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【4】数字を読んでみよう
(
1) 辞典を使いながら数字のくずしをおぼえよう
古文書には、たくさんの数字がでてきます。例えば、「何月何日」「何歳」「何番」「何両」
等々…。それらの数字が読めることによって、古文書の内容を理解しやすくなります。
では、さっそく始めましょう。
①いろいろな漢数字
漢数字の中には、私達が知っている基本的なものから、今はほとんど使われていない漢
字までいろいろなものがあります。ここでは、それらについて確認しておきましょう。
1 →
一
壱
壹
2 →
二
弐
貳
3 →
三
参
4 →
四
肆
5 →
五
伍
6 →
六
7 →
七
8 →
八
9 →
九
10 →
十
拾
20 →
二十
廿
江戸時代に使用された漢数字の代表的なものを上にあげてみました。
すべて見たことがありますか?
例えば、1と2と3のところに書かれている「壱」や「弐」などの漢字は、日頃あまり使用
することはありませんね。また、十を「拾」と書くことも、初めて知ったという人もいるか
もしれません。じつは、江戸時代にはこのような漢字の方が、むしろ一般的に使われてい
ました。そのため古文書にも、これらの漢字はよくでてきます。
このように、江戸時代には私達が知らない漢字も使用されていたことを知っておいてく
ださい。
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☆漢数字の組み合わせ☆
漢数字には、複数の組み合わせがあります。ここでは、そういった漢数字について紹介
しておきましょう。たとえば、「11」。普通に書くと「十一」となりますね。でも、江戸時
代には、「十一」「拾一」「拾壱」というパターンがありました。同じく、「21」も、「二十一」
だけでなく、「弐拾一」「弐拾壱」「廿一」「廿壱」なども使用されていました。少し難しい
かもしれませんが、少しずつおぼえていくようにしましょう。
ちなみに、古文書の中で、「二二日」と書いてある場合、現在の感覚で読むと、22日の
ことになりますが、江戸時代では、「四日」という意味になります。同じように、「三七
日」は、21日間または21日目を意味します。
②漢数字のくずし字を辞書で確認してみよう!
いろいろいな漢数字があるということをおぼえた上で、次に実際に漢数字がどのような
くずしになっているのかを、自分で確認をしてみましょう。
(2)
基本となる数字のくずしをおぼえよう
基本となる数字のくずし字について、おぼえていくことにしましょう。
次にあげた①~⑪の漢字を、一つ一つ辞書で調べて確認してください。そして、それぞ
れの漢字のくずし字を真似て、実際に自分で書いてみましょう。
①「一」「壱」「壹」
②「二」「弐」「貳」
③「三」「参」
④「四」「肆」
⑤「五」「伍」
⑥「六」
⑦「七」
⑧「八」
⑨「九」
⑩「十」「拾」
⑪廿
うまく書けましたか?
古文書を読むためには、くずし字のパターンをおぼえなければなりません。その方法の
一つとして、自分でくずし字を書いてみることがあります。くずし字を書くことによって、
その漢字のくずし字の特徴をとらえることができるからです。
書いてみて、特徴をとらえることができたでしょうか?
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「うーん、まだ難しいな…」と思った方もいるかもしれません。
でも、大丈夫です。
古文書解読は、「毎日続ける」ことで、確実に能力がアップします。
(3)
数字を読んでみよう!
「年号月日」
年号が入った日付の読み方を学習します。
「年号」というのは、何のことでしょうか。まずは、辞書317頁を開いてください。
これは、江戸時代(前後の時期も含む)の年代表です。表の上部分に、「干支」「年号」
「西暦」という項目があります。「干支」については、次項で勉強します。「年号」というのは、
「寛永」「天保」などのある期間の年数の上につける名称のことです。日本では、「大化」と
号したのが最初です。ちなみに今の年号は何でしょう?そう、「平成」ですね。
年代表をもう一度見てください。江戸時代にはいくつの年号があったのでしょうか。ど
のような年号があったのでしょうか。確認してみてください。
では、さっそく次のページの①~③の年号のついた日付を読む練習をしてみましょう。
まず、漢字を読みやすくするために、一文字ずつ線で区切ってみましょう。そして、「年」
「月」「日」のくずし字のパターンを辞書で確認しながら、テキストに目を向けてみましょう。
「年」「月」「日」は読めましたか?
線で区切った漢字を眺めながら、読める漢字を探して
みましょう。
次に、年号を読むヒントをお伝えしましょう。①の2文字目の部首は「にんべん」、①の
1文字目と②の2文字目は同じ漢字です。そして、③の1文字目の部首は「まだれ」です。
さあ、思い当たる漢字を辞書で調べてみましょう。でも、「何の漢字かさっぱりわからな
い」という場合もありますよね。それを助けてくれるのが先ほどご紹介した年代表です。
☆年代表の使い方☆
例えば、この年号。一番上の文字は、なんとなく「天」という文字だということがわか
りますが…2文字目が難しい。このような時、役立つのが年代表なのです。年代表で
「天」が頭につく年号を確認してみると、「天正」「天和」「天明」「天保」があります。そう
です。これで、2文字目の漢字の候補が、4つにしぼることができました。さて、この4つ
の漢字を調べてみましょう。答えは…「天明」ですね。年代表はこのような使い方もでき
るので、ぜひ活用してください。
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①
②
③
答え①享保三年七月十一日
②貞享二年六月十一日
③慶安元年二月廿四日
(4)
数字を読んでみよう!
「暦・干支・閏月」
「干支」と「閏」について勉強しましょう。
「干支(えと)」とは、十干と十二支を組み合わせたものです。「十干」は、甲・乙・丙・丁・
戊・己・庚・辛・壬・癸の総称です。十二支と組み合わせて、年や日を表示する際に用いら
れるものです。少し難しいですね。
☆十二支☆
「十二支」とはなんのことだと思いますか?
十二支とは、子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつ
じ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)の総称です。
毎年、年賀状に書きますよね!
ちなみに今年は何年(なにどし)でしたか?
みなさんは何年生まれでしょうか?
さて、これから少し面倒かもしれませんが、この十二支にあがっている漢字をすべて、辞
書で調べて、くずしのパターンを確認してみてください。
確認が終わったら、さっそく解読に挑戦!
次の①~④の年月日には、十二支が含まれています。では、読んでみましょう。
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①
②
③
④
答え
①明治三年午六月
②慶應四辰年
③文久元酉年十一月
④天保十四年卯
九月廿五日
☆江戸時代の暦☆
江戸時代の暦は現在とは異なり、「太陰太陽暦」という暦が用いられていました。太陰太
陽暦では、月の満ち欠けに合わせて月を決定し、閏月で太陽の動きとのずれを調整する
方法が採られていました。
太陰太陽暦のしくみは以下の様なものでした。
①新月の日を一日とする。
②月の満ち欠けの周期(二九・五日)に合わせて二九日(小の月)と三〇日(大の月)を組
み合わせて一年とする。したがって、一年はだいたい三五四~三五五日になる。
③一年が三五四日~三五五日になると、実際の太陽の見かけの一年と次第にずれが生
じてくる。
④「閏月」を設けて、そのずれを解消する。
「閏月」は十九年に七回の割合で設けられました。したがって、江戸時代を通して、およそ
九十七回の閏月がありました。一年が十三ヶ月もある年があるなんて、今では想像もつ
かないことですね。
☆干支
―
十干と十二支のくみあわせ
―
☆
「干支」とは、十干と十二支の組み合わせでできています。したがって、干支をおぼえるに
は、十干と十二支のくみあわせを理解する必要があります。
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五行 十干 読み方
木の兄(え)… 甲 きのえ
弟(と)… 乙 きのと
火の兄(え)… 丙 ひのえ
弟(と)… 丁 ひのと
土の兄(え)… 戊 つちのえ
弟(と)… 己 つちのと
金の兄(え)… 庚 かのえ
弟(と)… 辛 かのと
水の兄(え)… 壬 みずのえ
弟(と)… 癸 みずのと
十干は、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十種類。
十二支は、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の十二種類。
干支は、毎年につき一つの組み合わせになります。甲と子を組み合わせた、「甲子」をス
タートとすると、まずは、十年目の「癸酉」で、十干が一巡することになります。そうする
と、次の年はというと、十干が二巡目の先頭「甲」で、十二支は十一番目の「戌」との組み
合わせである「甲戌」になるわけです。こうして、10と12の組み合わせで少しずつずれて
いくことになるので、全部で何通りになるのかと言うと、10と12の最小公倍数の60。6
0通りの干支ができるわけです。そして、61年目には、再び「甲子」が来るのです。
ところで、みなさんは、「還暦」という言葉をご存じでしょうか?赤いちゃんちゃんこを着
てお祝いをしますね。還暦とは、干支が一巡して、ふたたび起算となった年に戻ることを
指します。ですので、還暦のお祝いは、通常満60才を記念しておこなわれるのです。
では、この60通りについて、次のページの表を見てみましょう。
60で一巡することがわかりますね。
それでは、次に、十干の読み方について学習しましょう。十干は、陰陽説に基づく五行の
木火土金水のそれぞれの兄弟(えと)にあてはめて読みます。それぞれの読み方について、
左の表で確認してください。例えば、「甲子」は「きのえね」と、読みます。
さて、辞書317頁の年代表を見てみましょう。年号の左横に干支が載っていますね。年
代表は干支を確認する際にも活用できます。
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では、ここで干支が書かれている古文書の解読に挑戦してみましょう!
→
宝暦十一辛
巳
十一月朔日
←
「宝」は、旧字の「寶」のくずし字です。
←
「朔日」は、「さくじつ」と読みます。毎月1日のことを言います。
1 甲子 11 甲戌 21 甲申 31 甲午 41 甲辰 51 甲寅
2 乙丑 12 乙亥 22 乙酉 32 乙未 42 乙巳 52 乙卯
3 丙寅 13 丙子 23 丙戌 33 丙申 43 丙午 53 丙辰
4 丁卯 14 丁丑 24 丁亥 34 丁酉 44 丁未 54 丁巳
5 戊辰 15 戊寅 25 戊子 35 戊戌 45 戊申 55 戊午
6 己巳 16 己卯 26 己丑 36 己亥 46 己酉 56 己未
7 庚午 17 庚辰 27 庚寅 37 庚子 47 庚戌 57 庚申
8 辛未 18 辛巳 28 辛卯 38 辛丑 48 辛亥 58 辛酉
9 壬申 19 壬午 29 壬辰 39 壬寅 49 壬子 59 壬戌
10 癸酉 20 癸未 30 癸巳 40 癸卯 50 癸丑 60 癸亥
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(5)
数字を読んでみよう!
「金・銀・銭」
江戸時代には、金貨・銀貨・銭貨、合計3つの貨幣がありました。
一般的には、江戸を中心とした東日本では金貨、上方を中心とした西日本では、銀貨
を標準通貨とし、小規模な取引には銭が使用されていました。金貨は四進法、銀貨は重
さで価値を決める秤量貨幣で、匁・分・厘の十進法が用いられていました。
左にあげた表は、金銀銭の公定比価です。金・銀・銭、それぞれの比価をおぼえることは、
少し難しいかもしれません
金には「両・分(歩)・朱」、銀には「匁・分・厘」、銭には「文」という単位があることをおぼ
えてください。
それぞれの単位にあたる漢字を辞書で調べて確認しましょう。
では、さっそく古文書の解読に挑戦です!
①
②
③
答え
①
金弐百四拾両②
六匁
③
三匁五分
金貨 銀貨
1両小判 = 一分金4枚 丁銀・豆板銀60匁 = 一分銀4枚
= 二分金2枚 (約225g)= 五匁銀12枚
= 二朱金8枚 = 二朱銀8枚
= 一朱金16枚 = 一朱銀16枚
銭
銭緡ぜ に さ し
(九六銭)= 100文
※銭は96枚で100文とする慣習がありました。
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(6)
数字を読んでみよう!
「土地の面積」
次に、土地の面積をあらわす単位について学習します。
左にあげた図は、土地の面積をあらわす単位について記したものです。
「町」「反(段)」「畝」「歩」という単位があります。
これらの漢字のくずしについて、それぞれ辞書を使って確認してください。とくに、「畝
(せ)」は日頃あまり使用しない漢字ですので、読み方も含めておぼえるようにしてくださ
い。 試
しに、次のくずし字を読んでみましょう!
答えは、「三反九畝廿八歩」です。
読み間違えてしまったという方は、まずはいつものように、文字を一文字ずつ線で区切っ
てください。そして、間違えた漢字について辞書で確認してください。
1町=10 反(段)=3000 坪(=約 10000 ㎡=約1ha)
1 反=10 畝=300 坪(=約 1000 ㎡=約 10a)
1 畝=30 歩=30 坪(=約 100 ㎡=約 1a)
1 歩=1坪(=約 3.3 ㎡)
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