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宇宙システム工学 松永
- 1 -
4 軌道変更(orbital maneuvers)
ロケット
衛星 初期軌道:遷移軌道(transfer orbit)
投入
⇒ 複数回の軌道変更が必要
・ 最終軌道への直接投入が困難
・ 燃料消費の点で最適でない → 最適化(最小化)は重要
推力はインパルス(瞬間的な力積)として近似 ⇒ 速度増分 が重要
4.1 Single Impulse Maneuver
1 回のインパルスのみによる軌道遷移(軌道1: 1O から軌道2: 2O への遷移)
2V
1V
V∆
φ
1V :変更前速度、 2V :変更後速度、 V∆ :速度増分、 φ: 21 VV , のなす角
φcos2 21
2
1
2
2 VVVVV −+=∆=∆ V ,
12 VV −= , if 0=φ
12 VV += , if deg180=φ
=2
sin2φ
V , if VVV == 21
速度は、ケプラー軌道を仮定して、エネルギー保存則 ar
V
22
2 µµ−= を用いて
−=ar
V2
2µµ
+−=
pa rrr
112µ ,
rV
µ= :円の場合 ( )Pa rrr ==
消費燃料質量の見積: ツオルコフスキーの式
−=∆
0
0 lnm
mIgV sp , mmm ∆+= 0 , 0<∆m
から
∆−−=∆
spIg
Vmm
0
0 exp1
例1 遠点の変更
+−=
+−=
2
2
1
1
112
112
app
p
app
p
rrrV
rrrV
µ
µ
12 pp VVV −=∆
宇宙システム工学 松永
- 2 -
pr 1ar 2ar
1O
2O
1pV
2pV
この近点での V∆ で、遠点を 1ar から 2ar に変更できる。
同様にして、遠点での V∆ で、近点変更も可能。
例2 半長径a,離心率eの変更
遠点で V∆ を行う場合:
( )111 1 eara +=
( )
( )
−
+=
−=
+
−=
−=
21121
2
11
1
11
1
2
1
1
12
2
112
1
1
2
112
aeaarV
ea
e
arV
a
a
a
µµ
µµ
1ar
1O
2O
1aV2V
V∆
2β
γ
2V の方向
角運動量 : 221 cosβVrc a=
半直弦 p : ( )µ
22
22 1c
eap =−=
⇒ ( )( )21
2
1
2
2
2
222
2
1
1cos
eaV
ea
+
−=
µβ
( ) ( ) ,sincos2
22
2
122 ββ∆ VVVV a +−= V
V
∆β
γ 22sinsin
・=
問 eRaO 5: 11 = , 7.01 =e , 6.6378=eR km
eRaO 10: 22 = , 3.02 =e , 10000 =m kg , sec200=spI
必要な消費燃料質量を求めよ。
答 485.11 =aV km/s , 9078.22 =V km, °= 23.152β
526.1=∆V km/s , °= 87.30γ , 1.540=∆m kg
注: 1a , 1e から任意の 2a , 2e へ変更できるわけではなく、制限あり。
宇宙システム工学 松永
- 3 -
2O
1O
V∆
1r
1V
2V2β
1β
任意の位置 1r で1インパルスを行う場合、その場所の軌道 2O での速度について
20
22
12
21
2
2 ra
ar
V≥⇒≥−=
µµ : 制約条件 1
なお、 ( )1112 1maxmin earrV a +==⇒ :遠点で最小
軌道 2O の角運動量 ( ) ( )2221
2
22
2
2 cos1 βµ Vreac =−= より、
( ) ( )
( )( )[ ] ( )[ ] 011
21
12
11cos
221221
2
112
2
2
2
2
21
2
1
2
22
2
2
2
1
2
222
2
≤+−−−⇔
−≤−⇔
≤
−
−=
−=
earear
rraea
arr
ea
Vr
ea
µµ
µµβ
212 ap rrr ≤≤⇔ : 制約条件 2
一方、軌道 1O について、 111 ap rrr ≤≤ : 制約条件 3
速度増分: ( )2121
2
2
2
1 cos2 ββ∆∆ −−+== VVVVV V :遠点で最小
例3 面外変更の例 傾斜角 i
2
sin2i
VV∆
=∆
もし、 °=∆ 60i のとき、 VV =∆ :大きすぎる → 軌道面変更はできるだけ最小にすべき
例4 1 インパルスによる面内軌道変更の制約条件(Deutsch 1963)
変更する軌道要素 一定に保つ軌道要素 制約条件
a ω,e 不可能
ω,,ea なし Da
aD −>>+ 11
2
1
ω,e a ( ) 0cos212
1
2
2
1 >−+
ω∆
e
e
e
e
ω,a e '1'12
1 Da
aD −>>+
ea, ω
−±>≥
−± 1
2
12
2
121
2
1 11 ea
ae
a
aee
a
a
e ω,a なし
ω ea, なし
宇宙システム工学 松永
- 4 -
( )
( )ω∆
ω∆
cos21'
cos2
2
1
2
2
11
21
2
12
2
2
1
2
2
1
a
a
a
aeD
eea
aee
a
aD
−+
=
−+
=
面外軌道変更のための条件式も求められている。
4.2 Muitiple-Impulse Orbit Maneuver
ホーマン遷移(Hohmann Transfer)
1925年 Waler Hohmann
1O
2O
TO
1V∆
2V∆
1r
2r
21 rr < の場合
1)共面の2つの円軌道 21 ,OO について、それぞれの円に接する楕円軌道を遷移軌道として、 1O か
ら 2O に遷移する。具体的には、その楕円軌道の近点(または遠点)で速度増速(減速)を行う。
遷移軌道(Transfer Orbit, TO)
=
=
2
1
rr
rr
a
p
−
+=−=∆ 1
2
21
2
1
11rr
r
rVVV p
µ
+−=−=∆
21
1
2
22
21
rr
r
rVVV a
µ
21 VVV ∆+∆=∆
共面の2つの円軌道間遷移を 2インパルスでは最小燃料(最小 V∆ )となる。但し、最大半径/最小
半径<11.8 : 11.8以上では3インパルスの方が有利。
2)共面共軸の2つの楕円間も同様
2O
1O
TO
1V∆2V∆
遷移軌道(TO)
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- 5 -
=
=
2TO
1TO
aa
pp
rr
rr、
2
21
TO
ap rra
+=
11TO1
1TO1
22
ararVVV
pp
pp
µµµµ∆ −−−=−=
TOTO22
TO22
22
ararVVV
aa
aa
µµµµ∆ −−−=−=
21 VVV ∆+∆=∆
ホーマン遷移が2インパルスでは燃料最小(速度増分が最小)であることの証明(R.Gregory 2006):
1rr = の円軌道 O1から 2rr = の円軌道 O2に2インパルスで遷移するために、円軌道 O1のある点 P1
から円軌道 O2のある点 P2に遷移する軌道(半長径 a)を考える。点 P1での速度成分(動径方向と横断
方向)をそれぞれ、11 , θvvr とし、同様に点 P1では
22 , θvvr とする。角運動量保存則とエネルギー保存則に
より、
2
2
1
1 θθ vrvr = (1)
( ) ( ) ( ) ( )ar
vv
r
vv rr
22222 2
2222
1
2121 µµµ θθ −=−+=−+ (2)
上式より
1
2
12
θθ vr
rv = (3)
( ) ( ) ( )
−−
−+=
21
21
2
2
2
12122 1121
rrv
r
rvv rr µθ (4)
円軌道 O1、円軌道 O2 の周回速度はそれぞれ 21 /,/ rr µµ だから、点 P1,P2 における速度増分
21 , VV ∆∆ について、
( ) ( ) ( )21
12121 / rvvV r µ∆ θ −+= (5)
( ) ( ) ( )( ) ( )322
112
23
2
2
1
121
2
2
22222
//2/3
/
rrrrrrvv
rvvV
r
r
−−+
−+=
−+=
µµ
µ∆
θ
θ
(6)
式(5),(6)より、問題は、全速度増分21 VVV ∆∆∆ += を最小とする
11 , θvvr を求めることになる。さて、
1
θv を固定したとき、速度増分21 , VV ∆∆ はともに
1
rv の増加関数であるので、遷移軌道が円軌道 O2 に到
着する条件で1
rv を削減させればよい。このとき、次の 2 条件のどちらかを考慮することになる。
a) 01 =rv 、即ち、横断方向に軌道離脱する。
b) 遷移軌道を小さくしていき、 2rr = の円軌道 O2に接するようにする。しかも、1
rv をこれ以上削
減すると 2rr = を満たさなくなるようにする。
条件 a)の場合、点 P1は遷移軌道の近点を意味し、条件 b)の場合、点 P2は遠点を意味する。ここでは、
条件 a)の場合を検討する。条件 b)の場合も同様に検討でき、同じ結果を得る。
点 P1は遷移軌道の近点として、 01 =rv とする。これより簡単に、1
θv を vと書く。遷移軌道は 2rr = に
達しなければいけないので、遷移軌道の長径の長さ 2aは 212 rra +≥ でなければならない。式(2)より、
( )211
22
211
2 2
22 rrr
rv
rrar
v
+≥⇔
+−≥−=−
µµµµ (7)
即ち、一般に v > 0 だから
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- 6 -
( )211
22
rrr
rv
+≥
µ (8)
また、式(5),(6)は
( ) ( )21
21 / rvV µ∆ −= (9)
( ) ( )322
112
23
2
2
1
22 //2/3 rrrrrrvV −−+
−= µµ∆ (10)
12
1 ≤=r
rε とおくと、
( ) εε
+=
+=
1
212,
1211
2
1
3
3
2
2
1
rrrr
r
rr
rより
( )211
2
1
3
2
2
1 21
rrr
r
rr
r
+≤≤ (11)
が成立するので、式(8),(9), (10)より、速度増分21 , VV ∆∆ はともにvの増加関数である。即ち、全速度増
分21 VVV ∆∆∆ += の最小は
( )211
22
rrr
rv
+=
µ (12)
のとき、即ち、遷移軌道の長径が 212 rra += のときに成立して、点 P2は遠点となる。これは即ち、遷
移軌道がホーマン軌道であることを意味する。
4.3 静止軌道への投入
静止衛星の寿命
GTO(geosynchronous transfer orbit)から GEO(geostationary orbit)へ
1週間から4週間、燃料消費 ≈ dry weight
GEOでのミッション(赤道面上の円軌道)
10年以上, ≈∆m 10%~20% of dry weight
%/year2≈
GTO to GEO
近地点高度: 180=ph ~ 200 km 遠地点高度: 2.35786=ah km
打上基地緯度 GTOの最小軌道傾度角
Delta(Cape Canaveral) °5.28 °5.28
Ariane(フランス領 Guyana, Kourou) °2.5 °7
m∆ に大きく影響
方法1 遠地点において
1) 2
sin2:0 1
iVVi a=∆→ 2)
+−=∆→
pcir
p
cir rr
r
rVe
21:0 2
µ
21 VVV ∆+∆=∆
方法2 Combined GTO-to-GEO Maneuver
軌道面内/面外変更を同時に行う: iVVVVV GEOGTOGEOGTOcom cos222 −+=∆
例 kourou °= 7i , 0m inGTO 2000kg= , km200=Ph , sec300=SPI
m/s97.1941 =∆V , m/s76.14772 =∆V , m/s73.1672=∆⇒ V , kg867=∆m
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- 7 -
m/s4.1502=∆ comV , kg800=∆ comm , 差 kg67
Cape Canaveral: km/s2.1803=∆ comV , kg2.916=∆ comm
日本の種子島(緯度 °2.31 )では?
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- 8 -
5.月・惑星軌道
惑星探査衛星
1962~1981 金星、火星 Mariners2, 4-7(米国)
金星(マリナー9,Viking,Pioneer):複数フライバイ
1980~ 土星(PioneerⅡ,Voyager(2機))
金星、火星への周回軌道、大気突入、着地(ソ連)
海王星、冥王星(Voyager2)
1989 Galileo(ソーラークルーザー)
2 段 慣性上段ロケット(IUS Inertial Upper Stage)
1回のフライバイ、2回の地球フライバイ → 木星
6 年以上の飛行(途中、小惑星帯の GASPRA,IDA探査)
日本のISAS:Muses A,Geotail(月) あすか、のぞみ(火星)
5.1 引力圏(重力圏・作用圏・ヒル圏)
複数の重力天体があるときに、特定の天体による重力(引力)の影響が他の天体よりも卓越する
領域を「引力圏」ないしは、広義の「重力圏」と呼ぶ。ここでは、それをどのように決めるかを考
察する。
5.1.1 3体問題の運動方程式
質点 ( )3,2,1=imi の位置 iPの位置ベクトルを ir として、万有引力下の運動を考察する。
11rɺɺm 3
31
13313
21
1221
rmGm
rmGm
rrrr −+
−= より
( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
−+−=
−+−=
−+−=
323
23
2313
13
13
213
12
1233
32
32
133
31
3123
21
21
rrrrr
rrrrr
rrrrr
r
mG
r
mG
r
mG
r
mG
r
mG
r
mG
ɺɺ
ɺɺ
ɺɺ
12 rrr −= , 13 rrρ −= , ρrrrd −=−= 32
⇒
+−=
−−=
+=
32313
31332
33321
dGmGm
rGm
dGm
Gmr
Gm
dρr
rdr
ρrr
ρ
ρ
ɺɺ
ɺɺ
ɺɺ
(1)
3P
2P
1P
r
d
ρ
5.1.2 潮汐力
1m (地球), 2m (月), 3m (太陽):地球周りを公転する月に働く太陽の影響(摂動)を見る。
式(1)の 2式から 1式を引いて
1m (地球)に対する 2m (月): ( )
+−+−=
33321 ρρdr
rd
Gmr
mmGɺɺ
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- 9 -
ケプラー力 K 摂動力R
Rの力学的意味 月( 2m )が 1m , 3m を結ぶ線上に来たとき、 ρ/ρi −= として
iR
−=
223
11
dGm
ρ
iR・ 0< ( )ρ<d :月( 2m )が太陽( 3m )と地球( 1m )の間
iR・ 0> ( )ρ>d :月( 2m )が太陽方向と逆側
3P
2P1P2P
RR i
例: 2m を海水, 3m を月, 1m を地球
月の摂動力が海水に働き、満潮、干潮を引き起こす。 ⇒ 潮汐力
さて、摂動力Rをポテンシャルで表現しよう:
r
rρ
rR
∂∂
≡
−
∂∂
=V
dGm
33
1
ρ・
ここで、摂動ポテンシャル Vは次のように定義、変形できる。
−=
−= νκ
ρρρ d
Gm
dGmV 3
33
1 rρ・ ( )
+= ∑
∞
=2
3 cos1k
k
k
PrGm
θρρ
ここに、ρ
κr
= ,rrrrとρρρρのなす角をθ , θν cos= , ( ) k
k
kPd
κνρ∑∞
=
=0
, ( ) :νkP ルジャンドル多項式、
特に、 ( ) ( ) ( ) 2/)13(,,1 2
210 −=== ννννν PPP
1<<ρr
であることと、ρはrrrrに無関係なので、 2=k (主要項)のみを考える。 ( )Tzyx ,,=r ,
( )Tzyx ′′′= ,,ρ と座標表現して、 zzyyxxr ′+′+′==⋅ θρ cosρr より
( )222
33 cos32
1rrGmV −≈ θ
ρ
( ) ( )
++−′+′+′= 2222
23
3 3
2zyxzzyyxx
Gm
ρρ
これより、
−
′=
∂∂
xrxGm
x
V
ρθ
ρcos3
3
3
などが得られるので、摂動力の大きさは次で近似される。
θρ
2
33
222
cos31+=
∂∂
+
∂∂
+
∂∂
==r
Gmz
V
y
V
x
VR R (2)
摂動力の主要項は、摂動天体( 3m )までの距離 ρの3乗に逆比例し、母天体( 1m )からの距離 rに比例
2cos311 2 <+< θ より 1≈+ θ2cos31 として 33 ρr
GmR ≈ とできる。また、
ケプラー力の大きさ2
1
r
GmK ≈ ( )12 mm <<
であることから、
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- 10 -
摂動力とケプラー力の大きさの比
3
1
3
≈
ρr
m
m
K
R (3)
5.1.3 重力圏(Sphere of Gravitation)(狭義)
3m (太陽) > 1m (地球) >> 2m (s/c) とする。慣性系における 2m の運動方程式は式(1)の 2 番目。
1m , 3m による引力の大きさが等しくなる場所を求める。
3P
2P
1P
Gr
ρ
dr
2=r
GmK 1
1 ,2
33
d
GmK = 31 KK =
⇒ mm
m
d
r≡=
3
1 (4)
2P から 1P , 3P までの距離の比が一定 ⇒ 2P は(アポロニウスの)円上
円内では 1Pの引力が 3P の引力よりも大きくなるので、円の内部を 1Pの重力圏(狭義の意味で)と呼ぶ
ρm
mCP
+=1
1 , ρm
mDP
−=1
1 , ρ2
2
11 m
mOP
−= ,
重力半径 ρρ mm
mrG ≈
−=
21 ( )1<<m (5)
重力圏 1Pを中心として半径 ρm の円 と近似できる。
重力圏の大きさは、質量比の平方根(2 分の 1乗)に比例する。=> 2 分の 1 乗則
例: 太陽・地球系 26=Gr 万 km < 月の軌道半径38万 km => 物理的におかしい
重力圏が力学的に意味があるのは、 1P, 3P が空間に静止していると近似できるとき。
実際の地球・月系は一体となって太陽の周りを公転しており、太陽からの力は潮汐力(摂動力)として
作用する。
200
1106.5 3 ≈×= −
K
R
:地球の引力のほぼ 200分の1
5.1.4 作用圏(影響圏)(Sphere of Influence)
3m を中心とする 2m の運動方程式
( )
+−++−=
331332
ρ
ρrdd
rGm
dmmGɺɺ (6)
大きさ 3K 1m による潮汐力(摂動力)
大きさ 3R
1m を中心とする 2m の運動方程式
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- 11 -
( )
−−++−=
333321 ρρdr
rd
Gmr
mmGɺɺ
大きさ 1K 大きさ 1R
1m の作用圏は
3
3
1
1
K
R
K
R≤ (#)
となる領域を言う。つまり、1 と 3 に関して、その地点に働く1によるケプラー力(理想 2 体中心力)
に対する 3による摂動力の比が、その地点に働く 3 によるケプラー力に対する 1による摂動力の比より
も小さいことを意味し、3 による作用が 1 による作用よりも小さいことを表す。
作用圏内に 2P がいるとき、 2P は 1Pの回りを公転し、 3P の影響は摂動力とみなせる。
もっと粗くは、作用圏内にいるとき、 3P の摂動を無視して 1Pの重力のみを考え、
作用圏外にいるとき、 1Pの摂動を無視して 3P の重力のみを考える
⇒ これは、後述する Patched Conic法(惑星間航行のための簡易法)の基礎原理となる。
r>>ρ より
+=−=
+==
2
2
1
3313
2
3
2
33
1
1
ρρ
ρρ
rO
r
Gm
rGmR
rO
Gm
d
GmK
rρ
一方、2
11
r
GmK = , θ
ρ2
331 cos31+=r
GmR
(#) より ⇒ ( ) 10
12
5
2
3
1 cos31−
+
≤ θ
ρ m
mr , 1cos31 2 ≈+ θ (7)
作用半径(activity radius) ρ5
2
3
1
=m
mrI (8)
作用圏は、 1Pを中心とした半径 Ir の円で近似できる。作用圏の大きさは、質量比の 5分の 2 乗に比例す
る。=> 5分の 2乗則
例: 地球・太陽系の地球の作用半径は 93万 km > 月の軌道長半径 38.4万 km
月は地球の作用圏の中を運動しているので、作用圏は引力圏として妥当な定義と言える。
表:太陽系惑星の作用半径
惑星 Ir ,AU 1AU=1.4959789 km108× (平均地球公転半径)
水星 00075.0
金星 00411.0
地球 00621.0 ≈ ⊕R145 (93万 km) > ⊕R60 =月軌道長半径(38.4万 km)
火星 00385.0
木星 32220.0
土星 36400.0
天王星 34600.0
海王星 58000.0
冥王星 00056.0
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- 12 -
5.1.5 ヒル圏(Hill 圏、Sphere of Hill)
3P の摂動を受けながら、 1Pの回りを運動している微小質点( 2P の質量をゼロと近似)が、いつまで
も 1P近傍に留まりうる最大領域(速度ゼロでも滞在できるという意味で、ゼロ速度曲線とも呼ぶ)をヒ
ル圏と言う。近似式は下記のように導かれる。
ヒル半径 ρ3
1
3
1
3
=
m
mrH (9)
Hill 圏の大きさは、質量比の 3 分の 1 の立方根(3 分の 1 乗)に比例する。地球-太陽系における地球
の Hill半径は約 150 万 kmとなる。
一方で、 2P に働く摂動(潮汐)力 1R ,ケプラー力 1K の大きさが等しいときを境界と定めるとき、
332
1
ρr
Gmr
Gm= ⇒ ρ
3
1
3
1
=m
mr
となり、この場合の大きさは質量比の 3分の 1乗に比例する。=> 3分の 1 乗則
7.03
1 3
1
≈
~1なので、Hill圏内では近似的に摂動力はケプラー力より小さい。
「引力圏」の大きさについては、上記のように、いろいろな定義があり、例えば、地球の引力圏につ
ては、3 分の 1 乗則によれば 216 万 km、5 分の 2 乗則による作用圏では 93 万 kmを引力圏の半径とな
るが、Hill 圏として 150 万 km とするのが合理的とする考え方もある。何故なら、無限小の第2天体に
対するラグランジュ点である L1、L2(6.2 節で後述)までの距離は Hill圏半径に等しく、L1、L2 は Hill
圏球面上にあるからである。しかし、明瞭な境界があるわけではないので、ミッションに応じて適切な
定義を選択する。
5.2 パッチドコニックス法 (Patched Conic Method, PCM)
惑星航行軌道を、円錐曲線(円、楕円、双曲線)軌道の貼り付けで近似する方法
宇宙機が地球回りの低高度円パーキング軌道から離脱して惑星に向けて航行することを考える。
仮定1)最小 V∆ ホーマン太陽中心遷移軌道(最小時間経路ではない)(ホーマン型軌道移行)
仮定2)宇宙機と惑星は黄道面にあるとみなす
仮定3)地球や惑星の作用圏は無限大かつ太陽系と比較して無限小(ゼロポイント PCM)
注意:仮定1)の他に、始点と終点および遷移時間を指定したランベール問題(2 点境界値問題の 1
種)の解を用いたランベール型軌道移行として、解く場合もある。
1)適切な時刻(打上ウインドウ):宇宙機が目標惑星に太陽中心遷移軌道の遠日点で到着
できるための時刻 を設定する。
2)遷移時間 �µ
π3
2
aPT == ,
2
⊗⊕ +=rr
a (1)
3)地球軌道から遷移軌道に変更するために必要な速度: ⊕∞ /v
近日点速度 ⊗⊕⊕ +
−=rrr
Vp��µµ 22
(2)
地球の作用圏は ⊕r に比べ非常に小さいので点とみなす。 ⊕⊕∞ += VvV /p より
⊕⊗⊕⊕⊕⊕∞ −
+−=−=
rrrrVVv p
���µµµ 22
/ (3)
ここで ⊕V は地球公転速度である。
宇宙システム工学 松永
- 13 -
なお、 ⊕∞ /v は双曲線離脱速度(余剰速度)(hyperbolic excess velocity)とも呼ばれ、 HEV とも書く。ま
た、双曲線軌道余剰エネルギー(Excess Energy):2
/
2
3 ⊕∞=≡ vVC HE と定義して使用される。
4)離脱双曲線の近地点で V∆ 変更がされたとする。
地球回り双曲線軌道のエネルギー方程式
222
2
/2
⊕∞⊕⊕ =−=−=νµνµ
εra
(4)
ここで、作用半径は本来 rIであるが無限遠と考えている。
双曲線近地点速度 p
pr
⊕⊕∞ +=
µνν
22
/ (5)
インパルス速度増分 cp ννν −=∆ ⊕pp rr
⊕⊕⊕∞ −+=
µµν
22
/ (6)
( ) ( )⊕∞⊕∞
⊕∞ >>−≅
−
+=−+= /
2
/2
/
2 if1212
122 νν
ν cc
c
ccc vvv
vvv
注意: 離脱双曲線の長半径a,離心率e
+=
−=−=
⊕
⊕∞
⊕∞
⊕⊕
µ
µεµ
2
/
2
/
1
2
vre
va
p
(7)
半直弦 p,角運動量 c
( )
=
−=
⊕ pc
eap
µ
21 (8)
地球と双曲線の漸近線間の距離d : dc ∞=ν
漸近線角 ∞θ
=
−=∞
e
e1
2sin
1cos
δ
θ (9)
5)目標惑星⊗での諸量の決定
⊗⊗∞ += VvV /a より
⊗⊕⊗⊗⊗⊗∞ +
−−=−=rrrr
VVv a���
µµµ 22/ (10)
宇宙機は惑星進行方向より、太陽表側、裏側共に接近可能である。
漸近線距離をd とすると
22
/1
+=
⊗
⊗∞
µν d
e (11)
宇宙システム工学 松永
- 14 -
一方 ⊗
⊗∞+=µ
ν 2
/1
pre (12)
近点速度 p
pr
⊗⊗∞ +=
µνν
22
/ (13)
6)大気抵抗、惑星自転を無視する。
惑星表面に「軟着陸」するのに必要な速度増分:
⊗= Rrp として
⊗
⊗⊗∞⊗ +=∆
R
µνν
22
/
惑星捕獲(Planetary Capture)に必要な速度増分:
惑星回り円軌道に投入
pp rr
⊗⊗⊗∞ −+=∆
µµνν
22
/
,
=∆ ⊗∞
2v
2
/min
v
=
∞
⊗2
2
vrp
µ
例1.200 kmパーキング軌道からホーマン軌道で火星へ
6378=⊕R km,810496.1 ×=⊕r km=1AU, 523691.1=⊗r AU
2311 /skm1032715.1 ×=
�µ ,
235 /skm1098601.3 ×=⊕µ ,23/skm43058=⊗µ
km3379=⊗R
⇒ days259=T , km/s729.32=pV , km/s784.29=⊕V , km/s945.2/ =⊕∞ν
km/s395.11=pν , km/s784.7=cν , km/s612.3=∆ ⊕ν , km/s13.24=⊗V
km/s48.21=aV , km/s648.2/ =⊗∞ν , km/s70.5=∆ ⊗ν
全 km/s3.9=∆ν
例2.金星へ
AU723332.0=⊗r , km6200=⊗R ,235 /skm10257.3 ×=⊗µ
⇒ days146=T , 30.27=aV , 78.29=⊕V , 48.2/ =⊕∞ν , 28.11=pν
49.3=∆ ⊕ν ,(双曲線 10.1=e , deg38.155=∞θ , deg4.130=δ )
71.37=pV , 0.35=⊗V , 71.2/ =⊗∞ν , km/s6.10=∆ ⊗ν
5.3 フライバイ、スイングバイ(Flyby, Swingby, Gravity-assist)
惑星の運動を利用して、惑星と宇宙機 s/cの角運動量交換を重力を介して非接触で行い、s/cのエネル
ギーを増加(減少)させる。燃料を消費することなく軌道を大きく変更できるので、特に、深宇宙航行
において有用な軌道制御手法である。
s/cの運動は、惑星中心から見たとき双曲線軌道を描き、その進入速度と脱出速度の大きさは変わらな
いが方向は変更される。太陽中心で見たとき、s/cの速度が変更される。
偏向角δ は、相対接近速さ ⊗∞ /v 、最接近半径 pr 、対象天体の重力定数 ⊗µ を用いて、
⊗⊗∞+==
µ
δ2
/1
11
2sin
vrep
宇宙システム工学 松永
- 15 -
と計算できる。これから次のことが分かる。
1) ⊕∞ /v 、 pr が小さく(大きく)、 ⊕µ が大きい(小さい)と、δ が大きい(小さい)。
この方向の向きは下記で決まる。
後側フライバイ(加速スイングバイ): Vplanetに沿う向きに変化し、速度増速
前側フライバイ(減速スイングバイ): Vplanetに対する向きに変化し、速度減少
2)一般に、 pr には対象天体の大きさなどから下限があるので、 ⊕∞ /v 、 pr が与えられた場合、δ に上
限がある。そのため複数回のスイングバイを必要とする場合がある。
軌道制御手法としてのスイングバイの目的は、与えられた要求を満足する軌道に宇宙機を投入するこ
とであり、即ち、スイングバイ後の宇宙機の速度+CS /V を、与えられた要求を満足するように決定する
ことである。一方、スイングバイによる速度変化の本質は、宇宙機の対象天体に対する相対速度 ∞v の
方向変化であるので、実現できる+CS /V もその範囲に拘束される。
スイングバイ設計とは、この拘束のもとで、与えられた要求を満足するような+CS /V を見出す作業で
ある。
−∞v
+∞v
pr
δ
∞θ
∞−=− θπδπ22
planetVplanetV
planetCS VVv −= −−∞ /
planetCS VvV += +∞
+/
−∞
+∞ −= vvv∆
−CS /V −
CS /V
−CS /V
v∆
+CS /V
+∞v
−∞v
v∆
planetV−∞v
−CS /V
−CS /V
planetV
−∞v
+∞v
planetV
+CS /V
+CS /V
planetV
+∞v
+CS /V
−CS /V
v∆
フライバイ(スイングバイ)を利用した軌道計画には、米国 NASA の木星探査機ガリレオ、日本の月
軌道実験衛星ひてん、小惑星探査機はやぶさ、など数多くの事例がある。
宇宙システム工学 松永
- 16 -
6.制限3体問題
最も簡単な設定であるが未だ完全に解明されていない「解析的に解けない」重力問題
円(楕円)制限3体問題:
2体の重い物体が、両者の質量中心回りを円(楕円)運動 ← 2体問題により解ける
第3番目は非常に軽く他に影響なしと仮定する。運動は他の2体の重力場で決まる
⇒ したがって、実際には1体問題を考えていることになる。
1772 Leonard Euler :月の運動の研究に関して定義(1765 に直線平衡解の存在を証明)
Lagrange :正三角形平衡解 4L , 5L の発見
1836 Jacobi :一つの完全積分の発見
1899 Henri Poincaré :上記が唯一の運動完全定数であることを証明
この制限問題が単に解かれていないのではなく、実際に閉形式で解けないことを示した。
解は存在するが、初期条件と時間の両方に微分可能な解析関数ではない。解空間は無限に複雑。
実例 ① ② ③
1)太陽-地球-月
2)太陽-木星-小惑星(彗星)
3)地球- 月-宇宙機 実際は太陽の摂動は無視できない
4)二重連星-惑星 安定な惑星軌道の存在
6.1 運動方程式
回転系{ }e ,円運動
{ } [ ]TTnn 003 eeω ==
( )3
21
D
MMGn
+= (1)
⊳ 地球-月系
23
11 /skm398601== GMµ ,23
22 /skm4887== GMµ , 21 3045.81 MM =
km384748=D , km467401215.01 == DD , km073.38098785.02 == DD
rev/days3.27/1rad/s10661699.2 6 =×= −n
1M2M 1e
2e
1r2r
R
1D2D
D
n
{ }
=
Z
Y
XT
eR , Rer +−= 111 D , Rer += 122 D
mの運動方程式
23
2
213
1
1
2
2
d
drr
R
rrt
Iµµ
−−= (2)
ここで、 RωRR
×+=tt
EI
d
d
d
d より { }
−+
−−
=
Z
YnXnY
XnYnX
t
T
I
ɺɺ
ɺɺɺ
ɺɺɺ
2
2
2
2
2
2
d
de
R (3)
宇宙システム工学 松永
- 17 -
を用いて、運動方程式の{ }e 系成分は下記のようになる。
( ) ( )
−−=
−−=−+
+−
−−=−−
3
2
2
3
1
1
3
2
2
3
1
12
3
2
22
3
1
112
2
2
r
Z
r
ZZ
r
Y
r
YYnXnY
r
DX
r
DXXnYnX
µµ
µµ
µµ
ɺɺ
ɺɺɺ
ɺɺɺ
(4)
上式にそれぞれ Xɺ ,Yɺ, Zɺ を掛けて加えると
( )[ ]ZZYYXDXr
YYnXXnZZYYXX ɺɺɺɺɺɺɺɺɺɺɺɺɺɺ ++−−=−−++ 13
1
122 µ ( )[ ]ZZYYXDXr
ɺɺɺ +++− 23
2
2µ
時間積分して
( ) ( ) Crr
YXnZYX =−−+−++2
2
1
1222222
2
1
2
1 µµɺɺɺ :ヤコビ積分 (5)
または
UC −= 2
2
1ν (6)
2
2
1v :相対運動エネルギー
( )2
2
1
1222
2
1
rrYXnU
µµ+++= :擬似ポテンシャル (7)
遠心力ポテンシャル 重力ポテンシャル
初期状態(その時点での位置と速度)によって、Cの値が決まり、その後の運動においても一定に
なる。ある地点で相対速度ν がゼロになる境界を 0C とすると
CUC <−=0 (8)
質点の運動状態で決まるヤコビ積分値が 0C のとき、その質点は 0CC = を維持しながら運動するが、
ある時刻で質点の相対的速度がゼロになると、その後の相対位置は変わらなくなる。一般に、質点
は、ゼロ相対速度境界( oC )よりも大きいCの領域を(相対的に)動く。
6.2 平衡点(ラグランジュ点)
21
2
MM
M
+=ρ ,
21
11MM
M
+=− ρ (9)
(地球-月系: 01215.0=ρ , 98785.01 =− ρ )
無次元化: DXx /= , ( )ntt /1/= など
( )( ) ( )
( )
( )
≡∂∂
=−−
−=
≡∂∂
=−−
−=+
≡∂∂
=−+
−−+−
−=−
z
y
x
Uz
U
r
z
r
zz
Uy
U
r
y
r
yyxy
Ux
U
r
x
r
xxyx
3
2
3
1
3
2
3
1
3
2
3
1
1
12
1112
ρρ
ρρ
ρρρρ
ɺɺ
ɺɺɺ
ɺɺɺ
(10)
ここで、
( ) 222
1 zyxr ++−= ρ , ( ) 222
2 1 zyxr ++−+= ρ , ( )21
22 1
2
1
rryxU
ρρ+
−++= ,
t
xx
d
d=ɺ など
式(10)の時間微分項=0、すなわち、 0=== zyx UUU として、宇宙機に働く重力と遠心力
の釣り合う点である平衡点を求める。:
宇宙システム工学 松永
- 18 -
次の5個の平衡点(Lagrange点、libration点)が求まる。
Euler :3個の直線平衡点( 1L , 2L , 3L )
Lagrange:2個の正三角形平衡点( 4L , 5L )
1M2M1=D
D D
D D
y
x
1L2L 3L
4L
5L
地球―月系 x y z
1L 83692.0− 0 0 cislunar
2L 15568.1− 0 0 translunar 不安定
3L 00506.1 0 0 trans Earth
4L 48785.0− 2/3 0 正三角形点:安定(他の摂動を無視した時)
5L 〃 2/3− 0 例:太陽-木星系の 4L , 5L にトロヤ小惑星群
6.3 平衡点の安定性
運動方程式の線形化: xxx += 0 , yyy += 0 , zzz += 0
但し、 ( )0:平衡点 特に 00 =z このとき 0
000=== zyx UUU
)2(000
OyUxUUU xyxxxx +++=
などより
yUxUyx xyxx 002 +=− ɺɺɺ
yUxUxy yyyx 002 +=+ ɺɺɺ (11)
zRR
zUz zz
+
−−==
3
2
3
1
0
1 ρρɺɺ
x, y:面内連成振動, z:面外振動(リアプノフ安定)
ここで ( )[ ] ( )[ ]
+−+−=
+−−= −−−−yyxx
RRryyxx
RRr 002
2
3
1
3
2002
1
3
1
3
1 13
1,3
1 ρρ
( ) 22
01 oyxR +−= ρ , ( ) 2
0
2
02 1 yxR +−+= ρ
に注意して
( ) ( ) ( )
−+−+
−−−−=
5
2
2
0
3
2
5
1
2
0
3
1
0
13
13
111
R
x
RR
x
RU xx
ρρ
ρρ
宇宙システム工学 松永
- 19 -
( )
−+
−−−=
5
2
0
3
2
5
1
0
3
10
31
31
11R
y
RR
y
RU yy ρρ
( ) ( ) ( )5
2
00
5
1
00
0
1313
R
yx
R
yxU xy
ρρ
ρρ
−++
−−=
+
−−=
3
2
3
1
0
1
RRU zz
ρρ
正三角点( 4L , 5L ) 121 == RR ,2
10 −= ρx ,
2
30 =y at 4L
=−
−−+
=
−−−−
04
9
2
1
2
332
02
1
2
33
4
32
yxxy
yxyx
ρ
ρ
ɺɺɺ
ɺɺɺ
(12)
特性方程式 ( ) 014
2724 =−++ ρρλλ
( )2
12711 ρρλ
−−±−±=∴ (13)
1) 03852.0≤ρ , ρ≤96148.0 4個の固有値は純虚数 ⇒ (リアプノフ)安定
2) 96148.003852.0 << ρ 固有値の1つが正の実数 ⇒ 不安定
地-月系: 01215.0=ρ ⇒ 安定(但し、実際は、太陽摂動により不安定)
太-木系:4−10×9.5387=ρ ⇒ 安定(トロヤ惑星群)
直線平衡点( 1L , 2L , 3L )
( ) 0122 =+−− xyx σɺɺɺ
( ) 012 =−++ yxy σɺɺɺ (14)
0=+ zz σɺɺ :面外振動(安定)
但し
01
13
0
3
0
>−+
+−
−=
ρ
ρ
ρ
ρσ
xx
面内振動の特性方程式
( ) ( )( ) 01122 24 =−+−−− σσλσλ (15)
地-月系 2L 19043.3=σ , 15863.2±=λ , 186265.1 −± :不安定
1L , 3L も不安定。しかし 1L , 2L は、地-月系では、月開発(通信衛星、月面ステーション)や、地
-太系では、 1L は太陽観測(太陽風警報を行う宇宙天気予報)などにおいて大変に重要なので、制御に
より安定化する試みがされる。⇒ ハロー軌道(次節の概周期軌道)
6.4 擬周期軌道
直線平衡点回り 0>xxU , 0<yyU , 0<zzU を考える。
020=−− xUyx xx
ɺɺɺ
020=−+ yUxy yy
ɺɺɺ (16)
宇宙システム工学 松永
- 20 -
00=− zUz zz
ɺɺ
面内特性方程式
( ) 04 24 =+−−+ yyxxyyxx UUUU λλ (17)
yyxx UU −−≡ 42 1β , yyxxUU≡− 2
2β
:2
2
2
112,1 βββλ ++−±=∴ +符号は発散
xyωβββλ 112
2
2
1
2
14,3 −±=++−±= (18)
xyω :面内角振動数
面外特性方程式
02 =− zzUλ
zzzU ωλ 116,5 −±=−±=∴ , zω :面外角振動数 (19)
地球-月系, 3809.7:2 =xxUL , 1904.2−=yyU , 1904.3−=zzU
15868.22,1 ±=λ , 14,3 −±=λ ・ 86265.1 , 16,5 −±=λ ・ 78618.1
周期14.7days days3.15 (月の軌道周期 days3.27 )
面内運動方程式の状態表示
AXX =ɺ ,
=
y
x
y
x
X
ɺ
ɺ ,
−
=
020
200
1000
0100
yy
xx
U
UA (20)
iλ に対する右固有ベクトル
( )
−
−=
xxii
i
xxi
i
i
U
Uq
2
2
2
2
2
λλλ
λλ
, 左固有ベクトル ( )
( )
−
−=
iixx
i
yyixx
xxi
i
U
UU
U
p
λλλλ
λ
2
2
2
2
2
( )4321 qqqqQ = , ( )4321 ppppP =
QAAQ =
TT PAP Λ=
正規直交性: UQPT = ⇒ TPQA Λ= ∑=
i
T
iii pqλ
( ) ( ) ( )∑==∴i
T
ii
tAt XpqeXetX i 00λ
(21)
初期条件を適正に取って振動モードのみを残す。即ち ( ) ( )000 21 XPXPTT ==
( ) ( )00 yk
xxyω
=∴ ɺ , ( ) ( )00 xky xyω−=ɺ
91261.22
2
=+
=xy
xxxy Uk
ω
ω at 2L (地-月)
⇒
( ) ( ) ( )
( ) ( ) ( )
( ) ( ) ( )
+=
−=
+=
tz
tztz
tkxtyty
tk
ytxtx
z
z
z
xyxy
xyxy
ωω
ω
ωω
ωω
sin0
cos0
sin0cos0
sin0
cos0
ɺ
宇宙システム工学 松永
- 21 -
もし、 ( ) ( ) 000 == zx , ( ) ( ) zyz ω00 −=ɺ のとき
( ) ( )
( ) ( )( ) ( )
−=
=
=
tytz
tyty
tk
rtx
z
xy
xy
ωω
ω
sin0
cos0
sin0
基準リサジュー軌道
=z
xy
ω
ω有理数のとき軌道は閉じて周期的となる。⇒ ハロー軌道(halo orbit) 但し、制御が必要。
地球―月系の実利用には、月軌道の離心率 )05490.0( =e の影響を加味する。このとき、楕円制限3
体問題を取り扱うことになる。