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2.5 高分子の結晶 オリゴマー 直鎖アルカン、直鎖フルオロアルカン 層状の結晶を形成し、末端基は平面上並んで層間の境界面を形成 高分子の場合には?伸びきり鎖結晶の生成は特殊な場合のみ 互いに絡み合ったコイル状の分子が、オリゴマーのような結晶になるの は困難 →分子鎖の絡み合いを解きほぐすのには非常に高い活性化エンタルピー が必要。 →平衡融点以下では部分的に結晶化し、ラメラ構造を形成する。 高分子の結晶化 まっすぐな部分→結晶 絡み合い部分→非晶

2.5 高分子の結晶takahara.ifoc.kyushu-u.ac.jp/講義資料/分子集合論...414.3 m 5.0 n T n − = + 融点直下の熱処理 高圧結晶化 ラメラ厚↑Tm ↑ 外力の影響

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2.5 高分子の結晶

オリゴマー直鎖アルカン、直鎖フルオロアルカン

層状の結晶を形成し、末端基は平面上並んで層間の境界面を形成

高分子の場合には?伸びきり鎖結晶の生成は特殊な場合のみ

互いに絡み合ったコイル状の分子が、オリゴマーのような結晶になるのは困難→分子鎖の絡み合いを解きほぐすのには非常に高い活性化エンタルピーが必要。→平衡融点以下では部分的に結晶化し、ラメラ構造を形成する。

高分子の結晶化 まっすぐな部分→結晶 絡み合い部分→非晶

高分子固体の構造形成 熱力学的な平衡ではなく、速度論で決定される。 ある温度で形成される構造は自由エネルギー最小の構造ではなく、最大成長速度をもつ構造

(a) ランダムコイル(b)折りたたみ結晶(c) 伸びきり鎖結晶(d)結晶ー非晶二相構造(Wunderlichによる)

→結晶化の温度と時間が変数として重要

2.5.1 高分子の結晶構造

結晶構造の解析  X線回折  電子線回折  赤外吸収スペクトル(ラマン散乱)

構造解析の意義  立体規則性高分子の発見  DNAの二重らせんと遺伝情報  構造と物性ー結晶弾性率、圧電性

構造解析で得られる情報  結晶格子の種類と大きさ (X線回折、電子線回折)  分子の配向(X線回折、赤外吸収スペクトル)  微結晶の寸法と結晶の乱れ(X線回折、電子線回折)  結晶転移(X線回折、赤外吸収スペクトル)

例 ポリエチレン

斜方晶 α=β=γ=90°平面ジグザグ 21らせん

単位格子にはモノマーが?個

一組面  (hkl) {hkl}方向 [hkl] <hkl>

2 sinn dλ θ=

ポリスチレン(非晶) ポリエチレン(結晶性)

2 2 2

1( )d hklh k la b c

=⎛ ⎞ ⎛ ⎞ ⎛ ⎞+ +⎜ ⎟ ⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎝ ⎠ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠

L:カメラ長

tan 2 rLθ =

デバイリング

非晶ハロー

ポリエチレンの一軸配向物

平板カメラ        円筒カメラ

Polanyi条件sinn Iλ φ=

I:繊維周期

l=2l=1l=0

層線反射より分子軸方向の周期が明らかになる。ポリエチレンの場合c軸

B

A

b

a

AB (110)

(110)

(110)(

110)

c a

b

ポリエチレンの0.01%キシレン溶液を373Kで調製し、348Kに放置すると液が濁ってくる。その液の中には単結晶が生成している。電子顕微鏡で見ると

菱形の板状の結晶が生成(ラメラ結晶)1957 イギリス Kellar使ったポリエチレンの長さは5µm以上どのようにして分子は厚さ10万分の1mmの薄い板状の結晶に入っているのか?何個の分子が1つの単結晶に入っているのだろうか?

1) 単結晶ー希薄溶液からの結晶化

10nm

3. 高分子に特徴的な凝集相

分子鎖がラメラ結晶に垂直であることの証明ー電子線回折

12 sinhklhkld

θλ

= =0sH

*

*

//

( )

VV

V

= ×

= ×= ×

a b cb c a

a b c

電子線回折でc軸からの回折が観測されない

ポリエチレン単結晶は溶液中では中空ピラミッド構造

折りたたみ面の立体的な混雑を緩和

B

A

b

a

AB (110)

(110)

(110)(

110)

c a

b

乾燥

走査プローブ顕微鏡

顕微鏡の分解能ー用いる光の波長λが限界走査プローブ顕微鏡ー光を使わず、微細(nm以下の)位置制御技術を利用

Tip

Sample

ピエゾ素子

レ-ザ-光

カンチレバ-

たわみ方向

x

y

z

走査回路

サ-ボ回路

針の先端と表面原

子に働く力

位置検出

ダイオード

コンピューター

針の位置

試料表面

針の先端と表面

の間のトンネル

電流

1nm以下

走査プローブ顕微鏡

原子間力顕微鏡(AFM)走査トンネル顕微鏡(STM)

3 µm3 µm

scanning direction

cantilever

(a) (b) (c)

ポリエチレン単結晶(HDPE Mw=520k)の表面構造343Kで48時間結晶化(セルフシーディング法)

原子間力顕微鏡像    水平力顕微鏡像   カンチレバーの走査方向と折りたたみ構造の関係

水平力でのコントラスト→規則正しい分子鎖折りたたみ構造(2nm程度)の存在

種々のポリエチレンの単結晶の形態溶媒結晶化温度に依存する

いろいろな高分子の単結晶

ポリチレン結晶の層厚ー小角X線散乱(SAXS)で評価

結晶の厚み→過冷却度に依存

表面自由エネルギー→溶媒に依存

Nakajima 1972

2 sindλ θ=

ポリエチレン単結晶のらせん転位

溶融体あるいは濃厚溶液からの結晶化→球晶の生成

小さな核

 一定速度で成長

他の球晶と接触•同時刻に核生成 界面が平面•核生成時刻が異なる 双曲面

特徴Maltese cross屈折率楕円体が特定の配列

ポリエチレンアジペート30℃

12分

20分

32分

51分

2) 球晶構造

消光リングー網目様球晶(Banded-spherulite)

ポリエチレン     ポリエチレンアジペート

二重の消光リング

正の単軸性屈折率楕円体no:正常光、ne:異常光

正の二軸性屈折率楕円体2つの円形断面と光軸

PEの結晶系 :斜方晶a

b

a=0.493 nm b=0.740 nm c=0.253 nm

na=nb=1.51 nc=1.58(光軸 ) ∆n=nc-na=0.07

PEの屈折率 : ..

..

αβ

γβ

abc

球晶の中心

屈折率楕円体

ラメラ結晶のねじれ

球晶の成長方向

明暗 暗山谷

単結晶に対応するラメラ結晶が高分子の基本構造

5µm 5µm

0 5 10 15 20 25 30

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

2 µm

ポリエチレンフィルムの原子間力顕微鏡と近接場光学顕微鏡観察

高さ/nm

高さ

距離/µm 距離/µm透過光強度

偏光NSOM 形態像

AFM像

消光リングの存在マルターゼクロス→光学的異方性

凹凸や明暗のリングは何に起因する?

5µm 5µm

0 5 10 15 20 25 30

2 µm

0

100

200

300

400

0 2 4 6 8 10高さ/nm

高さ

距離/µm 距離/µm

透過光強度

表面を過マンガン酸でエッチング→表面の結晶性の低い部分がはがれて像は鮮明に

偏光NSOM 形態像

AFM像

NSOMAFM

10

8

6

4

2

0365 370 375 380 385 390

365 370 375 380 385 390

200

160

120

80

40

0

ねじれの周期/µm

谷と山の高さの差/nm

結晶化温度/K

結晶化温度/K

結晶化する温度が高いと、結晶の大きさが増大し、表面の凹凸は大きくなり、ねじれの周期も長くなる

表面形態の結晶化温度依存性

ラメラのねじれ

高分子固体の階層構造

分子

ラメラ結晶

ラメラのねじれ

球晶

フィルム

単結晶に対応するラメラ結晶が高分子の基本構造

2µm 2µm

CCH2

COCH3 H

O

微生物が造るポリエステルの固体膜ポリ(ヒロドキシブチレート) (PHB)

ポリエチレンと同じようにラメラがねじれながら成長

偏光NSOM形態像 Miles, 1996

高分子鎖の回転半径は融液と結晶性固体中で同じ

結晶性高分子の高次組織ー小角X線散乱による解析ラメラ中心間の距離

ラメラ結晶L

2 sinLλ θ=

高次の散乱

3) 伸びきり鎖結晶

ポリエチレン 0.54GPa、238℃50時間結晶化(竹村ら) DTA 

0.1MPa 140℃近傍で融解0.6GPaから早い降温速度でも伸びきり鎖生成

高分子量の線状ポリエチレン溶液を高速で攪拌・結晶化ーシシ・カバブ構造

シシー伸びきり鎖カバブー折りたたみ鎖

溶媒で折りたたみ鎖が除去

4) 繊維構造

結晶性高分子を延伸ー繊維構造

A 折りたたみ結晶C 繊維構造(分子軸が伸長方向に配向)

•分子鎖(微結晶)の配向•折りたたみ結晶間をつなぐ分子(tie分子)の数

高弾性率・高強度繊維の重要な構造因子

延伸

5µm

分子が繊維の長さ方向に配向し、芳香環が繊維断面の半径方向を向いている

Kevlar繊維の断面の偏光NSOM像

nr nc

Ade, 1996

CC N N

O O H H n

繊維構造ー分子鎖が延伸方向に高度に配向

融点、Tm液体の自由エネルギー、Glと結晶の自由エネルギー、Gcが等しくなる。

ΔHf:融解エンタルピーΔSf:融解エントロピー

ΔHf DSC測定により評価

ffm

fmfcl

SHTSTHGGG

∆∆=

∆−∆=−=∆

/

Gc(結晶相)

Gl(液相)

融点での自由エネルギー変化

2.5.3 高分子結晶の融点

融点 →結晶厚に大きく依存

n-パラフィン

0 2( ) (1 )

6.27( ) 414.2(1 )

em m

f

m

T l Tl h

T ll

σ= −

= −

ΔHf=2.79x109ergcm3

σe=87.4erg cm-2

1.5414.35.0m

nTn−

=+

融点直下の熱処理高圧結晶化ラメラ厚↑ Tm↑

外力の影響→変形したコイルΔSd↓ Tm

d↑

希釈剤(diluent)ΔSs↑  Tm

s↓

高分子結晶の結晶化、融解条件と融解エントロピーの関係

2.5.4 結晶相転移

結晶内の分子のパッキング状態が、圧力、温度の変化によって可逆的に変化し、結晶ー結晶相転移を起こす場合がある。

結晶相転移の原因① 分子鎖の形態が変化②結晶内の分子のパッキングが変化③ ①と②が同時に起こる。

パラフィンA相 斜方晶↓ 分子の回転B相 単斜晶↓C相 分子鎖方向の変位↓H相 回転相(六方晶)↓L相 融解相

パラフィンC33のDSC曲線と相転移モデル

ポリエチレン

斜方晶が熱力学的に安定

高圧下 融点直下で六方晶

冷延伸 単斜晶の生成 ↓熱処理斜方晶

2.5.5 結晶化した高分子固体の構造を表すパラメータ

•結晶化度密度測定(結晶ー非晶の二相構造)

•結晶性高分子の特徴的な大きさ(サイズ)小角X線散乱(SAXS)

長周期 積層構造の周期

ピーク強度と形 電子密度差などを反映

a a c c

cc

ac

c a

V V VVV

ρ ρ ρ

φ

ρ ρφρ ρ

= +

=

−=

max

2acd

≈125℃で一次結晶化後のポリエチレンをSAXS散乱曲線の冷却課程の温度依存性(Strobl)

2相モデル 内部構造は積層方向の電子密度で記述できる。

φac=0.85Oac=0.065nm-1

da=4.6nmρec-ρea=52nm-3

dac=34nm

22 3 0

( ) ( (0) ) ( ( ) )

1 1 4 ( )cos(2 )

e e e e

qe

K z z

q I q qz dqr

ρ ρ ρ ρ

ππ

=

= − −

= ∫

i

i

相関関数ー散乱強度のフーリエ変換φac結晶化度Oac 単位体積中の結晶と非晶の界

面積da 結晶あるいは非晶の平均厚さρec-ρea 電子密度差

2.6 高分子の結晶化2.6.1 一次結晶化

高分子の場合は最初の結晶化の温度で一次結晶化が完了した後も、温度をさらに下げると2次結晶化が起こる。• 挿入モード• 表面結晶化

分子量2850kのPEの結晶の種々の結晶化温度における体積分率の結晶化時間依存性(Mandelkern 1972)

結晶化過程ー密度の時間変化の測定•相似的なS字曲線•初期ー核生成のための誘導期•球晶が成長•試料全体に広がる•ゆるやかに結晶化

初期

2.6.2 単結晶の生成理論

希薄溶液 熱的な揺らぎによる均一核生成

一次核上に新しい分子が生長核として付着→単結晶成長

Lauritzen-Hoffmanの理論

厚さlp、要素νからなる一次核の生成の自由エネルギー(核が存在しない場合を規準)

a:ステップ要素一個あたりの断面積(分子鎖断面積)C:形状係数 正方形C=4, 円筒 C=2√πσe:折りたたみ面の界面自由エネルギーσs:側面の界面自由エネルギーΔf:過冷却溶液中の高分子と結晶の単位体積あたりの自由エネルギー差(単位体積あたりの融解の自由エネルギー)

2P e p s pa C al al fφ ν σ ν σ ν∆ = + − ∆

これに対して異物や種結晶がもとになる不均一核生成

Δφpを√νaとlpに対してプロット極小の条件

1/ 2 1/ 22 02

Pe p s p

Ca a l al fφ σ ν σν

−∂∆= + − ∆ =

0Ps

p

C a a flφ ν σ ν∂∆

= − ∆ =∂

( )1/ 2

*

*

4

s

ep

Caf

lf

σν

σ

=∆

=∆

生成エネルギー最小の安定核(臨界核)の大きさ

鞍点Saddle Point

Δφp

Saddle Pointを超えると生成の自由エネルギーは減少しー厚さ一定で一次核が生長する

融解の自由エネルギー融点では

結晶化温度、Tcでは(TmとTcにあまり差が無いとき)

*

0

(1 ) ( )

4 4

m m m

mm

m

m cm c m m

m m m

e e mp

m

f H T SHTS

H T Tf H T H HT T TTl

f H Tσ σ

∆ = ∆ − ∆ =∆

=∆

∆ ∆∆ = ∆ − = ∆ − = ∆

= =∆ ∆ ∆

ΔTが小さいほど臨界核の厚さが増大

( ) ( ) ( )

2 22 2 2

2 2 2

2 2* e s m e sp

m

C C Tf T Hσ σ σ σφ∆ = =∆ ∆ ∆

PEの臨界核の厚みは?Tm0=418.2K

∆h=2.8x109erg cm-3

Xylene solutionσe=90 erg cm-2

σs=11.4 erg cm-2

Tc=395.2KlP*=23.4nmHoffman, Polymer,23,656(1982)

結晶の成長一次核の側面に二次核が成長

生長面の面間隔をb、厚さをlsとすると

2 2s e s s sa bl al fφ ν σ σ ν∆ = + − ∆

2 0se sa al f∂∆

= − ∆ =∂φ σν

2 0Ps

s

b a flφ σ ν∂∆

= − ∆ =∂

** 2 2

22*

pe e ms

m

s

lTlf H T

baf

σ σ

σν

≥ = =∆ ∆ ∆

≥∆

以下の条件の時、成長の自由エネルギーは減少する。

臨界の自由エネルギーは

4 4* e s m e ss

m

b T bf T H

σ σ σ σφ∆ = =∆ ∆ ∆

lsはlpの半分ですむ

Δφpよりもかなり小さくなり、一次核生成後は二次核生成が優先

過冷却度↓ラメラ厚↑

*

*

0

2( )

2(1 )

2( ) (1 )

e ms

m m c

ec m

m s

em m

m

TlH T T

T TH l

T l TH l

σ

σ

σ

=∆ −

= −∆

= −∆

熱平衡状態ではTc~Tm

Tm0 結晶層厚 l→∞のときの融点

2.6.3 融液からの結晶化

結晶の一次核が生成すると二次核は緩い条件で次々に成長する。板状晶の端面が分岐→球晶

過冷却の液体相中に球晶を一般形態とする結晶化度、χcの結晶相が時間とともに生成する過程を考える。

(a)半径R、厚さhの円盤状の球晶を考える。 球晶の半径(G:成長速度)

  球晶の体積

均一核生成機構の場合、dt時間内に生成する核の数, dNcは、Aを非結晶単位体積あたりの核生成速度とすると、dt時間内に生ずる核の数は

  

2 2 2

( )

( )c

R G t z

v R h G t z hπ π

= −

= = −

ac a

a

wdN Av dt A dtρ

= =

tz

R

dt時間内に生ずる結晶相の体積分率、dVc(t,z)

dVc(t,z)=(核の数)x(一つの球晶の体積)

2 2

2 2 2 2

( )

( , )

1

( ) (1 ) ( )

ac c

a

c c c

cc

ac

c a cc c

a a

wdN v A dt G t z h

dw dv t z

ww

ww

w dtdtd A G t z h A G t z hw

πρ

ρ

χ

χ

ρ ρχ π χ πρ ρ

× = −

=

=

− =

= − = − −

[ ]

2 2

0

32

0

32 3

1

2 21

13

31

( )1

( )ln(1 )3

ln(1 )3

1 13 3

1 exp( )

1 exp( )

c

c

t zc c

c az

t z

cc

a z

cc

a

c

a

c

a c

d dtA G t z h

t zA G h

tA G h K t

K A G h G I

K t

K t

χ

χ

χ ρπχ ρ

ρχ πρ

ρχ πρ

ρ π πρ

χ

χ χ

+

+

= −−

⎡ ⎤−− − = ⎢ ⎥

⎣ ⎦

− − = =

= =

= − −

= − = −

∫ ∫

Avramiの式 指数3

1 1 exp( )

ln ln 1 ln ln

nca c

c

c

c

v K tv

v K n tv

= − = − = −

⎡ ⎤⎛ ⎞− − = +⎢ ⎥⎜ ⎟

⎝ ⎠⎣ ⎦

χ χ

ディラトメトリーによる結晶化挙動の評価

12一次元的(繊維状)

23二次元的(円板状)

34三次元的(球晶)

不均一核生成均一核生成成長様式

核生成と成長様式とAvrami指数,n

nの値で結晶化機構を推定できる。束状(sheaf) n>6

結晶化過程で成長の次元が変化するとAvramiプロットは成立しない。

均一核生成:熱揺らぎにより一定速度で核が生成不均一核生成:あらかじめ入っている異物を核として成長する場合、核の数は時間によらず一定

2.6.4 球晶の生長理論

球晶の半径方向の線生長速度(G)は球晶の生長に対する臨界核の生成自由エネルギー∆*φsと拡散の活性化エネルギーの項で表される。

∆*φsは二次核の臨界生成エネルギーである。

* *0 exp( / )exp( / )s DG G kT F kT= −∆ φ −∆

であるのでΔT→0∆*φs→∞融点近傍では球晶の成長は殆ど起こらない。

4 4* e s m e ss

m

b T bf T H

σ σ σ σφ∆ = =∆ ∆ ∆

成長速度は温度に強く依存 →平衡融点とガラス転移温度の中間で最大値

低温側での成長速度の減少セグメントの易動度が低下し、分子鎖の再配列が起こりにくくなる。易動度の逆数(摩擦係数)をVogel-Fulcher式で表す。

(Tv:Vogel温度 Tg以下30-70K、TA:活性化温度 1000-2000K)1log log .A

V

TG constT T

ς − − +−

∼ ∼

経験的には0.8-0.9TmでGは最大

exp A

V

TT T

ς⎛ ⎞⎜ ⎟−⎝ ⎠

0exp expA

V m

T BGT T T T

⎛ ⎞ ⎛ ⎞− −⎜ ⎟ ⎜ ⎟− −⎝ ⎠ ⎝ ⎠

ポリエチレンの球晶の成長速度の温度依存性(Hoffman 1975)TA=750K、TV=203K

結晶化温度が平衡融点、Tm

0に近づくにつれて、結晶

の厚さは増大する0( )c

m

Bd T CT T

= +−

スピノーダルモード

PET(Gunther 1994)延伸物からの結晶化q=0.55nm-1(d=12nm)の散乱強度が時間とともに増大→密度揺らぎの振幅の増大→スピノーダル的

分子が結晶化可能な部分と不可能な部分に分離  分子が配向しているために。欠陥が分子軸方向に高い易動度を示し、活性化過程を経ることなく集まることができる。

二次結晶化

ポリエチレン(M>1M)126℃で結晶化後、低い温度でラマンスペクトルを測定(Strobl 1993)

低温での結晶化度の増大→二次結晶化

C-C伸縮 CH2変角

ポリエチレン(M>1M)126℃で結晶化後、低い温度でSAXS測定(Strobl 1995)

相関関数より非晶の厚みと界面積、結晶化度を評価→結晶ー非晶の界面が非晶側に移動(表面結晶化)