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細胞生物学
第一回
奈良教育大学 理科教育講座 生物学教室 細胞生物学研究室
石田正樹
環境と恒常性
( homeostasis
environment
response
+
-
環境応答の分子ネットワーク
Figure 1-39 Molecular Biology of the Cell, Fifth Edition (© Garland Science 2008)
正のフィードバック 負のフィードバック
light Photosynthesis
utilization
A Phototropism
B greening
C orientation behavior
D phototaxis
2008
circadian rhythm
Pineal gland
hypothalamus
gene expression
energy supply
behavior
photoreception
circadian clock
out put
oscillator
ultraviolet light
UV-A !DNA NA melanoma
•" •"DNA •"
melanocyte
物理的な環境への応答 温度
熱ショックタンパク質 heat shock protein
変性 denature を防ぐ
障害 injury 生物 高い温度
70℃を超す温度は タンパク質や核酸の 変成を引き起こす
低い温度 低温障害 chilling injury 生物
凍結障害とならない 程度であっても、 酵素活性に影響し、 個体に障害を引き 起こす
休眠 dormancy 春化 vernalization 植物の種子や球根は、一定の低温を経験しなければ休眠
打破できない。
適応 adaptation
馴化 acclimation 糖の貯蓄等
極地方の生物 凍結耐性タンパク
質の獲得
多細胞体における内部的な恒常性と環境応答
恒常性の維持 個体 individual 独自の環境を形成
消化管の内部で形成される生態系
血液 検査では、正常値という値の範囲がある 一定に保たれている
緩衝作用 buffering action
CO2+ H2O H+ + HCO3−! pH 7.4
血糖値 0.1% pH 7.4 血圧 120/80 温度 37℃
Bohr effect
pH pH 7.2!!
!!
!pH
pH
pH
dynamic equilibrium
情報伝達系による恒常性維持
フィードバック制御 feedback regulation 変化を検出して元に戻す
受容器 receptor
効果器 effecter
中枢 regulator center
刺激 stimulus
応答 response
cancel
ホルモン 神経伝達物質
神経 神経伝達物質
血糖値 増加
膵臓ランゲル ハンス島β細胞
視床下部
インスリン
肝臓 グリコーゲン合成促進 グリコーゲン分解 細胞 グルコース消費促進
血糖値 低下
血糖値 低下
膵臓ランゲル ハンス島α細胞
グルカゴン
血糖値 増加
外来病原体への応答
生物的刺激
感染 infection
物理的な刺激 非生物的刺激 光
温度 化学物質
病原体 pathogen
ウイルス virus 細菌 bacteria 菌類 fungi
生存を脅かす重大な問題
ストレス stress
bacteriophage
virus = DNA
DNA
lysogenization
DNA
retrovirus
RNA
lysogenization
(AIDS)
DNA
HIV
RNA
Homo sapience
reversetranscription
infection
ウイルス抵抗性
ウイルス受容体 virus receptor
ウイルス 宿主細胞
ウイルスのタンパク質 virus protein
• ウイルスのもつ配列と相補的な配列をつくって発現させない post-transcriptional gene silencing
・ウイルス受容体の欠失
・ウイルス増殖の阻害剤の利用
・ウイルス脱出の阻害 (新たな感染防止)
・ウイルス感染あるいは増殖を助ける因子の欠損
• ウイルスのRNAを切断して使えなくする RNAi 技術に応用
オセルタミビル 抗A型、B型インフルエンザ薬 (タミフル:脱出阻害)
アバカビル 抗レトロウイルス薬 逆転写酵素の阻害剤
ファビピラビル 抗インフルエンザ薬 遺伝子複製の阻害剤 (エボラ熱に効果?)
病原生物に対する抵抗性
病原生物 pathogen
ウイルス virus 細菌 bacteria 菌類 fungi 寄生虫 parasite
免疫 immunity
感染 infection
抗原 antigen
タンパク質 protein
感作 sensitization
一旦、個体に記憶された抗原には、次回の感染時に速やかに対応できるしくみ
アレルギー反応
抗体 antibody
脊椎動物の場合
全身抵抗性 systemic resistance
病原体に対する抵抗性 脊椎動物に限らず植物やその他の動物にもそなわっている
自発的な死 = アポトーシス apoptosis
感染 infection
感染の拡大を防ぐ 病原菌をその細胞に 閉じ込めてしまう
全身抵抗性 systemic resistance
他の細胞も2度目の感染にかかりにくくなる
シグナル伝達 植物ホルモン サリチル酸 (病原菌感染)
ジャスモン酸 (傷害、根圏微生物) エチレン (傷害、根圏微生物)
ブラシノステロイド (病原菌)
1975年アメリカのクッチがキュウリの第一葉(株元に近い一番下の葉)だけに,炭疸病菌を接種して病斑をつくらせておき,次いで炭疸病菌や黒星病菌などを植物体全体に接種したところ,上位葉でもこれら複数の病害の発生が抑制された。すなわち複合抵抗性が現われた。この現象がSAR誘導のモデル実験として,今日まで広く知られている。
まとめ
生物は外界とは異なる内部環境を維持する。 これを恒常性(ホメオスタシス)という。
生物は環境に応答し、自身の生存にとって最も合目的的な反応をする事が多いが、それは生物の細胞や細胞集団に組み込まれた情報処理ネットワークによるものである。環境応答情報伝達システムの理解は、生命現象の理解に取ってきわめて重要である。
生物が応答する刺激には、物理的なものと生物的なものがある。
物理的な環境刺激としては、光と温度が代表的なものであるが、これらは、概日リズムや季節的変化に対する適応の信号として働く。
生物的な環境刺激としては、多細胞体の体内環境も含まれる。これには、ホルモンや神経伝達物質などが含まれる。
もう一つの生物的な環境刺激としては、感染がある。感染に対する防御は生物に共通した重要なしくみである。
感染防御系として最も発達したものが、哺乳動物における免疫系である。