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創薬化学Ⅰ 第6回創薬化学Ⅰ -第6回-
本日のメニュー
• ここから11章ここから11章• マイナス性の炭素は重要
• エノールとエノラートイオン
• ケト-エノール互変異性• ケト-エノ ル互変異性
• エノールの反応性
• ハロゲン化反応
1
有機化学の目標は2つ有機化学の目標は2つ
1. 望みの官能基をつくること
2 炭素-炭素結合を自由に作ること2. 炭素 炭素結合を自由に作ること
• 炭素-炭素結合をつくるには・・・プラス性の炭素と イナス性の炭素が必要プラス性の炭素とマイナス性の炭素が必要
2
カルボニル化合物の反応は4つカルボニル化合物の反応は4つ
デ ド1. アルデヒド・ケトン(9章)求核付加反応
官能基を
2. カルボン酸とその誘導体(10章)
をつくる2. カルボン酸とその誘導体( 0章)
求核アシル置換反応
3
第3 第4の反応第3、第4の反応
ボ 換3. カルボニルα置換反応
C-C結合を4. カルボニル縮合反応
O O O OH
をつくる
CC
H CC
H+ CC
CC
H
• Keywordはエノールとエノラートイオン!
4
エノ ルとエノラ トイオンエノールとエノラートイオン
• エノールとは?ene + ol = enolつまり二重結合+アルコール
• エノラートイオンとは?エノ ルがマイナスイオンになったものエノールがマイナスイオンになったもの
共鳴するとマイナスの炭素ができる!• 共鳴するとマイナスの炭素ができる!
⇒とても大事な化学種
5
ケト エノール互変異性(P 357)ケト-エノール互変異性(P.357)
• カルボニル化合物はエノール異性体と速やかに相互変換している。⇒互変異性変 変
• ケト形がほとんどでエノール形は僅か(P.358)ケト形がほとんどで ノ ル形は僅か(P.358)
6
酸があると触媒される!酸があると触媒される!
初 プ• 反応機構(P.358):最初はプロトン化
• 触媒される=活性化エネルギーが低くなる!• 触媒される=活性化エネルギ が低くなる!
7
塩基でも触媒される!塩基でも触媒される!
• 反応機構(P.359)最初はカルボニルα位の脱プロトン化⇒エノラートイオンの生成
• カルボニルα位の水素は弱い酸性である!
8
エノール化でおこること(P 360)エノール化でおこること(P.360)
がケト形がエノール形になると・・・
• カルボニルα位炭素の混成が変わる!カルボニルα位炭素の混成が変わる!sp3 → sp2
すぐにケト形に戻ろうとする!• すぐにケト形に戻ろうとする!⇒エノール形は が高い
• エノール形がケト形に戻るとき、α位炭素はマイナスになる!マイナスになる!⇒エノールは で反応する!
9
α位は置換されるα位は置換される
• エノール形はケト形に戻ろうとしている!α位はδ+の水素と反応する
• 他にδ+があれば、水素以外とも反応する!他にδ+があれば、水素以外とも反応する!
10
α位の重水素化α位の重水素化
デ ド 酸• アルデヒド・ケトンを重水素Dで標識した酸性水溶液中(D3O+)で処理すると、3α位の重水素化が進行する!
11
α位のハロゲン化α位のハロゲン化
酸 条• 酸性条件(P.362)
*酸性条件下のハロゲン化は1回で止まる*酸性条件下のハロゲン化は1回で止まる
*2位でハロゲン化が起きる
12
ヨードホルム反応ヨードホルム反応
塩 条 ゲ• 塩基性条件のハロゲン化O O
CHI1) I2, NaOH O
CH3 OHCHI3+
) 2
2) H3O+黄色い沈殿
メチルケトンの確認反応!
H3C
*すべてのα位水素がヨウ素に置換される*すべてのα位水素がヨウ素に置換される
*CHI3が沈殿する!
*ケトンなのに求核置換反応が起こるCHI3はフェノールくらいの酸性CHI3はフェノ ルくらいの酸性
13
まとめまとめ
• エノール、エノラートイオンは超重要
• ケト-エノール互変異性は酸性でも塩基性でもケト エノ ル互変異性は酸性でも塩基性でも触媒される
ノ ルは求電子試薬と反応する• エノールは求電子試薬と反応する
• アルデヒド・ケトンをD3O+で処理すると、α位アルデヒド ケトンをD3O で処理すると、α位の重水素化が進行する!
ハロゲン化は条件によ て違う生成物• ハロゲン化は条件によって違う生成物
14
創薬化学Ⅰ 第7回創薬化学Ⅰ -第7回-
本日のメニュー
• ケト-エノール互変異性でおこることケト エノ ル互変異性でおこること二重結合の異性化立体化学の変化立体化学の変化
• 炭素酸
• エノラートイオンの作り方
15
二重結合の異性化がおこる二重結合の異性化がおこる
が が• β位に二重結合があると異性化がおこる
• エノールと二重結合が共役するエノ ルと二重結合が共役する⇒α位だけでなくγ位にもマイナスができる!
O OO
CH2
O
CH3H+ or OH-
16
不斉炭素のラセミ化がおこる不斉炭素のラセミ化がおこる
が• α位に不斉炭素があるラセミ化する
• α位の炭素の混成はsp3⇒sp2となるα位の炭素の混成はsp ⇒sp となる⇒不斉炭素の消失!
17
カルボニルα位の水素は酸性カルボニルα位の水素は酸性
酸• H+を出せる化合物はすべて酸になり得る!
• H-Cの電気陰性度を考えるとHはδ+であるH Cの電気陰性度を考えるとHはδ+である
• H-Cの水素を酸と考えるとき、炭素酸と呼ぶ!
• だからどんな炭化水素も酸になる
• 周囲の環境で酸性の強さは変化する• 周囲の環境で酸性の強さは変化する
18
なぜα位水素は弱い酸性か?なぜα位水素は弱い酸性か?
ボ 酸が 酸• カルボン酸がアルコールに比べ酸性なのと考え方は一緒!考
• 酸の強さを考える⇒共役塩基の安定性(P.364)
共役塩基が する 共役塩基が• 共役塩基が する⇒共役塩基が⇒共役塩基が多い⇒ が多い⇒酸が強い
19
良い共鳴構造 悪い共鳴構造良い共鳴構造、悪い共鳴構造
ぞ が• 原子にはそれぞれ性質があるマイナスになりたい、プラスになりたい
• 酸素は になりたいだから二つの共鳴構造ではだから二つの共鳴構造では
良い共鳴構造 な共鳴構造• 良い共鳴構造= な共鳴構造悪い共鳴構造= な共鳴構造
20
α位水素の酸性度α位水素の酸性度
覚• P.365表11・1は覚えましょう!(pKaを写す)
• pKaを知っていると とても便利!• pKaを知っていると、とても便利!21
なぜ この順番?(1)なぜ、この順番?(1)
ボ 酸• カルボン酸>ケトン良い共鳴構造の数を考える!良 構 数 考
22
なぜ この順番?(2)なぜ、この順番?(2)
デ ド• アルデヒド>ケトン>エステルカルボニル炭素のプラス性を考える!炭 考
H +C
O
HH
C
O
H
O O
H H H H
C
O
CH3H
H HC
O
CH3H H
H +
OH
OH +
23
C OCH3H
H HC OCH3
H H
H +
なぜ この順番?(3)なぜ、この順番?(3)
ジ• 1,3-ジケトン>ケトン共鳴形の数を考える!数 考
H3C C
O
H3C C
OH +H
O
3
O
3
O
H H H H
O
C
O
H3CHH
C
O
H3CH +
CH3
O
CH3
O
H
24
エノラートイオンエノラートイオン
ボ プ• カルボニル基のα位水素は塩基で脱プロトン化され、エノラートイオンを生成する。
H C
OHH
OH+ H C
O
HH OH+
• エノラートイオンを増やすには?
HH
HH
ノラ トイオンを増やすには⇒強塩基を用いればよい!
NaH NaNH2
LiN
CH3
CH3
CH3
H3C
25
弱い酸の方向に反応は進む弱い酸の方向に反応は進む
• 酸と塩基の反応では、弱い酸ができる方向に反応が進む!
H Cl + NaOH H OH + NaCl
H3C ONa
O+
OH
H3C OH
O+
ONa
ボ 基 位水素 も 酸 役
3 3
• カルボニル基のα位水素よりも弱い酸の共役塩基を使う
26
まとめまとめ
が• ケト-エノール互変異性がおこると異性化する!二重結合の異性化⇒共役系が伸びる混成軌道の変化⇒ラセミ化
• α水素は酸性である!• α水素は酸性である!共役塩基の共鳴を考える
• 強い酸の共役塩基⇒弱塩基弱い酸の共役塩基⇒強塩基弱い酸の共役塩基 強塩基
• エノラートイオンはケトンと強塩基でつくる!
27 28
創薬化学Ⅰ 第8回創薬化学Ⅰ -第8回-
本日のメニュー
• エノラートイオンの反応性エノラ トイオンの反応性
• 炭素-炭素結合形成反応
*ケトンのアルキル化
*エステルのアルキル化*エステルのアルキル化
*マロン酸エステル合成
*アセト酢酸エステル合成
29
エノラートイオンの反応性(P 366)エノラートイオンの反応性(P.366)
が高• エノールより反応性が高い。マイナスの電荷をもっている⇒求核性upp
• 酸素でも炭素でも反応可能ここでは炭素での反応だけ学びますここでは炭素での反応だけ学びます
30
エノラートイオンのアルキル化エノラートイオンのアルキル化
• エノラートイオンはハロゲン化アルキルと反応してαアルキル化体を与える。
• 炭素-炭素結合ができる!
ゲ 化 キ 対する 応• ハロゲン化アルキルに対するSN2反応第1級ハロゲン化アルキルが良い
31
問題点問題点
塩 が• 強い塩基が必要強い塩基は酸性の水素に弱い強
• エノラートイオンも酸性水素に弱い
アル ル等を溶媒として使えない 操作• アルコール等を溶媒として使えない
• 無水条件で行う必要がある
操作が無水条件で行う必要がある
大変
32
マロン酸エステルマロン酸エステル
酸• マロン酸(malonic acid; propanedioic acid)のエステル
• 二つのカルボニル基に挟まれているので通常のエステルに比べると酸性が強い(pKa=13)のエステルに比べると酸性が強い(pKa=13)
• 弱い塩基でエノラートイオンにできる! 操作• アルコールが使える! が
簡単簡単
33
マロン酸エステルのアルキル化マロン酸エステルのアルキル化
エノラ トイオンをアルキル化する (P 368)• エノラートイオンをアルキル化する。(P.368)
• アルキル化は最大2回までできる! (P.368)アルキル化は最大2回までできる (P.368)
34
加水分解すると脱炭酸がおこる加水分解すると脱炭酸がおこる
ジ ボ 酸が• 加水分解でジカルボン酸ができる
• カルボン酸のβ位にカルボニル基があるとカルボン酸のβ位にカルボニル基があると自然に脱炭酸をおこす! (P.368)カルボン酸ができる!!• カルボン酸ができる!!
35
マロン酸エステル合成マロン酸エステル合成
ゲ• ハロゲン化アルキルからみて、2炭素長いカルボン酸が合成できる。
OEt
O
EtO
O
OEt
O
EtO
O1) NaOEt
2) R-Br CC
OH
OR
H3O+
• 例題
OEtEtO 2) R-BrR
CH2
OH
例題
マロン酸エステル合成を用いてオクタン酸を合成するには どんな臭化アルキルを用いれ合成するには、どんな臭化アルキルを用いればよいか良いか。
36
アセト酢酸エステルアセト酢酸エステル
酸 が• マロン酸エステルの一方がケトンになったもの
• マロン酸エステルより強い酸(pKa=11)マロン酸エステルより強い酸(pKa 11)
• 類似の反応がおこる!• 類似の反応がおこる!
37
アセト酢酸エステル合成アセト酢酸エステル合成
ゲ• ハロゲン化アルキルからみて、3炭素長いケトンが合成できる。
• 例題例題アセト酢酸エステル合成を用いて2-ヘキサノ
ンを合成するには どんな臭化アルキルを用ンを合成するには、どんな臭化アルキルを用いればよいか良いか。
38
まとめまとめ
• エノラートイオンはハロゲン化アルキルと反応してアルキル化される
• マロン酸エステルやアセト酢酸エステルを用いると簡単な操作でアルキル化できるいると簡単な操作でアルキル化できる
• エステルを加水分解し、β-ケトカルボン酸とすると脱炭酸がおこる
39 40
創薬化学Ⅰ 第9回創薬化学Ⅰ -第9回-
本日のメニュー
• カルボニルの縮合反応カルボニルの縮合反応アルドール反応クライゼン縮合反応クライゼン縮合反応
• マイケル反応(共役付加反応)
• 生理化学から解糖系、クエン酸回路
生薬学から酢酸 マロン酸経路• 生薬学から酢酸-マロン酸経路
41
縮合反応縮合反応
が 縮• 二つの成分が一つになることを縮合という
• 今回学ぶのはカルボニル化合物の縮合反応今回学ぶのはカルボニル化合物の縮合反応
• カルボニル化合物にはイナス性炭素(カルボ ル 位)とマイナス性炭素(カルボニルα位)と
プラス性炭素(カルボニル炭素)がある
R CH2
OH
R CH3
O
R CH2
O
R CH2
O
求核試薬 求電子試薬 求核試薬
42
アルドール反応(P 371)アルドール反応(P.371)
• アセトアルデヒドをアルコールに溶かし、ナトリウムエトキシドのような塩基で処理すると、リウ キシ ような塩基 処 する 、β-ヒドロキシアルデヒドが生成する。
アルデヒド2個からアルド ル(アルデヒド+• アルデヒド2個からアルドール(アルデヒド+アルコール)ができるからアルドール反応!
43
アルドール反応の反応機構アルドール反応の反応機構
デ ド• アルデヒドの反応だから求核 反応
• アセトアルデヒドとナトリウムエトキシドだからアセトアルデヒドとナトリウムエトキシドだから全部がエノラートイオンにはならない。
44
脱水してエノンになる脱水してエノンになる
ド デ ド 飽 デ ド• β-ヒドロキシアルデヒドはα,β-不飽和アルデヒドになる。(P.373,アセトアルデヒドで)( , )
• 酸性条件ではエノール、塩基性条件ではエノラ トイオンが重要ラートイオンが重要
45
分子内でおこると環ができる分子内でおこると環ができる
ボ が• 分子内にカルボニルが2個ある場合(P.373)
46
Claisen縮合Claisen縮合
酸 ド• 酢酸エチルに1当量のナトリウムエトキシドを加えると縮合反応がおこる。(P.374)( )
• 酢酸エチル2個からアセト酢酸エチルが生成!⇒アセト酢酸エチル合成の原料⇒アセト酢酸エチル合成の原料
47
Claisen縮合の反応機構Claisen縮合の反応機構
• エステルの反応だから求核 反応
• 酢酸エチルとナトリウムエトキシドだから全部酢酸エチルとナトリウムエトキシドだから全部がエノラートイオンにはならない。
48
分子内でおこると環ができる分子内でおこると環ができる
縮• Dieckmann縮合(P.375)
49
Michael反応(P 376)Michael反応(P.376)
• 共役付加反応のことをMichael反応という。
50
生理化学から生理化学から
ド• 解糖系(ケト-エノール互変異性とアルドール反応)
• クエン酸回路(アルドール反応)
51
生薬学から酢酸 マロン酸経路生薬学から酢酸-マロン酸経路
ポ ド 縮 酸• ポリケチドの合成(Claisen縮合と脱炭酸)• ベンゼン環の構築(アルドール縮合とエノール化)ベンゼン環の構築(アルド ル縮合とエノ ル化)
52
まとめまとめ
• カルボニル化合物は求核性(マイナス性)の炭素と求電子性(プラス性)の炭素を持つ炭 炭
• アルドール反応は求核付加反応
クライゼン縮合は求核置換反応• クライゼン縮合は求核置換反応
• 生物もこれらの反応を利用していろいろな化生物もこれらの反応を利用していろいろな化合物を生合成している!
53
11章まとめ 111章まとめ-1
• カルボニル化合物は - 互変異性をしているが、ほとんどが である。
• カルボニル基のα位水素は 酸性である。
のカルボ ル基に挟まれた 位水素の• 二つのカルボニル基に挟まれたα位水素の酸性は なる。
• 酸性の強さを考えるには、 の安定性を考える が重要!性を考える。 が重要!
• エノラートイオンを作るには、 が必要!
54
11章まとめ 211章まとめ-2
酸 条• 酸性条件での臭素化は、 体を与える。
• メチルケトン基を持つ化合物にI2 NaOHを反メチルケトン基を持つ化合物にI2, NaOHを反応させると が生成する。
ノラ トイオンのアルキル化は 機構• エノラートイオンのアルキル化は 機構
• マロン酸エステル合成では 炭素長いマ ン酸 ステル合成では 炭素長いが生成する。
マロン酸エステルは 等価体で アセト• マロン酸エステルは 等価体で、アセト酢酸エステルは 等価体
55
11章まとめ 311章まとめ-3
ボ• カルボニル化合物は としても、としても働く。
• アルデヒド2分子から が生成する反応をアルド ル反応という反応をアルドール反応という。
• アルドール反応は 反応である。
• エステル2分子から が生成する反応を 縮合という反応を 縮合という。
• 縮合は 反応である。
56