5
7 CFO FORUM 退CFO調稿CCC調調中国・アジア拠点への 本社統治力と 財務管理の現状と課題 財務マネジメント・サーベイ 木村 等 日本 CFO 協会 主任研究委員 図1 CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル) 図1 CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル) 140.0 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 花王 ユニチャーム 資生堂 P&G 2008 2009 2010 2011 2012 2013年度

07 11 サーベイ46 - CFO · 日本人決裁承認者の派遣 主要決済口座の日次ベースの 入出金情報の把握 拠点別債権・債務明細データの 一元管理と分析機能強化

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7 ● CFO FORUM

リーマン・ショック以降の世界的な景気後退と不透明さが続く中、

厳しい円高を背景に多くの日本企業が

果敢にアジア新興市場への成長戦略を進めてきた。

本格的な事業活動のアジア新興国展開は、拠点グループのガバナンスや

事業管理の強化に加え、サプライチェーンの見直しなど、従来の生産拠点の

海外シフトの次元を超える多くの経営課題にCFOを直面させる。

今回の財務マネジメント・サーベイは、中国・アジアへ進出した企業の

本社財務部門がどのように拠点をコントロールしているのか、

その現状と課題を探るための調査を行ったが、本稿では、

最近注目され始めているキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

という指標から日本企業の課題について解説する。

事業活動のグローバル展開により、企

業のサプライチェーンは空間的にも時間

的にも膨張し、需要の変動を在庫水準へ

適切に反映させることが難しくなってい

る。輸出入に必要なリードタイムとそれ

に伴う安全在庫の確保ニーズの高まりは

在庫の増加を招き、品質重視の要請から

海外の生産現場では国内より早く支払い

をせざるを得ないというケースもある。

さらに、売掛サイドでも、中国・アジア現

地の政府系企業や中国系をはじめとする

民間企業との直接取引が増えるにつれて

不利な条件での取引も増え、回収サイト

の長期化やデフォルト率の上昇といった

問題も生じている懸念がある。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

アジアでも積極的にビジネスを展開す

るグローバル企業のP&G社と、同社と

競合する商品を持つ日本企業三社を選

び、仕入れから販売・現金回収までの期間

を示すキャッシュ・コンバージョン・サイク

ル(CCC)とそれを算出する三つの構成

要素(注1)がどのような傾向かを示すの

かを調査した(図1)。昨年度を除けば、

ユニ・チャームがP&G社を超えて効率的

な資金運用を行っているのがわかる。中

味を調べると、売掛債権の回転日数はP

特集

中国・アジア拠点への本社統治力と財務管理の現状と課題

財務マネジメント・サーベイ

木村 等日本 CFO 協会 主任研究委員

図1●CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)

図1●CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)140.0

120.0

100.0

80.0

60.0

40.0

20.0

0.02008 2009 2010 2011 2012

図1●CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)140.0

120.0

100.0

80.0

60.0

40.0

20.0

0.0

花王ユニチャーム資生堂P&G

2008 2009 2010 2011 2012 2013年度

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特集中国・アジア拠点への

本社統治力と財務管理の現状と課題

財務マネジメント・サーベイ

CFO FORUM ● 8

&Gよりも長いものの、棚卸資産の回転

日数が早く、結果としてCCCが短く

なっていた。P&G社はここ五年間、棚

卸資産回転日数を短くしてCCCを改

善しているが、日系企業三社はどこも棚

卸資産回転日数が長期化した結果、CC

Cが悪化している。こうした現象は電機・

機械部品メーカにも見られ、世界的に強

みを発揮する機械部品と電子部品メー

カであっても、実際にCCCの分析を行っ

たところ、棚卸資産の回転日数は延びて

いることがわかった。特に電子部品では

前払い金を支払っているケースも多いよ

うで、買掛債務の回転日数は売掛債権回

転日数よりも短くなっていた。個々の事

情はあるだろうが、棚卸資産回転日数の

長期化はサプライチェーンの広がりが招

いた結果ではないかと危惧している。

もちろんCCCはあくまでも一つの指

標に過ぎず、業種・業態によってその水準

は異なるため一概に比較はできない。﹁C

CCを改善したところで、会社がより儲

かるわけではない﹂という意見もある。

しかし、アジア新興国への展開を進める

中で運転資金のニーズも高まりつつある

日本企業にとって、資金収支予測の精度

向上と債権債務の管理強化、債権回収状

況の営業実績への反映、SCMの見直し

など、CCCという指標に関連した課題

が多くなっているのも事実だろうし、こ

うした課題こそ財務の担う役割ではなか

ろうか。以下、こうした観点からアンケー

ト結果に基づいてその実態と課題を見て

いくことにしたい。

監査・監督的性格が強い本社財務の

拠点コントロール

本社財務による拠点のコントロール強化

については八〇%の企業がその必要性を感

じているものの、現状の管理レベルはまだ

拠点任せのようである(図2)。図には示

していないが、拠点の管理について今後は

本社で直接、ITシステムにて拠点の情報

を収集して管理したいという﹁中央集権

型﹂はごくわずかで、基本ポリシーのみ設

定して拠点に任せる、もしくは拠点の情

報をモニターするという企業が圧倒的に

多かった。モニター型であってもプロセスと

コードを統一し、ITシステムを使って拠点

と情報を共有してモニターするほうが効

率的なのだが、﹁重要なものは統一﹂してい

るという回答を含めても、業務プロセスを

統一しているのは四七%、勘定科目では

五五%、取引先コードでは二三%、インボ

イスに至っては一六%にとどまった(図3)。

また、拠点からの収集している各種

データの頻度と粒度について示したのが

図4である。本社財務で把握している拠

点データは月次もしくは四半期単位での

収集が大半で、その内容も金額ベースで

の把握にとどまるケースが多いが、今後は

製品単位や顧客単位レベルで掴まえたい

という企業が多くなっていることがわか

る。現預金データの場合には、リアルタイ

ム・日次ベースでの収集は現状六%に過ぎ

ない。今後については二八%がリアルタイ

ム・日次ベースで必要と考えていることも

わかり、いわゆるグローバル・キャッシュ・マ

ネジメントへの取り組みも徐々に進み始

めてはいるようである。しかし、コント

ロール機能強化に向けて本社財務が何に

取り組もうとしているのかを見ると(図

5)、連結会計情報の信頼性向上といった

制度対応をはじめ、内部統制強化や不正

防止への関心が高い一方、﹁資金収支予測

の精度向上﹂は三一%と相対的に優先度が

低く、本社財務で拠点のキャッシュフロー

(注1)キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは、仕入から販売に伴う現金回収までの 日数を示し、この日数が小さいほど企業の現金回収サイクルが早いことを意味する。

※売掛債権回転日数の分母は売上高、棚卸資産回転日数と買入債務回転日数の分母は売上原価を用いた。

を把握しようという企業は一部に限定さ

れているようである。日本企業における

財務の使命は、欧米企業のような商流や

資金の一元管理ではなく、各拠点の監査

的な管理が中心になっていると思われる。

地域統括会社・財務拠点を海外に設置し

ている企業は三二%、計画中は一〇%だっ

たが、その目的とした機能は、図6に示す

ようにやはり﹁経営管理・監督機能﹂が

三七%と最も多かった。

懸念される拠点の売掛・買掛管理

売掛債権のデフォルトについては大き

な懸念とはなってはいないようであるが、

売掛債権の管理に関する具体的な課題

としては、﹁与信管理強化﹂(四一%)、﹁現

地商習慣や担保法・破産法などの齟齬の

掌握﹂(三七%)、﹁売掛債権の回収方法と

管理方法﹂(三五%)の順(図7)となったほ

か、買掛債務の管理では﹁現地の仕入れ・

購買・支払とその決済権限者の分離﹂

(三五%)が最も多く、不正防止に関心が

【式】 CCC=DSO(売掛債権回転日数)+DIO(棚卸資産回転日数)-DPO(買入債務回転日数)

図2●本社財務部門による拠点コントロール強化の必要性

無回答 4%

わからない 2%

特に変化なし 14%

やや高まっている 49%

非常に高まっている 31%

(複数回答)

0

20

60

80

40

100%

1016

8

37

39

15

146

12

3127

55

48 6

4 4 4

8

8

72

4

8

図3●業務プロセス・勘定科目・取引先コード

業務プロセス

経理の勘定科目

取引先コード

インボイス番号

グループで統一

重要なものはグループで

統一

統一されていない拠点

あり

拠点別に異なる

その他無回答

0

20

60

80

40

100%

1016

37

39

146

3128

48

4 4

図4●業務プロセス・勘定科目・取引先コード

業務プロセス

経理の勘定科目

グループで統一

重要なものはグループで

統一

統一されていない拠点

あり

拠点別に異なる

その他無回答

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9 ● CFO FORUM

図6●中国・アジア地区の地域統括会社・財務拠点の目的機能

(複数回答)

0

20

15

10

5

30

25

40%

35

37

24

14

108

4 4

税務マネジメントの強化

サプライチェーンの最適化

販売活動の強化

為替・通貨管理の強化

資金調達力の強化

事務・業務効率化

(含むシェアードサービス)

経営管理・監督機能の強化

 

図5●本社財務によるコントロール機能強化に向けた施策

図6●本社財務によるコントロール機能強化に向けた施策

インボイス、注文書の明細ベースでのデータ収集

取引先の与信情報と取引状況の一元的管理

外部委託による内部統制強化

デリバティブを含む財務取引の一元的管理と実施

拠点別債権・債務データの月別状況報告

現地語のわかる日本人決裁承認者の派遣

主要決済口座の日次ベースの入出金情報の把握

拠点別債権・債務明細データの一元管理と分析機能強化

ネッティングの実施による本社を介さないグループ間取引の情報収集

現地財務部員への金融・財務の専門教育

資金収支予測(キャッシュ・フォーキャスト)の精度向上

不正防止のための内部牽制機能の強化

規定・ポリシー、業務プロセス等の統一

連結会計情報の信頼性向上

0 10 20 30 40 50 60%

53

47

37

31

12

10

8

8

6

6

6

4

2

2

(複数回答)

特になし

主要取引先別日次ベースの入出金情報の把握

インボイス、注文書の明細ベースでのデータ収集

取引先の与信情報と取引状況の一元的管理

外部委託による内部統制強化

デリバティブを含む財務取引の一元的管理と実施

拠点別債権・債務データの月別状況報告

現地語のわかる日本人決裁承認者の派遣

主要決済口座の日次ベースの入出金情報の把握

拠点別債権・債務明細データの一元管理と分析機能強化

ネッティングの実施による本社を介さないグループ間取引の情報収集

現地財務部員への金融・財務の専門教育

資金収支予測(キャッシュ・フォーキャスト)の精度向上

不正防止のための内部牽制機能の強化

規定・ポリシー、業務プロセス等の統一

連結会計情報の信頼性向上

0

6

6

6

4

2

2

0

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

現在 今後0

20

40

60

80

100%

図4●中国・アジア拠点から収集している各種データの頻度と粒度

4132

22

318

53

43

2

6

2

14

414

61762

2

3616

48

53

62

2 4

1220228

23

8

8

18

18

52

29

5195

2

36 16

50

49

282

2 4

11216211

296

8

16

2150

19

8194

44

30 12

50

45

6

26

28

8234

44

20

2729

3339

9

▶連結用の財務データ ▶売上データ ▶仕入データ ▶現預金データ

8182

4718

43

64月次

四半期

年度

無回答

全社金額のみ

製品グループ

製品単位

顧客単位その他

無回答

▶在庫データ ▶売掛金データ ▶買掛金データ

5154214

2216

19

39

36

226

無回答

その他

顧客単位

製品単位

製品グループ

全社金額のみ

リアルタイム週日

四半期

随時

無回答

リアルタイム

全社金額のみ

製品グループ製品単位

顧客単位

その他

無回答

全社金額のみ

リアルタイム

四半期

無回答

リアルタイム リアルタイム日

年四半期

随時

無回答

日週

四半期年随時収集せず

収集せず

リアルタイム日週

四半期

随時

無回答

収集せず

無回答

全社金額のみ

製品グループ

製品単位

顧客単位

その他

無回答

製品グループ

製品単位

顧客単位

その他

無回答

61322

2

226

58

48

2

11

6

10

210

随時年

収集せず

収集せず 収集せず

日週

無回答

四半期

年随時年 年

12224

22

1616

1733

27

3316

6209

22

3015

49

45

2

64

2 8

頻 度

粒 度

粒 度

頻 度

粒 度

頻 度

頻 度

粒 度

頻 度

頻 度

頻 度

粒 度

[調査の概要]テーマ:中国・アジア拠点への本社統治力と財務管理実施:日本CFO協会調査対象:上場企業500社(無作為に抽出)の財務担当役員調査期間:2013年7月19日~2013年8月7日回答社数:55社(回答率11%)

[回答者のプロファイル]グループ売上高: 1兆円以上20%、1兆円未満25%、5,000億円未満37%、1,000億円未満18%グループ従業員数:1万人以上35%、1万人未満29%、5,000人未満26%、1,000人以下6%、その他4%海外生産比率:70%以上=4%、 50%以上70%未満=6%、 30%以上50%未満=14%、 10%以上30%未満=18%、 10%未満= 20%、 0%=20%、その他18%海外売上比率: 70%以上=8%、 50%以上70%未満=12%、 30%以上50%未満=28%、 10%以上30%未満=22%、 10%未満= 20%、 0%=6%、その他4%

高いことがわかる(図8)。しかし、回収

サイトと支払サイトの改善については、

課題と感じ始めている企業も少なくない

模様であるが(図9)、回収条件や支払条

件については、一部の大きな金額の取引を

除けば全て拠点に一任しているという

ケースが八割近くに達しており、本社財

務の関与度合いは低い。拠点や事業部門

ではなく、本社財務としての売掛債権の

管理の仕組みについて課題となる点を聞

いた質問でも、﹁拠点をまたがった与信管

理は行わず各拠点に一任している状況﹂が

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特集中国・アジア拠点への

本社統治力と財務管理の現状と課題

財務マネジメント・サーベイ

CFO FORUM ● 10

三五%と最も多い(図10)。﹁全ての債権や

顧客ごとの回収条件を本社あるいは地域

統括会社で把握し一元的に管理﹂

(二四%)、﹁取引先コードを統一し、販売・

債権管理で共有できる仕組み﹂(一八%)を

本社財務の課題にあげる企業があること

も確かだが、前述のように、主要な拠点

データの大半が月単位・四半期単位であ

る現状も考える限り、拠点の営業実態を

本社財務が把握できてないのではないか

という危惧を感じてしまうのは筆者だけ

だろうか。冒頭に述べた、日本企業が中

国・アジアで政府系を含め現地企業との

取引を拡大させていく中で、売掛債権の

回収サイトの長期化やデフォルト率の増

加といった課題も顕在化していることは、

Coface press release

(注2)やA

tradius

調査(注3)でも明らかである。さらに、売

掛債権の回収サイトが日本より長くデ

フォルトも多くなっているという事実や、

掛売りを積極的に行った結果、九〇日以

上の長期の信用供与を行っている実態を

指摘する専門家もいる。

強まる拠点の運転資金ニーズ

債権債務の管理をはじめとした運転

資本の管理が各拠点の課題となりつつあ

ることは、運転資金に関する質問への回

答でも見て取れる。拠点における運転資

金のニーズは、やや強まっていると回答し

た企業も含め、強まっていると感じてい

る企業は六六%となった(図11)。その資

金の調達については、外部資金、銀行融

資に頼る企業が最も多く、優先順位でも

銀行借入を最初に考える企業が三一%と

親子ローンとグループファイナンスの

三七%とほぼ同じであった。ちなみに、

銀行借入を行うという企業の約七割近

くが海外売上比率三割を超える企業で

あり、海外売上の比率が伸びるにつれ、

銀行からの直接借り入れを行う傾向に

あるようだ。また、銀行借り入れの内訳

を見ると、そのほとんどが邦銀に頼って

いる結果となった。

図には示していないが、売掛債権の流

動化は、導入済・検討中がまだ七%で、今

後検討が六七%にも上ったほか、買掛債

務の支払いにおいて使われる﹁一括信託支

払﹂は、今後の検討課題としても一六%と

わずかな数にとどまった。債権流動化に

ついては、﹁債権譲渡や担保権設定などの

問題﹂をはらんでいることも事実であり、

多くの企業がサービスを自由に使うまで

には、まだ時間がかかると思われるが、

これらの金融サービスは、﹁為替リスク﹂

﹁有利子負債のコスト﹂﹁金利変動リスク﹂

なども回避できるし、債権の回収サイト

と債務の支払いサイトの改善にも役立つ

ものなので、現状でも使える範囲で活用

すべきではないか。

商流・資金の一元管理を目指して

中国・アジアで活躍している欧米企業

が行っているように、資金を効率的にコ

ントロールするためには、勘定科目のみ

図8●設置もしくは計画中の場合、目的とした機能強化は次のどれに該当しますか。

(複数回答)

0

20

10

30

40%37

24

14

108

4 4

サプライチェーンの最適化

税務マネジメントの強化

販売活動の強化

為替・通貨管理の強化

資金調達力の強化

事務・業務効率化

(含むシェアードサービス)

経営管理・監督機能の強化

 

図7●売掛債権の管理に関する課題

(複数回答)

0

20

10

30

40

50%

41

3735

22

108 8

2 24

その他

債権流動化の実施

営業部門の売上制度への反映

拠点の会計情報の信頼性の向上

債権回収部門の強化や

督促の外部委託

循環取引などの不正防止

のためのデータ収集・検証

取引先グループ全体の

債権・債務の把握

売掛債権の回収方法と管理方法

現地商習慣や担保法・

破産法などの齟齬の掌握

取引先の与信管理強化

図9●回収サイトと支払いサイトの改善を課題として感じているか

[回収サイト] [支払いサイト]無回答 8%

その他 2%

拠点に任せている 23%

特に感じていない 12%

やや感じている 41%

強く感じている 14%

無回答 10%

特に感じていない 27%

やや感じている 35%

強く感じている 2%

拠点に任せている 26%

図8●買掛債務の管理に関する課題

(複数回答)

0

20

10

30

40%

その他

VMI(Vendor-M

anaged Inventory)

などの活用による仕入れ在庫の

減少と支払いの最適化

現地語が書かれた請求内容が

分かる決裁者の確保

特定企業への偏りによる

リスク管理

品質、納期優先から支払い金額と

サイトも考慮にいれる要員の確保

支払い業務と決裁者の

定期的な人事ローテーション

集中購買などの活用による

品質・納期から支払い条件の均質化

現地の仕入れ、購買、支払いと

その決裁権限者の分離

35

22

18

1210

6 6 6

(注2)「……掛売りによる取引は二〇一一年の七六%から二〇一二年の八二%へと増大した……台湾と日本の企業が最も掛売りに積極的である。日本企業の四二%……平均的信用条件として九〇日以上を供与した」

(注3)「調査回答企業が国内外企業へ発行したインボイスの金額の約三〇%が、期日までに支払われなかった。インボイスの金額のうち一〇%以上は、期日から三カ月過ぎても支払われず、五%強がデフォルトになった」

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11 ● CFO FORUM

図11●拠点における運転資金のニーズ

無回答 12%わからない

2%

変化はない 20%

やや強まっている 37%

強まっている 29%

図10●拠点や事業部門単位ではなく、本社財務部門として課題となる売掛債権の管理の課題

無回答 1%

拠点をまたがった与信管理は行わず各拠点に一任している状況 35%

買掛債務の支払先と同一の顧客/顧客グループに対する自社/自社グループベースの債務残高や、売掛金との相殺可能性が把握できる仕組み 10%

拠点、販売チャネル、取引先別などのデフォルト率の管理と現場(営業部門)への反映ができる仕組み 8%

主な取引先の資本関係やオーナーなどを調べ、その企業グループと拠点間の販売実績と売掛債権を管理する仕組み 4%

一定割合を占める取引先はコードを統一し、販売・債権管理で共有できる仕組み 18%

全ての債権や顧客ごとの回収条件を本社あるいは地域統括会社で把握し一元的に管理できる仕組み 24%

ならず、取引先コード、インボイス体系

までを統一し、仕入れデータから現預金

のデータまで少なくとも日次ベースに集

約させることが不可欠である。間接部門

の人員削減の一環で昨今の財務部門に人

的余裕がなく、拠点管理まで手が回らな

いというのも実状だろうが、全てのP/

Oとインボイス、拠点の決済口座の入出

金情報を一元的に管理できるシステムを

構築すれば十分に実現可能であり、しか

も段階的に構築していくことも可能だ。

金融機関、海外のサービスプロバイダー

やベンダーが提供する補完機能を、自社

のERPと緩く組み合わせるだけでもC

CCの改善を図ることができるだろう。

実際に着々とこうした管理体制を整え

ている企業もある。いずれも中国・アジア

で生産、販売ともに三〇%以上を占め、コ

ントロールの体制としては﹁拠点からデー

タを収集し、モニターする﹂と回答してい

るが、﹁業務プロセス﹂と﹁取引先コード﹂

﹁勘定科目﹂を全て統一している企業が四

社あり、そのうち二社は﹁インボイスの

コード﹂までも統一している。こうした企

業では、現在、月ベースで収集している

データも今後は全て顧客単位にリアルタ

イムに集計したいと回答しているほか、検

討・計画中の項目にも﹁拠点別債権・債務

明細データの一元管理﹂﹁取引先与信情報

と取引情報の一元的管理﹂﹁主要決済口座

の日次ベースでの情報収集﹂﹁資金収支予

測の精度向上﹂などがあげられている。

ところで、カネとモノの動きを連動させ

るためには、金融機関にそれなりの情報

を提供してもらう必要もあるが、この時

に振込元企業のIDが世界で統一され名寄

せができるようになれば、格段に使い勝手

は良くなる。現在、債券を発行する企業

情報などを提供する仕組みがアジア各国

で協議されているが、グローバルに金融取

引を行う企業のIDを全世界で統一化す

る動きはこれよりも早く、G20で議論さ

れた後に異例の早さで各国金融当局の合

意がとられた。アジア圏でのビジネスを拡

大する際に今後必要となる企業の与信情

報も、アジア圏に本社を持つ企業の親子を

含む情報が自由に参照できる環境が構築

されれば、非常に効率良く入手すること

ができるようになる。アジアでの交易が

広がることを期待し、筆者も現在、国の枠

を超えてアジア共通で運用される主体が

現れないかとその働きかけを行っている。

水平型ビジネスモデルへの脱皮

事業単位、工程単位の材料仕入れは購

買部門、製造期間の短縮は生産現場とロ

ジステッィク部門、製品販売は営業、代金

回収は営業と経理部門というように、多

くの日本企業ではプロセスが機能別に分

断されている結果、部分最適に陥りがち

になる傾向がある。全社のキャッシュフ

ローと財務の安定を守り、取引の信用リ

スクを一元的に管理するためには、本社財

務が単なる資金調達や資金決済などの事

務処理から脱却し、運転資金の効率化を

コントロールする部門として積極的に関

与し、日数ベース(金額換算できる指数)

で﹁見える化﹂させることで、全体最適の

仕組みを作る必要がある。本社財務が主

導して、モノやサービスを提供するプロセ

スと、それを循環させるお金の動きを同

期させ、日本で成功してきたサプライ

チェーン・マネジメントをもう一度見直す

時が来ているのではないか。従来の垂直

統合的なビジネスモデルを脱却し、アップ

ルのようにアジアでの価格競争にも対応

できる、水平分業的なビジネスモデルへの

移行にも貢献できるのではなかろうか。

そのためには、当然、高度な財務管理シス

テムの導入だけでなく、これを使いこなす

国際財務専門人材の育成が不可欠だ。

数年前に、英国の権威あるトレジャ

リー教育団体ACTの教材を使い、先進

企業の財務の方々の協力を仰いで日本C

FO協会と勉強会を行った。日本でもこ

うした国際的なトレジャリーの教育プロ

グラムを導入しようと検討したものの、

この分野に目を向ける企業はまだ一部に

限定されており、導入を断念せざるを得

なかった経緯があるが、今回あらためて

日本企業の国際的な財務教育の遅れを

痛感する結果となった。ACTのプログ

ラムは、多くの欧米企業では財務要員に

対するほぼ必須科目として、アジア各国

も含めて受講させている事実をぜひ知っ

ていただきたいと切に願う。