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置換反応・脱離反応を用いた合成
置換反応と脱離反応の競争
置換反応を用いた合成
脱離反応を用いた合成
多段階合成
1
塩基の強さと E1・E2 反応(復習)「高濃度の強い求核剤(塩基)」を非プロトン性溶媒中で使う
→SN2/E2 反応条件
「弱い求核剤(塩基)」をプロトン性溶媒中で使う
→SN1/E1 反応条件
SN2 と E2, SN1 と E1 は同時に起きることが多い(競争反応)
置換生成物と脱離生成物をどうやって作り分けるか?
2
置換生成物と脱離生成物を作り分ける:立体障害立体障害が大きな塩基を使う=脱離反応が優先
置換反応:C 原子が反応点
脱離反応:H 原子が反応点C
C
BrH
H NuSN2
E2
立体障害の大きな塩基はC 原子に近づきにくい
Br
+ O + O
E2 SN2
3
脱離反応を選択的に行う塩基:DBU
DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン)
・比較的強い塩基 (pKa ~ 13)・立体障害が大きく求核攻撃をしにくい・塩基として H+ 脱離を優先的に行う
Br
DBU
N
N
Br
DBU
4
置換生成物と脱離生成物を作り分ける:塩基の強さ弱い塩基をSN2条件で使う=置換反応が優先
E2 も SN2 も遅くなるがE2 の方が影響が大きいC
C
BrH
H NuSN2
E2
Cl O
O+
O
O+ Cl–
100%
例:カルボン酸の共役塩基による SN2
(特に二級ハロゲン化アルキルの置換反応に有効)
5
置換生成物と脱離生成物を作り分ける:塩基の強さ
Cl+ O O +
25% 75%
二級ハロゲン化アルキルと ‒OH, ‒OR の置換反応は難しい
脱離生成物が優先する
6
置換生成物と脱離生成物を作り分ける:反応温度
Br OH+ OH + Br
+ H2O + BrBr
+ OH
分子数は同じ
SN2
E2
分子数が増える
温度が高いと「分子数が増える」反応が優先する
(エントロピーの効果)
7
置換生成物と脱離生成物を作り分ける:反応温度Br
+ –OHOH
+
45 °C 47% 53%29% 71%100 °C
「分子数が増える」反応が優先する
置換生成物が欲しい時:低温脱離生成物が欲しい時:高温
が望ましい
8
置換生成物と脱離生成物を作り分ける:SN1/E1反応
Br + CH3OH OCH3 +
SN1 E1
作り分けは困難(共通の中間体を通るため)
置換生成物が欲しい時:低温で行う脱離生成物が欲しい時:E2 条件にする
Br + –OCH3 (SN2 は起こらない)
9
【練習問題】下の反応の主生成物を予測しなさい。Br
DBU(1)
ClCH3OH(3)
Br CH3COONa(2)
CH3COOH
10
置換反応を用いた合成:エーテルの合成Williamson エーテル合成
・アルコール(フェノール)では求核性が足りない。共役塩基が必要。ROH + NaH RO– Na+ + H2
+ NaOH Na+OH O + H2O
水素化ナトリウム(強塩基)
フェノールはアルコールより酸性が強いのでNaOH で共役塩基にできる
R Br + R' O R O R' + Br
11
置換反応を用いた合成:エーテルの合成
CH3CH3C
H3CO + CH3CH2 Br CH3C
H3C
H3CO CH2CH3 + Br
CH3CH3C
H3CBr + CH3CH2 O C CH2
H3C
H3C+ CH3CH2 OH + Br
脱離反応との競争に注意
OK
NG
例:CH3C
H3C
H3CO CH2CH3 (t-ブチルメチルエーテル)を作る
12
置換反応を用いた合成:内部アルキンの合成アセチリドとハロゲン化アルキルの反応
C C + R' BrR C C + BrR'R
・アセチリドは末端アセチレンから作る
C CRC CR HNaNH2
13
置換反応を用いた合成:内部アルキンの合成脱離反応との競争に注意例:
を作るC C CCH3
CH3
HCH2CH3C
H3CH
BrCH2CH3C
H3CH C C C
CH3
CH3
H+ C C CCH3
CH3
HCH2CH3C
H3CH + Br
C CCH2CH3C
H3CH + Br C
CH3
CH3
H C CHCH2CH3C
H3CH +
C
CH2
H3C H
+ Br
OK
NG
14
脱離反応を用いた合成:末端アルケン
R CH2 CH2BrDBU
CH CH2R + DBU–H + Br末端アルケン
・末端のハロゲン化アルキル(一級)を用いる
・立体障害の大きい塩基を用いる
R CH2 CH2Br–OH
R CH2 CH2OH + Br
二級ハロゲン化アルキル 内部アルケンになってしまう
(失敗例)
(失敗例)
立体障害の小さい塩基 置換反応が起きてしまう
RCH2 CH CH3Br
RCH CH CH3 + + BrDBU
DBU–H
15
脱離反応を用いた合成:内部アルケン・一般化は難しいので、個別に考える
R1R4
R2
R3
R1 R4
R2
R3
R1 R4
R2
R3H
Br
Br
H
またはBr
H Br
H
○ ×
例
BrOCH3
Br
OCH3 +
一つの生成物:OK
二つの生成物、選択性なし:NG
逆合成の矢印
16
脱離反応を用いた合成:内部アルケン・cis-アルケンは E1/E2 反応では合成できない
Br
OCH3
H2Lindlar cat.
・cis-アルケンはアルキンの部分水素添加で合成する
17
脱離反応を用いた合成:アルキン
C CBr Br
HHR'R NH2 C C
Br
H R'
R
NH2C C R'R
・ジブロモアルカンの二段階 E2 でアルキンを合成
強塩基の NaNH2 が必要
・アルケン→ジブロモアルカン→アルキン
C CH
H R'
RC C
Br Br
HHR'RBr2
NH2C C R'R
(2 eq.)
18
【練習問題】下の化合物を合成するのに適した置換反応、または脱離反応を書きなさい。
O(1)
(2)
(3)
19
置換反応・脱離反応を用いた多段階合成
20
例1:3-ペンタノンの合成
O
炭素数4以下のハロゲン化アルキルから3-ペンタノンを合成する
O OHH
+ Br
H
Br
Br Br
ケト・エノール アルキンの水和 アセチリドのアルキル化
ジブロモアルカンの二段階E2
アルケンへのBr2 の付加
E2 による末端アルケン合成
21
例1:3-ペンタノンの合成
BrDBU
Br
BrBr2
(1) NaNH2(2) CH3CH2Br H2O, H
+
OH O
H
NaNH2(2 eq.)
22
【練習問題】与えられた出発物質から目標化合物を合成する計画を立てなさい。
O
H
23
例2:分子内環化の例与えられた出発物質から目標化合物を得る
BrO
分子内の二つの官能基を反応させて環構造を作ること=分子内環化
O OBrBr
O
O O Br
OBr
※ 逆でもよいが、少し遠回りになるSN2
24
例2:分子内環化の例
BrOH
Br
アルケンの水和
Br
H2OH2SO4 Br
OH
NaH BrO O
[合成計画]
BrO共役塩基の生成
25
【練習問題】与えられた出発物質から目標化合物を合成する計画を立てなさい。
BrO
26