11
2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験は、後述する広域地下水シミュレーション及び 地下水汚染シミュレーションに必要な水理定数を把握するために実施した。 2.3.1 現場透水試験結果 現場透水試験は、飽和地盤(地下水中)の透水係数を求めるため、ボーリング孔を利用して地層別に実 施した。 試験は、非定常(揚水)で行い、試験区間は 50cm とした。 表 2.3.1 に現場透水試験結果一覧を、表 2.3.2 に地層別透水係数を、図 2.3.1 透水試験結果図を示す。 試験位置は土の保水性試験・不飽和浸透試験も含めて図 2.3.2 に示した。 試験の結果、砂層で 10 -2 cm/sec オーダー、最下部に分布する砂礫層で 10 -1 cm/sec 程度の透水係数が得ら れた。 なお、シミュレーションの入力条件として必要な透水係数の内、原位置で測定できなかったものについ ては、一般的参考値及び前後の透水係数を参考に設定した。 表 2.3.1 現場透水試験結果一覧 表 2.3.2 地層別透水試験結果一覧 透水係数(cm/sec解析使用値 記号 地層名 現場透水試験結果 X Y Z B 埋土層 1.79×10 -6 1.4×10 -3 1.00×10 -3 1.00×10 -3 1.00×10 -3 Ac 沖積粘土層 2.00×10 -4 2.00×10 -4 2.00×10 -4 As 沖積砂層 1.73×10 -3 4.74×10 -2 3.00×10 -2 3.00×10 -2 3.00×10 -2 Ag 沖積砂礫層 5.00×10 -2 5.00×10 -2 5.00×10 -2 Ds 洪積砂層 1.85×10 -3 1.45×10 -2 1.00×10 -2 1.00×10 -2 1.00×10 -2 Dg1 洪積砂礫1層 1.4×10 -2 2.00×10 -2 2.00×10 -2 2.00×10 -2 Dg2 洪積砂礫 2 3.96×10 -2 9.54×10 -2 1.00×10 -1 1.00×10 -1 1.00×10 -1 Dc 洪積粘土層 1.00×10 -5 1.00×10 -5 1.00×10 -5 B は、粒度試験からの推定(クレーガー式) 図 2.3.1 透水試験結果図 箇所 深度 (GL-m) 区間長 (m) 土質 記号 透水係数 (cm/sec) 193 6.2-6.7 0.5 細砂 As 4.14×10 -2 193 17.0-17.5 0.5 細砂 Ds2 1.45×10 -2 193 22.15-22.65 0.5 粗砂 Dg1 1.40×10 -2 193 28.0-28.5 0.5 砂礫 Dg2 9.54×10 -2 194 10.0-10.5 0.5 細砂 Ds 3.07×10 -3 194 24.0-24.5 0.5 細砂 Ds 1.85×10 -3 194 26.0-26.5 0.5 砂礫 Dg2 5.16×10 -2 195 6.5-7.0 0.5 細砂 As 4.71×10 -2 195 19.5-20.0 0.5 細砂 Ds 5.28×10 -3 195 29.5-30.0 0.5 砂礫 Dg2 3.96×10 -2 196 9.5-10.0 0.5 細砂 Ds 4.28×10 -3 196 18.5-19.00 0.5 細砂 Ds 2.62×10 -3 196 29.5-30.0 0.5 砂礫 Dg2 2.92×10 -2 197 6.0-6.5 0.5 細砂 As 1.73×10 -3 197 18.0-18.5 0.5 細砂 Ds 7.25×10 -3 透水係数(cm/sec) 1.0×10 -6 1.0×10 -5 1.0×10 -4 1.0×10 -3 1.0×10 -2 1.0×10 -1 1.0×10 0 2-38

2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

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Page 1: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果

現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験は、後述する広域地下水シミュレーション及び 地下水汚染シミュレーションに必要な水理定数を把握するために実施した。 2.3.1 現場透水試験結果

現場透水試験は、飽和地盤(地下水中)の透水係数を求めるため、ボーリング孔を利用して地層別に実

施した。

試験は、非定常(揚水)で行い、試験区間は 50cm とした。

表 2.3.1 に現場透水試験結果一覧を、表 2.3.2 に地層別透水係数を、図 2.3.1 透水試験結果図を示す。

試験位置は土の保水性試験・不飽和浸透試験も含めて図 2.3.2 に示した。

試験の結果、砂層で 10-2cm/sec オーダー、最下部に分布する砂礫層で 10-1cm/sec 程度の透水係数が得ら

れた。

なお、シミュレーションの入力条件として必要な透水係数の内、原位置で測定できなかったものについ

ては、一般的参考値及び前後の透水係数を参考に設定した。

表 2.3.1 現場透水試験結果一覧

表 2.3.2 地層別透水試験結果一覧 透水係数(cm/sec)

解析使用値 記号 地層名 現場透水試験結果

X Y Z B 埋土層 1.79×10-6~1.4×10-3 1.00×10-3 1.00×10-3 1.00×10-3 Ac 沖積粘土層 2.00×10-4 2.00×10-4 2.00×10-4 As 沖積砂層 1.73×10-3~4.74×10-2 3.00×10-2 3.00×10-2 3.00×10-2 Ag 沖積砂礫層 5.00×10-2 5.00×10-2 5.00×10-2 Ds 洪積砂層 1.85×10-3~1.45×10-2 1.00×10-2 1.00×10-2 1.00×10-2

Dg1 洪積砂礫1層 1.4×10-2 2.00×10-2 2.00×10-2 2.00×10-2 Dg2 洪積砂礫 2 層 3.96×10-2~9.54×10-2 1.00×10-1 1.00×10-1 1.00×10-1

Dc 洪積粘土層 1.00×10-5 1.00×10-5 1.00×10-5 ※B は、粒度試験からの推定(クレーガー式)

図 2.3.1 透水試験結果図

箇所深度

(GL-m)区間長(m)

土質 記号透水係数(cm/sec)

193 6.2-6.7 0.5 細砂 As 4.14×10-2

193 17.0-17.5 0.5 細砂 Ds2 1.45×10-2

193 22.15-22.65 0.5 粗砂 Dg1 1.40×10-2

193 28.0-28.5 0.5 砂礫 Dg2 9.54×10-2

194 10.0-10.5 0.5 細砂 Ds 3.07×10-3

194 24.0-24.5 0.5 細砂 Ds 1.85×10-3

194 26.0-26.5 0.5 砂礫 Dg2 5.16×10-2

195 6.5-7.0 0.5 細砂 As 4.71×10-2

195 19.5-20.0 0.5 細砂 Ds 5.28×10-3

195 29.5-30.0 0.5 砂礫 Dg2 3.96×10-2

196 9.5-10.0 0.5 細砂 Ds 4.28×10-3

196 18.5-19.00 0.5 細砂 Ds 2.62×10-3

196 29.5-30.0 0.5 砂礫 Dg2 2.92×10-2

197 6.0-6.5 0.5 細砂 As 1.73×10-3

197 18.0-18.5 0.5 細砂 Ds 7.25×10-3

透水係数(cm/sec)

1.0×10-6 1.0×10-5 1.0×10-4 1.0×10-3 1.0×10-2 1.0×10-1 1.0×100

2-38

Page 2: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

2-39

図2.3.2 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果

Page 3: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

2.3.2 土の保水性試験結果

土の保水性試験は、不飽和浸透特性を求める上で必要となる土中水のポテンシャルを把握するために、

地盤工学会基準に準拠して行った。試験は、ポテンシャルに合わせて吸引、加圧及び遠心法で行った。 試料は、後述する不飽和浸透試験と同様の箇所から採取した。

表 2.3.3 に試験結果一覧を示す。

表 2.3.3 土の保水性試験結果一覧

2.3.3 不飽和浸透試験

不飽和浸透試験は、不飽和地盤(地下水位より上)の透水係数を求めるために、地盤工学会基準「締め

固めた地盤の透水試験方法」に準拠して行った。試験は、図 2.3.2 に示す位置で、表層土を取り除き、深

度 50cm のところで行った。 表 2.3.4 に試験結果一覧を示す。結果は、次項で示す不飽和浸透特性関数モデルの計算結果の参考とし

た。

表 2.3.4 不飽和浸透試験

2.3.4 不飽和特性曲線 不飽和領域を取り扱う場合、地盤の不飽和透水係数と水分特性曲線が必要となる。

原位置で不飽和透水係数や水分特性を求めることはほとんど困難であり、研究途上でもある。今回は、

試験結果に基づいて、van Genuchten の提案した不飽和浸透特性関数モデルを利用し不飽和透水係数と水

分特性曲線を作成した。 得られた不飽和特性曲線は、シミュレーション時の参考とした。 1) 不飽和浸透特性のモデル化(Van Genuchten 式)

2) 不飽和特性曲線

上式を使用して、土の保水性試験で得られた水分特性曲線とマッチングし、不飽和特性曲線を再現し

た。なお、地質(埋土と自然地盤)で水分特性曲線が若干異なるため2つのモデルを作成した。

図 2.3.3 不飽和特性曲線

番号 表層形態 土質 実施日 天候透水係数(m/sec)

定常流量

(m3/sec)

No.1 休耕田(裸地) シルト混り砂 2004/12/16 はれ 6.0×10-5

3.3×10-5

No.2 休耕田(裸地) シルト混り砂 2004/12/16 はれ 1.3×10-5

7.4×10-6

No.3 草地 シルト混り砂 2004/12/16 はれ 3.6×10-5 2.0×10-5

No.4 草地 シルト混り砂 2004/12/9 くもり 9.2×10-5

5.0×10-5

No.5 草地 シルト混り砂 2004/12/16 はれ 5.3×10-5

2.9×10-5

番号土質過程

試験法 φ θ φ θ φ θ φ θ φ θ吸引 0 35.5 0 41.4 0 37.9 0 41.8 0 38.2吸引 0.31 34.4 0.31 40.1 0.31 37.6 0.31 40.3 0.31 37.9吸引 0.98 33.9 0.98 39.7 0.98 37.4 0.98 40.1 0.98 37.7加圧 3.1 33.9 3.1 37.8 3.1 36.6 3.1 38.6 3.1 36.8加圧 9.81 28.2 9.81 31.5 9.81 27.8 9.81 26.5 9.81 31.7遠心 100 23.6 98.5 26.1 100 24.4 99 23.1 100 26.2遠心 909 19.5 876 20.3 909 21.2 893 19.1 909 21.3

No4シルト混じ砂

排水

No5シルト混じ砂

排水

No3シルト混じ砂

排水

No1シルト混じ砂

排水

No2シルト混じ砂

排水

0.01

0.1

1

10

0 10 20 30 40 50体積含水率 θ(%)

サク

ショ

ン(m

0.00

0.33

0.67

比透

水係

No1

No3

No5

計算値(θ-φ)

計算値(θ-k)

0.01

0.1

1

10

0 10 20 30 40 50体積含水率 θ(%)

サク

ショ

ン(m

0.00

0.33

0.67

1.00

比透

水係

No3

No4

計算値(θ-φ)

計算値(θ-k)

埋め土(シルト混じり砂) 表土(シルト混じり砂)

2-40

Page 4: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

2.3.5 水田土壌水分特性(不飽和浸透)試験結果

1)目的

本調査は、B 地区の浅層部汚染の一因として考えられる、灌漑期における水田からの浸透につい

て、現位置試験により、水田土壌の不飽和浸透特性を把握し、B 地区の 3 次元汚染シミュレーショ

ンにおける不飽和浸透特性の基礎資料とするために実施したものである。 2)不飽和浸透特性について

雨が降ると、雨水は地表から土の中を浸透し、重力に従って下方へ流れ、地下水面へと到達する。

地表面と地下水面との間を不飽和帯と呼ぶ。水田においても同様で、灌漑期であっても水田と地下

水位が一致していることはまれで、水田と地下水面の間には不飽和帯が存在することが多い。一般

に不飽和帯での水の挙動は、飽和帯(地下水中)の挙動に比べ、非常に複雑で透水性も低いことが

知られている。不飽和帯の水の挙動を把握するには、土の保水性と水の駆動力になるサクションの

関係を求める必要があり水分特性曲線(体積含水率とサクションの関係)として表す。 また、不飽和浸透特性を定量化するパラメータとして、水分特性曲線に加え、体積含水率と比透

水係数の関係(飽和透水係数と不飽和透水係数の比)が必要になる。 3)サクション(毛管水頭)

不飽和帯の水は、土粒子の表面に保持されて

る吸着水と毛管水がある。毛管水は、水の表面

張力により土粒子間の間隙に保持されている水

で、地下水面から水分が吸い上げられている。

一般的には、水面の上に立てた細いガラス管を

水が上昇する現象として知られている。この時、

不飽和状態の土が水を吸引する力をサクション

と言う。 表に示す様に、同じ含水比では細粒土の方が サクションは大きく、同じ土では飽和度(Sr:土の間隙中の水の割合)が小さいほどサクショ

ンは大きい(『地下水工学』鹿島出版、1997)。 なお、地下水面以下では、地下水は飽和状態

であると考えられるので、サクションはゼロで

ある。 4)不飽和透水係数

飽和状態での透水係数を ks、不飽和状態での透水係数を ku とすると、比透水係数は、飽和度:

Sr との関係より図 2.3.5 に示す関係が実験的に示されており、サクションや水分量の低下に伴い指

数関数的に減少する。また、同一含水比においては、湿潤過程と排水過程でサクション値が異なり、

ヒステリシスと呼ばれる。図 2.3.5 に示すように、飽和度が 60%になると透水係数比は 0.2 程度に

なる。

5)検討フロー

試験は、以下のフローに従って行った。

現地観測

浸透量調査

・不飽和透水係数の実測・浸透量の実測

土壌水分計,間隙水圧計の設置

・土壌水分計 (0.2m,0.4m,0.8mの各深度)・間隙水圧計 (1.0m深度)

土質試験

・物性試験・pF試験

観測開始  (H17年11月9日)

・pF試験結果を元に、 θ-φ特性を評価

・物性特性(n,θ)

一般値も参考

降水に伴う各深度の土壌水分量,1.0m間隙水圧の変化

1次元浸透流解析による土壌水分量変化の検討(計算は、現地観測期間(平成17年11月11日~平成18年2月28日)の2,640ステップ)

現況の水田における不飽和特性

3次元浸透流解析の不飽和条件(不飽和特性,降雨浸透率)

図 2.3.7 水田土壌水分特性(不飽和浸透)試験の検討フロー

図 2.3.4 土壌水の種類

(出典:『地下水工学』鹿島出版、1997)

表 2.3.5 毛管水頭の高さの代表的な値

(出典:『地下水工学』鹿島出版、1997)

図 2.3.5 不飽和状態での透水

(出典:『地下水工学』鹿島出版、1997)

図 2.3.6 不飽和状態におけるサクション

(出典:『地下水工学』鹿島出版、1997)

2-41

Page 5: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

図  水分特性(不飽和)試験位置および試験概要図浸透試験No.6

浸透試験No.5

浸透試験No.4土質試験No.5

浸透試験No.1

浸透試験No.3

浸透試験No.2

土質試験No.1

土質試験No.6

土質試験No.3土質試験No.2

土質試験No.4

土壌水分計及び間隙水圧計設置位置

浸透試験状況図

0.5m 0.5m 0.5m

ロガーへ

センサー設置孔口位置 (間隙水圧計)

センサー設置孔口位置 (ADR×3深度)

2m

2m

0.2m

0.4m

0.8m

1.0m

センサー(間隙水圧計)

センサー(ADR×3深度)

断面図 平面図(設置間隔)

ロガーへ

2m

間隙水圧計深度1.0m

土壌水分計深度0.4m

土壌水分計深度0.2m

土壌水分計深度0.8m

土壌水分計および間隙水圧計設置概念図

計器および設置状況図

2-42

図2.3.8 水分特性(不飽和)試験位置および試験概要図

Page 6: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

6)試験結果

(1)浸透試験結果

浸透試験は、水田部の表層土壌を対象に、浸透特性を把握するために実施した。 試験は、予め 60cm ほどの穴を掘り、その穴に直径 30cm の塩化ビニールパイプを埋め込み、パ

イプと地盤の間を埋め戻した後に、パイプ内に水を注水し、その浸透速度から透水係数を算出する

ものである。 下絵に、試験の概要を、図 2.3.9 に透水係数算出方法を、表 2.3.6 に浸透試験結果一覧表を示す。

図 2.3.9 浸透試験透水係数算出方法

表 2.3.6 浸透試験結果一覧表

R [cm] r [cm] L [cm]h1[cm]

h2[cm]

t2-t1[sec]

K:透水係数[cm/sec]

No.1 45.3 24.9 5,100 3.78×10-4

No.2 13.9 10.7 9,120 9.25×10-5

No.3 14.2 7.4 63,000 3.33×10-5

No.4 51.1 25.3 5,280 4.29×10-4

No.5 17.0 15.3 5,940 5.72×10-5

No.6 40.2 23.0 5,100 3.53×10-4

1030 15

R:ケーシングパイプの内径 r:透水部の半径 L:透水部の長さ h1:t1 時における平衡水位との水頭差 h2:t2 時における平衡水位との水頭差

表 2.3.6 に示すように、若干のばらつきはあるものの、3.33×10-5~4.29×10-4cm/sec の透水係数

が得られた。 内、最も浸透速度が遅かった No.3 地点を除くと、概ね 10-5cm/sec の後半から 10-4cm/sec の前半

の透水係数を有しているものと考えられる。

(2)土質試験結果

土質試験は、土の粒度特性と含水特性(土中水のポテンシャルと体積含水率の関係)を把握する

ため、表層の水田土壌を対象に、粒度試験及び土の保水性試験を行った。

試験は、地盤工学会基準に準拠して行い、土の保水性試験については、土中水のポテンシャルに

合わせて、吸引、加圧、遠心法で行った。

表 2.3.7 に粒度試験結果一覧を、表 2.3.8 に土の保水性試験結果一覧を、図 2.3.10 に粒径加積曲

線を、図 2.3.11 に各試料の体積含水率と土中水のポテンシャルの関係図を示す。

粒度試験の結果、どの試料も砂分を 60%以上含むものの、シルト・粘土分も概ね 30%含んでおり、

比較的粒度分布の良い砂と言える。

土の保水性試験では、自然状態における体積含水率は 38.8~46.4%であるが、ポテンシャルが

3.1KPa を超えると急激に体積含水率が低下する傾向が得られた。

代表的試料でポテンシャルを 941KPa まであげると、体積含水率は 18.1~21.1%となった。

(3)土壌水分観測結果

土壌水分計(3 深度:表層から 20cm、40cm、80cm)及び間隙水圧計(1深度:表層から 1m)とも

に、11 月から観測を開始しており、2 月末まで行った。

観測期間中、1 月 14 日に最大時間雨量 38mm が確認され、現地を確認したところ、水田は湛水状

態となっており、表層 20cm に設置した水分計は飽和状態を示していると考えられる。また、深度

80cm に設置した水分計の降雨に対する応答は、深度 20cm に設置した水分計と比較してやや遅れを

もっており、降雨が浸透後 80cm まで達するのに要する時間を表しているものと考えられる。

間隙水圧計は、計器を不飽和地盤中に設置しているため、間隙水圧は常に負の値を示しており、

計器設置以後、降雨が少なく地下水位が下がる傾向にあったため、間隙水圧も負の値が大きくなる

傾向にある。

これらデータを基に、1 次元浸透モデルにより現況を再現した結果、図 2.3.13 に示す不飽和浸透

曲線(体積含水率とサクションの関係、体積含水率と比透水係数の関係)が得られた。

また 1 次元浸透モデルにより、水田湛水状態と考えられる時期の鉛直浸透量(水田湛水の浸透量)

を算出した結果、1日あたり 1.6mm となった。

15

2-43

Page 7: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

箇所番号 No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6深さ [m] 0.60m~ 0.25m~ 0.80m~ 0.25m~ 0.25m~ 0.25m~礫分 [%] 1.2 0.8 0.3 1.2 1.5 7.2砂分 [%] 70.7 63.9 70.5 62.6 74.2 75.6シルト分 [%] 18.1 21.7 17.6 24.9 13.1 11.4粘土分 [%] 10.0 13.6 11.6 11.3 11.2 5.8

0.00 -0.31 -0.98 -3.10 -9.8025.0 24.9 24.8 24.6 22.338.8 38.6 38.5 38.2 34.6

0.00 -0.31 -0.98 -3.10 -9.8027.6 27.5 27.5 27.4 27.042.0 41.8 41.8 41.7 41.1

0.00 -0.31 -0.98 -3.10 -9.80 -102 -94134.6 33.7 33.7 33.4 26.4 17.3 13.546.4 45.2 45.2 44.8 35.4 23.2 18.1

0.00 -0.31 -0.98 -3.10 -9.80 -102 -94128.9 28.6 28.5 28.3 23.8 17.9 14.641.8 41.4 41.3 41.0 34.5 25.9 21.1

0.00 -0.31 -0.98 -3.10 -9.8027.7 27.3 27.3 27.2 20.341.0 40.4 40.4 40.2 30.0

0.00 -0.31 -0.98 -3.10 -9.8025.2 24.9 24.9 24.9 23.639.7 39.2 39.2 39.2 37.1体積含水率:θ [%]

No.3 (0.80m~)

No.4 (0.25m~)遠心法

吸引法 加圧法Φ [kPa]含水比:W [%]

吸引法 加圧法

No.1 (0.60m~)試験方法 吸引法 加圧法Φ [kPa]含水比:W [%]体積含水率:θ [%]

試験方法

体積含水率:θ [%]

遠心法Φ [kPa]含水比:W [%]

含水比:W [%]

Φ [kPa]含水比:W [%]体積含水率:θ [%]

No.5 (0.25m~)

体積含水率:θ [%]

試験方法

体積含水率:θ [%]

No.6 (0.25m~)試験方法

試験方法 吸引法 加圧法Φ [kPa]

表2.3.7 粒度試験結果一覧

表2.3.8 保水性試験結果一覧 

吸引法 加圧法

No.2 (0.25m~)試験方法 吸引法 加圧法Φ [kPa]含水比:W [%]

土質試験結果

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0.001 0.01 0.1 1 10 100

粒径(㎜)

通過

重量

百分

率(%

No.1(0.60m~)

No.2(0.25m~)

No.3(0.80m~)

No.4(0.25m~)

No.5(0.25m~)

No.6(0.25m~)

No.1(0.60m~)

No.2(0.25m~)

No.3(0.80m~)

No.4(0.25m~)

No.5(0.25m~)

No.6(0.25m~)

図2.3.10 粒径加積曲線

図2.3.11 体積含水率と土中水のポテンシャルの関係

1:粒度特性

2:含水特性

2-44

Page 8: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

30

35

40

45

50

55

60

11/1 11/4 11/7 11/11 11/14 11/17 11/21 11/24 11/27 12/1 12/4 12/7 12/11 12/14 12/17 12/21 12/24 12/27 12/31 1/3 1/6 1/10 1/13 1/16 1/20 1/23 1/26 1/30 2/2 2/5 2/9 2/12 2/15 2/19 2/22 2/25

体積

含水

率 [

%]

0

20

40

60

80

100

120

神栖

市市

役所

時間

降水

量 [

mm

]

時間降水量

GL-0.2m

GL-0.4m

GL-0.8m

図 深度別土壌水分量と間隙水圧変化図

-4

-3

-2

-1

0

1

11/1 11/4 11/7 11/11 11/14 11/17 11/21 11/24 11/27 12/1 12/4 12/7 12/11 12/14 12/17 12/21 12/24 12/27 12/31 1/3 1/6 1/10 1/13 1/16 1/20 1/23 1/26 1/30 2/2 2/5 2/9 2/12 2/15 2/19 2/22 2/25

間隙

水圧

[m

]

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

神栖

市市

役所

時間

降水

量 [

mm

]

時間降水量

間隙水圧(1m深度)

負圧は参考値

観測開始日時GL-0.2m:11/9 12:10

観測開始日時GL-0.8m:11/9 12:10

観測開始日時GL-0.4m:11/14 10:40

観測開始日時11/14 10:30

水田面の湛水(0.2m計は,飽和状態)1/18,2/28に水面を確認。

2-45

図2.3.12 深度別土壌水分量と間隙水圧変化図

Page 9: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

上層 下層 上層 下層1.2×10-4 0.8×10-5 54.0 54.0

透水係数 [cm/sec] 最大体積含水率:θr

図   1次元浸透流解析のモデルと不飽和特性

適用不飽和特性

0

1

2

3

4

5

深度

(m)

3.25m(平成17年11月10日)

0.2m0.4m

0.8m

上層(50cm)

下層(450cm)

1.0m

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55

体積含水率 θ (%)

サク

ショ

ン 

φ 

(cm

)

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

比透

水係

数 K

r

θ-φ

θ-Kr

+ve

体積含水率

θ(%)

(m)

0

飽和領域

0

不圧地下水位

2-46

図2.3.13 1次元浸透流解析のモデルと不飽和特性

Page 10: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

図 1次元浸透流解析による土壌水分量の検討(現況再現)

0

10

20

30

40

50

11/1 11/6 11/11 11/16 11/21 11/26 12/1 12/6 12/11 12/16 12/21 12/26 12/31 1/5 1/10 1/15 1/20 1/25 1/30 2/4 2/9 2/14 2/19 2/24神栖

市役

所 

時間

雨量

 [m

m/hour]

30

40

50

60

11/1 11/6 11/11 11/16 11/21 11/26 12/1 12/6 12/11 12/16 12/21 12/26 12/31 1/5 1/10 1/15 1/20 1/25 1/30 2/4 2/9 2/14 2/19 2/24 3/1

体積

含水

率 

θ [

%] GL-0.2m(実測値)

1次元浸透流解析

30

40

50

60

11/1 11/6 11/11 11/16 11/21 11/26 12/1 12/6 12/11 12/16 12/21 12/26 12/31 1/5 1/10 1/15 1/20 1/25 1/30 2/4 2/9 2/14 2/19 2/24 3/1

体積

含水

率 

θ [

%] GL-0.4m(実測値)

1次元浸透流解析

30

40

50

60

11/1 11/6 11/11 11/16 11/21 11/26 12/1 12/6 12/11 12/16 12/21 12/26 12/31 1/5 1/10 1/15 1/20 1/25 1/30 2/4 2/9 2/14 2/19 2/24 3/1

体積

含水

率 

θ 

[%] GL-0.8m(実測値)

1次元浸透流解析

水田面の湛水(0.2m計は飽和状態)

GL-0.2m(実測値)1次元浸透流解析

GL-0.4m(実測値)

1次元浸透流解析

GL-0.8m(実測値)

1次元浸透流解析

2-47

図2.3.14 1次元浸透流解析による土壌水分量の検討(現況再現)

Page 11: 2.3 現場透水試験・土の保水性試験・不飽和浸透試験結果 表2.3.2 地層別透水試験結果一覧 現場透水試験・土の保 ... · 2.3.2 土の保水性試験結果

図2.3.15 水田湛水時の鉛直浸透量

1.0E-06

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1/1 1/6 1/11 1/16 1/21 1/26 1/31 2/5 2/10 2/15 2/20 2/25

Qout 

m3/da

y

30

40

50

60

1/1 1/6 1/11 1/16 1/21 1/26 1/31 2/5 2/10 2/15 2/20 2/25

体積

含水

率 

θ [

%]

GL-0.2m

計算

系列3

30

40

50

60

1/1 1/6 1/11 1/16 1/21 1/26 1/31 2/5 2/10 2/15 2/20 2/25

体積

含水

率 

θ 

[%] GL-0.8m

計算

0

10

20

30

40

50

1/1 1/31

神栖

市役

所 

時間

雨量

 [m

m/hour]

1.0E-06

1.0E-05

1.0E-04

1.0E-03

1.0E-02

1.0E-01

1.0E+00

1/1 1/6 1/11 1/16 1/21 1/26 1/31 2/5 2/10 2/15 2/20 2/25

Qou

t m

3/da

y

体積含水率の最大区間

鉛直

浸透

量(最

大区

間)

鉛直

浸透

平均1.6E-3m3/day

 8)水田湛水時の鉛直浸透

①平成18年1/16~2/25(約1ヶ月)、調査対象水田では、多降雨の影響で湛水した。

水田湛水時(かんがい期)

②0.2m,0.8mの体積含水率(θ)の限界状態期間を抽出して、鉛直浸透量を求め、これを

③水田湛水時の限界浸透量(1.6L/日/m2=1.6mm/日)であり、水田湛水深としては、

蒸発散量を加えて、6~15mm/日(蒸発散量5~10mm/日)程度と判定される。

湛水時の鉛直浸透量とする。

④3次元浸透流解析では、鉛直浸透量の限界が認められるため、モデル上の水田範囲は、

流量境界(1.6L/日/m2=1.6mm/日)とすべきと考える。

1.0×10-1

1.0×10-2

1.0×10-3

1.0×10-4

1.0×10-5

1.0×10-6

1.0×100

1.0×10-1

1.0×10-2

1.0×10-3

1.0×10-4

1.0×10-5

1.0×10-6

1.0×100

2-48