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総特集 「看護必要度」 取り組み事例集 看護必要度は、医療・看護をめぐる環境の急激な変化に伴 い、形を変え、役割を拡大し、現在に至っています。 2016 年度診療報酬改定においては、急性期医療の適切な 評価等の視点から、評価項目・該当基準・該当患者割合など が見直され、チーム医療の推進という視点からは、一部の評 価項目で薬剤師や理学療法士等の処置・介助等が評価対象と なり、評価者となることも可能となりました。また、DPC 対象病院では個々の患者の看護必要度データ提出も始まり、 それぞれの病院の医療・看護の実態が明らかとなります。 第 1 章では、2016 年度診療報酬改定における看護必要度 の見直しの経緯や方向性を解説していただきます。第 2 章で は、急性期病院の取り組みとして、評価者育成、評価精度の 向上、監査体制の確立、根拠となる記録の整備などを積極的 に行っている 9 つの病院から、その工夫と知恵を紹介してい ただきます。第 3 章では、3 人のコンサルタントがそれぞれ かかわっている病院のデータから、今年度改定の影響を分析。 さらに今後、病院・看護部はどのような点に注目して組織運 営を進めていくべきか、提言をしていただきます。 S P E C I A L F E A T U R E

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Page 1: 総特集 「看護必要度」 取り組み事例集総特集 「看護必要度」 取り組み事例集 看護必要度は、医療・看護をめぐる環境の急激な変化に伴

総特集

「看護必要度」取り組み事例集

 看護必要度は、医療・看護をめぐる環境の急激な変化に伴い、形を変え、役割を拡大し、現在に至っています。 2016 年度診療報酬改定においては、急性期医療の適切な評価等の視点から、評価項目・該当基準・該当患者割合などが見直され、チーム医療の推進という視点からは、一部の評価項目で薬剤師や理学療法士等の処置・介助等が評価対象となり、評価者となることも可能となりました。また、DPC対象病院では個々の患者の看護必要度データ提出も始まり、それぞれの病院の医療・看護の実態が明らかとなります。 第 1章では、2016 年度診療報酬改定における看護必要度の見直しの経緯や方向性を解説していただきます。第 2章では、急性期病院の取り組みとして、評価者育成、評価精度の向上、監査体制の確立、根拠となる記録の整備などを積極的に行っている 9つの病院から、その工夫と知恵を紹介していただきます。第 3章では、3人のコンサルタントがそれぞれかかわっている病院のデータから、今年度改定の影響を分析。さらに今後、病院・看護部はどのような点に注目して組織運営を進めていくべきか、提言をしていただきます。

S P E C I A L F E A T U R E

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1章 解説

1-1 「重症度、医療・看護必要度」の経緯と仕組みについて・・・・・・・・ ・・奥田・清子・ 006

1-2 「重症度、医療・看護必要度」をめぐる検討と今後の方向性・ ・・ ・・武井・純子・ 012

1-3 新「重症度、医療・看護必要度」評価による 急性期病院の傾向とHファイル評価の行方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・箕浦・洋子・ 023

2章 取り組み・活用事例

2-1 「重症度、医療・看護必要度」評価の精度管理に向けた取り組みと 看護管理での活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・倉敷中央病院 高村・洋子・ 030

2-2 看護必要度の正確な評価を目的としたデータ管理体制の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・北里大学病院 吉田・秀美・ 038

2-3 看護必要度監査システムと委員会の有機的活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・小倉記念病院 松岡・さおり・ 048

2-4 評価の根拠となる看護記録と監査体制の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・筑波メディカルセンター病院 貝塚・久美子・ 057

2-5 評価しやすいシステムづくりと評価精度向上への取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・市立函館病院 笹尾・眞理子・ 065

「看護必要度」取り組み事例集

臨時増刊号2016年11月 第68巻 第 14号

総特集

日本看護協会機関誌Journal of the Japanese Nursing Association November 2016 Volume 68 / Number 14

Page 3: 総特集 「看護必要度」 取り組み事例集総特集 「看護必要度」 取り組み事例集 看護必要度は、医療・看護をめぐる環境の急激な変化に伴

2-6 多職種連携の視点から院内全体を対象に教育指導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・沼津市立病院 土屋・美代子・ 073

2-7 小規模病院における地域連携と看護必要度を活用した人事管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・聖マリアンナ医科大学東横病院 倉岡・圭子・ 083

2-8 看護必要度のデータ分析による病棟再編成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・国際親善総合病院 澤本・幸子・ 088

2-9 ビデオ作成を通して行う評価者研修・ ・・・・・・・・・ ・ ・藤沢湘南台病院 レネ・祐子・ 096

2016年度診療報酬改定後の「重症度、医療・看護必要度」3章 をどう捉えるか

3-1 重症度、医療・看護必要度への対応 7施設のコンサルテーション事例からの気づき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・池田・周一・ 104

3-2 看護必要度とどう向き合うか 病院経営の視点から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・澤田・優香・ 114

3-3 重症度、医療・看護必要度の活用 制度および組織において・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・長面川・さより・ 124

本誌を無断で複写複製 ・転載すると著作権 ・出版権の侵害となることがありますのでご注意ください。

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012 看護 2016. 11月臨時増刊号

1−2解説

 2016年度診療報酬改定により、「重症度、医療・

看護必要度」は大きく見直されました。本稿では

「中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織

入院医療等の調査・評価分科会」の委員として、

見直しに携わった武井純子氏に、検討の経緯を解

説していただきます。さらに本稿の後半では、武

井氏に看護管理者として重要なポイントである、

病院経営等への活用方法についても示していただ

きました。

中医協の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」とは

 中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織

は、診療報酬体系の見直しに関する技術的課題の

調査・検討をする組織であり、5つの分科会があ

ります。その 1つである「入院医療等の調査・評

価分科会」(以下:分科会)は、2016 年度診療報

酬改定に向けて、2014 年度診療報酬改定に係る

答申書附帯意見のうち、「入院医療に関連する事

項」について、実態調査・検証・検討を行ってき

ました。

武井 純子

社会医療法人財団慈泉会相澤東病院 看護部長

 2016 年度診療報酬改定では、「重症度、医療・

看護必要度」(以下:看護必要度)は看護配置の

手厚い急性期病床に入院する患者像を適正に評価

する観点と病床機能分化を推進する観点から、急

性期患者をより厳密に評価する項目や基準へと変

更され、該当患者割合も見直されました。

 2014・2015 年度の分科会では、急性期入院医

療に関連する事項の 1つである看護必要度につい

て、2014 年度診療報酬改定の影響の実態調査を

基に、2016 年度診療報酬改定に向けて検討を行

いました。

入院医療等の調査・評価分科会における検討結果

 結果として看護必要度は 2016 年度診療報酬改

定で、中医協議論の場に提示されたさまざまな

データを基に、入院医療の機能分化推進のため、

急性期医療を評価する項目および基準へと改定さ

れました。

 具体的には、

● 一般病棟用評価項目における、① A 項目の「専

「重症度、医療・看護必要度」をめぐる検討と今後の方向性

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Vol. 68 No. 14 013

「重症度、医療・看護必要度」をめぐる検討と今後の方向性

門的な治療・処置」への「無菌治療室での治療」

の追加、②「救急搬送後の入院」の追加、③ B

項目の「起き上がり」「座位保持」の削除と「診

療・療養上の指示が通じる」と「危険行動」の追

加、④ C 項目(手術等の医学的状況)の追加

● 一般病棟用、特定集中治療室用、ハイケアユニッ

ト用の評価項目における B 項目の統一

● 看護職以外の職種が実施した処置や介助の記録

も評価対象になる等、医療チームで評価する視

点の導入

● 基準を満たす該当患者割合の引き上げ

などです。そして、DPC 対象病院に義務づけら

れるHファイルの報告は、看護必要度の生デー

タを提出することになるため、今後の改定に大き

な影響を及ぼすと考えられます。

 では、この項目改定について分科会でどのよう

な意見が出され議論されたのか、公表されている

資料を基に一部を説明したいと思います。

1.A・C項目について<分科会検討結果>手術直後の患者や救急搬送後

の患者は、急性期の入院医療を受けているが、処

置やADLの状況等により、現行の「重症度、医療・

看護必要度」の基準を満たさないことも多い。この

ほか、現行の基準には含まれないが、医師の指示

の見直しが頻回で、急性期の医療の必要性が高い

状態として、無菌治療室での管理等が挙げられた。

 7対 1入院基本料を算定する医療機関に求めら

れているのは急性期医療機能であるので、手術直

後の患者や救急搬送されて重症度の高い患者な

ど、明らかに急性期医療が必要と思われる患者を

A項目で評価するべきとの意見から、さらに急

性期医療の必要性が高い項目を調査した結果(資

料 1)、既存の看護必要度A項目で評価されてい

ない項目として手術後の患者、救急搬送後の患者、

無菌治療室での治療、特定集中治療室やハイケア

ユニットで評価されている中心静脈圧測定や観血

各診療報酬項目の実施された患者のうち、実施日に「医師の指示の見直しが 1 日 1 回以上必要」な患者の割合が 60%以上であった項目※ 特徴 現在の取り扱い

人工呼吸器の使用、終末呼気炭酸ガス濃度測定等 呼吸ケア既存の A 項目に関連が

強いもの保存血液輸血、自己血輸血等 輸血や血液製剤の使用無菌製剤処理料 抗悪性腫瘍剤の使用FDP 定性、全血凝固、AT 活性、D ダイマー定性 凝固異常(抗血栓塞栓薬の持続点滴)麻酔管理料、閉鎖循環式全身麻酔等 手術後の患者 第 5 回入院

分科会で議論

既存のA 項目で評価されていない

項目

夜間休日救急搬送医学管理料、創傷処置等 救急搬送後の患者中心静脈圧測定、観血的動脈圧測定 ICU/HCU で評価されている項目

その他

無菌治療室管理加算、サイトメガロウイルス抗体価、サイトメガロウイルス抗原、アスペルギルス抗原、細菌培養同定(口腔)、細菌培養同定(消化管)、β-D- グルカン、集菌塗抹法加算

抗悪性腫瘍剤の投与後など極度の免疫抑制時に実施される検査・治療

基本的検体検査実施料、基本的エックス線診断料等 特定機能病院で実施される項目ケトン体アンプル法、フィブリノゲン半定量、抗核抗体、β2- マイクログロブリン、アミラーゼ(尿)、トランスサイレチン、腰椎穿刺、Tf 脈波図・心機図・ポリグラフ、誘発筋電図、他医撮影の写真診断、間歇的導尿

その他の処置・血液検査項目

○ 7 対 1 入院基本料の入院患者の各診療報酬項目の実施された患者のうち、実施日に、「医師の見直しの頻度が 1 日 1 回以上必要な患者」の割合が 60%以上であるものを検索した結果、現在の重症度、医療・看護必要度の A 項目で評価されていない項目として、ICU/HCU で評価されている項目や、極度の免疫抑制時に実施される検査・治療が挙げられた。

<診療報酬項目と、医師の指示の見直しの頻度との関連に関する分析>

※ DPC 対象医療機関の患者約 25,000 人を対象に 2 週間の調査を行い、EF ファイルから、延べ 100 回以上算定された項目について網羅的に分析。出典 : 保険局医療課調べ(DPC 病院対象)

【資料 1】医師の指示の見直しの頻度が高い算定項目について

〈出典〉平成 27 年度第 10 回入院医療等の調査・評価分科会別添資料より1)

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発行・発売 2016 年 11 月 5 日

発 行 所 株式会社日本看護協会出版会

東京都渋谷区神宮前 5-8-2 日本看護協会ビル 4階

Tel.0436-23-3271(コールセンター:ご注文)

振替 00190-8-168557

東京都文京区関口 2-3-1

Tel.03 -5319 -8017(編集直通)

発 行 人 井部俊子

編   集 阿部真里子/米丸未央子/濵田拓男

編集協力 株式会社自由工房

編集委員 井伊久美子/和田幸恵/長田晋一/伊藤雄介(日本看護協会)

企画協力 田中彰子(横浜創英大学看護学部看護学科教授)

表紙デザイン 新井田清輝

印  刷 三報社印刷株式会社

定  価 本体 1,800 円+税

November112016

Volume 68 Number 14