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における (1980-2005) 大学大学院 大学 70 PLEASE DO NOT QUOTE WITHOUT PERMISSION OF THE AUTHOR. 2011 9 9 概要 、確 モデル (Grossman and Helpman, 2001) malap- portionment: )を し、 して かかわりを パラメータ した。こ パラメータ しているため、 して する きる。さらに、こ いて、 して を対 に、 する パラメータを した。 から、 、イデオロギー らつきが さく、 により すい があるこ かった。さらに、 による Hotelling じ、 案する い影 つこ れる。 キーワード、一 2007 2008 フォーラム を大 した ある。 を引き けくださった (一 大学) 大学)から コメントを いた。また、 をよりよい にする あった。 して感 します。ただし、 における する ある。 お、 にかかわる ( No.08J07458) によった。 1

農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

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農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準

(1980-2005)

水田岳志∗

東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程

慶応義塾大学産業研究所共同研究員

(日本国際経済学会第 70回全国大会報告論文・草稿)

PLEASE DO NOT QUOTE WITHOUT PERMISSION OF THE AUTHOR.

2011年 9月 9日

概 要

本稿は、確率的投票モデル (Grossman and Helpman, 2001)に定数不均衡(malap-portionment: 一票の格差)を導入し、貿易保護の規定要因として投票行動と密接なかかわりを持つ構造パラメータの推定方法を提示した。この構造パラメータは投票行動の地域構造を記述しているため、貿易保護政策を政党間競争の帰結として記述することができる。さらに、この方法を用いて、農業保護の事例として著名な日本の農業保護政策を対象に、上述の投票行動を記述する構造パラメータを推計した。推定結果から、農村地域の投票者は、都市地域の投票者と比べ、イデオロギーのばらつきが小さく、貿易保護により支持票を得やすい傾向があることが分かった。さらに、定数不均衡による農村地域の影響力の補正及び Hotelling的な政党間競争を通じ、農村地域の産業構造は与野党が提案する貿易保護政策に比較的強い影響力を持つことが示唆される。

キーワード: 日本経済、貿易政策、農業保護、一票の価値、定数不均衡、事例研究

∗【謝辞】 本稿は 2007年日本経済学会秋大会及び 2008年日本政治学会・現代政治過程研究フォーラムの報告論文を大幅に改定したものである。討論者を引き受けくださった古沢泰治教授(一橋大学)及び菅原琢特任准教授(東京大学)から貴重なコメントを頂いた。また、両学会の参加者の皆様との有益な議論も、本研究をよりよいものにする上で重要であった。記して感謝致します。ただし、本稿における誤りは全て著者本人に期するものである。なお、本稿にかかわる研究の遂行には日本学術振興会科学研究費 (特別研究員No.08J07458) によった。

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1 はじめに

「なぜ貿易は阻害されてしまうのか」という問題は、国際経済における古くからの焦点

であり、一世紀以上に渡り国際経済学者を悩ませつづけている持病のようなパラドックス

である。さらに、この憂鬱な問題は「農業の経済分析 (agricultural economics)」にも蔓

延し、ついには、農産物貿易に関わる農業経済学者を大いに悩ませるに至った。彼らは農

産物市場における price distortion を“agricultural price distortion”、trade protection を

“agricultural protection”と名づけ、厚生評価、国際パターンまたはその要因等を対象とし

た実証研究を盛んに行った (Anderson and Hayami, 1986)。一連の研究のうち“agricutural

protecion”の要因に関した分析は、“political eoconomy of agricultural protection”と呼ば

れ、1990年代前半まで非常に流行した (de Gorter and Swinnen, 2002)。しかし、理論が未

開拓であったため fact findingの百家争鳴という状況を呈し1、Beghin and Kherallah (1994)

が指摘するような内生性等の統計的課題も多かった。その結果、“agricultural protection”

に関した研究は、「理論と実証のギャップ(いわゆる Death-Valley)」及び「膨大な fact

findings」 という課題を残して agricultural economicsの表舞台から姿を消した。

一方、国際経済学は華やかであった。それは、貿易保護の要因分析である内生的貿易

政策における、「理論と実証のギャップ」を改善したイノベーションが生じたためである。

Grossman and Helpman (1994)は、利益団体から政府への利得移転に着目し、ミクロ経済

的基礎をもつ内生的保護関数を導出した。その後、Goldberg and Maggi (1999), Gawande

and Bandyopadhyay (2000)は米国を対象にGrossman-Helpmanモデルの予測を実証した。

この Grossman-Helpman モデルの実証的成功に加え、マクロ経済における制度の再発

見 (Acemoglu and Robinson, 2006)、「政治の経済分析 (political economics)」の体系的整

理 (Persson and Tabellini, 2000) により制度と経済に関する研究機運は高まった。さら

に、この研究機運は「農業の経済分析 (agricultural economics)」へ飛び火し、“agricultural

price distortion”に関する古めかしくて懐かしい議論は、“the world bank’s distortions to

agricultural incentives project”と装いを新たにし、四半世紀ぶりに息を吹き返えした。こ

の“distortions to agricultural incentives project”は、K. Andersonを研究リーダーとし

た約 100人の農業経済学者による、1955年から 2007年を対象に 75カ国における農産物

の内外価格差を計測し、農業保護指標データベースを構築するというプロジェクトである

(Anderson 2006, Anderson et al., 2008, Anderson 2009)。そして、第 2フェイズとしてこの

1当時の agricultural economicsにおいても、農業保護の理論的定式化は行われた。例えば、Gardner(1987)や Zusman and Rausser (1991)の先駆的研究が挙げられる。また、Swinnen (1994) は、Hillman (1989)のpolitical support function を応用した部分均衡分析を提案した。

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農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

が行われた (Anderson, 2010)。この第 2フェイズの特徴は、内生的貿易政策の実証研究にお

ける第一線の国際経済学者との共同研究を通じた「教訓」の抽出である (Swinnen, 2010)。

Masters and Garcia (2010)は 、これまでの“political eoconomy of agricultural protec-

tion” における fact findingsを再確認し、Olper and Raimondi (2010)は、Acemoglu and

Robinson (2006)らが提示した民主主義と経済的帰結の観点を参考に、fact findingsの再

提案を行った。Mayer (1984)の直接民主制の前提を置くmedian voter modelを実証した

Dutt and Mitra (2002)を踏襲し、Dutt and Mitra (2010)は農業保護の国際パターンを分

析した。また、Gawande and Hoeckman (2006)はGrossman-Helpmanモデルを基礎に、

Gawande, Krishna and Olarreaga (2009) 及び Gawande and Li (2009)と同じく「産業利

益団体に関わる人口は無視できるほど小さい」と仮定したうえで、米国農業を対象とした

実証分析を行った。

特筆に値する意欲的な研究として、C. Henningを中心とした欧州の研究グループによる

農業保護と政治制度(特に選挙制度)に関する学際研究が挙げられる。Henning (2000)を

先駆けとして、Henning(2008)及びHenning, Krampe and Assmann (2011)は、各国の選

挙制度を「政治の経済分析 (political economics)」及び「実証政治理論 (positive political

theory)」を用い定式化し、選挙制度と農業保護の理論的予測を導出したうえで、その予

測の実証を試みている。しかし、彼らはゲーム理論的構造を重視するあまり、内生的貿易

政策における実証研究の教訓を生かしているとは言い難い。つまり、彼らの実証研究には

理論モデルとの深刻なギャップが存在しており、その推定結果は定性的なものでしかない。

したがって政治経済モデルが想定している条件に関した仮説検定や政治構造パラメータの

定量的な推定には至っていない2。

以上のように、関連諸分野の影響により始まった“political eoconomy of agricultural

protection”の競争的かつ分権的な改定は、1980年代から 90年代前半の農業経済学を彷彿

とさせるような、「理論と実証のギャップ」の谷底における、熾烈な実証競争として幕が上

がった。さて、このような現状認識のもとで、本稿は三つの提案を行う。第一に、Samuels

and Snyder (2001), Horiuchi and Saito (2003), 蒲島 (2004)及び 菅原 (2004)に代表され

る政治学者が指摘しているにもかかわらず、現在の cross country studyが見落としてい

2政治制度、とくに選挙制度に関しては近年の内生的貿易政策においても議論が行われている。Fredriksson,Matschke and Minier (2011)は、Grossman-Helpmanモデルに選挙区と「与党支持」項を導入し、米国を対象に「少数派政党を支持した選挙区の産業構造は貿易保護政策に反映されにくい (Grossman-Helpman, 2005)」ことを実証した。また、Ardelean and Evans (2010) は、Fredriksson, Matschke and Minier (2011)を援用し、選挙制度と産業レベルの貿易保護に関した実証研究を行った。

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る「定数不均衡(一票の格差:malapportionment)」の指摘と政治経済的含意をもつ尺度

の提案である。第二に、Gawande and Hoeckman (2006)やDutt and Mitra(2010)とは異

なるメカニズムによるミクロ経済的構造を持つ実証可能な内生的保護関数の提案である。

第三に、現在流行している cross country studyとは一線を画し、“農業保護の理想的な事

例3”である日本経済を対象に、“agricultural protection”の fact findings と密接にかかわ

る、農村地域の投票行動を記述する政治構造パラメータの推定結果の提示である。以上の

三提案を通して、本稿は農業保護の実証分析における「理論と実証のギャップ」を、可能

な限り狭めることを目指した。

以下、第 2節において定数不均衡に関する議論を概観し、分析対象となる日本経済の貿

易保護、政治状況及び定数不均衡を定量的に把握する。第 3節では本稿が提案する政党間

の Hotelling的競争による政治経済モデルを解説し、実証分析の基礎となる内生的保護関

数を導出する。第 4節では、内生的保護関数の推定方法及びデータに関して詳述し、第 5

節において内生的保護関数と政治構造パラメータの推定結果を検討する。そして、第 6節

において結論を述べる。

2 定数不均衡、農業保護、理想的な事例

本稿が着目する定数不均衡(malapportionment)とは、有権者一人当たりに配分され

た議員定数の格差が選挙区間に存在する状況を指す4。 Samuels and Snyder (2001) は比

較政治学の観点から、1990年代後半を対象とした、定数不均衡に関した定量的な国際的

横断面調査を行った。その結果、定数不均衡は地球上の民主主義国家に広範に発生してお

り、特にアフリカ及びラテンアメリカにおいて顕著であると報告した。Horiuchi (2004) は

Samuels and Snyder(2001)の議論を応用し、定数不均衡の要因として都市・農村間の人

口移動及び所得格差を指摘した。また、定数不均衡のマクロ経済的帰結として、Bruhn,

Gallego and Onorato (2010)は、Acemoglu and Robinson (2008)の議論を用い、ラテン

アメリカ諸国を対象とした定量分析を行った。その結果、中央政府からの一人当たり所得

移転額に関して、議席配分の過小な選挙区よりも、議席配分が過大な選挙区の方が多いこ

とを実証した。

定数不均衡に関した実証研究において日本は非常に優れた事例を提供している。Horiuchi

3日本における農業保護の徹底ぶりは、Mulgan(2000), Mulgan(2005) 及び Mulgan(2006) の合計 1,398ページに及ぶ膨大な記述が物語っている。

4例えば、Samuels and Snyder (2001) は“the discrepancy between the shares of legislative seats andthe shares of population held by geographical units (p.652)”と定義している。

4

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and Saito (2003)は、定数不均衡と再分配に関して、1994-96年に行われた日本の選挙改

革を対象とした実証研究を行った。彼らは、地方交付税を中央政府から市町村への利得移

転とみなし、定数不均衡の是正と一人当たり地方交付税額の平準化に統計的な関連を見出

した。また、Kabashima (1984)及び蒲島 (2004)は農村部における与党支持とその見返り

としての再分配に着目し、この二者の関係を「支持参加 (supportive participation)」と呼

び、菅原 (2004)は「支持参加」の拡張要因の一つとして農村部に偏った定数不均衡を指摘

した。

Mulgan (2000)は日本における農民票と定数不均衡の歴史的な関係に関して“The imbal-

ance arose historically from rapid urbanisation and the failure of successive conservative

governments to adjust electoral boundaries sufficiently to compensate for population

movement (p.328)”と指摘し、その政治的帰結として“The LDP’s nationwide support rate

remained below 50 per cent in elections, overweighted rural constituencies made a deci-

sive contribution to LDP seat majorities in the Diet(pp.328-29)”と述べた。また、定数

不均衡の要因に関して“Japan had no mechanisms for automatically adjusting electoral

districts and seats to reflect population changes (p.329)”と制度的欠陥を指摘した。

既存研究が指摘するように、日本において経済成長期に農村から都市への急激な人口移

動が生じたにもかかわらず議席配分は調整されず、定数不均衡は野放しとなり拡大してい

き、そして、同時期に農業保護水準も成長を続けていった。本稿は日本の農業保護政策と

定数不均衡には、単なる偶然ではなく、政治経済的な因果関係があると作業仮説を立てた

結果、日本経済を豊富な事例、既存研究及びデータを持つ「理想的な事例」と見なした。

この稀有な事例を対象に、農業保護の要因として定数不均衡を導入し、投票行動を明示し

た政治経済モデルの含意及び仮説の検証を行う。

日本における農業保護及び定数不均衡の定量的把握

本節では、検証事例である日本の農業保護と定数不均衡を定量的に把握する。Anderson

et al. (2008)は“the unit value of production at the distorted price less its value at the

undistorted free market price expressed as a fraction of the undistorted price (p.7)”と、

財ごとの nominal rate of assistance (NRAi)を定義し、国内生産額によるNRAiの加重平

均値(NRA)を農業保護指数とした。図 2.1は世銀のdistortions to agricultural distortions

projectにより計測された日本農業のNRAを用い国内価格に占める内外価格差のシェアを

示したものである(Anderson and Valenzuela, 2008)。為替レートの影響により変動が激

5

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しいが、大きく三期間に区分できる。第一期は 1955年から 73年であり、この期間は固定

為替相場制のもとでの安定した時期ともいえる。第二期は 1974年から 95年の円高(国際

市場における価格競争力の弱体化)及び食糧管理法により特徴づけられる期間である。こ

の第二期間においてNRAは上昇傾向にあることが分かる。そして、第三期間は食糧管理

法廃止後の 1996年以降である。この期間は、第二期間と同様の円高傾向であるにもかか

わらず、NRAは横ばい・やや縮小傾向にある5。

= Fig.2.1 =

次に、立法において優越的権限を有する衆議院議員総選挙に着目し、自由民主党(LDP)

の獲得票、獲得議席及び定数不均衡の関係を定量的に検討する。衆議院議員総選挙毎に有

権者総数や議席総数は変動するため、本稿で用いる一票の価値は、選挙区 dが占める議席

シェアϖdを、その選挙区が占める有権者シェア βdにより除したϖdβ−1d を用いる。まず、

定数不均衡に関して、Horiuchi and Saito (2004)が用いたmaxmin ratio及び Loosemore–

Hanby index of electoral disproportion (LH index)を用いマクロ的な意味での検討を行

う。ここで、maxmin ratioとは一票の価値の最大値を分子、最小値を分母とした指数であ

る。また、LH indexとは選挙区ごとの議席シェアϖdと有権者シェア βdの差により算出

され、LM index= 0.5∑D

d=1 |ϖd − βd|と定義される。なお、1994年以降、中選挙区制か

ら小選挙区比例代表制に移行したため、1994年以降は Samuels and Snyder(2001)に従い

比例代表制を考慮した一票の価値を用いた6。表 2.1は 1960年から 2005年までの衆議院議

員総選挙と定数不均衡に関した計算結果である。

= Table.2.1. =

ここで、表側に衆議院議員総選挙の実施年と回数を、表頭に自由民主党 (LDP)の獲得

議席シェア (1)、LDPの相対得票率7(2)、定数不均衡に関したmaxmin ratio (3) 及び LM

index (4) を示している。また、1994年の選挙改革により小選挙区比例代表制度が導入さ

れたため、小選挙区のみの値を上段に、比例代表に関した値を下段の両 ()により示した。

ここで、比例代表に関した (1)及び (2)は、比例代表のみの議席率及び得票率であり、(3)

及び (4)は比例代表の影響を補正した定数不均衡指数である。なお、LDPに関した統計は

5日本の NRAに関した記述統計は Honma and Hayami (2009)または本間 (2010) が詳しい。6詳細は 4節の「データに関する議論」を参照のこと。7ここで政党の相対得票率とは、政党の得票数を有効投票総数で割ったものである。

6

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総務省「日本の長期統計系列」より、選挙区に関した指数の計算には JED-Mデータベー

ス (水崎, n.d.)を用いた。

まず、LDPの獲得議席シェア (1)に関してだが、計測期間全体を通じてほぼ 50%以上

を維持していることがわかる。興味深い特徴として、比例代表制では 50%を下回ってい

るにもかかわらず、小選挙区制では 50%を上回っていることである。つぎに LDPの相対

得票率 (2)を確認する。相対得票率は 1963年の第 31回衆議院議員総選挙以降、一貫して

50%を下回っている。それゆえ、LDPは獲得議席数に反映されやすい選挙区(一票の価

値が高い選挙区)の投票者に支持されていると考えられる。なお、比例代表とは獲得票に

比例して議席を配分するため、一票の価値に着目した戦略を用いることは不可能である。

次に、定数不均衡に関してだが、maxmin ratioは 1983年以降、ほぼ 1960年の水準で推

移し、比例代表制の導入以後、2を下回る水準である8。全選挙区を対象とした票の価値を

反映する LM indexは 1969年から 93年までほぼ横ばいである。比例代表制の導入以降、

1960年の水準を下回っていることがわかる。

定数不均衡の是正を目的として、議席配分・選挙区割りの改定は 1960年から 2005年ま

でに合計 6回行われている。議席配分・選挙区割りの改定前後の票の価値ϖdβ−1d の分布

に関した kernel density estimationの結果を図 2.2に、改定前後のϖdβ−1d の分布を対象と

したKolmogorov-Smirnov検定の結果を表 2.2に示す9。ここで、表側には改定年と前後の

総選挙回数を、表頭には「帰無仮説H0:2標本の分布は等しい」の両側検定結果、片側検

定結果である。表 2.2から、1994年の選挙改革を除いてϖdβ−1d の分布は有意に変わって

いないことが分かる。さらに、図 2.2から、1994年以前の票の価値の分布はϖdβ−1d = 1

を境とした多峰性(ピークが複数)を持つと判断できる。また 1994年以降はその分布は

単峰性を持ち、さらにピークがほぼϖdβ−1d = 1であるが、依然として票の価値が大きく

1を上回る選挙区が存在することがわかる。以上から、1994年に導入された小選挙区比例

代表制により票の価値の分布の多峰性は解消されたが、依然として票の価値が 1を大きく

上回る選挙区が存在していると考えられる。

本稿は産業別の票の価値として産業の立地に着目し、各選挙区の産業別粗付加価値(ま

8Samuels and Snyder(2001)の国際比較では、選挙改革後の日本を対象とし定数不均衡を計測していることに留意する必要がある。

9kernel density estimation は、stata の kdensity コマンドを用い、2 標本を対象とした Kolmogorov-Smirnov検定は stataの ksmirnovコマンドを用いた。

7

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たは粗生産額)による票の価値ϖdβ−1d の加重平均値を「産業別票の価値指数」とした。

indexg ≡∑d∈D

(ϖd

βd

)(αgd − βd) ≡

∑d∈D

αgd

(ϖd

βd

)− 1 (2.1)

ここで、gは産業インデックス、Dは選挙区の集合であり、dはその要素、ϖdは選挙区

dの議席シェア、βdは選挙区 dにおける有権者シェア、αgdは選挙区 dにおける産業 gの

粗付加価値シェアである10。なお、ϖdβ−1d = 1 ∀d ならば index = 0である。農業及び製

造業を対象に産業別票の価値指数を計測しプロットしたものが図 2.3である。なお、1994

年以降のϖdβ−1d は比例代表の影響を補正した値を用いた。

= Fig2.3 =

図 2.3から「農業の票の価値」は 1960年から 1970年まで上昇し、1980年から 1996年ま

でほぼ横ばいである。ここで「製造業の票の価値」と比較した場合、「農業の票の価値」は

「製造業の票の価値」を常に上回っている。1994年に実施された選挙改革(1996年の衆議

院議員総選挙に反映)の結果、票の価値の農業・製造業間格差は是正されたが、依然とし

て「農業の票の価値」は「製造業の票の価値」を上回っていることが分かる。したがって、

農業は歴史的に、議席配分が過大な選挙区に立地しており、1994年の選挙改革により、そ

の票の価値は減少したとはいえ、依然としてゼロを上回っている。以上の、観測結果から、

仮に政党が獲得議席の過半数を目指すならば、議席配分が過大な選挙区を重視するはずで

あり、その影響は貿易保護政策の決定に及ぶと思われる。次節では、本節で概観した観測

をひも付けるシンプルなモデルを提示する。

3 分析モデル

本節では、実証分析の基礎となる政治経済モデルに関して述べる。まず、Fredriksson,

Matschke and Minier (2011) が用いた特殊要素報酬に選挙区間の分配を導入したモデルに

関して述べる。投票行動はPersson and Tabellini (2000), Grossman and Helpman (2001)

及び Grossman and Helpman (2005)が用いた確率的投票モデルにより記述する。具体的

には確率的投票モデルにより投票行動を記述する構造パラメータを記述し、さらに定数不

均衡を導入したうえで、政党間競争の帰結として形成される内生的保護関数を導出する。

10データに関する詳細は 4節の「データに関する議論」を参照のこと。

8

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3.1 特殊要素モデル

ここでは、価値尺度輸出財(添え字は 0)と輸入競合財 g ∈ 1, 2, · · · , nにより構成されている小国開放経済(a small open economy)を想定する。この経済では地理的に選挙

区が設定されており、それは、d ∈ 1, 2, · · · , Dに区分されている。ここで、任意の選挙区 dの人口(=有権者数)を βdとし、その総和を 1に基準化する。また、価値尺度財の

価格を 1、第 g財の国内価格を pgそして、国際価格 pwg と記述する。小国開放経済の仮定

により pwg は所与であるため、政府介入より発生する第 g財の内外価格差を tg とすれば、

pg = pwg + tg、つまり、国内価格 pg は tg により決定される。

選挙区dに住む個人 iの効用関数を xi0+

∑n

g=1u

(xi

g

)と仮定する。ここで、xi

0は価値尺度

財の需要量、xigは第 g財の需要量、u ()は微分可能かつ強凹関数である。ここで、dg (pg)を

第 g財の需要関数、Iiを予算とすれば、価値尺度財の需要量はxi0 = Ii−

∑n

g=1pgdg (pg)と

なる(なお、価値尺度財の需要量を正と仮定しているため、輸入競合財の需要量は添え字 iに

依存しない。以下添え字 iを省略する)。したがって、間接効用関数は Ii+∑n

g=1u [dg (pg)]−

pgdg (pg)となる。ここで、第 g市場の消費者余剰は sg (pg) = u [dg (pg)] − pgdg (pg)であ

ることから、Royの恒等式より、∂sg (pg) /∂pg = −dg が成立する。

生産要素は産業間を移動できる生産要素(労働L)とそれができない特殊要素(資本K)

に分け、規模に関して一定 (Constant Return to Scale:CRS)技術 fg ()を想定する。ここ

で各個人は 1単位の労働を持つと仮定する。価値尺度財産業は労働のみを用いて生産を行

い、投入-算出係数及び賃金は 1、生産量は正とする。輸入競合財産業 g ∈ nでは、労働と

資本を用い CRS技術により生産を行っているが、資本が固定されているため労働に対し

て収穫逓減となる。第 0産業により賃金は 1に固定されているため、完全競争下の(特殊

要素報酬)最大化問題は pgのみに依存し、πg (pg) = max pgfg (L,K)−Lとなる。なお、

ygを第 g財の生産量とすれば、Hotellingのレンマにより ∂πg (pg) /∂pg = ygが成立する。

開放経済であるため、第 g財の超過需要関数をmg (pg) = dg (pg)− yg (pg)とすれば、関税

収入は rg (pg) =(pg − pw

g

)mg (pg)であり、poll subsidyとして再分配されると仮定する。

選挙区 dが占める第 g産業の特殊要素のシェアを αdgとすれば、選挙区 dに配分される

第 g産業の特殊要素報酬は αdgπgとなる。賃金、消費者余剰、関税収入を考慮すれば、選

挙区 dの経済厚生は (3.1)式により示される。

Wd (p) =n∑

g=1

Wdg (p) = βd +n∑

g=1

αdgπg + βd

n∑g=1

[rg (pg) + sg (pg)] (3.1)

9

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ここで、賃金及び総人口を 1に基準化していることに留意すれば、右辺の第 1項は選挙区

dの人口シェア×総労働所得、第 2項は特殊要素報酬の選挙区 dへの配分(産業合計)、第

3項は選挙区 dの人口×[一人当たり関税収入(産業合計)+一人当たり消費者余剰(産業

合計)]である。また、選挙区 dの経済厚生 (3.1)式をその第 g財価格 pg に関して偏微分

すれば (3.1’)式を得る。

∂Wd (p)∂pg

= (αdg − βd) yg + βdtgm′g (3.1’)

ここでm′g はmg (pg)の pg に関する傾きである。

3.2 確率的投票モデル

本節では選挙区 dにおける異質的な投票者と戦略的な政党に関して述べる。まず、政党

Aと政党Bが存在する場合を想定する。この場合、選挙区 dに住む個人 i=投票者 iは両

政党が提示する国内価格ベクトル p (以下、貿易保護政策)を比較し投票を行うと考えら

れるが、あくまでそれは投票行動の一側面であり、各政党の保守・革新など多次元の要因

(以下、イデオロギー)も考慮して支持政党を決めるであろう。ここで選挙区 dの投票者 i

は政党 Aを基準とし、投票行動に付随するイデオロギー:p 以外の要因を考慮したうえ

で、政党Bを評価するとすれば、選挙区 dの投票者 iは (3.2)式に従い政党評価を行うと

仮定する。

vid =

Wd (p)βd

+(σi

d + γd + δi)

DB (3.2)

ここで、第一項:β−1d Wd (p)は選挙区 dの一人当たり経済厚生であり貿易保護政策 pの

評価を示している。また、DB は選挙結果を示すインジケーターであり、政党 Aが選挙

に勝利した場合は DB = 0、政党 B が選挙に勝利した場合は DB = 1をとる。第二項:

σid + γd + δiは選挙区 dにおける投票者 iの政党選択におけるイデオロギーをとらえてお

り、政党Bが選挙に勝利した場合の保護政策の評価に加えた加点と言える。そのイデオロ

ギーは確率変数であり、選挙区 d内の分布 σid + γdと選挙区共通の分布 δiに区分される。

選挙区 d内イデオロギーは平均が γd、その分布が確率変数 σidにより記述され、それは一

様分布:σid ∼

[− (2φd)

−1 , (2φd)−1

]に従うとする。なお、γd > 0ならば選挙区 dは平均

的に政党Bを支持するイデオロギーを持つと解釈できる。同様に選挙区共通イデオロギー

は平均がゼロ、その分布が確率変数 δiにより示され、一様分布:δi ∼[− (2ψ)−1 , (2ψ)−1

]に従うとする。それゆえ、選挙区 dにおける投票者 iの政党選好は β−1

d Wd (p)、γdという

10

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deterministicな要因に加えて、σid、δiという確率変数の実現値に依存する。

= Fig.3.1. =

ここで、選挙区 dにおいて政党Aと政党Bが無差別である投票者(swing voter:s.v.)

を定義する。

定義 1 (s.v.) The swing voter in district d :

The voter who draws σ∗d

(δi

)such that vi

d|DB=0 = vid|DB=1

定義 1及び (3.2)式より、s.v.は、(3.3)式により表わされる選挙区 d内イデオロギーを

持つ。

σ∗d

(δi

)=

Wd (pA) − Wd (pB)βd

− γd − δi (3.3)

ここで pΓは政党 Γ ∈ A, Bが実施する貿易保護政策である。投票者の政党選好に注目すると、σj

d > σ∗d

(δi

)となる選挙区 dにおける投票者 j = iは (3.2)式におけるイデオロ

ギーによる加点分が s.v.よりも大きいため政党Bを支持し、逆に σjd < σ∗d

(δi

)となる投

票者 j = iは政党Aを支持する。ここで選挙区 dにおける政党Aの獲得票シェアは、閾値

σ∗d

(δi

)を下回る σjd すべてであるから、φd×

(2φd)

−1 + σ∗d

(δi

):縦(一様分布の濃度)

×横(最小値から原点までの距離+原点から閾値までの距離:最小値から離れる方向ならば正)である。したがって、選挙区 dにおける政党Aの獲得票シェアは 2−1 +φdσ

∗d

(δi

)で

あり、全選挙区における政党Aの獲得票シェアは有権者数による加重平均値である (3.4a)

式となる。 ∑d∈D

βd

[12

+ φdσ∗d

(δi

)]=

12

+∑d∈D

βdφdσ∗d

(δi

)(3.4a)

なお、政党Bの獲得票シェアは 1−政党Aの獲得票シェアであるため (3.4b)式となる。

1 −∑d∈D

βd

[12

+ φdσ∗d

(δi

)]=

12−

∑d∈D

βdφdσ∗d

(δi

)(3.4b)

また、(3.4a)式と同様のロジックで、選挙区 dにおける政党 B の獲得票シェアは、閾値

σ∗d

(δi

)を上回る σjd すべてであるから、φd×

(2φd)

−1 − σ∗d

(δi

):縦(一様分布の濃度)

×横(最大値から原点までの距離+原点から閾値までの距離:最大値から離れる方向ならば正)と解釈することもできる。

11

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定数不均衡と過半数議席獲得確率

ここで、選挙区 d毎に配分されている議席数に着目する。総議席数を 1に基準化し、選

挙区 dに配分されている議席数をϖdとすれば、総議席数は∑

d∈D ϖd = 1 である。し

たがって、選挙区 dの有権者あたり議席数はϖdβ−1d と記述でき、選挙区 dにおける政党

Aの獲得票は有権者数×獲得票シェアであるため、政党 Aの総議席数に占める獲得議席

シェアはϖdβ−1d ×

[βd ×

2−1 + φdσ

∗d

(δi

)]= 2−1ϖd + ϖdφdσ

∗d

(δi

)となる。したがっ

て、全選挙区における政党Aの獲得議席シェアは (3.5a)式により得られる。

ΨA =12

+∑d∈D

ϖdφdσ∗d

(δi

)(3.5a)

同様に政党Bの獲得議席シェアは 1 − ΨAであるため、(3.5b)となる。

ΨB =12−

∑d∈D

ϖdφdσ∗d

(δi

)(3.5b)

次に政党 Aの過半数議席獲得確率を (3.3)式を (3.5a)式に代入し、σ∗d

(δi

)が確率変数

であることに留意しつつ導出する。

Pr(

ΨA ≥ 12

)= Pr

[∑d∈D

ϖdφdσ∗d

(δi

)≥ 0

]

= Pr

[∑d∈D

(ϖd

βd

) (φd

φ

) Wd ( pA) − Wd ( pB) −

∑d∈D

ϖdφd

φγd︸ ︷︷ ︸

閾値

≥ δi]

ここで選挙区内イデオロギーのばらつきの加重平均値 φ ≡∑

d∈Dϖdφdを定義した。閾値

の構成要素は、票の価値、選挙区内イデオロギーのばらつきとその平均及び政党A・Bによ

る貿易保護政策である。選挙区共通イデオロギー δiは一様分布:δi ∼[− (2ψ)−1 , (2ψ)−1

]に従うことに留意すれば、閾値を下回る δiはψ×

(2ψ)−1 +閾値

:縦(一様分布の濃度)

×横(最小値から原点までの距離+原点から閾値までの距離:最小値から離れる方向ならば正)となる。したがって、政党Aの過半数議席獲得確率は (3.6a)式により記述できる。

Pr(

ΨA ≥ 12

)=

12

+ ψ

[∑d∈D

(ϖd

βd

) (φd

φ

)Wd (pA) − Wd (pB) −

∑d∈D

ϖdγd

(φd

φ

)](3.6a)

12

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同様にPr(ΨB ≥ 2−1

)= Pr

(ΨA ≤ 2−1

)であるため、閾値を上回る δiの面積を求めれば、

政党Bの過半数議席獲得確率は (3.6b)式により記述される。

Pr(

ΨB ≥ 12

)=

12− ψ

[∑d∈D

(ϖd

βd

)(φd

φ

)Wd (pA) − Wd (pB) −

∑d∈D

ϖdγd

(φd

φ

)](3.6b)

= Fig.3.2 =

定数不均衡の拡声効果:菅原 (2004)

蒲島 (2004)及び菅原 (2004)は、農村部の政権党への支持を重視し、政権党はその見返

りとして再分配政策を用いると指摘している。菅原 (2004)は「民主主義的な政治システム

においては、農村が本来持つべき影響力の大きさはその人口に比例するはずである。しか

し農村地域には人口比に対して過大に議員定数が分配される。加えて農村の人々が政権与

党たる自民党に傾斜的に投票することにより農村の影響力は拡大する (p.53)」と定数不均

衡の影響を論じている。

本稿における定数不均衡の影響を明示するため、政党 Aの過半数議席獲得確率におけ

る定数不均衡の影響を把握する。定数不均衡が発生していない場合、全選挙区 dにおい

て ϖd = βd が成立しているため政党 Aの過半数議席獲得確率 =過半数票獲得確率とな

る。したがって、政党 Aの過半数議席獲得確率の過半数票獲得確率からの乖離:ΩA ≡Pr

(ΨA ≥ 2−1

) − Pr(ΨA ≥ 2−1|ϖd = βd,∀ d

)は次式により得られる。

ΩA = ψ

[∑d∈D

(ϖd

βd− 1

)(φd

φ

)Wd (pA) − Wd (pB) −

∑d∈D

(ϖd

βd− 1

) (φd

φ

)βdγd

]

ここで、選挙区 dの経済厚生Wd (pA)に着目し ΩA を偏微分すれば、∂ΩA/∂Wd (pA) =

ψβ−1d

(φdφ

−1)(ϖd − βd)を得る。つまり、ϖd > βd =⇒ ∂ΩA/∂Wd (pA) > 0であるた

め、選挙区 dの議席配分が過剰な場合、政党 Aは選挙区 dの経済厚生Wd (pA)を定数不

均衡が生じていない場合(ϖd = βd)から増加させようとする。

13

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政党戦略、政党間競争、漁夫の利

政党A及び政党Bの過半数議席獲得確率 (3.6)式及び (3.6’)式から、各政党の最適反応

関数として (3.7a)式及び (3.7b)式を得る。

pgA (pB) = arg maxpgA

∑d∈D

(ϖd

βd

)(φd

φ

)Wd (pA) − Wd (pB) (3.7a)

pgB (pA) = arg minpgB

∑d∈D

(ϖd

βd

)(φd

φ

)Wd (pA) − Wd (pB) (3.7b)

つまり、政党Bの戦略を所与とし、政党AはWd (pA)を向上させることによりWd (pA)−Wd (pB)を増加させる。一方、政党 Bは、政党 Aの戦略を所与とし、Wd (pB)を向上さ

せることにより、Wd (pA)−Wd (pB)を減少させようとする。つまり両政党は政治的に生

き残るために全力で相手の足を引っ張る。

ここで G (p) ≡ ∑d∈D

(ϖdβ

−1d

) (φdφ

−1)Wd (p)を定義すれば、各政党の最適反応関数

は、pgA (pB) = arg maxpgA G (pA) , pgB (pA) = arg maxpgB G (pB)と書き換えられる。つ

まり両政党は(過半数議席獲得確率は γdにも依存するためその勝敗は別として)各々同じ

最適化問題を解いていることがわかる。それゆえ、Nash均衡はp = pA = pBとHotelling

モデル (Hotelling, 1929)と類似した結果、つまり、政党 Aと政党 Bの貿易保護政策差は

ゼロとなり、両政党の過半数議席獲得確率 (3.6a)式及び (3.6b)式のうち貿易保護政策差

に起因する部分もゼロとなる。両政党の最適反応関数は、一階条件 (3.8)式により特徴づ

けられる。なお、最適反応関数及び一階条件は政党に依存しないため、政党添え字を省略

する。∂G (p)

∂pg=

∑d∈D

(ϖd

βd

)(φd

φ

)(∂Wd (p)

∂pg

)= 0 ∀ g = 1, · · · , n (3.8)

均衡上では、貿易保護政策による過半数議席獲得確率への貢献分はゼロとなってしまい、

両政党にとってはまったく得るものはないが、失うよりはましという状況である。しかしな

がら、この政党間競争により利益を得る選挙区が存在する。それは(ϖdβ

−1d

) (φdφ

−1)

> 1

を満たす選挙区 dである。言い換えれば、選挙区 dの議席配分が過剰な場合 (ϖd > βd) や

選挙区内イデオロギーのばらつきが相対的に小さい場合(φ−1

d < φ−1)、政党の目的関数に

おけるその選挙区の経済厚生のウェイトは1を上回る場合があり、その影響は貿易保護政

策 pの水準に影響する。次節では、Nash均衡上の具体的な pを内生的保護関数として導

出する。

14

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3.3 内生的保護関数

政党間競争により政党が提示する貿易保護政策 pは、Nash均衡上の貿易保護政策を特

徴づける (3.8)式に、選挙区 dの経済厚生の第 g財価格 pgに関する偏微分である (3.1’)式

を代入することにより得られる。

∂G

∂pg=

∑d∈D

(ϖd

βd

)(φd

φ

)(∂Wd (p)

∂pg

)= 0, ∀ g = 1, · · · , n

∂Wd

∂pg= (αdg − βd) yg + βdtgm

′g, ∀ g = 1, · · · , n, ∀ d = 1, · · · , D

したがって、内生的保護関数 (3.9)式を得る。(pg − pw

g

pg

)= (−εg)

−1

(mg

yg

)−1 ∑d∈D

(ϖd

βd

)(φd

φ

)(αdg − βd) , ∀ g = 1, · · · , n (3.9)

ここで、第 g財の輸入価格弾力性 εg ≡ m′g × pg/mg である。つまり、内生的保護関数は、

輸入価格弾力性の逆数、輸入浸透率の逆数、選挙区 dの票の価値、イデオロギーのばらつ

き、産業構造(特殊要素報酬の集中度)によって構成される。前節で述べた漁夫の利を得

る条件:(ϖdβ

−1d

) (φdφ

−1)

> 1 を満たす選挙区(言い換えれば、議席につながりやすく、

票にもつながりやすい選挙区)は、その産業構造 (αdg − βd)を内生的保護関数に比較的強

く反映させることができる。

内生的保護関数の含意

内生的保護関数 (3.9)式を整理すれば (3.10a)式を得る。

(pg − pw

g

pg

)= (−εg)

−1

(mg

yg

)−1[∑

d∈D

(ϖd

βd

)(φd

φ

)(αdg − βd)

]

= (−εg)−1

(mg

yg

)−1[∑

d∈D

αdg

(ϖd

βd

)(φd

φ

)− 1

](3.10a)

15

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ここで全ての選挙区における選挙区内イデオロギーのばらつきが等しい:φd = φ∗ for all

d ∈ Dと仮定すれば、(3.10b)式を得る。

(pg − pw

g

pg

)= (−εg)

−1︸ ︷︷ ︸輸入価格弾力性の逆数

×(

mg

yg

)−1

︸ ︷︷ ︸輸入浸透率の逆数

×[∑

d∈D

αgd

(ϖd

βd

)− 1

]︸ ︷︷ ︸産業別票の価値指数: (2.1) 式

(3.10b)

さらに対数変換を行い、全微分を行えば貿易保護水準の変化率は (3.10c)により記述できる

(

pg − pwg

pg

)≅ − |import elasticityg| − import penetrationg+ indexg (3.10c)

したがって、産業別票の価値指数 (2.1)式が減少した場合、政党間競争を通じて発生する

貿易保護インセンティブは低下し、貿易保護水準も減少すると予想される。

また、制度の経済的帰結の国際比較いう観点を導入するとイスラエルの事例は興味深い。

イスラエルは全国1区の比例代表制を採用しているため、そもそも定数不均衡は発生しな

い。言い換えればイスラエルの国政選挙では、ϖd = βd 及び φd = φ∗ for all d ∈ D が

常に成立するため、定数不均衡に起因し、政党間競争を経由して発生する貿易保護インセ

ンティブ (3.10a)はゼロと考えられる。それゆえ、国際的な視点から日本特有の貿易保護

要因を指摘するならば、定数不均衡がそのひとつと考えられる。さらに、定数不均衡は民

主主義国に広く発生している事実から、産業別票の価値指数を用いた (3.10b)式は、cross

country studyの興味深い作業仮説となるだろう。

内生的保護関数の推定形式

本節では内生的保護関数 (3.9)式の推定形式に関して述べる。内生的保護関数 (3.9)式の

推定のために、下記の問題に対処した。

• 輸入価格弾力性の計測誤差輸入価格弾力性は推定値であるため、error in variables の問題が発生する可能性が

ある。操作変数法を用いることができない(後述)ため、(3.9)式の右辺から左辺に

移項することによりこの問題に対処した。

• 貿易保護度と輸入浸透率の内生性Trefler(1993)が指摘する貿易保護度と輸入浸透率との内生性に対処するため、輸入

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浸透率を右辺から左辺に移項した。

• 一物一価と観測数貿易保護度は一物一価の法則により全選挙区で共通である。例えば、2005年衆議院

議員総選挙における小選挙区は 300区であるため、各々の選挙区ごとの φdを推定す

ることは貿易保護水準の観測数(部門数 2×計測期間 1979-2006=56サンプル)から

不可能である。それゆえ、選挙区を投票行動に応じて分割し推定式を簡略する必要

がある。Curtis(1971)は国会議員を対象としたフィールドワークから伝統的な農村

部を固定票、都市部を浮動票とみなし、候補者の選挙戦略はその対象に応じて異な

ることを発見した11。また、小林 (1997)は 1955年から 90年を対象とし中選挙区ご

との地域特性データから政党の得票要因として「都市-農村」軸を提示した。以上を

踏まえて、本稿では都市と農村では投票行動が明らかに異なるとみなし、全選挙区

d ∈ Dを農村地域Rと都市地域 U に分割し、同一地域に所属する選挙区 dの選挙区

内イデオロギーのばらつきが同じである、つまり φd = φR for all d ∈ R、φd = φU

for all d ∈ U と仮定する。この仮定は都市地域・農村地域の平均的なパラメータを

求めているとも解釈できる。

以上の点を踏まえて、内生的保護関数 (3.9)式は (3.11)式に簡略できる。

(−εg)(

tgpg

)(mg

yg

)=

(φR

φ

[∑d∈R

(ϖd

βd

)(αdg − βd)

]

+(

φU

φ

[∑d∈U

(ϖd

βd

)(αdg − βd)

](3.11)

ここで、産業別票の価値指数 (2.1)式の構成要素をその選挙区が所属する地域 (R or U)に

分割し、右辺第一項は農村地域に応じて集計した値、右辺第二項は都市地域に応じて集計

した値である。

11例えば、Curtis(1971)は農村地域の投票行動に関して「『固定票』とは、具体的には、個人的なつながり(縁または縁故)の結果、特定の候補に一貫してくり返し投じられる票のことである (p.84)」とし、その要因に関して、「固定票という概念は、当然の成り行きとして『票まとめ』という発想に結びつく。票が固定化するのは、有権者を特定の候補者に投票させる人間関係が存在するからだ。(p.87)」と述べた。なお、都市地域の投票行動に関しては「浮動票という言葉は、欧米では政党に束縛されない票を指すが、日本では人間関係に束縛されない票を意味する。(p.169)」と指摘した。

17

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4 推定戦略

前節の議論を踏まえて (3.11)式に攪乱項 ϵgtを加えた (4.1)式を推定式とする。

zgt = ζ0 + ζ1x1gt + ζ2x2gt + ϵgt (4.1)

ここで 被説明変数は zgt ≡ −εgt × tgtp−1gt × mgty

−1gt と定義しており、説明変数は x1gt ≡∑

d∈R

(ϖdtβ

−1dt

)(αdgt − βdt)、x2gt ≡

∑d∈U

(ϖdtβ

−1dt

)(αdgt − βdt) と定義している。し

たがって、推定量は各々 ζ1 ≡ φRφ−1、ζ2 ≡ φUφ−1と表わされ、産業インデックス gに依

存しない。上記の定義と理論モデルから符号条件は、ζ1 > 0、ζ2 > 0、ζ1 + ζ2 > 0である。

本アプローチの特徴として、推定量 ζ1、ζ2の比率 を計算することにより、「都市地域と農

村地域の投票行動の比較指数(以下、投票構造パラメータ)」、vRU ≡ φRφ−1

U ≡ ζ1ζ−12 の計

測が可能となることが挙げられる。

データに関する議論

本節では、(4.1)式の推定に用いたデータに関して述べる。利用可能なデータの制約ゆえ

に、分析対象部門は農業と製造業の 2部門、分析期間は 1979年から 2006年の 28年、観測

数は 56である。以下、項目別にデータソース及びその系列の特徴に関して記述する。な

お、分析に用いるデータは輸入価格弾力性を除きすべて同時点の比率による計測であるた

め、デフレートなどの処理は行っていない。

• 産業別貿易保護水準:tgtp−1gt

農業および製造業の貿易保護水準データは Anderson and Valenzuela(2008) 及び

Anderson and Croser(2009) から引用した。上記データベースでは、1955 年から

2007年を対象とし農産物ごとの内外価格差を計測し、国内生産額により加重平均

を行った Nominal Rate of Assistance (NRA), Kee et al(2009)の議論を援用した

貿易保護指標:輸入額を基準とした Trade Reduction Index (TRI)及び経済厚生を

基準としたWelfare Reduction Index (WRI)を、製造業の貿易保護水準データとし

て関税収入を輸入額によって除した平均関税率 (Average Tariff; AT)を収録してい

る12。ただし、これらの貿易保護指標は従価税相当であるため (4.1)式の推定に際し

て、上記の農業および製造業の保護指標 index ∈ (NRA, TRI, WRI) , (AT )から12TRI 及びWRI の計測方法及び前提条件に関しては、Lloyd, Croser and Anderson (2009) を参照のこ

と。

18

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index× (1 + index)−1を計算して得られた国内価格に占める内外価格差の比率を貿

易保護水準 tgtp−1gt とした

13。また、貿易保護指標の制約ゆえに分析対象は農業と製

造業の 2部門となった。

• 産業別輸入価格弾力性:εg

Kee et al(2008)により計測された HS88(6桁)基準の輸入価格弾力性を ISICrev3

に応じた輸入額加重平均値を産業レベルの輸入価格弾力性とした。加重に用いた輸

入額はWITS/COMTRADEから引用し、1988から 2006年の輸入額合計を用いた。

HS88と ISICrev3の対応表は旧WITSから入手し、農業は ISICrev3の 01、製造業

は ISICrev3の 15から 36とした。また本稿は分析期間を通じて輸入価格弾力性は一

定であるとしている。なお農業部門の輸入価格弾力性は −2.34、製造業部門の輸入

価格弾力性は−2.13であった。

• 産業別輸入浸透率:mgty−1gt

本分析では国内消費と国内生産に注目しており、中間投入額の影響を除去する必要

がある。それゆえ、Gawande and Bandyopadhyay (2000)と同様に、部門別粗付加

価値+輸入額-輸出額を国内消費し向けとし、その値に占める輸入額比率から輸入浸

透率を、Japan Industrial Productivity (JIP) データベースに収録されている各年

の産業連関表(名目)を用い計算した。なお、部門分類は JIP2006-ISICrev3部門分

類対応表を用い農業と製造業に集計している。なお、JIPデータベースに関しては

深尾・宮川 (2008)を参照のこと。

• 選挙区別票の価値(有権者1%当たり議席シェア):ϖdtβ−1dt

JED-Mデータから衆議院総選挙毎に選挙区別有権者数、選挙区別議席定数を引用

し、選挙区別の有権者シェア及び議席シェアを算定した。第 41回衆議院総選挙以

降、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に制度が変化したため、Samuels and

Snyder(2001)に従い比例代表による補正を加味した票の価値を計測した。具体的に

は小選挙区 dの1議席に、その選挙区が所属する比例ブロックの総議席を比例ブロッ

ク内の有権者シェアで案分したうえで、選挙区 dの比例代表補正済の議席シェアを

求めた。なお、有権者あたり議席では、選挙ごとの議席定員の変更や有権者合計の13Honma and Hayami (1986) 及び本間 (1994) では、対数変換に依存したアドホックな推定式を用い

た実証分析を行っている。彼らは NRP=0 の対数変換を避けるために、Nominal Protection Coefficients(NPC=1+NRP)を被説明変数に用いた。彼らの研究と比較するならば、本稿は政治経済モデルによる制約ゆえに、NPCの対数変換ではなく、NRP×NPC−1 を被説明変数に用いた推定を行ったとも言える。

19

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変動を受けるため、本稿は一貫して有権者1%当たり議席シェアを票の価値として

いる。

• 選挙区別農業粗生産額シェア:αdgt for g = agriculture

生産農業所得統計のうち市町村別生産農業所得統計累年統計から、全国市町村別農

業産出額合計を JED-Mデータに記載されている選挙区-市区町村対応を用いて、選

挙区別農業産出額を求めた。なお、2005年における平成の大合併によって JED-M

データと生産農業所得統計の市町村名が一致しない場合があったため、(財)国土地

理協会の市町村変更情報を用いひも付けを行った。また、同一市町村が複数選挙区

に所属する場合、JED-Mデータに記載されている選挙区別市町村別有権者数を用い

案分した。以上の作業により選挙区別農業産出額を作成し、全選挙区の農業産出額

に占める選挙区別農業生産額のシェアを計算した14。

• 選挙区別粗付加価値額シェア(製造業計):αdgt for g = manufacture

工業統計調査市町村編(市区町村別、産業中分類別統計表)のうち、工業統計アー

カイブを含めてエクセルデータ形式で公表されている 1979年から 2006年の情報を

用いた。JED-Mデータに記載されている選挙区-市区町村対応を用いて、市町村別

粗付加価値額を選挙区レベルに合算した。ただし、工業統計調査市町村編では町村

区分の情報は製造業計に合算されているため、分析対象は農業と製造業の 2部門と

なった。なお、2005年における平成の大合併によって JED-Mデータと工業統計表

の市町村名に乖離が発生したため、(財)国土地理協会の市町村変更情報を用いひも

付けを行った。また同一市町村が複数選挙区に所属する場合、JED-Mデータに記載

されている選挙区別市町村別有権者数を用い案分した。以上の作業により選挙区別

粗付加価値額を作成し、全選挙区の粗付加価値額に占める選挙区別粗付加価値額の

シェアを計算した。

• 選挙区の都市地域-農村地域区分の閾値:DID人口比の第 1四分位点(25パーセン

タイル)

14なお、図 2.3に用いた農業データ系列に関して、データソースである市町村別生産農業所得統計のうち、1964年版及び 1965年版は統計書そのものが欠損していた。さらに、1970年版と 1971年版の統計データを確認したところ完全に一致したため、1971年も欠損とした。したがって、上記 3カ年を除く 1960年から 70年の市町村別粗生産額を選挙区に合算したうえで、yd = ad + bd × timeを想定した OLSを用いて線形補完し、選挙区ごとの予測値 yd を上記 3カ年のデータとした。なお、内生的保護関数の分析期間は 1979年から2006年であるため、推定作業そのものに影響はない。

20

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小林 (1997)、Horiuchi and Saito (2003)、菅原 (2004)は都市地域及び農村地域の主

な尺度として選挙区ごとの人口集中地区 (Densely Inhabited District: DID)人口比

率を用いている。本稿は投票行動の地域差に着目しているため、既存研究と同様に

DID人口比率を用い選挙区を区分した。具体的には、各年の国勢調査と JED-Mデー

タを用いて、市町村別人口とDID人口を直近の衆議院総選挙の選挙区に集計し、選

挙区別DID人口比率を算出した。そして、同時点の選挙区別DID人口比を用い、第

1四分位点を閾値とし農村地域と都市地域を設定した。また感度分析のため、中央

値を閾値に農村地域、都市地域に分類した説明変数も作成した。なお、2005年にお

ける平成の大合併によって JED-Mデータと国勢調査の市町村名の不一致が発生し

たため、(財)国土地理協会の市町村変更情報を用いひも付けを行った。また同一市

町村が複数選挙区に所属する場合、JED-Mデータに記載されている選挙区別市町村

別有権者数を用い案分した。

統計分析上の特徴

前節の議論から推定式 (4.1)式は (4.1’)式となる。分析に用いるデータセットは欠損情

報のない balanced panel dataではある。また、個体数が小さく (N=2)、計測期間が比較

的長い (T=28)という特徴があるため、long panel data (macro panel data)と呼ばれる

データセットである。これらのデータセットは通常のパネルデータと異なり時系列データ

に近い性質をもつと考えられる。なお、分析方法に関して、Baltagi (2009)及びCameron

and Trivedi (2009)に従った。

zgt = ζ0 + ζ1x1gt + ζ2x2gt + ϵgt, for g ∈ ag,mn , t ∈ 1979, · · · , 2006 (4.1’)

以下、分析にあたって考慮すべき要因とその対処を述べる。

• Panel unit-root と見せかけの相関

非定常パネルデータを用いた場合、見せかけの相関が発生しうる。その可能性を把

握するため、panel unit-root testを行い定常性を確認する。本稿のデータはN=2と

いう特徴を持つため、N/T → 0及び balanced panelを前提とした Levin–Lin–Chu

検定を用いる。

• 農業ダミー変数と x1gt の多重共線性

21

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(4.1’)式に含まれる x1gtは、DID人口比率が閾値より小さい選挙区の集計値である

ため、農業部門の値が常に製造業部門を上回る。したがって産業ダミー変数を導入

した場合、多重共線性が発生してしまう。この問題に対して推定式に産業ダミー変

数を導入しないことにより対処した。

• 誤差項の cross-sectional dependence (contempaneous correlation)

内生的貿易政策に関して Grossman and Helpman (1994)は産業利益団体に着目し

た protection for saleモデルを提示した。 Goldberg and Maggi (1999)による実証

分析以降様々なクロスセクション分析が行われ、protection for saleモデルの妥当性

を検証している。例えばMizuta(2011)は日本経済を対象に protection for saleモデ

ルを検証している。したがって、unobservableな要因として攪乱項に cross-sectional

dependence(CSD)が発生する可能性がある。なお、攪乱項の CSDは次式である。

E[ϵϵ′

]= Ω =

σ21I σ1,2I

σ2,1I σ22I

ここで σ2,1 = σ1,2 = 0であれば heteroskedasticityと呼ばれ、σ2,1 = σ1,2 = 0 かつ

σ1 = σ2 = σ ならば homoskedasticityと呼ばれる。

• 誤差項の系列相関本稿で用いるデータは t=28と観測期間の短い時系列であるが、誤差項に系列相関

が発生する可能性がある。

以上のようにサンプルサイズが小さく CSDを伴う long panel dataであるため、ベー

スラインとして iterative Feasible GLSを用い推定を行う。系列相関を想定しない場合、

iterative Feasible GLSはMLEに収束し loglikelihoodを得ることができ、誤差項の想定に

応じた情報量規準を得ることができる。一方、系列相関を想定した場合、iterative Feasible

GLS はMLEに収束しないため、three step Feasible GLSを用い推定を行う。この場合、

loglikelihoodを得ることができないため情報量規準を知ることはできない。なお、構造パ

ラメータ vRU の標準誤差は delta methodによって求める。

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分析手順

まず、説明変数及び被説明変数を対象に Panel unit-root検定を行う。次に、誤差項の

特定ごとに iterative Feasible GLS推定を行い、the Breusch-Pagan statistic for cross-

sectional independence (以下、B.P. LM 検定) により H0 : no CSD を検証し、a

modified Wald statistic for groupwise heteroskedasticity (以下、M. Wald検定) によ

りH0 : σ2i = σ for ∀iを検定する15。これらの推定結果から回帰係数の符号条件:ζ1 > 0、

ζ2 > 0、ζ1 + ζ2 > 0を確認し、そのうえで投票構造パラメータ vRU を計測する。この構造パ

ラメータが 1を上回るならば農村地域の投票行動は比較的まとまっていると解釈できる、

つまり vRU ≡ ζ1/ζ2 > 1 ⇐⇒ φR > φU と考えられる。また、理論モデルが満たすべき条件

を確認する必要がある。その条件はモデル及び推定式の前提より (1) ζ1 = 0, (2) ζ2 = 0,

(3) vRU = 1 ⇐⇒ φR = φU である。さらに感度分析として、被説明変数の指標ごとの推定

結果を確認し、定数項の影響を合わせて確認する。最後に、説明変数の閾値を第 1四分位

点から中央値に変更し再構成した場合の推定結果を確認する。

5 推定結果

パネルデータの定常性を確認するため、panel unit-root検定を行った。表 5.1はトレン

ド項と 4期までのラグを加えた Levin–Lin–Chu検定の結果である。表側にはトレンド項

とラグ項を、表頭には検定対象としたパネルデータ系列を表示し、各々の組み合わせごと

の調整済t値とその p値を掲載している。被説明変数であるWRI、TRI及び NRAに関

しては 1% 水準で unit-rootの存在が棄却され、これらのパネルデータは定常と考えられ

る。同様に説明変数である x1及び x2ではトレンド項と 2期のラグ項までにそれぞれ 10%

水準で unit-rootの存在が棄却されており、データ系列は非定常であるとは言い難い。以

上の検討から分析に用いるデータセットは定常であると判断し、見せかけの相関の生ずる

可能性は低いと考えられる。

= Table5.1. =

次に選挙区のうちDID人口比率が第 1四分位点以下を x1、それ以外を x2へ集計した場

合の推定結果を考察する。表 5.2の表側は回帰係数 ζ、その線形結合、投票構造パラメー

タ vRU、農村地域と都市地域の選挙区内イデオロギーのばらつきの差 vR

U − 1、the Breusch-

Pagan LM検定 (H0 : no CSD) 及び a modified Wald 検定 (H0 : σ2i = σ)であり、表

15Baum(2001)による stata-拡張コマンドである、xttest2及び xttest3コマンドを用いた。

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頭の一段目に、被説明変数の計算に用いた貿易保護指標を、表頭の二段目に推定方法を記

載している。

= Table5.2. =

はじめに、推定結果 (1)、(2)及び (3)を検討する。推定結果 (1)及び (2)の誤差項はCSD

を想定した FGLSであり (3)は homoskedasticityを想定した FGLS( = pooled OLS)であ

る。回帰係数の符号条件:ζ1 > 0、ζ2 > 0、に関して、誤差項のCSDを想定した推定結果

(1),(2)は、定数項の有無に依存せずに、符号条件を有意水準 1% 水準で満たしている。一

方、誤差項に homoskedasticityの制約を課した (3)は ζ2の符号条件を満たしていない。こ

こで、誤差項の特定化に関する B. P. LM 検定 (H0 : no CSD )及び M.Wald検定(H0 :

σ2i = σ for ∀i)を確認すると、共に帰無仮説を有意水準 5% 以内で棄却している。さらに、

Log Likelihoodから得られたベイズ情報量規準(BIC)を比較すると、(1)の BIC値が最

も小さいことが分かる。したがって、誤差項を CSDと想定する (1)式をベースラインと

して扱う。

理論モデルの前提から回帰係数の線形結合には条件:ζ1 + ζ2 > 0が要請されるため、

delta methodにより線形結合の標準誤差を計算したところ、ζ1 + ζ2 > 0を有意水準 1

%水準で満たすことを確認した。さらに、農村地域と都市地域の投票構造に関する構造

パラメータ vRU を計算した結果、その符号条件は有意水準 1%水準で正であり、理論モ

デルと整合的な結果を得た。さらに、vRU の値は 1を有意水準 1%水準で上回っており、

vRU ≡ ζ1/ζ2 > 1 ⇐⇒ φR > φU が成立すると考えられる。この結果を図 3.1を用いて解釈

すると、「φ1を尺度に φ2を計測した場合、φ2の大きさは少なくとも1を上回ること」を

示唆しており、農村地域(= DID人口比率が第 1四分位点以下である選挙区)における

投票者のイデオロギーのばらつきは、都市地域(= DID人口比率が第 1四分位点を上回

る選挙区)と比較した場合、有意に小さいことを示している。なお、被説明変数に関した

感度分析として、(1)、(4)及び (7)を比較した結果、上述の符号条件、線形結合、投票構

造パラメータの推定結果に変動はないことも確認できる。

次に、回帰係数の線形制約を検討する。仮に線形制約 (1) ζ1 = 0及び (2) ζ2 = 0を棄却

できない場合、理論モデルとデータの間に矛盾が生じている恐れがある。さらに推定形式

である (3.11)式では、φd = φR for all d ∈ R、φd = φU for all d ∈ U と仮定しているた

め、線形制約 (3) ζ1 = ζ2 ⇐⇒ φR = φU を棄却できない場合、やはり矛盾が生じる。さら

に、φR = φU かつ φd = φR for all d ∈ R、φd = φU for all d ∈ U である場合、内生的

保護関数 (3.11)式は (3.10.b)式に簡略化できるため、線形制約 (3) ζ1 = ζ2 ⇐⇒ φR = φU

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を棄却できない場合、回帰分析そのものの意味を失ってしまう。

= Table5.3. =

表 5.3は線形制約の検定結果である。表頭の一段目に被説明変数の計算に用いた貿易保

護指標を、表頭の二段目に推定方法を記載している。また、表側には理論モデルと矛盾す

る線形制約を記載し、表頭・表側の組み合わせに応じた χ2値とその p値を掲載している。

表 5.3から、被説明変数と推定方法の組み合わせに依存せずに、有意水準 5%以内で帰無

仮説 (1),(2),(3)は棄却できることから、モデルの前提条件である (1) ζ1 = 0, (2) ζ2 = 0,

(3) vRU = 1 ⇐⇒ φR = φU は成立していると考えられる。

感度分析として、選挙区のうちDID人口比率が中央値以下を x1、それ以外を x2へ集計

した場合の推定結果を表 5.4に掲載する。推定結果 (16)16を除いて符号条件、線形結合、

投票構造パラメータの傾向は表 5.2とほぼ同じである。ただし、vRU の値は、表 5.2と比べ

て小さくなっていることを確認できる。

= Table5.4. =

線形制約の検定結果を表 5.5に示す。推定結果 (16)を除いて、ほぼ表 5.3と同様の傾向

である。したがって、中央値により説明変数を定義した場合においても、モデルの前提条

件である (1) ζ1 = 0, (2) ζ2 = 0, (3) vRU = 1 ⇐⇒ φR = φU は成立すると考えられる。

= Table5.5. =

最後に、DID人口比率の第 1四分位点により定義された説明変数を用い、誤差項をCSD

及び common AR(1)と想定した、three step FGLS推定の結果を検討する。表 5.6は、被

説明変数の定義ごとの回帰係数、その線形結合と非線形結合(構造パラメータ)、線形制

約及び common AR(1)過程における係数 ρの推定結果を示している。回帰係数の符号条

件は理論の予測通りであるが、回帰係数 ζ2の標準誤差が大きく、不安定であることがわか

る。したがって、投票構造パラメータ vRU ≡ ζ1/ζ2の分母が不安定であるため、その標準

誤差も大きい。線形結合の符号条件は予測通りなのだが、vRU に関しては不安定であるこ

とが分かる。さらに、モデルの前提条件に関した線形制約 (1) ζ1 = 0及び (3) ζ1 = ζ2は

有意水準 1%水準により棄却できるのだが、ζ2の標準誤差が大きいため、(2) ζ2 = 0を有

16推定結果 (16)は異常な値と思える。それいぇ、stata以外の統計ソフトウェア(Eviews)により同じ結果を再現できるかどうかを確認する予定である。

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意水準 10%水準以内で棄却することはできなかった。

= Table5.6. =

6 結論

本稿は、農業保護の要因に関する議論に関して三つの提案を行った。第一に、Samuels

and Snyder (2001)らが指摘している「定数不均衡」と農業保護の関係性である。本稿は

その影響力の指標である産業別票の価値指数を提案した。さらに、第二の提案として、定

数不均衡を明示的に導入した内生的保護関数を提案した。最後に、定数不均衡の導入によ

り投票行動の構造パラメータを貿易保護の規定要因として提示し、日本経済を対象に投票

構造パラメータの推定結果を提示した。その結果から、農村地域の投票者は、都市地域の

投票者と比べ、イデオロギーのばらつきが小さく、貿易保護により支持票を得やすい傾向

があることを実証した。さらに、DID人口比率の低い選挙区では、票の価値が比較的高

く、農業生産額のシェアも相対的に高い傾向のあることから、定数不均衡による政治的影

響力の補正によって、農村地域の産業構造は、貿易保護政策に比較的強く反映されると考

えられる。

26

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図表0

.2.4

.6.8

prot

ectio

n le

vel

1960 1970 1980 1990 2000 2010year

agriculture manufacture

Fig 2.1. Trade protection in agriculture and manufacture from 1960 to 2006

32

Page 33: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Re apportionment in 1964

0.5

11.

52

Dens

ity

0 .5 1 1.5 2value of vote

30th 31st

Re apportionment in 1975

0.5

11.

52

Dens

ity

0 .5 1 1.5 2value of vote

33rd 34th

Re apportionment in 1986

0.5

11.

52

Dens

ity

0 .5 1 1.5 2value of vote

37th 38th

Re apportionment in 1992

0.5

11.

52

Dens

ity

0 .5 1 1.5 2value of vote

39th 40th

Electoral reform in 1994

0.5

11.

52

Dens

ity

0 .5 1 1.5 2value of vote

40th 41s t

Re apportionment in 2002

0.5

11.

52

Dens

ity

0 .5 1 1.5 2value of vote

42nd 43rd

Fig 2.2 Distribution of ϖdβ−1d

33

Page 34: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

­.10

.1.2

.3in

dex

1960 1970 1980 1990 2000 2010year

agriculture manufacture

Fig 2.3. Malapportionment in agriculture and in manufacture from 1960 to 2006

34

Page 35: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Fig 3.1. The intra-ideological bias in each of districts

35

Page 36: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Fig 3.2. The party A’s probability to win a majority of legislative seats

36

Page 37: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Table 2.1. LDP′s share of the seat, share of the vote and malapportionment

year electionLDP ′s share

of the seat (%)

LDP ′s relative share

of the vote (%)Maxmin ratio LH index

(1) (2) (3) (4)

1960 29th 63.4 57.6 3.019 0.098

1963 30th 60.6 54.7 3.549 0.123

1967 31st 57.0 48.8 3.500 0.125

1969 32nd 59.3 47.6 4.325 0.136

1972 33rd 55.2 46.9 4.989 0.146

1976 34th 48.7 41.8 3.496 0.128

1979 35th 48.5 44.6 3.872 0.131

1980 36th 55.6 47.9 3.949 0.132

1983 37th 48.9 45.8 4.409 0.138

1986 38th 58.6 49.4 2.925 0.129

1990 39th 53.7 46.1 3.180 0.141

1993 40th 43.6 36.6 2.821 0.131

1996 41st56.3

(35.0)

38.6

(32.8)

2.316

(1.744)

0.078

(0.049)

2000 42nd59.0

(31.1)

41.0

(28.3)

2.465

(1.823)

0.081

(0.051)

2003 43rd56.0

(38.3)

43.8

(35.0)

2.150

(1.671)

0.078

(0.050)

2005 44th73.0

(42.8)

47.8

(38.2)

2.171

(1.692)

0.080

(0.051)

37

Page 38: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Table 2.2. Kolmogorov-Smirnov test for the distribution of ϖdβ−1d

Before = After Before ≤ After Before ≥ After

1964 30th v.s. 31st 0.09 0.08 −0.09

1975 33rd v.s. 34th 0.10 0.05 −0.10

1986 37th v.s. 38th 0.06 0.06 −0.06

1992 39th v.s. 40th 0.08 0.07 −0.08

1994 40th v.s. 41st 0.26 ∗∗∗ 0.19 ∗∗∗ −0.26 ∗∗∗

2002 42nd v.s. 43rd 0.03 0.03 −0.03

NOTES:∗ indicates significance at the 10% level, ∗∗ at the 5% level, ∗∗∗ at the 1% level.

38

Page 39: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Table 5.1. Panel unit-root: Levin-Lin-Chu unit-root test

WRI TRI NRA x1 x2

trend and lag (1) adj.t −3.90 ∗∗∗ −3.32 ∗∗∗ −2.95 ∗∗∗ −1.02 −1.57 ∗

p 0.00 0.00 0.00 0.15 0.06

trend and lag (2) adj.t −1.13 −0.81 −1.20 −1.56 ∗ −0.97

p 0.13 0.21 0.12 0.06 0.17

trend and lag (3) adj.t 0.27 0.03 −0.15 −1.16 −1.50 ∗

p 0.61 0.51 0.44 0.12 0.07

trend and lag (4) adj.t 1.30 1.49 1.60 −0.08 −1.14

p 0.90 0.93 0.95 0.47 0.13

NOTES:∗ indicates significance at the 10% level, ∗∗ at the 5% level, ∗∗∗ at the 1% level.

39

Page 40: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Tab

le5.

2.Tra

depr

otec

tion

esti

mat

ion

resu

lts

(the

first

quar

tile

)

WR

IT

RI

NR

A

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

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Sig

n(1

)(2

)(3

)(4

)(5

)(6

)(7

)(8

)(9

)

ζ 0+

/−0.

03∗∗

∗0.

02∗∗

0.02

∗∗∗

0.01

4∗∗∗

0.03

∗∗∗

0.01

4∗∗

(0.0

0)(0

.01)

(0.0

0)(0

.005

)(0

.00)

(0.0

06)

ζ 1+

1.01

∗∗∗

1.19

∗∗∗

0.79

∗∗∗

0.83

∗∗∗

0.95

∗∗∗

0.65

∗∗∗

0.75

∗∗∗

0.98

∗∗∗

0.58

∗∗∗

(0.0

9)(0

.05)

(0.0

6)(0

.08)

(0.0

4)(0

.05)

(0.0

9)(0

.04)

(0.0

5)

ζ 2+

0.35

∗∗∗

0.22

∗∗∗

−0.3

5∗∗∗

0.27

∗∗∗

0.12

∗−0

.29∗

∗∗0.

31∗∗

∗0.

15∗∗

−0.4

3∗∗∗

(0.0

9)(0

.08)

(0.1

0)(0

.08)

(0.0

7)(0

.08)

(0.1

0)(0

.07)

(0.0

9)

ζ 1+

ζ 2+

1.36

∗∗∗

1.42

∗∗∗

0.44

∗∗∗

1.09

∗∗∗

1.07

∗∗∗

0.36

∗∗∗

1.06

∗∗∗

1.13

∗∗∗

0.15

(0.1

8)(0

.12)

(0.1

5)(0

.15)

(0.1

1)(0

.12)

(0.1

8)(0

.12)

(0.1

3)

vR U

+2.

86∗∗

∗5.

33∗∗

∗−2

.24∗

∗∗3.

10∗∗

∗8.

04∗

−2.2

5∗∗∗

2.39

∗∗∗

6.45

∗∗−1

.35∗

∗∗

(0.5

5)(1

.70)

(0.7

6)(0

.71)

(4.5

4)(0

.77)

(0.4

9)(2

.88)

(0.3

8)

vR U−

11.

86∗∗

∗4.

33∗∗

−3.2

4∗∗∗

2.10

∗∗∗

7.04

−3.2

5∗∗∗

1.39

∗∗∗

5.45

∗−2

.35∗

∗∗

(0.5

5)(1

.70)

(0.7

6)(0

.71)

(4.5

4)(0

.77)

(0.4

9)(2

.88)

(0.3

8)

B.P

.LM

test

22.0

0∗∗∗

20.0

3∗∗∗

20.5

6∗∗∗

17.2

1∗∗∗

23.0

3∗∗∗

20.9

5∗∗∗

M.W

ald

test

95.7

1∗∗∗

6.35

∗∗85

.94∗

∗∗3.

3443

2.29

∗∗∗

19.8

3∗∗∗

BIC

−204

.14

−193

.16

−193

.30

−220

.51

−209

.53

−213

.63

−222

.28

−207

.59

−205

.53

N56

5656

5656

5656

5656

NO

TE

S:∗

indic

ate

ssi

gnifi

cance

at

the

10%

level

,∗∗

at

the

5%

level

,∗∗

∗at

the

1%

level

.

40

Page 41: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Tab

le5.

3.Lin

ear

hypo

thes

iste

st(t

hefir

stqu

arti

le)

WR

IT

RI

NR

A

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

OLS

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

(9)

H0

R=

012

1.92

∗∗∗

630.

24∗∗

∗19

0.15

∗∗∗

120.

82∗∗

∗50

5.14

∗∗∗

187.

61∗∗

∗67

.40∗

∗∗47

1.38

∗∗∗

127.

21∗∗

p0.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

00

H0

U=

014

.26∗

∗∗7.

97∗∗

∗13

.12∗

∗∗10

.96∗

∗∗2.

74∗

12.8

4∗∗∗

10.3

1∗∗∗

4.21

∗∗23

.99∗

∗∗

p0.

000.

000.

000.

000.

100.

000.

000.

040.

00

H0

R=

φU

181.

06∗∗

∗53

1.68

∗∗∗

351.

12∗∗

∗16

7.09

∗∗∗

471.

00∗∗

∗34

5.56

∗∗∗

125.

14∗∗

∗46

3.94

∗∗∗

339.

20∗∗

p0.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

00

NO

TE

S:∗

indic

ate

ssi

gnifi

cance

at

the

10%

level

,∗∗

at

the

5%

level

,∗∗

∗at

the

1%

level

.

41

Page 42: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Tab

le5.

4.Tra

depr

otec

tion

esti

mat

ion

resu

lts

(the

seco

ndqu

arti

le)

WR

IT

RI

NR

A

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

OLS

Sig

n(1

0)(1

1)(1

2)(1

3)(1

4)(1

5)(1

6)(1

7)(1

8)

ζ 0+

/−0.

013∗

−0.0

10.

010∗

−0.0

10.

002∗

∗∗−0

.01

(0.0

07)

(0.0

1)(0

.006

)(0

.01)

(0.0

01)

(0.0

1)

ζ 1+

0.89

∗∗∗

0.92

∗∗∗

0.64

∗∗∗

0.74

∗∗∗

0.75

∗∗∗

0.53

∗∗∗

0.00

40.

74∗∗

∗0.

45∗∗

(0.0

9)(0

.05)

(0.0

7)(0

.08)

(0.0

5)(0

.06)

(0.0

23)

(0.0

5)(0

.06)

ζ 2+

0.43

∗∗∗

0.35

∗∗∗

−0.1

50.

35∗∗

∗0.

26∗∗

∗−0

.12

−0.0

030.

27∗∗

∗−0

.25∗

∗∗

(0.0

9)(0

.07)

(0.1

0)(0

.08)

(0.0

6)(0

.09)

(0.0

32)

(0.0

7)(0

.09)

ζ 1+

ζ 2+

1.33

∗∗∗

1.28

∗∗∗

0.49

∗∗∗

1.08

∗∗∗

1.01

∗∗∗

0.41

∗∗∗

0.00

11.

01∗∗

∗0.

19

(0.1

8)(0

.12)

(0.1

7)(0

.15)

(0.1

1)(0

.14)

(0.0

55)

(0.1

2)(0

.15)

vR U

+2.

06∗∗

∗2.

60∗∗

∗−4

.26

2.13

∗∗∗

2.86

∗∗∗

−4.2

6−1

.18

2.71

∗∗∗

−1.7

7∗∗

(0.2

4)(0

.38)

(3.3

7)(0

.28)

(0.5

2)(3

.38)

(19.

29)

(0.4

8)(0

.87)

vR U−

11.

06∗∗

∗1.

60∗∗

∗−5

.26

1.13

∗∗∗

1.86

∗∗∗

−5.2

6−2

.18

1.71

∗∗∗

−2.7

7∗∗∗

(0.2

4)(0

.38)

(3.3

7)(0

.28)

(0.5

2)(3

.38)

(19.

29)

(0.4

8)(0

.87)

B.P

LM

test

21.8

2∗∗∗

20.8

0∗∗∗

20.4

2∗∗∗

18.8

2∗∗∗

13.7

6∗∗∗

21.7

4∗∗∗

M.W

ald

test

25.1

4∗∗∗

6.38

∗∗22

.71∗

∗∗4.

314E

+8∗

∗∗26

.56∗

∗∗

BIC

−191

.43

−194

.12

−177

.20

−207

.47

−210

.28

−198

.12

−315

.91

−209

.93

−191

.17

N56

5656

5656

5656

5656

NO

TE

S:∗

indic

ate

ssi

gnifi

cance

at

the

10%

level

,∗∗

at

the

5%

level

,∗∗

∗at

the

1%

level

.

42

Page 43: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Tab

le5.

5.Lin

ear

hypo

thes

iste

st(t

hese

cond

quar

tile

)

WR

IT

RI

NR

A

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

OLS

FG

LS

FG

LS

OLS

(10)

(11)

(12)

(13)

(14)

(15)

(16)

(17)

(18)

H0

R=

092

.20∗

∗∗31

0.72

∗∗∗

83.4

2∗∗∗

90.2

5∗∗∗

256.

67∗∗

∗83

.12∗

∗∗0.

0321

6.65

∗∗∗

52.0

8∗∗∗

p0.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

870.

000.

00

H0

U=

023

.72∗

∗∗25

.17∗

∗∗2.

1020

.47∗

∗∗16

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∗∗2.

090.

0116

.75∗

∗∗7.

57∗∗

p0.

000.

000.

150.

000.

000.

150.

920.

000.

01

H0

R=

φU

183.

33∗∗

∗58

8.46

∗∗∗

249.

41∗∗

∗16

7.18

∗∗∗

516.

27∗∗

∗24

8.40

∗∗∗

0.54

500.

72∗∗

∗24

9.84

∗∗∗

p0.

000.

000.

000.

000.

000.

000.

460.

000.

00

NO

TE

S:∗

indic

ate

ssi

gnifi

cance

at

the

10%

level

,∗∗

at

the

5%

level

,∗∗

∗at

the

1%

level

.

43

Page 44: 農業・製造業間における票の価値の格差と農業保護水準 … · 農業保護指標データベースを用いた“political eoconomy of agricultural price distortions”

Table 5.6. Trade protection estimation results under common AR(1)

WRI TRI NRA

Sign (19) (20) (21) (22) (23) (24)

ζ0 +/− 0.03∗∗∗ 0.02∗∗∗ 0.02∗∗∗

(0.01) (0.01) (0.01)

ζ1 + 0.84∗∗∗ 0.96∗∗∗ 0.72∗∗∗ 0.81∗∗∗ 0.66∗∗∗ 0.76∗∗∗

(0.13) (0.13) (0.11) (0.11) (0.12) (0.12)

ζ2 + 0.19 0.17 0.17 0.15 0.13 0.12

(0.16) (0.17) (0.14) (0.14) (0.14) (0.15)

ζ1 + ζ2 + 1.03∗∗∗ 1.13∗∗∗ 0.89∗∗∗ 0.97∗∗∗ 0.79∗∗∗ 0.88∗∗∗

(0.27) (0.28) (0.23) (0.24) (0.25) (0.15)

vRU + 4.55 5.68 4.11 5.35 4.87 6.11

(3.35) (4.99) (2.74) (4.50) (4.42) (6.57)

vRU − 1 + 3.55 4.68 3.11 4.35 3.87 5.11

(3.35) (4.99) (2.74) (4.50) (4.42) (6.57)

H0 : φR = 0 40.49∗∗∗ 55.64∗∗∗ 41.89∗∗∗ 56.36∗∗∗ 29.01∗∗∗ 40.06∗∗∗

p 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

H0 : φU = 0 1.38 1.04 1.65 1.12 0.92 0.70

p 0.24 0.31 0.20 0.29 0.34 0.40

H0 : φR = φU 42.23∗∗∗ 61.46∗∗∗ 39.87∗∗∗ 58.61∗∗∗ 33.89∗∗∗ 49.38∗∗∗

p 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

ρ 0.81 0.81 0.80 0.80 0.83 0.82

N 56 56 56 56 56 56

NOTES:∗ indicates significance at the 10% level, ∗∗ at the 5% level, ∗∗∗ at the 1% level.

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