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置換反応・脱離反応を用いた合成 置換反応と脱離反応の競争 置換反応を用いた合成 脱離反応を用いた合成 多段階合成 1

置換反応・脱離反応を用いた合成tnagata/education/ochem1/2019/ochem1...置換反応を用いた合成:エーテルの合成 Williamson エーテル合成 ・アルコール(フェノール)では求核性が足りない。共役塩基が必要。ROH+NaH

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  • 置換反応・脱離反応を用いた合成

    置換反応と脱離反応の競争

    置換反応を用いた合成

    脱離反応を用いた合成

    多段階合成

    1

  • 塩基の強さと E1・E2 反応(復習)「高濃度の強い求核剤(塩基)」を非プロトン性溶媒中で使う

    →SN2/E2 反応条件

    「弱い求核剤(塩基)」をプロトン性溶媒中で使う

    →SN1/E1 反応条件

    SN2 と E2, SN1 と E1 は同時に起きることが多い(競争反応)

    置換生成物と脱離生成物をどうやって作り分けるか?

    2

  • 置換生成物と脱離生成物を作り分ける:立体障害立体障害が大きな塩基を使う=脱離反応が優先

    置換反応:C 原子が反応点

    脱離反応:H 原子が反応点C

    C

    BrH

    H NuSN2

    E2

    立体障害の大きな塩基はC 原子に近づきにくい

    Br

    + O + O

    E2 SN2

    3

  • 脱離反応を選択的に行う塩基:DBU

    DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン)

    ・比較的強い塩基 (pKa ~ 13)・立体障害が大きく求核攻撃をしにくい・塩基として H+ 脱離を優先的に行う

    Br

    DBU

    N

    N

    Br

    DBU

    4

  • 置換生成物と脱離生成物を作り分ける:塩基の強さ弱い塩基をSN2条件で使う=置換反応が優先

    E2 も SN2 も遅くなるがE2 の方が影響が大きいC

    C

    BrH

    H NuSN2

    E2

    Cl O

    O+

    O

    O+ Cl–

    100%

    例:カルボン酸の共役塩基による SN2

    (特に二級ハロゲン化アルキルの置換反応に有効)

    5

  • 置換生成物と脱離生成物を作り分ける:塩基の強さ

    Cl+ O O +

    25% 75%

    二級ハロゲン化アルキルと ‒OH, ‒OR の置換反応は難しい

    脱離生成物が優先する

    6

  • 置換生成物と脱離生成物を作り分ける:反応温度

    Br OH+ OH + Br

    + H2O + BrBr

    + OH

    分子数は同じ

    SN2

    E2

    分子数が増える

    温度が高いと「分子数が増える」反応が優先する

    (エントロピーの効果)

    7

  • 置換生成物と脱離生成物を作り分ける:反応温度Br

    + –OHOH

    +

    45 °C 47% 53%29% 71%100 °C

    「分子数が増える」反応が優先する

    置換生成物が欲しい時:低温脱離生成物が欲しい時:高温

    が望ましい

    8

  • 置換生成物と脱離生成物を作り分ける:SN1/E1反応

    Br + CH3OH OCH3 +

    SN1 E1

    作り分けは困難(共通の中間体を通るため)

    置換生成物が欲しい時:低温で行う脱離生成物が欲しい時:E2 条件にする

    Br + –OCH3 (SN2 は起こらない)

    9

  • 【練習問題】下の反応の主生成物を予測しなさい。Br

    DBU(1)

    ClCH3OH(3)

    Br CH3COONa(2)

    CH3COOH

    10

  • 置換反応を用いた合成:エーテルの合成Williamson エーテル合成

    ・アルコール(フェノール)では求核性が足りない。共役塩基が必要。ROH + NaH RO– Na+ + H2

    + NaOH Na+OH O + H2O

    水素化ナトリウム(強塩基)

    フェノールはアルコールより酸性が強いのでNaOH で共役塩基にできる

    R Br + R' O R O R' + Br

    11

  • 置換反応を用いた合成:エーテルの合成

    CH3CH3C

    H3CO + CH3CH2 Br CH3C

    H3C

    H3CO CH2CH3 + Br

    CH3CH3C

    H3CBr + CH3CH2 O C CH2

    H3C

    H3C+ CH3CH2 OH + Br

    脱離反応との競争に注意

    OK

    NG

    例:CH3C

    H3C

    H3CO CH2CH3 (t-ブチルメチルエーテル)を作る

    12

  • 置換反応を用いた合成:内部アルキンの合成アセチリドとハロゲン化アルキルの反応

    C C + R' BrR C C + BrR'R

    ・アセチリドは末端アセチレンから作る

    C CRC CR HNaNH2

    13

  • 置換反応を用いた合成:内部アルキンの合成脱離反応との競争に注意例:

    を作るC C CCH3

    CH3

    HCH2CH3C

    H3CH

    BrCH2CH3C

    H3CH C C C

    CH3

    CH3

    H+ C C CCH3

    CH3

    HCH2CH3C

    H3CH + Br

    C CCH2CH3C

    H3CH + Br C

    CH3

    CH3

    H C CHCH2CH3C

    H3CH +

    C

    CH2

    H3C H

    + Br

    OK

    NG

    14

  • 脱離反応を用いた合成:末端アルケン

    R CH2 CH2BrDBU

    CH CH2R + DBU–H + Br末端アルケン

    ・末端のハロゲン化アルキル(一級)を用いる

    ・立体障害の大きい塩基を用いる

    R CH2 CH2Br–OH

    R CH2 CH2OH + Br

    二級ハロゲン化アルキル 内部アルケンになってしまう

    (失敗例)

    (失敗例)

    立体障害の小さい塩基 置換反応が起きてしまう

    RCH2 CH CH3Br

    RCH CH CH3 + + BrDBU

    DBU–H

    15

  • 脱離反応を用いた合成:内部アルケン・一般化は難しいので、個別に考える

    R1R4

    R2

    R3

    R1 R4

    R2

    R3

    R1 R4

    R2

    R3H

    Br

    Br

    H

    またはBr

    H Br

    H

    ○ ×

    BrOCH3

    Br

    OCH3 +

    一つの生成物:OK

    二つの生成物、選択性なし:NG

    逆合成の矢印

    16

  • 脱離反応を用いた合成:内部アルケン・cis-アルケンは E1/E2 反応では合成できない

    Br

    OCH3

    H2Lindlar cat.

    ・cis-アルケンはアルキンの部分水素添加で合成する

    17

  • 脱離反応を用いた合成:アルキン

    C CBr Br

    HHR'R NH2 C C

    Br

    H R'

    R

    NH2C C R'R

    ・ジブロモアルカンの二段階 E2 でアルキンを合成

    強塩基の NaNH2 が必要

    ・アルケン→ジブロモアルカン→アルキン

    C CH

    H R'

    RC C

    Br Br

    HHR'RBr2

    NH2C C R'R

    (2 eq.)

    18

  • 【練習問題】下の化合物を合成するのに適した置換反応、または脱離反応を書きなさい。

    O(1)

    (2)

    (3)

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  • 置換反応・脱離反応を用いた多段階合成

    20

  • 例1:3-ペンタノンの合成

    O

    炭素数4以下のハロゲン化アルキルから3-ペンタノンを合成する

    O OHH

    + Br

    H

    Br

    Br Br

    ケト・エノール アルキンの水和 アセチリドのアルキル化

    ジブロモアルカンの二段階E2

    アルケンへのBr2 の付加

    E2 による末端アルケン合成

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  • 例1:3-ペンタノンの合成

    BrDBU

    Br

    BrBr2

    (1) NaNH2(2) CH3CH2Br H2O, H

    +

    OH O

    H

    NaNH2(2 eq.)

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  • 【練習問題】与えられた出発物質から目標化合物を合成する計画を立てなさい。

    O

    H

    23

  • 例2:分子内環化の例与えられた出発物質から目標化合物を得る

    BrO

    分子内の二つの官能基を反応させて環構造を作ること=分子内環化

    O OBrBr

    O

    O O Br

    OBr

    ※ 逆でもよいが、少し遠回りになるSN2

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  • 例2:分子内環化の例

    BrOH

    Br

    アルケンの水和

    Br

    H2OH2SO4 Br

    OH

    NaH BrO O

    [合成計画]

    BrO共役塩基の生成

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  • 【練習問題】与えられた出発物質から目標化合物を合成する計画を立てなさい。

    BrO

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