27
© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 1 IIJmio meeting 17 「MVNOの制度について」 2017/10/7 株式会社インターネットイニシアティブ 佐々木 太志

IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 1

IIJmio meeting 17

「MVNOの制度について」

2017/10/7

株式会社インターネットイニシアティブ

佐々木 太志

Page 2: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 2

制度=「電気通信事業法」と関連法規等(ここでは)

• 電気通信事業法は、日本で電気通信事業を行う事業者の全てを規定している法律であり、いわば通信業界の「基本法」。

• MVNOについても、電気通信事業法と、関連する政令・省令・ガイドライン等によって定義されている。

• 用語– 法律

• 国会(衆議院・参議院)の多数決によって制定される決まり

– 政令• 「電気通信事業法施行令」が代表的なもので、政府が閣議で制定する、総務省だけの事情

で決められないような決まり

– 省令• 「電気通信事業法施行規則」「電気通信事業報告規則」「電気通信事業番号規則」が代表

的なもので、電気通信事業の主管大臣である総務大臣が制定される決まり

– ガイドライン• 政府の公式文書ではあるものの、特に決まりとしての効力がないただの文書。指針。ただ

この中に、「このガイドラインに違反した場合は電気通信事業法29条による改善命令の対象になる」などと書いてある場合は、結果的に法律に準じるものとなる

Page 3: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 3

制度の決まり方

• 法律(電気通信事業法)– 日本における法律の多くは内閣が提出する

• 事実上、各省庁による起案

– 省庁は、法案を作る前に、有識者会議の諮問を受けることが通例• 電気通信事業法の場合は、情報通信審議会や情報通信行政・郵政行政審議会という会議の

諮問を受けて総務省により法案化される

– 審議会での議論の中や、審議会における諮問の前には、国民や利害関係者の意見を聞くためのヒアリングやパブリックコメントが行われる

• 政令– 国会ではなく閣議で決められることを除けば基本的に法律に準じる

• 省令・ガイドライン– 制定が各省庁(電気通信事業の場合は総務省)のみで行える

– ただ、「お手盛り」と言われないよう審議会の諮問や研究会等(代表的なものとして「ICTサービス安心・安全研究会」「電気通信市場検証会議」)の有識者会議の報告書等を元に制定される

– ヒアリングやパブリックコメントも行われる場合が多い

Page 4: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc.

電気通信事業法とMVNO

Page 5: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 5

MVNOの法律的な定義(その1)

• 電気通信事業報告規則(総務省令)の中に、定義が存在する

– 第一条十七 仮想移動電気通信サービス移動端末設備(携帯電話、PHS端末又は(中略))を用いて利用される電気通信役務であつて、一端が無線により構成される端末系伝送路設備に移動端末設備を接続する利用者に対し、当該電気通信役務に係る基地局を設置せずに提供されるもの(当該電気通信役務に係る利用者料金の設定権を有する者が提供するものに限る。)をいう。

• つまり、MVNOの定義とは

1. 携帯電話・PHSのサービスを

2. 基地局を設置せず

3. 料金を設定できる者が提供すること

Page 6: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 6

MVNOの法律的な定義(その2)

• 電気通信事業法施行規則の中にも、MVNOの定義が存在する

– 別表 備考三 仮想移動電気通信サービス 移動端末設備(無線インターネット利用者設備に限る。)を用いて利用される電気通信役務であつて、無線端末系伝送路設備に当該移動端末設備を接続する利用者に対し、当該電気通信役務に係る基地局を設置せずに提供されるもの(当該電気通信役務に係る利用者料金の設定権を有する者が提供するものに限る。)• 「無線インターネット利用者設備」の定義は同じ省令のすぐ上にある

「携帯電話端末・PHS端末サービスの提供に用いられる無線端末系伝送路設備(中略)の一端に接続される利用者の電気通信設備」

• 要は、携帯電話端末・PHS端末のこと

• つまり、MVNOの定義とは前項の定義と同じ

– ただ、「無線インターネット利用者設備に限る」とあるのは、データ通信を提供しないMVNOが定義から外れるような印象を与えるので、法律用の日本語としてはできが悪い…(!?)

Page 7: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 7

もしMVNO事業を始めたくなった場合はどうすれば?

• MVNOになるために最低限必要な情報は、総務省のガイドラインに記載されている

– 「MVNOに係る電気通信事業法及ひ電波法の 適用関係に関するガイドライン」(通称、「MVNO事業化ガイドライン」)

• このガイドラインにおけるMVNOの定義は、省令の定義と異なる

– 「MVNOとは、1 MNOの提供する移動通信サービスを利用して、又はMNOと接続して、移動通信サービスを提供する電気通信事業者であって、2 当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設しておらず、かつ、運用をしていない者と定義する」

– ポイント• 省令では、基地局を持っていないものがどうやって携帯電話・PHSサービスを提供

するか書いていなかったが、本ガイドラインでは「MNOのサービスを利用」「MNOと接続」という2つの選択肢があることが示されている

• 料金設定権に関する定義がない

Page 8: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc.

「MNOのサービスを利用」する場合=卸電気通信役務

Page 9: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 9

「MNOのサービスを利用」する場合(卸電気通信役務)

総務省「 MVNOに係る電気通信事業法及ひ電波法の 適用関係に関するガイドライン」より引用

Page 10: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 10

「MNOのサービスを利用」する場合(卸電気通信役務)

MNOが「MNOのサービス」をMVNOに提供する

MVNOはそのサービスに付加価値を付けて利用者に提供する

MVNOとしての付加価値を提供するためのサーバ

総務省「 MVNOに係る電気通信事業法及ひ電波法の 適用関係に関するガイドライン」より引用

Page 11: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 11

MVNOに提供される「MNOのサービス」

• 各MNOは、一般の利用者に提供するサービスの他に、MVNOに提供する卸売り専用のサービスを用意している

– 「MVNO事業化ガイドライン」でも、各MNOがMVNO向け専用のサービスを作って情報開示することが望ましいとされている

– 卸標準プラン

• MNO各社の卸標準プラン

– NTTドコモ• https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/disclosure/mvno/business/gaiyou.pdf

– KDDI• http://media3.kddi.com/extlib/files/corporate/kddi/kokai/mvno/pdf/lte_plan.pdf

– ソフトバンク• https://cdn.softbank.jp/corp/set/data/group/sbm/public/mvno/pdf/mvno.pdf

– 「(各社名)卸標準プラン」でググればOK

Page 12: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 12

ドコモの卸標準プラン

• ドコモの卸標準プランのP.19より

Page 13: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 13

ドコモの卸標準プランの見方

• ドコモの卸標準プランのP.19より

第2種卸Xiは、ドコモ網でLTEを提供している多くのMVNOが利用しているプラン

データ通信専用SIM、1枚あたりのドコモへの毎月の支払額

ドコモから毎月のデータ利用量の合計等の情報をもらいたいときの付加料金(月額)

データ接続の帯域に応じた月額料金

Page 14: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 14

ドコモの卸標準プラン(他のプラン)

• 音声通話機能付きSIMを提供するための「第3種卸Xiサービス(卸タイプXi)」、SMS機能付きSIMを提供するための「第3種卸Xiサービス(卸Xiユビキタスプラン)」も存在する

• 第2種卸Xiサービス(データ通信専用)の基本使用料の代わりに、これらのプランの月額使用料を払うことで、データ通信+音声通話(もしくはデータ通信+SMS)のサービスを実現できる

• 第3種卸Xiサービスは、基本料×割引率の組み合わせでの料金設定となる

– 契約期間や最低コミットメントにより、割引率が異なる

• 3Gを提供する場合は、第2種卸FOMAサービスの契約も必要

– 第3種卸FOMAの契約は不要(卸XiのSIMカードは、FOMAの利用も可能なため)

Page 15: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 15

(参考)MVNOの提供する「付加価値」とは

• 簡単に言えば「料金プラン」のこと

• 10Mbpsあたり月額67万4818円(ドコモのケース)で買ってきた「帯域」を、MVNOの設備を使って「3GBあたり月額900円」といった「料金プラン」に加工して販売する

• MVNOによっては、MVNOの設備を使って特定のパケットだけを料金プランの中にカウントしない「カウントフリー」機能を提供するところもあり、これもMVNOの付加価値の一つ

– IIJのカウントフリー(ゼロ・レーティング)に対する考え方はIIJmio meeting 13で述べた通りで、特に変わっていません• http://techlog.iij.ad.jp/archives/2110

Page 16: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc.

「MNOと接続」する場合=事業者間接続

Page 17: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 17

「MNOと接続」する場合(事業者間接続)

総務省「 MVNOに係る電気通信事業法及ひ電波法の 適用関係に関するガイドライン」より引用

Page 18: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 18

「MNOと接続」する場合(事業者間接続)

MNOは「MNOのサービス」を利用者に提供する

MVNOとしての付加価値を提供するためのサーバ

総務省「 MVNOに係る電気通信事業法及ひ電波法の 適用関係に関するガイドライン」より引用

MVNOはMVNOの付加価値

部分だけを利用者に提供するが、MNOまでを含めた料金設定権はMVNOが持つ

Page 19: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 19

「MNOと接続」する場合(事業者間接続)

• (参考)ドコモの携帯電話からKDDIの携帯電話にかけた場合

ドコモ交換機 KDDI交換機

ドコモのサービス KDDIのサービス

それぞれのサービスをまたいで利用しているが、料金設定権はドコモにある(このケースでは)

料金を利用者から取るのはドコモであり、このケースではドコモがKDDIにお金(接続料)を支払う

この時に、接続料を設定するのは、お金をもらう側=KDDI

Page 20: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 20

「MNOと接続」する場合(事業者間接続)

• ドコモとMVNOが事業者間接続をしている場合

ドコモ設備 MVNO設備

ドコモのサービス MVNOのサービス

それぞれのサービスをまたいで利用しているが、料金設定権はMVNOにある(このケースでは)

料金を利用者から取るのはMVNOであり、MVNOはドコモにお金(接続料)を支払う

この時に、接続料を設定するのは、お金をもらう側=ドコモ

Page 21: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 21

MNOがMVNOと接続する場合の接続料その他条件(接続約款)

• MNOは、MVNOと接続する場合の接続料その他の条件について、接続約款と呼ばれる書面を作って総務省に届け出ている

– 接続約款の届出義務があるのは、「第二種指定電気通信設備設置事業者」と呼ばれるMNO(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)• 第二種事業者は届け出た接続約款を公開しなくてはいけない

• 第二種事業者の接続料の計算方式は、「第二種指定電気通信設備接続料規則」という省令に、「原価+適正な利潤」と規定されていて、計算方式も決められている

• 第二種事業者と他の事業者(MVNO含む)は、接続約款以外の条件で事業者間接続をしてはいけない

• MNO各社の接続約款

– NTTドコモ• https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/disclosure/interconnection/term/dsj_all.pdf

– KDDI、ソフトバンク• URLは略

• 「(各社名)接続約款」でググればOK

Page 22: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 22

ドコモの接続約款

• ドコモの接続約款のP.43より

Page 23: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 23

ドコモの接続約款

• ドコモの接続約款のP.43よりXi直収パケット接続機能は、卸標準プランの「第2種卸Xi」と同じもの

データ通信専用SIM、1枚あたりのドコモへの毎月の支払額

データ接続の帯域に応じた月額料金

ドコモから毎月のデータ利用量の合計等の情報をもらいたいときの付加料金(月額)

Page 24: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 24

ドコモの接続約款(MVNO向けのもの)

• ドコモの接続約款における「Xi直収パケット接続機能」は、卸標準プランの「第2種卸Xiサービス」と同じもので、その接続料も第2種卸Xiサービスの月額利用料と全く同額

• ただ、接続約款には第3種卸Xiに相当するものはないので、音声通話機能やSMS機能を提供したい場合は、「Xi直収パケット接続機能」と同時に第3種卸Xiサービスの卸電気通信役務契約を結ばないといけない

• なぜ「Xi直収パケット接続機能」(接続約款)と「第2種卸Xiサービス」(卸標準プラン)が同じ料金なのか?– これらを同じにしないといけない明確な規則はないが、3つのMNOは各社

ぴったり同じにしている– 比較的自由に価格を決めて良いのは卸標準プランだが…

• 各社とも、ルールの厳しい事業者間接続よりルールの緩い卸電気通信役務の方が好ましく、そのためにも卸電気通信役務の料金を事業者間接続より上げたくない?

• 卸電気通信役務の標準プラン料金を下げると、「原価+適正な利潤」を下回っている価格で卸売りしていることになり、ダンピングと非難される可能性がある?

• 公平にMVNOを扱うべきという原則論(もしくは建前)による対応?

– ただ、卸電気通信役務は、標準プランの条件外での契約も許されているため、特定のMVNOに、より安い料金で提供しているという疑心暗鬼はある

Page 25: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc.

まとめ

Page 26: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 26

まとめ

• MVNOについては、法律(電気通信事業法)、政令・省令・ガイドラインに定義されていて、関連する事業者はこれらを守っています

• MNOとMVNOの関係性は、ガイドラインで次の2つが挙げられています1. 卸電気通信役務契約

2. 事業者間接続

– データ通信に関していえば、どちらも提供内容や提供料金に差はありません(事実上)

– 音声通話・SMSは、卸電気通信役務契約にのみ存在しています

– IIJはNTTドコモ、KDDIと卸電気通信役務契約を締結しMVNOサービスを提供しています

• 事業者間接続は、接続約款にない契約をしてはいけないとなっていますが、卸電気通信役務は標準プラン以外での契約も可能です– IIJは、フルMVNOに関するドコモとの契約を卸電気通信役務契約で結ぶ

予定です

Page 27: IIJmio meeting 17 MVNOの制度について

© 2017 Internet Initiative Japan Inc. 27

(参考)その他のMVNO関連の制度

• 電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン

– MVNOを含む電気通信事業者に、契約前の説明、契約後の書面交付、初期契約解除(クーリングオフ)等を規定したもの

• 電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン

– 契約時の個人情報取得、プライバシーポリシー、ログの取り扱いなどを規定しているもの

• モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針

– 端末購入補助(キャッシュバック等)やSIMロック解除等を規定しているもの

• 青少年インターネット環境整備法

• 携帯電話不正利用防止法等