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1 SLE治療中にITP様の 血小板減少を来した1兵庫医科大学血液内科 〇澤田暁宏、日笠聡、徳川多津子、 小川啓恭 SLEではしばしば血小板減少症を合併する。 原因の多くは免疫性であると思われるが、 SLEに対する免疫抑制療法中に血小板減少が 発症してくる場合も多い。こうした場合は、 時にその鑑別診断が困難な場合もある。今 回我々は、SLE治療中にITP様の血小板減少 を来した1例を経験したので報告する。 【緒言】

SLE治療中にITP様の 血小板減少を来した1例 SLE治療中にITP様の 血小板減少を来した1例 兵庫医科大学血液内科 〇澤田暁宏、日笠聡、徳川多津子、

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SLE治療中にITP様の血小板減少を来した1例

兵庫医科大学血液内科

〇澤田暁宏、日笠聡、徳川多津子、小川啓恭

SLEではしばしば血小板減少症を合併する。原因の多くは免疫性であると思われるが、SLEに対する免疫抑制療法中に血小板減少が発症してくる場合も多い。こうした場合は、時にその鑑別診断が困難な場合もある。今回我々は、SLE治療中にITP様の血小板減少を来した1例を経験したので報告する。

【緒言】

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【現病歴】20歳時に皮疹が出現、皮膚科で精査しSLEに伴う

皮疹と診断。プレドニゾロン(PSL)投与を行い皮疹は改善、以後PSLの維持投与を皮膚科外来で継続、この1年ぐらいは週4日5mg、週3日10mgのPSL

を投与されていた。2014年3月の検査で24.7万/μlであった血小板数が、同年8月22日の皮膚科外来受診時に3.3万/μlと著明に低下。身体症状は全く認めず、二次性ITPによる血小板減少を疑われ、同日よりPSLを20mgに増量された上で8月26日に当科紹介受診となった。

【症例】38歳の女性

【身体所見】

身長 150.0cm、体重 50.1kg

体温 36.8℃、血圧 134/73mmHg、脈拍 90/分整意識清明胸部聴診異常なし腹部所見異常なし右手背、右下腿前に軽度の紫斑前胸部皮膚に点状出血浮腫なし

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【血液所見】

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8000

2014/3/3 2014/8/22 2014/8/26

WBC

Hb

PLT

2014/3/3

WBC 6250 /μlRBC 443 ×104/μl

Hb 13.1 g/dl

Ht 37.9 %PLT 24.7 ×104/μl

2014/8/22

WBC 4940 /μlRBC 293 ×104/μl

Hb 9.4 g/dl

Ht 27.0 %PLT 3.3 ×104/μl

2014/8/26

WBC 7510 /μlRBC 276 ×104/μl

Hb 8.5 g/dl

Ht 25.3 %

PLT 1.6 ×104/μl

/μl g/dl×104/μl

【血液所見】

2014/3/3

T-bil 0.4 mg/dl

AST 18 U/l

ALT 14 U/l

LDH 154 U/l

BUN 16 mg/dl

UA 4.5 mg/dl

CRE 0.44 mg/dl

eGFR 124ml/min/1.73m2

Na 142 mmol/l

K 4.2 mmol/l

Cl 108 mmol/l

CRP 0.0 mg/dl

2014/8/22

T-bil 0.8 mg/dl

AST 20 U/l

ALT 17 U/l

LDH 278 U/l

BUN 16 mg/dl

UA 5.3 mg/dl

CRE 0.65 mg/dl

eGFR 80ml/min/1.73m2

Na 144 mmol/l

K 3.4 mmol/l

Cl 111 mmol/l

CRP 0.0 mg/dl

2014/8/26

T-bil 1.5 mg/dl

AST 24 U/l

ALT 20 U/l

LDH 530 U/l

BUN 20 mg/dl

UA 4.1 mg/dl

CRE 0.59 mg/dl

eGFR 89 ml/min/1.73m2

Na 143 mmol/l

K 3.6 mmol/l

Cl 108 mmol/l

CRP 0.0 mg/dl

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【 Problem List 】

#1:血小板減少

#2:溶血性貧血

【診断】

ITP+AIHAでEvans症候群?

入院で経過観察網赤血球、クームス試験、検尿を追加検査

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【検査所見】

網赤血球 6.2%

クームス試験 直接、間接ともに陰性検尿 尿潜血2+、尿蛋白2+

検査室より破砕赤血球1%ですとの連絡

【診断】

ITP+AIHAでEvans症候群?

後天性TTP?血漿交換?

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T-bil

LDH

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12

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20

30

PLT

Hb

PSL20mg/day PSL30mg/day

【経過】ADAMTS13測定 活性:2.2%

インヒビター:1.2BU/ml

×104/μl g/dl

mg/dl U/L

TPO 4.12Fmol/ml

01020304050607080

2014/8

/28

2014/8

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2014/9

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2014/9

/3

2014/9

/6

2014/9

/16

2014/9

/29

2014/1

0/9

2014/1

0/2

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1/4

2014/1

1/1

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2014/1

2/3

2014/1

2/1

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2014/1

2/2

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2015/1

/7

2014/1

/26

2015/2

/24

ADAMTS13活性

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200

300

400

500

0

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20

30

40

PLT

LDH

【経過】

PSL30mg/day 25 PSL20mg/day

CsA100mg/dayCsA120

mg/day

×104/μl U/L

%

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Secondaly ITPの25%がSLE、10%がEvan’s症候群

SLEの血小板減少合併頻度

7~30%

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SLEでの血小板減少のメカニズム

(1)Antiplatelet glycoprotein antibodies as found in ITP

(2)Immune complexes of diverse composition

(3)Antiphospholipid antibody(APLA)

(4)Vasculitis

(5)Thrombotic microangiopathy

(6)Hemophagocytosis

(7)Autoantibodies to the c-Mpl receptor and Megakaryocyte

(8)Bone marrow stromal alterations not characteristic of ITP

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SLEではTPO濃度が高値抗TPO抗体が23%に検出

20.8%

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【まとめ】

今回、ITP(Evans症候群)様の臨床症状で発症した後天性TTP症例を経験した。

SLEに合併する血小板減少症の原因は多様で、免疫抑制療法を行っている状態でも発症し、典型的な症状、所見を呈さない事がある。特にTTPは重篤な経過をたどる事もある為

に、典型的な症状、所見を認めなくとも常に鑑別診断の一つとして念頭に置き、適切な治療介入が必要であると再認識させられた。