4
農業ビッグデータ活⽤による ロボティックグリーンハウスの実現 1.研究テーマの概要 研究開発体制と参画機関の役割 4 ①⽣体・環境情報計測ロボットシステムの開発 ・要素技術の研究・開発: 豊橋技術科学⼤学 ・ロボット試作開発: シンフォニアテクノロジー㈱ ・実証協⼒: ⻄三河農業協同組合きゅうり部会 ②⽣育診断⽀援システムの開発 ・データ収集・診断アルゴリズム構築:豊橋技術科学⼤学, PLANT DATA㈱ ・システム試作開発: シンフォニアテクノロジー㈱, ㈱アイ・シー・エス ・データ収集協⼒: ⻄三河農業協同組合きゅうり部会 JAあいち経済連営農⽀援センター 愛知県⻄三河農林⽔産事務所 ③病害⾍モニタリングシステムの開発 ・全体構想・要素技術の開発: 豊橋技術科学⼤学 ・診断プロトコルの開発: 愛知県農業総合試験場 ・診断チップ量産技術の開発: ㈱トヨテック ・診断装置試作機の開発: ㈱テクノサイエンス 農業ビッグデータ活⽤による ロボティックグリーンハウスの実現 1.研究テーマの概要 3 【プロジェクト概要】 農業ビッグデータ活⽤による ロボティックグリーンハウスの実現 1.研究テーマの概要 2 【背景】 愛知県の主要な農業⽣産の形態は施設園芸 20〜30a 程度の⼩規模のハウスが分散している形態が多い ⽣育状態を⾒極め環境状態を適切に制御することが重要 病害⾍の蔓延による⽣育不良や減収も重要な課題 【⽬的】 AI技術,IoT技術,ロボット技術を導⼊して農業ビッグデータを構築 農業ビッグデータ解析遺伝⼦診断技術により,⽣育診断病害予防を実現 ・施設園芸の省⼈化・効率化により,収益性向上競争⼒強化を⽬指す 【解決すべき課題】 ① 環境要因と⽣育状態を関連付けた数値データがほぼ存在しないことが,⽣産性向上の ⼤きな課題として顕在化しつつある.植物の⽣育状態の⾃動計測と,計測されたデー タに基づいた植物⽣育の環境応答モデルの構築が不可⽋である. ② 環境制御システムの性能を最⼤限に発揮させるには,植物の⽣育に合わせた栽培が 必須となるが,これまで⽣育状態の⾒極めは⼈間の主観に委ねられている③ 病害⾍の蔓延による⽣育不良や減収は,環境制御と並んで重要な課題である.病害⾍ 蔓延の予兆検出システムの開発,病害⾍発⽣事象と環境要因との関係のモデル化など, 正確な観測とデータ解析に基づいたアプローチが望まれている. 農業ビッグデータ活⽤による ロボティックグリーンハウスの実現 研究リーダー 三浦 純(豊橋技術科学⼤学) 事業化リーダー 光男(シンフォニアテクノロジー㈱) 位⾼光俊(㈱トヨテック) 先進的AI・IoT・ビッグデータ活⽤技術開発プロジェクト 農業・健康⻑寿分野におけるAI・IoT・ビッグデータ活⽤ 1 参画機関 ■豊橋技術科学⼤学 シンフォニアテクノロジー㈱ ■ ㈱トヨテック ■ ㈱アイ・シー・エス ■愛知県⻄三河農林⽔産事務所 ■愛知県農業総合試験場 ■あいち産業科学技術総合センター ■ JAあいち経済連営農⽀援センター ■ ㈱テクノサイエンス ■⻄三河農業協同組合きゅうり部会 PLANT DATA㈱

農業ビッグデータ活⽤による ロボティックグリーンハウスの …...農業ビッグデータ活 による ロボティックグリーンハウスの実現 4.事業化の

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • 農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現1.研究テーマの概要

    研究開発体制と参画機関の役割

    4

    ①⽣体・環境情報計測ロボットシステムの開発・要素技術の研究・開発: 豊橋技術科学⼤学・ロボット試作開発: シンフォニアテクノロジー㈱・実証協⼒: ⻄三河農業協同組合きゅうり部会②⽣育診断⽀援システムの開発・データ収集・診断アルゴリズム構築:豊橋技術科学⼤学,

    PLANT DATA㈱・システム試作開発: シンフォニアテクノロジー㈱,

    ㈱アイ・シー・エス・データ収集協⼒: ⻄三河農業協同組合きゅうり部会

    JAあいち経済連営農⽀援センター愛知県⻄三河農林⽔産事務所

    ③病害⾍モニタリングシステムの開発・全体構想・要素技術の開発: 豊橋技術科学⼤学・診断プロトコルの開発: 愛知県農業総合試験場・診断チップ量産技術の開発: ㈱トヨテック・診断装置試作機の開発: ㈱テクノサイエンス

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現1.研究テーマの概要

    3

    【プロジェクト概要】

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現1.研究テーマの概要

    2

    【背景】 愛知県の主要な農業⽣産の形態は施設園芸• 20〜30a 程度の⼩規模のハウスが分散している形態が多い• ⽣育状態を⾒極め環境状態を適切に制御することが重要• 病害⾍の蔓延による⽣育不良や減収も重要な課題

    【⽬的】・AI技術,IoT技術,ロボット技術を導⼊して農業ビッグデータを構築・農業ビッグデータ解析と遺伝⼦診断技術により,⽣育診断と病害予防を実現・施設園芸の省⼈化・効率化により,収益性向上と競争⼒強化を⽬指す

    【解決すべき課題】① 環境要因と⽣育状態を関連付けた数値データがほぼ存在しないことが,⽣産性向上の⼤きな課題として顕在化しつつある.植物の⽣育状態の⾃動計測と,計測されたデータに基づいた植物⽣育の環境応答モデルの構築が不可⽋である.

    ② 環境制御システムの性能を最⼤限に発揮させるには,植物の⽣育に合わせた栽培が必須となるが,これまで⽣育状態の⾒極めは⼈間の主観に委ねられている.

    ③ 病害⾍の蔓延による⽣育不良や減収は,環境制御と並んで重要な課題である.病害⾍蔓延の予兆検出システムの開発,病害⾍発⽣事象と環境要因との関係のモデル化など,正確な観測とデータ解析に基づいたアプローチが望まれている.

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現

    研究リーダー 三浦 純(豊橋技術科学⼤学)事業化リーダー ⽖ 光男(シンフォニアテクノロジー㈱)

    位⾼光俊(㈱トヨテック)

    先進的AI・IoT・ビッグデータ活⽤技術開発プロジェクト

    農業・健康⻑寿分野におけるAI・IoT・ビッグデータ活⽤

    1

    参画機関■豊橋技術科学⼤学 ■シンフォニアテクノロジー㈱ ■ ㈱トヨテック

    ■ ㈱アイ・シー・エス ■愛知県⻄三河農林⽔産事務所■愛知県農業総合試験場 ■あいち産業科学技術総合センター■ JAあいち経済連営農⽀援センター ■ ㈱テクノサイエンス

    ■⻄三河農業協同組合きゅうり部会 ■ PLANT DATA㈱

  • 農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現3.研究開発の実施状況

    8

    15 cm

    45 cm⼟壌センサ(MJ1011,ラピスセミコンダクタ(株))

    潅⽔チューブ

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    0

    2

    4

    6

    8

    15:0

    023

    :00

    7:00

    15:0

    023

    :00

    7:00

    15:0

    023

    :00

    7:00

    15:0

    023

    :00

    7:00

    15:0

    023

    :00

    7:00

    15:0

    023

    :00

    7:00

    15:0

    023

    :00

    7:00

    EC(

    dSm

    -1)

    pH

    pH(15 cm深) pH(45 cm深)

    EC(15 cm深) EC(45 cm深)

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    0

    2

    4

    6

    8

    15:0

    021

    :00

    3:00

    9:00

    15:0

    021

    :00

    3:00

    9:00

    15:0

    021

    :00

    3:00

    9:00

    15:0

    021

    :00

    3:00

    9:00

    15:0

    021

    :00

    3:00

    9:00

    15:0

    021

    :00

    3:00

    9:00

    EC(

    dSm

    -1)

    pH

    pH(15 cm深) pH(45 cm深)

    EC(15 cm深) EC(45 cm深)

    潅⽔チューブ下の深さ別の⼟壌pH,EC

    ⼟壌センサの埋設位置(模式図)潅⽔チューブ下とキュウリ株間のそれぞれ深さ15 cm,45 cmに⼟壌センサーをキュウリ定植前に埋設

    キュウリ株間の深さ別の⼟壌pH,EC

    地上部の環境計測• 既存の環境計測システム

    (あぐりログ,(株)IT⼯房Z)を活⽤.

    地下部の環境計測• 市販の⼟壌センサを実証ほ場に導⼊し,⼿動計測を開始.

    • ⾃動連続計測のための⼟壌環境計測システムの試作機を作製し,3⽉に現地に導⼊.

    【pH】⽐較的安定

    【EC】潅⽔チューブ下の15 cm深では潅⽔の影響を受けて変動.株間では変動は⼩さい.

    取得した⽣体・環境情報から⽣育予測や異常警報発信(⽬標性能:7⽇後で平均精度±20%で⽣育状況を予測)• ターゲット2:「⽣育診断⽀援システム」の開発

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現3.研究開発の実施状況

    • ターゲット2:「⽣育診断⽀援システム」の開発

    7

    農⽔省スマート農業実証PJとの連携を検討中

    トマトで確⽴した技術をキュウリに適⽤

    農業ビッグデータ構築(⽬標性能:広さ10‐40aの圃場で,毎⽇30‐100株分のデータを取得)

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現3.研究開発の実施状況

    • ターゲット1:「⽣体・環境情報計測ロボットシステム」の開発

    6

    ⽣体情報計測システム⽤移動台⾞の開発

    ■果実 ■茎 ■葉 ■花 ■背景の5つの領域に分割

    実環境でのキュウリの部位認識

    シミュレーション環境の構築

    シミュレーション環境を⽤いて認識の⾼精度化を⽬指す

    構成・駆動制御機器・⼿動制御箱・無線操作箱・距離測定カメラ・レーザ距離センサ

    ⾃律的に圃場内を移動し⽣体情報・環境情報を⾃動的に取得する(⽬標性能:広さ10aの圃場を3時間で巡回)

    深層学習を⽤いたキュウリ認識技術の開発

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現2.年次ロードマップ

    5

    研究項⽬ 令和元年7〜9⽉ 令和元年10〜12⽉ 令和2年1〜3⽉

    研究開発

    ①⽣体・環境情報計測ロボットシステムの開発

    ②⽣育診断⽀援システムの開発

    ③病害⾍モニタリングシステムの開発

    植物画像認識技術開発

    計測ロボットの要素設計

    計測ロボットの試作

    実環境での認識の検証および改良

    つり下げ型ロボットの仕様確定

    環境計測機器の設置と計測

    つり下げ型ロボットの設置と生体情報取得

    植物生体情報・環境情報の洗い出し

    金型設計・精密金型作製診断装置の仕様検討

    診断チップの試作診断装置の設計

    1病害のLAMP反応試験量産チップの最適設計

    診断プロトコル開発開始診断チップ性能評価

  • 農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現4.事業化の⾒通し

    • 市場性• キュウリの全国⽣産量は55万㌧/年。農家は⼈⼿不⾜、⾼齢化で軽労化、⾼収量化が要求されている。⽣育診断による栽培の最適化、⾒回り作業の低減のニーズは⾮常に多い。有数のキュウリ⽣産量を誇る⻄三河キュウリ農園で効果を確認できればすぐに導⼊できる。全国展開も図れる。

    • 事業化につながる体制づくりの状況• JA、⽣産農家、農林⽔産事務所、⼤学、企業が連携して研究開発を進めている。事業化に向けて、⽣産、研究、製作、販売まで⼀連の体制ができている。

    • プロジェクト終了後のビジネスプランへのつながり• 複合環境制御装置の販売で全国展開中、サービス体制もできている。本PJの成果を組み込むことで付加価値をつけ優位にビジネスを進めることができる。本PJ終了後は更にキュウリの⾃動収穫⽀援にチャレンジし⽣産農家のニーズに応える予定である。

    • 本県産業への波及の⾒通しについての⾒解• 県下のキュウリ⽣産量は約13万㌧/年(全国13位)で、本PJで開発したシステムはすぐに導⼊できる。システムは他の野菜にも展開できるため、愛知県の農業の活性化、競争⼒向上に⼤いに貢献することができる。

    • 本PJで開発する遺伝⼦診断チップは、農作物の病害⾍の診断のみならず、⽔産業、畜産業、医療など広範な分野への応⽤が可能な汎⽤技術であり、波及効果は⼤きい。

    12

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現3.研究開発の実施状況

    • ⼈材育成への取組状況• ⼤学の若⼿研究者・⼤学院⽣と企業の技術者が中⼼となり開発を進め,農業⽣産

    者との協働によりプロジェクトを遂⾏することにより,農⼯連携を主導できる⼈材を育成する.(若⼿研究参画者:5⼈)

    • 最先端技術の社会実装を通して,それらを使いこなし,多⽅⾯に応⽤できる先導的技術者を育成する.

    • 開発システムを豊橋技術科学⼤学が実施する農業⼈材育成事業に取り⼊れ,地域の担い⼿となるIT農業⼈材を育成する.(IT農業教育プログラム受講者 : 令和元年度修了⾒込9⼈,受講中12⼈)

    11

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現3.研究開発の実施状況

    • ベンチマークと⽐較した優位性

    【農業ロボット】• ⼤規模農場⽤⾃動トラクタ等の開発はあるが,⼩規模農場への適⽤はこれから• 収穫の⽀援・⾃動化は研究段階.ほ場全体をロボット⽤に再構築する必要あり

    【植物⽣育データの利⽤】• 農⽔省プロジェクト「AIを活⽤した栽培・労務管理の最適化技術の開発」で,⽣体情報・労務情報・環境情報の解析により栽培と労務管理を効率化する試み.低コストの⽣体情報計測技術,AI活⽤画像解析技術の開発が望まれる

    【病害⾍診断】• 病気や害⾍の種類の検査には等温遺伝⼦検査法(LAMP法)が利⽤されるが,1反応1マーカーで⾏うため⼿間がかかっている

    • 微細加⼯技術を⽤いてマイクロデバイス上で複数反応を同時検出する「マルチプレックス遺伝⼦診断⽤チップ」の開発を進めている.

    10

    農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現3.研究開発の実施状況

    • ターゲット3• ターゲット3:「病害⾍モニタリングシステム」の開発複数の病害⾍診断を同時・安価・簡便に⾏う技術の開発(⽬標性能:病害⾍8種類,60分以内)遺伝⼦診断チップの開発

    (豊橋技術科学⼤学・愛知県農業総合試験場)診断チップ量産技術の開発

    (株式会社トヨテック)

    診断装置試作機の開発(株式会社テクノサイエンス)

    構成①送液機構②封⽌機構③温調機構④検出機構⑤制御ハード⑥制御ソフト⑦筐体

    装置内部

    10mm外形:90mm×65mm反応容器(10個):約4µL

    量産チップ(プラスチック製)の試作品

    病害⾍簡易診断装置(プロト機)

    5mm

    導⼊⼝排出⼝

    反応容器(3µL)

    ガラス基板

    PDMSマイクロ流路

    混合部

    分注部

    45mm×25mm(3.0×5.5mm)

    遺伝⼦診断チップの外観写真

    湯中加温:63℃,60min

    蛍光観察 反応容器No(プライマーの種類)

    1:純水

    2:メロン黄化えそウイルス3:ウリ類退緑黄化ウイルス4:キュウリ緑斑モザイクウイルス5:キュウリモザイクウイルス

    キュウリ罹病葉サンプルから採取したRNAからウイルス2種を同時に検出キュウリ病害ウイルスの診断例

    検出

    装置内部(平⾯図) 9

  • 農業ビッグデータ活⽤によるロボティックグリーンハウスの実現5.研究実績

    • 特許出願 : 1件計画中

    • 外部発表(書籍・雑誌掲載、論⽂投稿、学会発表、報道発表): 2件① 第12回LAMP研究会(2020年1⽉18⽇,丸ビルホール&コンファレンススクエア,

    東京)② 2020年度精密⼯学会春季⼤会学術講演会(2020年3⽉17⽇,東京農⼯⼤学

    ⼩⾦井キャンパス,東京)

    • 情報発信(展⽰会出展、セミナー開催): 3件・キックオフセミナー(2019年10⽉24⽇、知の拠点あいち)・メッセナゴヤ2019(2019年11⽉6⽇〜11⽉9⽇、ポートメッセなごや)・公開セミナー(2020年3月24日)

    • 会議の開催件数 : 6回• プロジェクト全体会議 2回• ターゲット毎会議 4回

    13