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18― 鹿児島県医師会報 平成23年2月号 不明不妊症に対しては積極的に腹腔鏡下手 術をすべきであり、このことにより3~4 割の患者が高度生殖医療によらない妊娠を 期待できるとお話いただきました。 八重樫先生には、1)リンパ節郭清の副 作用、2)子宮頸癌とセンチネルリンパ節、 3)ナビゲーション手術の実際、4)センチ ネルリンパ節生検による郭清施行の決定、 5)微小転移とセンチネルリンパ節、につ いて分かりやすくお話いただきました。子 宮癌に対するセンチネルリンパ節生検を利 用した縮小手術(センチネルリンパ節ナビ ゲーション手術)は、患者のQOLの向上 につながるというのが、八重樫先生のまと め・主張ではなかったかと思います。 二題の特別講演がかなり深い内容とな り、ディスカッションも充実したものであ り、出席した多くの学会員の先生方に満足 していただきました。特別講演演者二人の 先生方が、最近の話題を臨床に則してユー モアを交えながら分かりやすくお話してい ただいたことが、成功につながったのかと 思います。今回の学会をふまえて、これか らも臨床に新たな、しかも低侵襲な手技が 取り入れられる事を願ってやみません。 (文責:第3分科会会長 堂地勉 実務担当者 山﨑英樹) 第4分科会 外科学会 平成22年11月14日(日)に城山観光ホテ ルで、九州医師会医学会第4分科会の外科 学会を開催し、教育講演と特別講演を行っ た。参加者は約50名であった。 教育講演では、鹿児島大学大学院医歯 学総合研究科腫瘍制御学・消化器外科学 准教授の上野真一先生に「肝細胞治療の現 況とその展望:鹿児島肝癌研究会2400症 例に基づいて」の演題で、原発性肝癌の疫 学、治療選択と成績、二次予防についてご 講演いただいた。鹿児島肝癌研究会は、鹿 児島県で肝癌治療を積極的に行っている9 施設で組織されており、その集積データを もとに、2003年に治療アルゴリズムを策 定、治療法を標準化し得たことで、4年ご とに解析している治療成績が向上してきて いる。肝細胞癌治療においては各科にまた がる総合的な視点と各診療科の連携が重要 であると述べられた。 特別講演では、鹿児島大学大学院医歯学 総合研究科循環器・呼吸器・消化器疾患制 御学教授の井本浩先生に「心臓血管外科- 最近のトピックス」を疾患群ごとにご講演 いただいた。先天性心疾患では、単心室症 に対する機能的根治術である Fontan 手術 を紹介され、計画的・段階的手術戦略の導 入により手術到達率が増加、長期生存およ

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特 集18― 鹿児島県医師会報 平成23年2月号

不明不妊症に対しては積極的に腹腔鏡下手術をすべきであり、このことにより3~4割の患者が高度生殖医療によらない妊娠を期待できるとお話いただきました。 八重樫先生には、1)リンパ節郭清の副作用、2)子宮頸癌とセンチネルリンパ節、3)ナビゲーション手術の実際、4)センチネルリンパ節生検による郭清施行の決定、5)微小転移とセンチネルリンパ節、について分かりやすくお話いただきました。子宮癌に対するセンチネルリンパ節生検を利用した縮小手術(センチネルリンパ節ナビゲーション手術)は、患者のQOLの向上につながるというのが、八重樫先生のまとめ・主張ではなかったかと思います。 二題の特別講演がかなり深い内容となり、ディスカッションも充実したものであり、出席した多くの学会員の先生方に満足していただきました。特別講演演者二人の先生方が、最近の話題を臨床に則してユーモアを交えながら分かりやすくお話していただいたことが、成功につながったのかと思います。今回の学会をふまえて、これからも臨床に新たな、しかも低侵襲な手技が取り入れられる事を願ってやみません。

(文責:第3分科会会長 堂地勉 実務担当者 山﨑英樹)

第4分科会 外科学会

 平成22年11月14日(日)に城山観光ホテルで、九州医師会医学会第4分科会の外科学会を開催し、教育講演と特別講演を行った。参加者は約50名であった。 教育講演では、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科腫瘍制御学・消化器外科学准教授の上野真一先生に「肝細胞治療の現況とその展望:鹿児島肝癌研究会2400症例に基づいて」の演題で、原発性肝癌の疫学、治療選択と成績、二次予防についてご講演いただいた。鹿児島肝癌研究会は、鹿児島県で肝癌治療を積極的に行っている9施設で組織されており、その集積データをもとに、2003年に治療アルゴリズムを策定、治療法を標準化し得たことで、4年ごとに解析している治療成績が向上してきている。肝細胞癌治療においては各科にまたがる総合的な視点と各診療科の連携が重要であると述べられた。 特別講演では、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科循環器・呼吸器・消化器疾患制御学教授の井本浩先生に「心臓血管外科-最近のトピックス」を疾患群ごとにご講演いただいた。先天性心疾患では、単心室症に対する機能的根治術である Fontan 手術を紹介され、計画的・段階的手術戦略の導入により手術到達率が増加、長期生存およ

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―19特 集

鹿児島県医師会報 平成23年2月号

びQOL向上が得られていると述べられた。また虚血性心疾患や弁膜疾患、大動脈疾患など疾患群ごとに最近の症例をまじえ、多岐にわたる心臓外科の最近の進歩についてご講演いただいた。 いずれの講演もデータに基づいた基礎治療から最先端治療の内容であり、会場からの質疑応答も活発で非常に充実した学会であった。(文責:鹿児島県臨床外科学会長  愛甲 孝)

 平成22年11月14日の秋晴れの中、城山観光ホテル パールホール天平(A会場)とガレリア(B会場)の2会場で開催された。 今回の東洋医学会のテーマは『Successfulaging を支える漢方』で、丸山征郎会頭の挨拶のあと、午前9時より2会場に分かれて37題の一般口演が行われ、各会場で熱心な討論が行われた。 昼食時にはA会場にて後藤哲也先生(心和堂後藤クリニック)の座長で、医療法人有隣会伊敷病院の神田橋條治先生が『統合

第5分科会 東洋医学会(第36回日本東洋医学会九州支部学術総会)

医療への提言』と題して教育講演(ランチョンセミナー)を行った。心身総合体を診断・治療する統合医療の進むべき道に東洋医学がいかに貢献するかという講演で、会場は満席となった。 午後の部はA会場で、織部和宏先生(織部内科クリニック)、宇宿功市郎先生(熊本大学病院 教授)の座長で、『ハッピー・エイジングを支える東洋医学の方法と思想』と題して8名のシンポジストによるシンポジウムが開催された。古方の立場から:三瀦忠道先生(飯塚病院)、中医の立場から:加島雅之先生(熊本赤十字病院)、鍼灸の立場から:向野義人先生(福岡大学病院)、口腔科学の立場から:山口孝二郎先生(鹿児島大学病院)、薬剤の立場から:前村勉先生(厚仁堂薬局)、口腔ケアの立場から:鉛山光世先生(鹿児島大学病院)、在宅ケアの立場から:泊奈津美先生(医療法人ナカノ会)、栄養学の立場から:油田幸子先生(JA鹿児島県厚生連病院)の8名の先生方が各立場からハッピーエイジングを捉えてご講演下さり、会場は大いに賑わいを見せた。 シンポジウムに続いて、溝部宏毅先生(みぞべ内科循環器医院)の座長で、丸山征郎会頭(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科特任教授)が『生病老というライフサイクルの漢方視点』と題して会頭講演を行った。東洋医学の特徴としての部分から全体へと辿る思考法と漢方独特の尺度でライフサイクルの構造解析を分かりやすくお話いただき会場は知的興奮に包まれた。 尚、学会参加者は総計258名で、内訳は学会正会員169名、非会員(医師・歯科医師)19名、パラメディカル42名、招待者・学生28名であり、平成14年の前回開催時に比して100名の出席増員があり、大盛況の学会であった。