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第3回 インテレクチャル・カフェ広島 iPS細胞等幹細胞評価基盤技術開発 に向けたアプローチ 産総研・幹細胞工学研究センター 器官発生研究チーム 伊藤弓弦 2013. 1. 23. 於ひろしまハイビル21

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第3回 インテレクチャル・カフェ広島

iPS細胞等幹細胞評価基盤技術開発に向けたアプローチ

産総研・幹細胞工学研究センター器官発生研究チーム

伊藤弓弦

2013. 1. 23. 於ひろしまハイビル21

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再生医療と幹細胞

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イモリは失った手足を再生できる

ヒトは再生出来ない

再生医療医療の力で失われた

身体の機能を回復する

再生

再生医療とは

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① ES細胞(胚性幹細胞)・半永久的に分裂・増殖できる・分裂速度が早い・作製時に命の始まりである胚を滅失させる(倫理的問題)・移植時の効果や安全性が確認できていない・患者本人の細胞ではないため、拒絶反応を抑える方法が必要・作製時に様々な品質のES細胞ができてしまう

② iPS細胞(人工多能性幹細胞)・半永久的に分裂・増殖できる・分裂速度が早い・移植時の効果や安全性が確認できていない・患者本人の細胞から作製できるため、倫理的問題が少ない・患者本人の細胞から作製できるため、拒絶反応が無い・作製時に様々な品質のiPS細胞ができてしまう。

③ 体性幹細胞・半永久的に分裂・増殖できるかは不明・分裂速度が遅い・骨髄移植等では移植時の効果や安全性が確認されている・患者本人や同意したドナーの細胞であれば、倫理的問題が少ない・患者本人の細胞を用いれば、拒絶反応が無い・様々な性質の体性幹細胞が単離される

青字は長所、赤字は短所。

幹細胞には大きく分けて3種類があり、それぞれ樹立・単離方法や時期が異なる。

胚盤胞 ① ES細胞

樹立・培養

遺伝子導入等

③ 体性幹細胞

体細胞 ② iPS細胞

成人

単離・培養

幹細胞の種類

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iPS細胞の利用とその課題

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==induced Pluripotent Stem cell誘導された 多能性の 幹 細胞

人工的に作られた いろいろな細胞に分化できる

===

多能性

分裂して自分と同じ性質の細胞を増やせる細胞

iPS細胞(人工多能性幹細胞)ってなに?

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京大・山中教授が初めて発表したヒトのiPS細胞

iPS細胞のコロニーフィーダー細胞

拡大拡大

倍率50倍 倍率200倍

1mm

iPS細胞(人工多能性幹細胞)ってなに?

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膵臓ベータ細胞(Ⅰ型糖尿病)

心筋細胞(心筋梗塞)

肝臓細胞、血液細胞

どの病気に対しても、ヒトへの移植といった臨床研究はまだ行われていない。

網膜色素上皮細胞(加齢黄斑変性)

iPS細胞を用いた治療例

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iPSに特徴的な細胞コロニーを選択して、植え継ぎ

培養

検査して性質を確認する

採取

培養

(未分化性に重要な遺伝子など。山中教授が報告したiPS細胞では、Sox2, Oct3/4, Klf4, Myc)

iPS細胞の作製方法

遺伝子導入

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目的の細胞に分化させる

(目的の細胞ごとに異なり、薬剤や遺伝子導入など)

必要な数まで培養して増やす

分化した細胞を選別して集める

iPS細胞

移植

移植までの流れ

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実際には、増やしたiPS細胞を凍結保存したり、性質を検査するのに使用してしまうので、もっと時間がかかる。

倍化時間43.2±11.5時間*

(201B7)

約2日 約2日

108個以上

2ヶ月程度

心筋梗塞の場合

Takahashiら、Cell (2007)より

iPS細胞を培養して増やす

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1.時間がかかる

2.培養が難しい

3.iPS細胞ごとに性質の差がある

4.遺伝子組み換えをしている

5.移植後のがん化のリスク

iPS細胞での再生医療の課題

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iPS細胞利用にかかる時間

iPS細胞の作製 培養して増やす目的の細胞に分化選別

1‐2ヶ月 1‐2ヶ月

安全性等試験

対象の疾患によっても異なるが、患者さんから細胞を採取してから移植までに半年から2年くらいかかると考えられている。(進行の早い疾患には対応が難しい)

移植採取

1.時間がかかる(その分コストもかかる)

半年‐1年

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良い培養状態 悪い培養状態

ヒトiPS細胞の性質を維持しながら、培養するのは難しい。

誰でも簡単にできる培養方法が必要

2.培養が難しい

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iPS化遺伝子導入

採取

どこに入るかはランダム

導入した遺伝子は、細胞のDNAにランダムに入り、iPS細胞になった後や移

植後もそのまま残るので、入ったままの遺伝子の影響や、周辺の遺伝子への影響が心配される。

4.遺伝子組み換えをしている

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課題解決のための取り組み

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1.時間がかかる(その分コストもかかる)2.培養が難しい3.iPS細胞ごとに性質の差がある4.遺伝子組み換えをしている5.移植後のがん化のリスク

iPS細胞バンク

課題を解決するための取り組み1

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治療までの時間を短縮できる。

治療費が節約できる。

時間をかけて安全性などを確認できる。

デメリット:本人の細胞が使えることが、iPS細胞の利点なのに・・・白血球の血液型を合わせれば免疫拒絶を抑えることができる。特殊なタイプの人から細胞を提供してもらい、iPS細胞を作製すれば、140種類の型をそろえるだけで日本人の9割をカバーできる。(Okitaら、nature methods, 8(5):409-412 (2011))

治療に患者本人のiPS細胞を使うのではなく、あらかじめ健康な人から作製してストックしておいたiPS細胞を使う。

iPS細胞バンク

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1.時間がかかる(その分コストもかかる)2.培養が難しい3.iPS細胞ごとに性質の差がある4.遺伝子組み換えをしている5.移植後のがん化のリスク

培養の機械化(自動培養装置)

課題を解決するための取り組み2

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安定した幹細胞供給システムの開発

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iPS細胞連続培養の自動化に成功

・連続培養試験を行い、『20継代以上のヒトiPS細胞の自動連続培養』に成功した。・AP染色による未分化性の確認をしたところ、コロニーの個数比で98%が未分化を達成した。

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良質なiPS細胞コロニーのみ選択的継代

・iPS細胞コロニーの『分化/未分化を識別する画像処理技術』の開発に成功した。・iPS細胞コロニーを『選択的に剥離する技術』の開発に成功した。

広視野画像と画像処理技術により、良質なコロニーの輪郭を検出

選択的ピペッティングにより、良質なコロニーを剥離

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1.時間がかかる(その分コストもかかる)2.培養が難しい3.iPS細胞ごとに性質の差がある4.遺伝子組み換えをしている5.移植後のがん化のリスク

iPS細胞の規格化

課題を解決するための取り組み3

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幹細胞の写真

MRCiPS#25 hiPS201B7

UtEB05 UtEB05

TIG3MKOSiPS#19

KhES1

・iPS細胞の性状は、見た目からしてバラバラ。・先行研究で、ES細胞ですら性質の違いがあると報告。(分化指向性、造腫瘍性、安定性などなど)

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1.時間がかかる(その分コストもかかる)2.培養が難しい3.iPS細胞ごとに性質の差がある4.遺伝子組み換えをしている5.移植後のがん化のリスク

課題を解決するための取り組み4

がん化を防ぐ様々な試み

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(1) iPS細胞を作る時にがんの原因になる遺伝子を使う。危険な遺伝子を使わない方法

(2) iPS細胞を作る時に細胞のDNAを傷つける。DNAを傷つけない方法

(3) 分化しなかった細胞が一緒に移植される。分化した細胞だけを選別

がん化する理由とその対処法

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遺伝子導入

採取

どこに入るかはランダム

(2)細胞のDNAを傷つける

(1)がんを引き起こす原因になる遺伝子を使う

(1)別の遺伝子を使う方法

より安全で効率の良い遺伝子

(2)‐1 DNAを傷つけない方法

センダイウイルスベクター

プラスミド

(2)‐2 遺伝子導入をしない方法

タンパク質や化学物質

がん化を防ぐ試み(1)(2)

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がん化を防ぐ試み(3)

心筋誘導

心筋細胞のみにする

がんになるiPS細胞の除去

ガン化の危険性のない

安全な細胞治療を実現

不完全な分化

移植細胞からがん形成細胞の除去

iPS細胞

磁気ビーズ付きAiLecS1

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5.移植後のがん化のリスク

残ったiPS細胞を除去

課題を解決するための取り組み(まとめ)

2.培養が難しい

3.iPS細胞ごとに性質の差がある

4.遺伝子組換えをしている

1.時間がかかる iPS細胞バンク

自動培養装置

がん遺伝子を使わない

遺伝子組換えしない作製法

iPS細胞の規格化