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Risk Based MonitoringRBMオーバービュー 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 データサイエンス部会 高橋 寛明 1

Risk Based Monitoring RBM - JPMA...Risk Based Monitoring(RBM) オーバービュー 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 データサイエンス部会 高橋 寛明

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Risk Based Monitoring(RBM) オーバービュー

日本製薬工業協会

医薬品評価委員会 データサイエンス部会

高橋 寛明

1

本日の内容

RBMの動向

治験データの品質管理

リスクアセスメント

セントラルモニタリング

サイトモニタリング

モニタリングプラン

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本日の内容

RBMの動向

治験データの品質管理

リスクアセスメント

セントラルモニタリング

サイトモニタリング

モニタリングプラン

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Risk Based Monitoring(RBM)の動向

2010年10月 CTTI エキスパートMTGの開催

2011年8月 FDA、EMAが相次いでガイダンス案を公開

FDA:Guidancec for Industry Oversight of Clinical Investigations – A Risk Based Approach to Monitoring

EMA:Reflection paper on risk based quality management in clinical trials

2013年7月 厚生労働省医薬食品局審査管理課から事務連絡の発出

リスクに基づくモニタリングに関する基本的な考え方について

2013年8月 FDAがガイダンスを確定

2013年11月 EMAがリフレクションペーパーの最終版を公表

2015年6月 ICH-E6 Step2 ガイドライン

~現在 外資、国内企業を問わず、各社がRBMの実装を検討

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本日の内容

RBMの動向

治験データの品質管理

リスクアセスメント

セントラルモニタリング

サイトモニタリング

モニタリングプラン

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これまでの治験データの品質管理

発生した問題をオンサイトモニタリングで発見し、 是正措置(CA)を行い、これを繰り返す

いわゆる出口管理のアプローチ

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RBMにおける治験データの品質管理

事前にリスクを評価し、そもそも問題を発生しにくくする

発生してしまった場合は、是正措置(CA)だけではなく 予防措置(PA)を施すことで再発を防ぐ

プロセス管理のアプローチ

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エラーや不備を全く含まない完璧なものではなく、 たとえ意思決定の後にエラーや不備が発見されたとしても、 既に行われた意思決定を変更する必要がないデータ

じゃあエラーはどの程度まで許容されるの?

一概には決められない!

エラー率 0.1%でもそのエラーが結論に影響を及ぼすもの であれば許されない!

結論に影響しない軽微なもの であれば、ある程度のエラーも 許されるかもしれない

どの程度のエラー率まで許容できるかは、リスクアセスメントの段階で考慮すべき

質の高いデータとは?

>> 重篤な有害事象 主要評価項目

既往歴 前治療薬

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なぜ確認しなくてもよいデータがあるのか?

欧米や日本の規制当局が 「全部のデータを確認しなくてもいい」 と言っているのではない

RBMが目指すところは、プロセスによる質の作り込みであり、究極的には質を担保できるプロセスが機能していれば CRFのエラーが許容レベル以下で収まる状態が継続している

「たとえ誤りがあっても結論に影響しない」 と言えるからです。

9 SDVをしなくてもCRFが一定の品質を保持している

本日の内容

RBMの動向

治験データの品質管理

リスクアセスメント

セントラルモニタリング

サイトモニタリング

モニタリングプラン

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リスクアセスメント

リスクアセスメントとは?

品質リスクマネジメントに関するガイドライン(ICH-Q9)では 『リスクを特定・分析・評価するプロセス』全体を指す言葉

いつ、誰がやる?

・リスクマネジメントプロセスの開始時に実施されるもの

⇒治験開始の初期(準備)段階に実施

・治験に携わる様々なメンバーがかかわる

⇒モニタリング担当者、ライティング担当者、DM担当者、 薬事担当者、統計担当者など

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ステップ1 リスクの特定

リスクを発見し、それを認識して、記述する

『何がうまくいかないかもしれないのか?』の 答えとして浮かんできたものをすべて書き出す

その答えを影響範囲によって分類する

(プログラムレベル) その治験薬のすべての臨床試験にかかわるもの

(治験実施計画書レベル) その臨床試験全体にかかわるもの

(施設レベル) 特定の実施施設のみにかかわるもの

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ステップ2 リスクの分析

リスクの特性を理解し、定性的又は定量的に レベルを決定する

特定したリスクに対して 『うまくいかない可能性はどれくらいか?』 ⇒発生頻度 『うまくいかなかった場合、どんな結果(重大性)となるのか?』 ⇒重要度 を考え、そこにリスクの見つけにくさ(検出困難度)も加えて、それぞれのリスクの高さを定性的又は定量的に決定する

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ステップ3 リスクの評価

特定、分析されたリスクを 所定のリスク基準に従って比較する

リスクの重大性を評価するための目安(リスク基準)と 分析したリスクを比較して、そのリスクは許容できるものかを決定する ⇒リスクの分析と評価を一緒に行うことが一般的

許容できないリスクについては、回避するための措置や 回避できない場合のリスク軽減策をデータを生み出す プロセスに反映させる

治験においては治験実施計画書、モニタリングプラン、 解析計画書などの様々な計画書や手順書に加え、 症例報告書のデザインも対象になる

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リスクのまとめ方の一例

分類 特定されたリスク 評価 アクション先

安全性 ヒトに初めて投与する薬剤 高 治験実施計画書

開発相 第3相試験である 低 モニタリングプラン

対象集団 重篤度の高い被験者を対象としている 高 モニタリングプラン

評価 CTの撮影条件が規定されている 中 治験実施計画書 測定手順書

IT 患者日誌を使用する 中 トレーニング計画書

EDC クエリ回答までの時間が長い 中 モニタリングプラン

施設 中止症例が特定の施設に集中する 中 モニタリングプラン

施設 常駐のCRCがいない 中 モニタリングプラン

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リスクの見直し

治験開始前(準備段階)に実施すればリスクアセスメントが終わるということではない

治験開始前に十分な検討をして、リスクアセスメントを実施 しても、事前に特定できなかったリスクあるいは想定以上の頻度やインパクトのあるリスクが検出されることがある

その際は何度でもリスクを再評価し、 予防措置を講じてリスクマネジメントの PDCAサイクルを回していく 必要がある

Plan

Do

Check

Action

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本日の内容

RBMの動向

治験データの品質管理

リスクアセスメント

セントラルモニタリング

サイトモニタリング

モニタリングプラン

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モニタリング手法

サイトモニタリングは,スポンサーや その代理の担当者が、実地又は遠隔で 各実施施設毎に個別症例やプロセスに 焦点を当てた評価 セントラル(中央)モニタリングは, 実施施設以外の場所で、スポンサーや その代理の担当者(データマネジメント, 統計家,臨床モニターなど)によって 行われる参加施設間の比較などを 用いた評価

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セントラルモニタリング

施設/試験横断的なレビュー

症例報告書で報告された臨床試験データ、EDC監査証跡、その他利用可能なあらゆる情報を用いて、治験参加国間や施設間の比較を行うことにより、様々なリスクを定期的に 評価して、リスクマネジメント/コントロールする

治験では様々なリスクが考えられるが、RBMでは、被験者の安全性確保、臨床試験の信頼性、GCPや治験実施計画書の遵守の観点から、特定されるリスクにフォーカスする

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セントラルモニタリング

【効果的かつ効率的に実施するための考慮事項】

早い段階でリスクを把握することが不可欠

・特定されたリスクとその重みに応じて、リスク評価指標と 閾値を設定

・評価するリスクは施設外でアクセス可能なデータや情報で 検出可能なものが対象

リスク評価指標及び閾値の設定、検出可能性の評価に 基づき、セントラルモニタリングで使用するレポートを 作成する

リスクマネジメント/コントロールを実施するのに 適切な実施時期を考慮し、セントラルモニタリングの 実施時期を決定する

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リスク評価指標と閾値(事例)

有害事象の過剰な報告や報告漏れは、被験者の安全性確保や安全性評価に影響を及ぼす可能性がある。このリスクを 管理するために、有害事象の発現件数をリスク評価指標とし、以下のような閾値とアクションプランを設定する。

発現件数が 平均の±30%未満

対応不要

平均の±30%以上50%以下 対応不要 (場合により原因の特定) 医療機関の訪問

平均の±50%超過 原因の特定 医療機関の訪問

他には・・・

・中止症例の割合と中止理由

・クエリ対応に要した日数 など 21

本日の内容

RBMの動向

治験データの品質管理

リスクアセスメント

セントラルモニタリング

サイトモニタリング

モニタリングプラン

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サイトモニタリング

個々の施設に対するレビュー

治験スタッフ間のコミュニケーションや施設における プロセス、手順、記録の確認がモニタリング活動に含まれる

データの正確性確認の ためのSDVだけが CRAの役割ではない!

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サイトモニタリング

個々の施設レベルでモニタリングするよりも、施設横断的に確認するほうがリスク発生を察知しやすい場合には、 セントラルモニタリングに移行するべき

オンサイトでなくても確認できる内容、例えばEDCの入力 内容の確認や治験スタッフの変更有無の確認などは、 電話/メールなどによるオフサイトモニタリングで 実施するべき

RBMは、単に施設訪問を減らすことを意味していない

RBMを導入した場合、オンサイトモニタリングでの活動は、 現在実施しているものよりも、さらに重要性を増す!!

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サイトモニタリング

オンサイトモニタリングは、治験の準備・開始段階で 重点的に行われるべき

特に施設調査や選定、立ち上げの段階で、依頼者と施設 スタッフは十分にコミュニケーションを取り、治験実施計画書レベルのリスク及び施設におけるリスクの特定とそのリスクに対する軽減/防止策を作り、治験開始に備える

スタートアップミーティングでは、その施設における準備が 整っているか確認することが一番の目的である。治験実施計画書の理解度やその施設におけるプロセスが周知されているかを確認

治験開始直後、なるべく早い段階でオンサイトモニタリングを実施し、施設レベル及び試験レベルで予測したリスク及び それに対するアクションがうまく機能しているかを確認

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サイトモニタリング

例えば・・・

有害事象発生率で他施設と違う傾向を示した!!

原因は???

AEの定義に誤解がないか?

報告手順に間違いがないか?

適切な被験者が登録されているのか? etc

⇒根本原因によって、取るべきアクションが変わってくる

サイトモニタリングでは、施設で実施されたCAPAが適切だったかを評価し、適切でなかった場合は現行プロセスや考え方を 軌道修正する必要がある

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本日の内容

RBMの動向

治験データの品質管理

リスクアセスメント

セントラルモニタリング

サイトモニタリング

モニタリングプラン

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モニタリングプラン

各試験毎にモニタリングの方法、責任、試験特有の要件を 記載したモニタリングプランを試験開始前までに作成

・どういう時にどのタイプのモニタリングを実施するか?

・頻度、タイミング、程度はどうするか?

モニタリングに関わるスタディチーム全員で内容を検討し作成

リスクアセスメントで特定されたクリティカルなデータやプロセスに対するリスクを予防・軽減することに焦点を当てるべき 28

モニタリングプランに含める事項

FDAガイダンスでは、以下の項目がモニタリングプランに 含める内容として記載されている。 【モニタリング方法の記述】 ・モニタリングの方法(セントラル、オンサイト/オフサイト)と その用い方 ・計画されたモニタリングのタイミング、頻度、程度を 決定する基準

インディケーターの一例

・被験者組み入れのスピード ・有害事象の発現件数 ・治験実施計画書逸脱の件数 ・EDCへのデータ入力日数 ・クエリの発行数 ・クエリへの対応日数 など

FDA Guidance for Industry Oversight of Clinical Investigations – A Risk-Based Approach to Monitoring

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モニタリングプランに含める事項

【モニタリング結果の情報伝達】

・モニタリング活動の報告や他の文書の様式、内容、 タイミング、保管の用件

・適切な情報伝達のためのプロセス

‐通常のモニタリング結果の上位責任者や他の関係者 (CRO、DMなど)への情報伝達

‐重要なモニタリング上の問題の適切な担当者への迅速な報告

‐DM担当者や他の関係者からモニターへの情報伝達

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モニタリングプランに含める事項

【不遵守の管理】 ・モニタリングで見つかった未解決又は重大な問題に 対処するためのプロセス ・以下のことを確認するプロセス ‐重大な逸脱が発見された場合に、根本原因分析が 行われたこと ‐モニタリングによって発見された問題に対処するために、 適切な是正・予防措置が講じられたこと

【質の高いモニタリングの確保】

・モニタリング担当者に必要かつ具体的なトレーニングの記述

・担当者がモニタリングプラン、規制、手順などに従って モニタリングを行っていることを確認するために計画された監査

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モニタリングプランに含める事項

【モニタリングプランの改訂】 以下のようなことが起こった場合には、改訂につながることが あるため、タイムリーに改訂できるプロセスを確立しておく 必要がある。 ‐治験実施計画書の改訂 ‐重要な治験実施計画書逸脱の定義の変更 ‐試験の信頼性に関わる新たなリスクの発覚

モニタリング計画は・・・ 一度作成したら変更しない文書ではなく、 治験を実施しながら必要に応じて改訂される ものです!!

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リスクに基づいた SDV

RBMにおいて治験中は常にPDCAサイクルが回っている!

その時点のリスクに応じてモニタリングプランで規定された 頻度に変更する。最初に設定した割合を最後まで変更しない というものではない。

【Plan】 ハイリスクなデータ項目

なので100%SDV対象とした

【Do】 試験が開始され 100%SDVを実施

【Check】 SDVの結果からエラーが 発生しないことを確認

【Action】 SDVの割合を 20%に変更する

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おわりに・・・

リスク アセスメント モニタリング

プラン

セントラル モニタリング

計画に従って モニタリングする

リスクに基づいて 何をするか計画する

トレーニング

治験 実施計画書

CRFデザイン

サイト モニタリング ・オンサイト ・オフサイト

34 リスクの再評価