじめ,人口に関する調査の評価は,調査漏れの程度,申告の正確性,それに

調査処理の正確性が問題になる。タイでも,他の開発途上国と同じく,これらの問題から免

れることができないが,記述や申告の正確性に関して,とくに年齢申告について,他の開発

途上国とは違って,比較的正確であるといわれている。そこでまず,タイにおける年齢申告

の特徴についてふれておきたい。

タイでは,教育歴のない老年層でも,東アジアの国々と同じように,陰暦と干支(動物暦)

によって,出生年月や年齢を比較的正確に記憶しているといわれる。ただし,年齢だけを聞

いた場合,他の開発途上国ほどではないにしても, 0や5に集中する年齢申告の偏り (age

heaping)は顕著になる。またタイでは,年齢を聞かれた場合,最近の誕生日による年齢で

はなく,次の誕生日から計算された年齢をいう場合が多い。これは,一般的に出生した月を

無視し,次にくる年齢をいうタイ人の習性によるといわれる (Knodeland Napaporn, 1991,

pp. 41-50)。

その他の調査上の問題は,他の国々と共通するところが多いが,まず人ロセンサスの問題

4)コーンケン,チェンマイ,チョンプリー,ナコーンラッチャシーマー等の県の移動調査が行われた。

5)国際移動したことのある人々を調査しているが,それぞれのセンサスで調査内容が異なる。

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 53

からみていきたい。ここでは,比較のために,戦前の第一回センサスからの評価を示す。

① 人ロセンサスの評価

1) 1947年以前のセンサス

1911年の最初の人ロセンサスから1947年センサスまでは,近代的手法で必ずしも行われた

のではな<'調査淵れ,とくに女子や乳幼児人口での調査瀬れ等,正確性の点で問題がある

と指摘されている (Bourgeois-Pichat,1974, pp. 2-5; U.N., 1976, p.203; Arnold et al.,

1977, p. 7)。

1937年センサスは,戦後のセンサスからの逆進推計結果によると,相対的に正確であると

いわれている(小林, 1983,43-44頁)。

1947年センサスは, 1937年からの人口増加率が異常に低いことから, 1937年よりもむしろ

調査漏れが大きかったと考えられるo実際,このセンサスでは,一部の地域の人口が計上さ

れていないということが明らかになっている (U.N.,1976, p.204)。

2) 1960年センサス

もっとも大きな問題点は,とくに0-4歳人口の割合が明らかに少ないことである (Das

Gupta et al., 1974, p.39)。乳幼児人口特有の調査漏れが, この過小の一つの理由である

が,それ以外に,センサスの質問で直接に年齢を聞いたたために,前述のように,タイ独特

の次の誕生日の年齢での答えが多く,幼年人口の割合が過小となったことが挙げられる。ま

た,年齢を直接聞いたことは,年齢申告の偏り (ageheaping)をもたらした (Aphichatet

al., 1978, pp. 1 -5)。調査漏れについては,全体で 3%弱調査瀬れがあったとされる (Das

Gupta et al., 1974)。また米国センサス局によると,全体で4%調査漏れがあると指摘し

ている (U.S.,1978, p. 1)。

3) 1970年センサス

1970年センサスは,共産主義運動の活発化, 政治的不安定,センサス予算の削減,不十分

な人材等のもとで行われ,共産主義者活動の活発な一部地域では,人口は推定値になってい

る(Thomlinson,1971, pp.28,.32 ; Benjawan, 1975, p.10)。センサス事後調査によると,

調査凋れは 2%_(都市部3.3%,農村部1.4%)であるが (Thailand,1973, pp. x-ix), 実際

には,修正推計人口の計算結果によると, 4.7%の調査漏れがあった (Arnold& Matana,

1975, p. 9)。また米国センサス局によると,全体で6.6%調査淵れがあった (U.S.,1978,

p. 1)。

1970年以降のセンサスの年齢は,出生年月によって求められた。しかし,依然0-4歳人口

54 神戸大学経済学研究 47

の漏れが相対的に大きく, 10%を越える (Arnold& Matana, 1975, Table 12)。

4) 1980年センサス

修正推計人口結果 (Chintanaet al., 1983)から計算すると,調査漏れは, 3.1%である。

また, 0-4歳人口の調査漏れがやはり大きく, 10%近くに達する。

5) 1990年センサス

1990年人口については,修正推計人口は公刊されず,また,センサス人口を評価した文献

はまだない。ただ,タイ経済社会開発局 (NESDB)が将来推計人口の計算の基礎人口とし

て修正推計した人口(センサス調査日 4月 1日現在ではなく, 7月 1日現在人口)

(Thailand NESDB, 1995)と比較すると,少なくとも全人口で 2%.・0-4歳人口では20%

(この推計値は過大と考えられる)に達する調査漏れがある。

6)全般的センサス評価

つぎに,今まで行われてきたセンサス評価を基にして, 1960-1990年センサスの筆者によ

る全般的な評価を行う。

a)各歳別人口の特徴(図 1-A,図 1-B)

700,000

600,000

500,000げl符¥ll I I I I I

1960年I ・ • • • • ・1970年

人 400,000「rildhl.N 11

1980年1990年

I I I ロ 300,000

I

200,000

100,000

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85

9 年齢

図1-A 1960-90年タイ各歳別男子人口

出所) Thai land (1963); Thai land (1973); Thai land (1983); Thai land(1994). ・

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 55

700,000

600,000

1960年500,000

• ・ ・ • ・ ・1970年

1980年人 400,000 1990年

300,000 ロ

200,000

100,000

。0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 年齢

図1-B 1960-90年タイ各歳別女子人口

出所) 図1-Aと同じ。

まず,年齢申告の偏り (age-heaping)についてみると1960年人口は,前述のように年齢

のみを聞いているため,それが明確にみられる。それ以降1980年までは, 60歳未満ではほと

んどみられないが, 60歳以上の高齢人口では,どのセンサスでもそれが現れる。 1990年人口

の大きな特徴は,年齢申告の偏りが1980年センサスに比べてより若い年齢層でみられること

である。 1990年も1980年と同様に出生年月と年齢を質問しているので,この理由はいまのと

ころわからない 6)。また,年齢申告の偏りだけでなく,すべてのセンサスで,タイ独特の本

来の年齢より 1歳以上高い年齢で答える誤った年齢申告が,本来の年齢分布を歪めている可

能性がある。

b)センサス生残率と生命表生残率の比較による年齢別人口の特徴(図 2-A,図 2-B)

センサス生残率は,センサス間の同ーコーホート人口の比”で,全国人口で国際移動が無

視できる場合,そのコーホートがセンサス間で生存する割合を示し,本来, 1を越えること

はない。 1を越えるときは,一般に前のセンサスの調査漏れが考えられる。生命表生残率は,

修正された年齢別死亡率を利用した生命表から得られるので,ある年齢間での生存割合を比

6)結果が一部年齢項目で計算されたか,調査で年齢から出生年月が計算されたことが考えられる。

7)例えば, 1970年15-19歳コーホートは, 1980年には25-29歳になるが, この期間移動がなければ,コー

ホート人口の変化は死亡のみで,後者の人口の前者の人口に対する比は生残率(生存割合)を示す。

56

1.2

1.1

1. 0

(). 9

0.8

0.7

残 0.6

率0.5

0.4

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0.1

0.0

神戸大学経済学研究 47

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'85生命表

0-4→ 5-9→ I Q-14→ 15-19→ !0-!4→ 15-!9→ 30-34-> lS-39-> 40-44→ IHI→ • SO-SI→ SS-S9→ 6H4→ 6S-6 9-> 70-74→ 75-79→ 10-14→ 10-14歳 15-19 !0-!4 15-19 30-34 J5-J9 40-44 45-49 54-54 55-59 10-14 15-19 70-74 75-79 10-14 15-19 90-94

年齢

図2-A 1960:-90年センサス及び生命表生残率(男子)

出所)センサス: Thai land (1963); Thai land (1973); Thai land (1983); Thai land (1993) 生命表: Thailand (1969); Thailand (1978); Thailand (1987).

1.2

1.1

1.0

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生 0.7

残 0.6

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年齢

図2-B I !l60-90年センサス及び生命表生残率(女子)

出所) 図2-Aと同じ。

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 57

較的正確に示す。

まず, 0-4歳と10年後10-14歳になるコーホート(センサスの間隔は10年)のセンサス生

残率をみると,どのセンサス間でも 1を越え, 0-4歳人口の調査漏れが多いことが裏付けら

れる。 1970-80年の値が低いのは1970年センサスの0-4歳の調査漏れが大きかっただけに,

むしろ, 1980年センサスの10-14歳の調査淵れが大きいことを示している。 1980-9位Fの0-

4歳生残率は上昇していることから,相対的には, 1990年の補足率が上昇していることがわ

かる。しかし, 0-4歳の場合,前述のように1990年センサスにおいても多くの調査漏れがみ

られる (ThailandNESDB, 1995)。

5-9歳から15-19歳の年齢層は, 10年後都市を中心とした地域へ移動する人口を多く排出

する集団であり,一般に調査の捕捉率が低下する。したがって生残率は 1を下回り,さらに,

生命表生残率以下にさえなる。この傾向は,移動が男子により多いため,女子よりも男子に

おいて著しい。

また20歳代から30歳代に変化する過程で,センサス生残率が1970-80年および1980-90年

において 1を越え, 1970年ばかりでなく 1980年も調査の捕捉がよくないことを示している。

また, 1960-70年センサス生残率が, 1974年人口変動調査 (Thailand,1978)の生命表生残

率よりも低く, 1970年はすべての年齢で調査淵れが多かったことを裏付けている。

1980-90年においては30歳代以降50-54歳までは,全般的に生残率は高い。これは,

1990年センサスの調査凋れが少なくなったのか,つまり 1980年センサスの若年層の把握率が

かなり低かったのか,または国際移動等によって人口が変化したのか,どちらの要因による

のであろうか。おそらく両要因が何らかの割合で関連しているであろう。ただ,ここでは捕

捉率の上昇がより重要と考える。つまり,男女ともにほぼ同様に生残率が 1を上回っている

ことから,男子中心の外国出稼ぎの帰国増よりむしろ,捕捉率上昇が妥当とみなせるであろ

う。

60歳後半の年齢から,とくに男子において年齢を過大に申告する等の問題があり,一般に

生残率の低下がそれ以前の年齢とあまり変わらないかむしろ相対的に低下率が鈍る。老年人

口は,そのままでは利用できず,修正が必要であることを示している。

c)性比による特徴(図 3)

性比は,男子人口の女子人口に対する割合を示す 8)。1960,70年と1980,90年とでは明確

な性比の差異が認められる。後者では,相対的に0-14歳人口の性比が高まり, 30-50歳台

8)性比は,出生時には,一般に105前後であるが,その後,男子の死亡率が相対的に高いために,徐々

に低下していく。

58 神戸大学経済学研究 47

人口の性比が低下している(性比 1以上から性比 1未満へと変化)。さらに, 60歳以上の性

比はむしろ上昇している。

0-14歳の場合は男性の調査漏れが少なくなり,より正確になったことが考えられる。

30--50歳台の場合,女子人口の捕捉上昇にょる正確度の上昇と,男子労働力の海外出稼ぎ

による性比の上昇が考えられるが,生残率が 1を上回ることから,人口の調査漏れが少なく

なったと考えられよう。 60歳以上の性比上昇は,男子の死亡率改善というよりは,むしろ年

齢申告が相対的に正確でなくなっているということが重要であろう。

110

105

100

95

90

性 85

80

75

比 70

65

60

55

50

45

40

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` • • • 1980年 ヽ

` 1990年

` I I I I

I H S-9 10-14 15-19 2H4. 25-29 3H4 35-39 4H4 45-49 50-S4 5S-S9 6H4 65-69 7H4 75-79 80-84 85-89 9H4

年齢

図3 各センサスの年齢別性比

出所)図1-Aと同じ。

② 登録人口の評価

表l 登録人口とセンサス人口の比較

登録人口 センサス人口登録人口/センサス人口

1960年 25,756,078 26,257,916 0.9809 1970 35,550,105 34,397,374 1.0335 1980 46,961,338 44,824,540 1.0477 1990 56,303,273 54.548 530 1.0322

出所) Thai land National Statistical Office, Statistical

Yearbook Thailand, 1986 ed.; 1995 ed.

つぎに,内務省によって集計された登録人口はどれほど正確なものかを検討する。登録人

口をセンサス人口と比較してみると(表 1), 1960年には,調査凋れが 4-5%あったセンサ

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 59

ス人口が登録人口より大きく,登録人口の登録漏れが少なからずあったことを示している。

しかし, 1970年には登録人口がセンサス人口を上回るようになり,より調査濶れの少なくなっ

た1990年においても同様である。このことは,登録人口がセンサス人口より人口把握の改善

が相対的に著しいことを示している。一般的には全国の登録人口は,前述のような個人番号

と国民携帯証の必要性が高まってきてから,次第に登録雇れが少なくなり,後に示されるよ

うに,実際正確になってきたと考えられる。

登録人口は,研究上はほとんど今まで利用されてこなかったが,もう少し検討を加える必

要があるものの,全国人口ならば,例えば男女別,年齢別人口なども含めて八もっと利用

されてもよいと考えられる。ただ,問題点は依然残る。ーつは,後述のように出生と死亡の

届け出瀬れや遅れの影響が残り,これがとくに乳幼児人口と高齢人口のそれぞれ過小,過大

をもたらしていることは否めない。また,県別のような地域登録人口は,移動によって必ず

しも登録を移すことが行われていないため,正確度は落ちる。

③ 人口動態統計の評価

タイの人口動態統計は,開発途上国一般にみられる傾向であるが,登録漏れが多かった。

最近になるほど,次第に改善されているものの,第二次大戦中から戦後にかけて,一時,登

録瀧れが再び多くなったという (Bougeois-Pichat,1974, p.17)。登録福れの実態をみると,

登録すべき当事者の登録淵れだけでなく,郡では登録されても,郡の段階で上位の官庁に書

類の一部が提出されないために調査漏れになってしまうケースが,調査瀬れ全体の約半分存

在していたという結果もある (Thailand,1969, ・p. 4)。

出生登録の完全度は, 1960年で76%,・1960-69年で81%, 1970-74年で82%である (US,

1980, p.15)。(表 2)

例えば抽出調査である人口変動調査によると, 1964-65年の出生届け出淵れは15%,死亡

届け出瀬れは約30%であった。年齢別にみると, 0歳の乳児死亡の届け出淵れがもっとも高

<, 50%もあり (Thailand,1969, pp.17-18), 1985年でも登録統計と人口変動調査との乳

児死亡率の差は4倍近い (Thailand,1987, p.31)。

しかし1980年代中頃以降,出生・死亡の登録は,急速に改善されはじめた(表 2参照)。

1990年代中頃になると,出生は95%登録されるようになり,なかんずく死亡の改善が著しく,

これも95%台になった10)。バンコク都では, 1995'-96年調査 (Thailand,1997, p.47)による

と出生・死亡ともほぼ100%登録されており,他の都市部でも98%登録されている。ただ,南

9). 1993年以降の県 (changwat)別男女年齢別登録人口は,内務省で得ることができる。

10)乳児死亡率は,依然届け出漏れが多く, 1995-96年人口変動調査結果と1995年登録数を比較すると,

概数で26,000と7,000というような差がある。

60 神戸大学経済学研究 47

部では,死亡登録の完全度は87%である。調査によるこれらの数字が正しいとすれば,とくに

都市部の最近の出生・死亡データは,ほとんど修正せずに利用できるようになったといえる。

表2 登録出生および死亡の修正係数(登録完全度)

.... ・--出生

Luther et al. 人口変動調査 Hill

男 女 男 女 男女計* 男女計§

-1960年 1.4265(70.1) 1. 3175(75. 9) 1960-69 1.2755(78.4) 1.2361(80.9) 1960-65 1.2146(82.3) 1.2778(78.3)

1964-65 ※1.1851(84.4)

1965-70 1.2099(82. 7) 1.2399(80. 7) 1970-75 1.1895(84.1) 1.2012(83.3) 1.2547(79. 7) 1.2225(81.8) 1974-76 1. 3733(72. 8) 1.4071(71. l) 1975-80 1.1804(84. 7) 1.1755(85.1) 1985.,.86 1.1309(88.4) 1.1665(85. 8)

1995-96 ※1.046(95.6)

死亡

Luther et al. 人口変動調査 Hi 11

男 女 男 女 男女計ュ 男女計ェ

-1960年 1.5244(65.6) 1960-69 1.2346(81.0) 1.5241(65.6) 1960-6.5 1.5047(66.5) 1.5375(65.0) 1964-65 1.5496(64.5) 1.6667(60.0) :

1965-70 1.5906(62.9) 1.5718(63.6) 1970-75 l.6230(61.6) 1.6095(62.1) 1974-76 1.6689(59.9) 1. 7347(57.6) 1975-80 1.5898(62.9) J.6188(61.8) 1985-86 1.3478(74.2) 1.3136(76.1)

1995-96 _.

※1.0549(94.8)

注) ( )内は登録完全度を示す。修正係数は登録の完全度 (completeness)の逆数。

1に近いほど,登録は正確であることを示す。 '

※は男女計。*はコーホート累積法による。§はP/F比より算出。ュはコーホート差し引き法により, 10歳以上死亡についての値。

ェは増加バランス法により, 5歳以上死亡についての値。

出所) Luther et al. (1986); U. S. (1980); Thailand (1969); Thailand (1978); Thailand (1987); Thai land (1997).

④ 人口調査の評価

最初の人口調査である "1954-56 Demographic and Economic Survey "は,全国の

世帯200分の 1の抽出調査であった。この調査自体にも,推計による人口総数は少なすぎる

という問題がある (DasGupta et al., 1974, p.42)。それ以降の調査は相対的には正確で

あると見なされている。

1964-1967年人口変動調査は, 150分の 1の二段階層化抽出調査であった。しかし,バン

コクおよびトンプリは調査されなかった。

1974-76年人口変動調査は200分の 1抽出であった。二重記録 (dualrecordー一人口動態

について,調査と登録の二重記録のマッチングによって登録の完全性をみる方法)による出

生,死亡の登録数との差異が他調査よりも大という問題がある。

第2次大戦後タイの人口統計と人口変動 61

1984-86年人口変動調査は,死亡の修正係数が低すぎるという問題を持つ(表 2参照)。

一般的に, これらの人口調査も,抽出調査の規模の制約によって,とくに年齢別出生・年

齢別死亡のような動態関係の数値は,絶対数が小さ<'合計特殊出生率や生命表推計を行う

上で多少の歪みが生じることは否めない。

⑤ 移動統計の評価

国内移動統計については,センサスによる過去5年以内の移動および登録人口の流入数・

流出数は,永住的移動が中心で,季節的移動や循環移動の把握が過小になる傾向にある。ー

方,移動調査は,季節的移動や循環移動をも捉える (Guestet al., 1994)。しかしこの調

査は,調査時期が農繁期の 9月のため,タイに多い季節的移動の影響を強く受け,かならず

しも移動の実態を十全に把握はできない。

国際移動統計に関しては,大部分の統計が流出入のみを示し,ある時点での静態的移動人

口を示す統計は,人ロセンサスを除いてない。非合法国際移動人口はタイでは重要であるが,

ほとんど把握されていない。したがって,外国に居住する人口を推計することはきわめて困

難である。また,移動の定義等の年次による不一致や移動データの内容に関する問題が存在

する (Stern,1997)。

4. 人口諸指標の推計

以上のようなタイの人口統計上の特徴と問題点を踏まえて, ここでは第二次大戦後につい

て,まず推計上の基礎となる出生,死亡の推計を行い,それを利用して年齢別人口および総

人口の推計を行う。

① 人口動態の推計

前述のように人口動態統計が不完全であることから、様々な推計がなされているが、その

内容と評価を試み、それをもとに戦後から最近までの出生数・死亡数、出生率•死亡率の推

計を行う。

1)従来の人口動態推計

人口動態率はセンサス等の年齢別人口からの逆進推計,および人口動態の登録数と人口調

査の二重記録 (dualrecord)からの修正係数利用によって求められる。前者でもっとも信

頼性のあるのは,小林によれば(小林, 1983,50-53頁),国連ESCAPによる推計 (UN,

1976)である。

62 神戸大学経済学研究 47

逆進法を援用して出生率を求める方法を示してみよう。例として,女子人口を取り上げる

と,センサスから安定人口の一定の生残率を仮定して過去の女子人口と女子出生数を求め,

15-44歳女子人口の各 5歳階級ごとに,ある一定の年齢別出生率の比からみいだされるウエ

イトをつける。それと各年齢階級女子人口との積の和を総女子人口として,出生数をそれで

除した値が女子出生率になる。この方法は,年齢ごとの人口の差が出生率に反映されるとい

う利点があるが,計算のための変数を時間的に一定と仮定する問題があるb 例えば一定の生

残率,一定の年齢別ウエイトは妥当であろうか。すくなくとも一定の生残率は,戦後死亡率

が低下していることからすれば問題が残るが, 1960年以前であれば,死亡率の低下の影響は

それほど大きくないと考えられる。

修正係数を求めて,出生・死亡数および率を推計する方法では,ルーサー等 (Lutheret

al., 1986)が, 1960-80年の人口推計を行う過程で,出生数・年齢別死亡数を求めている。

これは,各人口変動調査の修正係数を,統一的に修正して求められたもので,この期間にお

いてはもっとも信頼がおけるといえる。

その他に, Brassの方法やセンサス生残率の検討,センサス人口を修正した人口と登録人

口動態率との比較等による死亡率の1937-1970年の推計が行われている (Benjawan,1975)。

また, 1970年のセンサスからの死亡率,乳児死亡率の推計が行われている (Knodel,1978)。

さらに,出生率および合計特殊出生率の推計は,人口変動調査,センサス結果からの同居児

法によって結果が得られている (Retherford,1979)。

2)出生,死亡の推計のための修正係数(表2参照)

出生数死亡数を推計するために,ここでは,登録出生数・死亡数と,諸推計ならびに人

口変動調査から得られた正確と見なされる出生数・死亡数との比である修正係数を利用する。

具体的には,上述のような各動態推計の評価に基づいて,時期によって下記のような出生,

死亡の修正係数を利用する。

1950年代 ーー一国連ESCAPの修正係数 (UN,1976)

1960-80年ーーールーサーの修正係数 (Lutheret al., 1986)

1980年以降ーー一人口変動調査 (SPC)の修正係数

前2者の修正係数は,いずれもタイ人口変動調査結果を修正したものである。これらの修

正係数を利用して,修正出生数および修正死亡数を計算した。今回は修正出生数をセンサス

人口の補正と他の年次の人口推計に利用した。計算の過程で,登録から求められた保健省の

出生数は,届け出漏ればかりでな<'年による届け出漏れの割合の変動がある。 1980年代後

半の登録出生数が前後年に比べて明らかに低いので,それらの前後年の趨勢値を採用する修

正を行った。

第2次大戦後タイの人口統計と人口変動 63

② 人口の推計

1960, 1970, 1980, 1990年センサス人口の修正を中心に, 1950-1995年の男女別年齢別人

口推計を行う。

1)従来の推計

1960年センサス人口の推計は, DasGuptaによる推計がある (DasGupta, 1974)。

1970年センサス人口については,国連ESCAP(UN, 1976), フルトン (Fulton,1979) ,

アーノルド等 (Arnoldet al., 1975), および合衆国センサス局 (US,1978)があるが, こ

れらについて,小林による推計の評価(小林, 1983,62-64頁)がある。それによると,国連

およびアーノルド等の推計はある年齢での調査漏れ率が異常に乖離しているという問題があ

り,フルトンおよび合衆国推計はほぼ同じ調査漏れ率を示す推計である,と結論づけている。

1980年センサス人口は,チンタナ等による推計 (Chintanaet al., 1983)があるが,基

本的な方法は1970年アーノルド推計と同じである。

1990年センサス人口との関連では, 1990-2020年将来推計人口計算の前提としての1990年推

計人口がある (ThailandNESDB, 1995)。

従来推計の問題点としては,個々の年について行われた推計は,他の年との連続性が一般

にない。これにたいして,ルーサー等 (Lutheret al., 1986)は, 1960-80年のセンサス

人口と動態率とを同時に推計して相互の連続性を確保した。 1960年から1980年までのセンサ

ス人口の推計では,これが最も望ましい推計と考えられる。

従来の各人口推計の大部分は,推計法として伝統的なコーホート要素法 (Cohort

Component Method) u)を採用しているが,ここでもこの方法を利用して, 1950-1995年の

5歳階級別年齢別人口 (80歳以上オープン)の推計を行った。

2)新推計とその方法

a)生残率

死亡数の登録完全度は,最近を除けば,前述のように,乳児以外では60-70%台,乳児で

は50%台と低すぎる。ここでは人口推計のために,修正死亡数を利用せず,生命表による生

残率を利用する。生命表の採用については修正係数とほぼ同様で, 1950-60年はプラス

(Brass)のロジットシステム (LogitSystem) 12)を援用したベンジャワン (Benjawan,

1975), 1960-80年はルーサー等 (Lutheret al., .1986), 1980-95年はタイ人口変動調査

11)基本的には,ある年の正確な男女別年齢別センサスや調査人口を基準にして,すでに仮定された出

生率および生残率あるいは修正された死亡率を利用して,各コーホートごとの人口を逆進あるいは

前進推計する方法である。

64 神戸大学経済学研究 47

表3 各推計人口とセンサス人口の比較

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注)比率はセンサス人口に対する比率。 Fulton推計は65歳以上オープン。出所) Das Gupta et al. (1965); Arriolcl (1975); Fulton (1979); Chintana et al. (1983);

Luther et al. (1986).

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 65

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66 神戸大学経済学研究 47

による生命表を利用する。これらの生命表の多くは70歳以上オープンなので,それ以上の年

齢については,コール等 (Coaleand Demeny, 1983)のモデル生命表North13>を利用して

推計した。この理由として, タイ生命表生残率とモデル生命表生残率を比較した場合,中年・

高年層でWestよりNorthモデルの曲線がタイ生命表生残率曲線により近い値を示している

ことによる。

b) 0-4歳 5-9歳人口の過小の問題

各センサスとも, 0-4,5-9歳は,調査漏れや年齢の誤りが多いので,修正出生数と生命

表生残率を使って前進推計を行う。また, 1960年の30-79歳人口, 1990年の30-69歳人口は

正確とみなして,逆進推計による10歳未満年齢層の推計値も利用する。

C) 10-20歳代人口調査漏れの問題

この年齢層は,低年齢層と同様に1960年および1990年のセンサスの隣接年齢層,とくに30

歳以上人口から生命表生残率を使って推計する。具体的には1960年センサスの30-7瀬反から,

1965年以降の35歳以上人口を,そして1955年以前25歳以下人口を,それぞれ生命表生残率を

使って推計する。同様に1990年30-69歳人口から,前後年次の年齢層の推計値を求める。

1960年および1990年の各年齢別人口は,年齢申告の偏り (age-heaping)および性比の補

正をあらかじめ行い (UN,1983; Arnold et al., 1975), 補正後の人口を推計の基礎人口と

した。

d) 70歳以上人口

70歳以上の人口は,前述の生残率の傾向からみて,とくに男子で年齢申告を過大にする傾

向にあり, 1960年を除いてこの年齢層を利用しない。

e) 1970および1980センサス人口の問題

1970年および1980年センサス人口は,前述の評価結果から調査凋れが大きいとみなし,推

計には利用しない。

12)プラスは,年齢別死亡率の変化の規則性に注目して,ロジットモデルに当てはめて,独自のモデル

生命表を作成した。 (Brass,W. (1971) "On the Scale of Mortaiity," in W. Brass (ed.) ,

Biological Aspests of Demography, London : Taylor and Francis.)

13)コール等のモデル生命表は,世界各国の19世紀以降の正確な生命表をモデル化したもので,年齢別

死亡率曲線の違いによってWest,East,. South, Northの4種類のパターンがある。もっとも一

般的なパターンはWestである。

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 67

f)国際移動の影響

1990年30歳台人口は,性比が相対的に低く,国際移動の影響が無視できないかもしれない。

労働統計によると,タイ人海外在住労働者数は, 1980年代後半で12万人, 1990年には 6万人

で,実際はこの数字よりは大きいと考えられるが (Pracha,1994), 全般的には国際移動に

よる人口増減への影響は大きくないとみなし,ここでは考慮に入れない。

3)推計結果

以上のような方法で, 1950-1995年男女別 5歳階級年齢別人口を求めた。

他の推計と比較すると(表 3),従来推計より人口数は大きくなっている。

人口増加率(表4),各年推計人口(表5),修正出生率および死亡率の推移(表 5および

図4)を,それぞれ図表で示した。

表4 タイの1950-95年推計人口の推移

人 ロ 年増加率

男 女 計 (%)

1950年 10,811,333 10,714,475 21,525,809 2.74

1955 12,362,136 12,323,263 24,685,398 2.85

1960 14,255,753 14,211,218 28,466,972 2.97

1965 16,535,413 16,483,279 33,018,692

19,095,636 2.89

1970 19,061,114 38,156,749 2.51

1975 21,613,970 21,642,247 43,256,217 2.01

1980 23,829,530 23,990,498 47,820,028 1. 76

1985 26,000,049 26,209,337 52,209,386 1.44

1990 27,942,779 28,167,742 56,110,522 1.18

1995 29,645,966 29,878,792 59,524,758

68 神戸大学経済学研究 47

表5 タイ 1950-95年各年推計人口および修正出生率.修正死亡率

推計人口 修正出生数修正死亡数 修正出生率修正死亡率

4月1日現在 7月1日現在 12月31日現在. (人口千対)

1950年 21,525,809 21,673,217 21,968,032 916,930 327,298 42.31 15.10

1951 22,063,755 22,216,018 22,520,544 938,558 386,047 42.25 17.38

1952 22,635,426 22,792,848 23,107,693 961,684 374,534 42.19 16.43

1953 23,259,337 23,422,390 23,748,497 1,002,975 362,171 42.82 15.46

1954 23,965,139 24,134,563 24,473,409 1,103,862 378,950 45.74 15.70

1955 24,685,398 24,861,322 25,213,170 1,105,791 366,030 44.48 14. 72

1956 25,483,727 25,667,082 26,033,792 1,169,030 348,407 45.55 13.57

1957 26,209,675 26,399,787 26,780,012 1,112,780 366,561 42.15 13.88

1958 26,923,309 27,120,064 27,513,574 1,078,680 345,118 39.77 12.73

1959 27,695,580 27,899,524 28,307,412 1,129,799 335,961 40.50 12.04

1960 28,466,972 28,678,096 29,100,344 1,147,835 354,903 40.02 12.38

1961 29,271,410 29,487,421 29,919,442 1,150,401 331,304 39.01 11.24

1962 30,131,098 30,352,330 30,794,796 1,223,336 347,983 40.30 11.46

1963 31,022,852 31,249,501 31,702,800 1,274,765 366,760 40.79 11. 74

1964 32,023,265 32,255,991 32,721,443 1,383,689 365,046 42.90 11. 32

1965 33,018,692 33,257,465 33,735,010 1,371,053 357,486 41.23 10.75

1966 33,987,032 34,225,907 34,703,658 1,333,553 364,906 38.96 10.66

1967 35,008,742 35,247,725 35,725,691 1,377,523 355,490 39.08 10.09

1968 36,121,368 36,360,468 36,838,670 1,469,943 356,964 40.43 9.82

1969 37,138,940 37,378,149 37,856,565 1,393,740 375,845 37.29 10.06

1970 38,156,749 38,396, 0.65 38,874,697 1,371,061 352,929 35.71 9.19

1971 39,244,938 39,479,478 39,948,559 1,448,354 374,492 36.69 9.49

1972 40,262,724 40,492,798 40,952,947 1,412,065 407,678 34.87 10.07

1973 41,266,195 41,491,866 41,943,207 1,382,476 392,216 33.32 9.45

1974 42,275,907 42,497,147 42,939,626 1,400,505 404,086 32.96 9.51

1975 43,256,217 43,473,155 43,907,030 1,347,387 379,983 30.99 8.74

1976 44,271,421 44,486,809 44,917,586 1,379,961 369,406 31.02 8.30

1977 45,179,357 45,393,359 45,821,364 1,273,915 370,136 28.06 8.15

1978 46,033,751 46.,246,449 46,671,846 1,227,984 377,501 26.55 8.16

1979 46,926,115 47,137,451 47,560,125 1,265,333 377,054 26.84 8.00

1980 47,820,028 48,030,000 48,449,945 1,277,849 388,028 26.61 8.08

1981 48,726,223 48,931,682 49,342,601 1,245,074 352,418 25.45 7.20

1982 49,623,931 49,824,920 50,226,897 1,249,895 365,599 25.09 7.34

1983 50,483,475 50,680,183 51,073,600 1,212,053 365,350 23.92 7.21

1984 51,356,587 51,548,947 51,933,668 1,191,023 330,954 23.10 6.42

1985 52,209,386 52,397,499 52,773,726 1,171,438 331,380 22.36 6.32

1986 53,050,571 53,233,855 53,600,425 1,140,172 313,473 2i.42 5.89

1987 53,850,407 54,029,101 54,386,487 1,116, 152 330,089 20.66 6.11

1988 54,637,661 54,811,835 55,160,184 1,092,559 318,863 19.93 5.82

1989 55,385,644 55,555,525 55,895,286 1,069,383 334,281 19.25 6.02

1990 56,110,522 56,276,241 56,607,680 1,046,612 334,218 18.60 5.94

1991 56,818,721 56,975,686 57,289,616 1,043,334 335,135 18.31 5.88

1992 57,513,508 57,661,884 57,958,637 L 034, 673 339,886 17.94 5.89

1993 58,190,629 58,330,635 58,610,648 1,020,336 343,215 17.49 5.88

1994 58,851,616 58,983,452 59,247,122 1,018,391 357,404 17.27 6. 06

1995 59.524.758 59.648 272 59 895.301 1.009. 675 336.533 16.93 5.64

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 69

50

45 修正出生率

閉43051 二 ご 心|――一修正死亡率

-----登登録録死出生亡率率

率 30

^ 人 25口千 20

包 15応

10・ ~

5

゜1950年 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995

図4 修正出生率.死亡率と登録出生率.死亡率

出所) 登録出生率.死亡率は, StatisticalYearbook Thai landより得られた値。修正出生率.死亡率は表4参照。

③ 登録人口との比較

登録人口は,最近年次ほど推計人口に近似する。 1985年以降はほぼ一致している(図 5)。

問題は,年齢別および各地域別にみた場合にも一致しているかどうかであるが,これは後の

課題としたい。ただ,地域別では,人口移動によって,とくに季節的移動の場合,必ずしも

登録を変更しない場合が多く,地域によってある程度の乖離はあると考えられる。

60,000,000

50,000,000

40,000,000

30,000,000 .... ....

20,000,000

10,000,000

゜1960年 1965 1970 1975 1980

" """'""'●● ""・推計人口

-----・ 登録人口

1985 1990

図5推計人口と登録人口の比較

出所) 登録人口は表1と同じ。

1995

70 神戸大学経済学研究 47

5. 戦後タイの人口変動の概観

① 人口増加

推計結果からタイの人口変化を概観すると,戦後の人口増加は1950年からすでに 2%以上

の高い増加率を示し, もっとも高かったのは1960年代で, 3%近い増加率を示した。その後

出生率の低下によって,人口増加は鈍るが,人口の絶対数は, 1950年の2,100万から1995年

の5,900万まで,半世紀足らずでほぼ 3倍になった。人口増加の過程は,いわば,かつての

NIES諸国と南アジアの中間的性格を示している。

② 人口動態

1)出生率

戦後人口千あたり40台前半で推移し,従来の推計 (Thailand, 1976,--p.219) よりも低い

値を示す。 1960年代中頃以降,急激な低下を開始した。合計特殊出生率 (TFR)1•> (表 6)

は,高いときで 6程度であった。出生力は1960年代から低下傾向を示し,地域別にみると,

バンコク都市圏の低下がより早かった。また,北部の低下も早い傾向にあった。出生力転換

はバンコクの近代的転換,北部農村の伝統的出生力低下から始まったといえる。

表6 タイ地方別合計特殊出生率の推移

1964-65年 1974-75 1985-86 1989 1991 1995-96 全 国 6.299 5.167 2.730 2.411 2.174 2.022 バンコク都 ’’ 3.648 1. 735 1.415 1.135 1. 261 中 部 5.901 4.668 2.494 2.173 1. 954 1.664 北部 6.475 3.787 2.248 2.058 1. 972 1.894 東北部 6.611 6.588 3.096 2.872 2.666 2.435 南部 6.020 6.284 4.049 3.311 2.982 2.851 注) 1964-65年はBangkok-Thonburiを調査せず。

出所) Thailand (1969); Thailand (1978); Thailand (1987); Thailand (1990); Thailand (1992); Thailand (1997).

2)死亡率

1950年代は低下の渦中で,すでに低い死亡率がみられる。第二次大戦前からすでに低下し

ていたかどうかが興味ある問題であるが,今のところ推計値は徐々に低下していた(高橋,

1997)。死亡水準を端的に示す乳児死亡率(表 7)は少なくとも60年代以降低下傾向にあっ

た。地方別では,バンコク都市圏が低<'北部が相対的に高い。

14)合計特殊出生率と次節の乳児死亡率については,今回は修正をおこなっておらず、今後の課題である。

第 2次大戦後タイの人口統計と人口変動 71

表7 タイの地方別乳児死亡率(出生千対)

1964-65年 1974-76 1985-86 1989 1991 1995-96 全 国 84.3 51.8 40.7 38.8 34.5 26.1 バンコク都 25.2 27.4 23.6 22.5 18.9 中部 94.0 48.9 30.0 29.8 26.2 19.4 北 部 96.5 74.0 48.0 46.3 42.4 30.8 東北部 83.4 52.1 45.1 43.7 39.0 29.4 南部 48.5 51.4 36.7 35.6 31.1 25.7 出所)表6と同じ。

③ 男女別年齢別人口

出生力低下によって,表 3の年齢別人口の推移をみると, 1980年代から,人口構成はビラ

ミッドから釣り鐘型へ移行している。たとえば, 0-14歳人口は, 1980年に38.5%, 1990年

には30.2%, さらに将来推計人口 (Thailand,1995)によると, 2010年に22.2%, 2020年に

は19.7%まで減少する。一方, 65歳以上人口は,同様に1980年に3.6%, 1990年には4.2%に

なり,さらに, 2010年に 8%, 2020年には10%を越える。タイも急速に高齢化への道を歩ん

でいることがわかる。

6. 結び一ー今後の課題

本稿では,まず,第二次大戦後のタイの人口統計に関する検討を行い,とくにセンサスと

人口動態統計の問題点を検討した従来の研究を整理し,新たに,いくつかの知見を加えた。

その主な点として,センサスは,依然,乳幼児人口の調査漏れが大きいこと,年齢申告の偏

りがむしろ大きくなっていることが大きな問題である。登録淵れが大きくそのままでは利用

できなかった人口動態統計については, 1980年代以降,登録の改善が著しく,最近では,わ

ずかの修正で利用可能になった。

これらの結果を踏まえて, 1950-1995年の各年別人口と修正出生率•死亡率,および,コー

ホート要素法を利用して, 5年毎の 5歳階級年齢別男女別人口の推計を行った。人口は従来

の推計より多少多くなる結果がみられた。また,登録人口との比較で,ほとんど推計人口と

の差がなく,少なくとも全国の登録人口は利用可能であることがわかった。

残された課題もいくつかある。それらの主要な問題を列挙すると下記の通りである。

1) 1990年センサスにおいて壮年層におけるセンサス生残率が 1を上回る傾向は,ここで

は全般的な捕捉率の上昇と考えたが, これを国際移動のさらなる把握と同時に,それとの関

連で検討する余地がある。

2)死亡率変化をみていくために,その直接的要因である死因別死亡をみることが重要で

あるが,それがどれほど利用可能か,検討する余地がある。

72 神戸大学経済学研究 47

3)国内移動の推計は従来ほとんどなされていないが, これがどれほど可能か,同時に,

それとの関連で地域別登録人口がどれほど利用可能かを検討することが重要である。

これらの問題を考えていくことで,さらに正確な全国人口推計のみならず地域人口推計を

行っていくことが今後の課題である。

付記:この研究は,文部省中核的拠点形成プロジェクト「汎アジア圏長期経済統引・データベー

スの作成」(一橋大学経済研究所代表者尾高煙之助)の研究費の一部を利用した。

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74 神戸大学経済学研究 47

Summary

EVALUATION OF POPULATION STATISTICS AND

POPULATION ESTIMATES IN 1950-1995 IN THAILAND

SHINICHI TAKAHASHI

This paper deals with evaluating accuracy in population statistics in Thailand・since

World War II and making new population e~timates for 1950 to 1995 in Thailand.

Population statistics in Thailand, particularly population censuses and vital

statistics, have had serious problems of undercounting and underreporting. Even the

latest census had much undercounting and age-heaping. Birth and death . statistics

were once underreported by 30 t~40%, though recently this situation has much

improved. Therefore, much research has been firstly devoted to the estimation of

population and vital rates. However, these estimates are generally made for short

periods of time, for example, one year for population and 5 to 10 years for vital

rates.

In order to solve those problems in population statistics in Thailand, new

population and vital rate estimates for the consecutive years from 1950 to 1995 were

carried out. First, ・vital data, particularly the numbers of births and deaths, was

estimated using various correction factors obtained from U.N. estimates, Luther's

estimates, and Population Change Surveys. Next, survivorship ratios were estimated

using life tables calculated by Benjawan and Luther, and Coale and Demeny's, model

life table. Third, using mainly census population data in 1960. and 1990, and those

estimated v'ital data and・survivorship ratios, population by 5 -year age groups and

sex. was calculated for the period from 1950 to 1995.

The findings of the estimations are as follows. Newly estimated populations are

slightly larger than formerly estimated ones. Comparing the newly: estimated

population with the registered population, the discrepancy between both populations

has significantly decreased. Likewise, the differences between estimated and

registered vital rates have also diminished.