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―― 論文受付日 20159 25大学院研究論集委員会承認日 20151026―― 経済学研究論集 442016. 2 サプライチェーン改革による産地再生に関する研究 ~桐生の繊維産業の産地を事例として~ 博士後期課程 経済学専攻 2015年度入学 RYU Koichi 【論文要旨】 本論は,日本における地場産地の再生を目的として,サプライチェーン理論の導入を提案するも のである。近年,国際的なビジネスの構造が拡大するにつれて,これまでの日本国内における地場 産業の取引構造,様相は大きく変化している。そうした変化への対応として,取引構造に着目した サプライチェーン理論を,特にグローバルサプライチェーンの影響を大きく受けている繊維産業の 代表地,群馬県桐生地域を対象に適用する。 1 章の産地の史的展開から始め,サプライチェーン理論の基本と地場産地の概況を確認す る。ついで第 2 章で近年の日本の地場産地がどのように影響を受けたか,また,グローバルサプ ライチェーンがどういう変化をもたらしたのか,さらに議論を深化させる。 3 章では,筆者が行ったインタビュー調査をもとに,実際の桐生地域の状況と,サプライチ ェーンに関連した事例を提示する。その後,結論において,以降の研究の方針ともなる他の経営活 動に関連した具体的なサプライチェーン活動を提示する。 【キーワード】 中小企業,地場産地,サプライチェーン,取引構造,生産工程 はじめに 本論は長年,国際競争の波にさらされ,劇的な変貌を遂げつつある群馬県桐生地域の繊維産業を 研究対象として,サプライチェーン改革を通じた産地再生の可能性を探るものである。繊維産業を 中心に発展を遂げてきた同地域は,産地全体が国際化のもと,縮小に追い込まれている。一方,新 産業としてパチンコ機器や輸送用機械器具などの産業への転換が進んだ現在でも,伝統的な繊維産 業が同地域の重要産業との認識に変化はない。 そこで,地場産地である桐生の繊維産業の活性化につながる経営手法を提言するために,地域内

サプライチェーン改革による産地再生に関する研究...― ― 論文受付日 2015年9 月25日 大学院研究論集委員会承認日 2015年10月26日 経済学研究論集

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論文受付日 2015年 9 月25日 大学院研究論集委員会承認日 2015年10月26日

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経済学研究論集

第44号 2016. 2

サプライチェーン改革による産地再生に関する研究

~桐生の繊維産業の産地を事例として~

博士後期課程 経済学専攻 2015年度入学

竜   浩 一

RYU Koichi

【論文要旨】

本論は,日本における地場産地の再生を目的として,サプライチェーン理論の導入を提案するも

のである。近年,国際的なビジネスの構造が拡大するにつれて,これまでの日本国内における地場

産業の取引構造,様相は大きく変化している。そうした変化への対応として,取引構造に着目した

サプライチェーン理論を,特にグローバルサプライチェーンの影響を大きく受けている繊維産業の

代表地,群馬県桐生地域を対象に適用する。

第 1 章の産地の史的展開から始め,サプライチェーン理論の基本と地場産地の概況を確認す

る。ついで第 2 章で近年の日本の地場産地がどのように影響を受けたか,また,グローバルサプ

ライチェーンがどういう変化をもたらしたのか,さらに議論を深化させる。

第 3 章では,筆者が行ったインタビュー調査をもとに,実際の桐生地域の状況と,サプライチ

ェーンに関連した事例を提示する。その後,結論において,以降の研究の方針ともなる他の経営活

動に関連した具体的なサプライチェーン活動を提示する。

【キーワード】 中小企業,地場産地,サプライチェーン,取引構造,生産工程

はじめに

本論は長年,国際競争の波にさらされ,劇的な変貌を遂げつつある群馬県桐生地域の繊維産業を

研究対象として,サプライチェーン改革を通じた産地再生の可能性を探るものである。繊維産業を

中心に発展を遂げてきた同地域は,産地全体が国際化のもと,縮小に追い込まれている。一方,新

産業としてパチンコ機器や輸送用機械器具などの産業への転換が進んだ現在でも,伝統的な繊維産

業が同地域の重要産業との認識に変化はない。

そこで,地場産地である桐生の繊維産業の活性化につながる経営手法を提言するために,地域内

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外における繊維産業の流通経路をサプライチェーン・マネジメントの理論に基づいて分析すること

で,的確な活性化の方向性を打ち出すこととする。

なお,この理論は多様な見解があるため,産地の中小企業の実情に合せたサプライチェーン・マ

ネジメントの理論を活用して,産地内分業構造における生産工程の実態を検証する。さらに,イン

タビュー調査による事例研究を踏まえ,サプライチェーン・マネジメントに内包されるマーケティ

ング活動,ブランド戦略についても,産地の中小企業による活路を展望として提言したい。

第章 産地特性と史的展開

第節 産地の概念と構造的特徴

本論は桐生地域を対象とした研究であるが,そのためには産地(地場産業)に関して歴史的背景

を考察する必要性がある。また,史的展開の前に,まず産地の定義を確認しておく必要がある。

山崎によれば,産地は「中小企業の 4 種類のタイプ,地域産業,地場産業,大企業の生産関連,

その他のうちの一つ」であるという。

この分類に従うと産地の定義は,「◯特定の地域に起こった時期が古く,伝統のある産地である

こと,◯特定の地域に同一業種の中小零細企業が地域的企業集団を形成して集中立地していること,

◯多くの地場産業の生産,販売構造がいわゆる社会的分業体制を特徴としていること,◯ほかの地

域ではあまり産出しない,地域独自の『特産品』を生産していること,◯市場を広く全国や海外に

求め,製品を販売していること」となる。

以上のように,産地とは基本的に一つの地域内で形成されるものである。また,多くの場合,そ

の業種は,関連した材料や部品を提供する卸売業者を除いて,同一製品を製造する製造業群で固ま

っている。しかも,こうした産地は現在国内に300近く存在しているといわれている。

一方,産地は中小企業群の一つのタイプであるということから,ある種の産業集積的な構造も持

っている。この産業集積という考え方,ひいては企業が一つの地域に集まるということ自体が近

年,地域活性化への考え方から注目を集めている。

例えば,梅村は,産業集積の地理的近接性に関する政策面が強化されている点を示唆している。

多くの場合,産業集積は製品の 終顧客を除いて,一つの地域内でその取引構造が成り立っている

からである。また,関と佐藤は,地域活性化への考え方から繊維業界における垂直的統合をはじ

め,いくつかの構造提案を行っている。

これらの理論が支持していることは,産地や産業集積が強固かつ磐石であるほど,同一地域内の

経済が相対的に潤っている状態になるという考えである。こうした特性に加えて,日本に数多く

点在している産地の多くは,消費財を生産しているという共通点を抱えている。このことが,国

際競争の波に大きく左右され易いという短所にもつながっているのである。

多くの産地は,明治時代以降,そして戦後に形成されたが,江戸時代以前からの産地も多く存在

する。この産地設立の時期によっても,伝統型と現代型の二種類に産地は分類される。また,産地

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はその立地によって,知識や技術が集約された都市型と,単純労働力が豊富な農村地帯に多い地方

型の二種類にも分けられる。前者は比較的ブランド力が強い,ユニークな製品の製造に注力してお

り,後者はコストを重視した生産を主軸に発展してきた。もちろん,途中から産業の発展につれ

て,分類が逆に変化することもあり得る。

桐生地域も,以上述べてきた要素の一部を内包しているが,依然として繊維産業を中心に発展し

ようという気概が強い。しかも,産業集積を形成しており,かつ歴史的側面からいえば伝統型で

ある同地域は,産地の取引構造を検討するうえで格好の対象といえる。

第節 サプライチェーンからみた産地内取引構造

サプライチェーンからみた産地内取引構造に触れる前に,そもそもサプライチェーン・マネジメ

ントは,企業が 終顧客に至るまでのプロセス全体を意識し,可能な限り自社の手を加えて効果的

な商流を組み立てることにその本質的な目的がある。もちろん,この理論には,物流や運送業者

との取引なども含まれている。ところが,日本におけるサプライチェーンは,主にそういった物流

面でのコストダウンや改善を中心に議論が展開されてきた経緯がある。しかし,近年の拡大する

経済社会では,そうした一極集中の理論展開では不十分である。日本では物流とロジスティクスは

同義とされやすいが,唐沢によれば本来のビジネスにおけるロジスティクスとは,「モノの流れの

すべてを対象とするものであり,モノとは有形・無形のものであり,財と用役であり,人,物,

金,情報およびサービスのすべてを含むもの」としている。

本論でのサプライチェーンとは,企業間のモノの流れを扱うすべての工程を対象とし,いかに良

好な関係を築いて公正な取引を行うかという取引構造を注視したものとする。この概念からみる

と,産地内のサプライチェーンは,実際の市場構造によって変化している。さらに,山崎によれ

ば,日本の産地では,個別の産地問屋という歴史的存在から取引構造は複雑化されているという。

この産地問屋は,同一地域内において製造元と小売をつなぐ個人間での仲介屋の役割を果たす。産

地ではこの問屋が基本的に製造業と小売店の間で 終顧客の情報などを把握し,複数の企業で製造

された製品を受け入れて複数の販売店に流す形が多い。つまり,産地問屋は,産地内において中核

的な立ち位置にある場合が多いのである。

また,山崎はこの構造を生産形態から見た類型として分析している。つまり,産地問屋,製造問

屋の存在が中心となっている伝統型産地で,細分化された工程を複数業者が担当する生産体制が持

続されている場合,社会的分業型産地と呼ばれる。逆に,従来,分業していた作業を,ある一つの

メーカーが自社でのみ行っている場合,工場一貫生産型産地と呼んでいる。桐生地域は,山崎が

指摘した枠組みからすると社会的分業型に分類される。

さらに,産地問屋の概念に加え, 終顧客の立ち位置が国外向けか国内向けかによって,産地を

内需型と輸出型にも分類できる。桐生地域は,海外市場を含めた市場の転換を積極的に行いつつ,

国内における高級品の市場もなるべく確保しようとしているため,近年の構造は内需型と輸出型が

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複合化している。

こうした産地の特徴は,他の企業城下町や都市型集積といった製造業の産業集積とは様相が異な

るものである。そこで山崎は,専門の産地問屋という卸売業の存在をはじめとする親企業が産地内

に有るか無いか,あるいは産地内における親企業と下請企業との企業形態のばらつきを,いわゆる

二重構造と呼んでいる。近年,産地内の卸売業や親企業による海外企業との提携も進み,様々な

取引形態が生じつつある。産地の二重構造的な形態は,こうした変化に対応したサプライチェーン

を構築するうえで重要な要素となっている。企業の形態が多様化するほど,そこから付随する取引

構造が複雑になってくるのである。桐生地域の場合,社会的分業型の要素もあることから,域内産

業の中心は繊維産業にあるとはいえ,企業の形態は非常に幅広い。そのため,本節の冒頭で述べた

シンプルなサプライチェーンとは違い,複雑な取引構造となっていることが予想される。

第節 日本の産地の史的変化と今日的課題

日本の産地は,戦前と戦後,高度経済成長期,そして近年と,その姿を大きく変えてきた。関と

佐藤によれば,明治以降,生産力が比較的高かったいくつかの産地は輸出型にその姿を変え,日本

の主な外貨獲得手段として経済の重要な一角であった。桐生地域も,作業工具の三条,金属洋食

器の燕,焼き物の瀬戸,眼鏡フレームの鯖江などの産地と同様に,この役目を担ってきた。

しかし,高度経済成長期に,産地の役割はまた変化したのである。当時,急激な好景気と産業の

発展は,その多くが大企業を中心とした重厚長大産業で起こっており,国家の再興を目指した政府

の支援方針もそうした産業への注力が基本だった。その結果,一般消費財を中心に生産する産地の

発展は大きく出遅れ,産地の社会的な重要性が小さくなっていた。また,高度経済成長の終期で

ある1971年,73年のニクソン・ショック,オイル・ショックといった円高への事象の変化も,輸

出型産地に多大な影響を及ぼす形となった。

一方,伊東によれば,日本の産地,あるいは経済全体が低迷する原因となったのはバブル経済の

崩壊,規制緩和,グローバル化の 3 点であるという。第 1 にバブル崩壊は,不安定な経済に対す

る消費者の消費行動が激減し始め,過剰資本,過剰取引などが目立った。特に,こうした状況に対

応するためのサプライ政策などによって過当競争が推進され,もともと規模の面で弱さを持つ中小

企業や産地は全体的にあおりを食う形となった。

第 2 に規制緩和は,農商工業の全てに影響した。当時の規制緩和策では現存する事業や企業へ

の保障がなく,例えば,商店街を中心とした地域への大型商業施設の設置といった,聖域なき構造

改革が多かった。そのため地方経済が全体的に農業を中心に空洞化し,再び経済政策のあおりを受

ける形となった。

第 3 にグローバル化は,海外への資本と生産拠点の流出を促した。多数の中小企業が集積し,

同一地域内における取引構造を中心に発展してきた産地にとって,この変化は大きな構造改革であ

り,多様な企業が影響を受けたのは想像に難くない。うまく取引先を切り替えることの出来なかっ

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(図表)関東経済産業局管内つの主要産地の各種指標別推移(~年)

(注)桐生市は2005年 6 月に勢多郡新里村,黒保根村と,三条市は2005年 5 月に南蒲原郡下田村,栄町と,

燕市は2006年 3 月に西蒲原郡水町,吉田町と,秩父市は2005年 4 月に秩父郡吉田町,大滝村,荒川村

と合併したため,2003年の数値は合併町村の数値を加えて調整済み。

資料経済産業省経済産業政策局調査統計部『平成15工業統計表「市区町村編」データ』および経済産業省

大臣官房調査統計グループ『平成25年工業統計表「市区町村編」データ』より作成。

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た企業の多くがこの時点で倒れたといえる。

しかし,主に1960年代後半から続いてきた産地の変化は,事業内容によって若干のずれが生じ

ていた。例えば,東大阪市における金属製品関連産業の産地について研究を行った前田は,対米輸

出中心にねじを作っていた業者の内需転換,輸出依存だった線材業者の新製品へのシフトなど,生

産する製品によってそれぞれ受けた影響と変化が違うとしている。

桐生地域の場合は,現在でも伝統型産地の特長を崩してはいない。しかし,近年では取引構造

が大きく変貌し,複雑化している様子がうかがえる。同時に,製品の高級化や多角化などを実際に

行っている企業や検討している企業が存在することから,こうした動きが産地内における今後の中

心的な戦略となるであろう。また,こうした取引構造の変化や戦略にあわせて,分業工程上のサ

プライチェーンの見直しを行う必要性が高まるはずである。

そこで,今日的な産地の課題を明らかにするために,桐生地域を含む,関東経済産業局管内の 5

つの主要産地(桐生,燕,三条,秩父,富士吉田)の事業所数,従業員数,製造品出荷額等,粗付

加価値額の2003~2013年の10年間における推移について順にみていくと(図表 1 参照),まず事業

所数はいずれの産地も減少傾向にあるが,減少幅には大きな違いがある。三条(7.6減),富士吉

田(21.5減),秩父(25.3減)と比べて,燕(58.1減)と桐生(39.1減)は大幅な事業所

数の減少に陥っているのである。

このことは,従業員規模別事業所数の推移が産地毎に違いが生じていることが大きく影響してい

るのである。つまり,30人未満の小規模企業が大幅に減少している燕(62.0減)と桐生(41.0

減)は,30~299人と300人以上の事業所も減少している。

逆に,30人未満の小規模企業があまり減少していない三条(12.5減),富士吉田(29.5減),

秩父(34.2減)は,30~299人と300人以上の事業所は増加ないしは維持されている。

こうした事業所数の推移の相違は,従業者数の推移にも影響し,燕(33.4減),桐生(28.8

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減)であるのに対して,富士吉田(10.9増)と三条(8.0増)が従業員数を増やしている。ま

た,秩父(16.7減)は事業所数の減少ほど,従業者数の減少に陥ってはいない。なお,現金給与

総額,製造品出荷額等,粗付加価値額も,従業者数の推移とほぼ同様の推移を示している。

以上のように,今日の産地では,事業所数の減少に歯止めがかかっていないこと,しかも従業者

数30人未満の小規模事業所の減少が著しいという傾向がある。しかし,従業者数30人以上の事業

所については,増加傾向で従業者数,現金給与総額,製造品出荷額等,付加価値額を増加させてい

る産地がある一方,従業者数30人以上の事業所も減少傾向に陥り,従業者数,現金給与総額,製

造品出荷額等,付加価値額を減少させている産地に二極化する傾向もあるのである。

第章 サプライチェーン・マネジメントの今日的意義と産地へのインパクト

第節 第の利潤源としての物流効率化

サプライチェーン・マネジメントについて説明する上で,その上位概念であり,かつ物流,流

通,情報流,マーケティングなどを包括的に論じているロジスティクスの概念を明らかにしておく

必要がある。

ロジスティクスは,近年,事業全体のプロセスについて議論するサプライチェーン・マネジメン

トとは少し違い,顧客関係管理,顧客サービス管理,注文充足,需要管理,製造工程管理,購買,

製品開発と商品化,回収までの 8 段階を一つのサイクルとして捉えようとするものとなった。ま

た,ロジスティクスの議論自体は古くからあるもので,立地論などに端を発する物流に関した議論

が行われてきたが,今日でも進化し続けている。従って,ロジスティクスの中心となる概念も多様

化している。

中でも,阿保と矢澤はコストダウンに関連した物流関連の議論を展開しており,物流をシステム

的な発展として,物流,ビジネスロジスティクス,サプライチェーンロジスティクス,グリーンロ

ジスティクスの 4 段階に分けている。日本においてこうしたロジスティクスが発展した要因に

は,規制緩和の徹底や各種情報処理ネットワークの普及が提示できる。国際的な経済背景として

は,サービス主導型マネジメントに対する要望や,各種事業の戦略的提携といったものも,発展の

要因となってきたのである。

また,物流を語るうえで根幹となっている概念や理論は,Porter に代表される競争優位の概念

や,Weber の工業立地論である。実際,自社における費用の総額を同業他社よりも下げることが

究極の優位性を獲得する一つの手段であることから,日本ではこうした費用削減の面から物流が語

られてきたのである。

しかし,この考えを文字通りに単純化してしまうと,本来の意味のサプライチェーン・マネジメ

ントを達成することはできない。日本の企業は古いロジスティクスの構造を使用してきており,単

に資材の購入を適切に行えばいいという考えが蔓延しているという。

唐沢も,日本はロジスティクスという概念をサプライチェーン全体と同義のものと捉えがちで,

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二種の意味と段階が混同していると主張する。近年のグローバル化を含めて,サプライチェーンの

再確認が必要であることは,こうした誤認識を改めて,適切な活動を行うことを指し示している。

も基本的な形態については,Chopra と Meindl が指摘している,顧客,小売,運搬役,製造

元,素材事業者の 5 つの段階で構成されたフレームワークだろう。一方,土井によれば,極小の

サプライチェーンは顧客,企業を問わず一対一のものであり,倉庫や取引に携わる事業者の数など

によって一対多数へと深化するという。産地企業の場合は,問屋を挟むことで倉庫と同じよう

に,一対多数のチェーンを把握する必要がある。

留意したいのは,サプライチェーン・マネジメントは生産工程ごとに,吟味する領域が 4 つに

分かれている点である。この 4 つの領域はそれぞれがサイクルと呼ばれ,顧客からの発注,在庫

の補充・拡充,製品生産,素材の購買といった,顧客から生産元企業までの各段階がこれにあた

る。つまり,それぞれの段階ごとに,顧客と小売,小売と卸,卸と製造会社,製造会社と発注会社

といった,それぞれの領域の担当者が存在するのである。言い換えるなら, も基本のサプライチ

ェーンマネジメント活動とは,自社の存在する段階を把握し情報を獲得,それを同じ領域にいる関

係者と共有すること,なのである。

専門的に発展したサプライチェーン活動として,Christopher は,進化してきた情報通信技術に

関連した物流面での革新と今後のビジネスにおける発展の方針を主張している。内容は多岐にわた

るが,物流からの競争優位構築がロジスティクスの目的となることに変わりはない。つまり,物流

でこれまでも大きく取り上げられてきたコスト面に関しては,技術の発展に伴った情報の氾濫に対

応する必要があり,原価計算といった基本的な事業活動の大切さを論じている。実際に日本企業

の多くが在庫を減らすことに注力してきた。しかし,この在庫削減によるコスト削減は,どこかで

限界をきたすものといわれている。

そこで,主張されるようになったことが,経営判断などの加速化によるクイックレスポンスであ

る。日本ではジャスト・イン・タイム(必要な時に,必要なモノを,必要なだけ生産・販売するこ

とで以下,JIT という)の手法を通じて,物流の高速化が図られてきている。しかし,これもあく

まで必要な時に必要な場所に物を届けるシステムを構築するだけで終わり,在庫の削減やゼロ化を

考慮するものではない。クイックレスポンスによる活動はこれに対し,サプライチェーンにおけ

る各段階で先行して需要を予測・計算し,数値的に必要な在庫数や納期の求めに応じていくもので

ある。近年では情報技術の革新が進んだこともあり,企業がリアルタイムでの需要に対応すること

も可能になってきている。小売業などでよく見られる POS システム(販売時点受発注システム)

が典型的な事例である。

こうした在庫を保有するよりも情報に重きをおくサプライチェーン・マネジメントは,増分原価

が比較的低い点や,各段階のプロセスタイムが短くなることで全体のリードタイムも加速する点が

評価され,流通業界で導入が進んでいる。また,これに近い物流関連の 新の考え方としては,ク

ロスドッキングシステムがある。これは,物流センターにおける製品の出入庫を同時に行うという

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考え方である。このシステムの重要なポイントは,出荷と入荷を同時に行う際に,そこに至るま

でのプロセスも同時に処理,把握する必要があるということである。

より状況が限定された議論として,Flynn らは新規の販売マーケットにおけるチェーンマネジメ

ントの重要性を主張している。また,エスカットと猪俣は,これまで国内のみだった垂直統合理

論を,国際レベルで行う必要性を論じている。そして,「ものづくり白書」でも,IT を活かした

トップダウン形式のサプライチェーン・マネジメントを,ドイツ企業の事例を用いて提案してい

る。さらに,Foerstl らや Sancha らがまさにグリーンロジスティクスの分野として,サプライチ

ェーン・マネジメントを通した実際の活動について説明している。

以上のことから,物流面やその発展形,自然環境など,多岐にわたる面でサプライチェーン・マ

ネジメントが重要視されていることが理解できる。これらに共通することは,いずれも根本的な方

法として,チェーン全体における,それぞれの目的に合った情報を把握することにある。

第節 域内物流からグローバルチェーン展開への発展プロセス

近年,サプライチェーンに関する議論を行う上で欠かすことのできないことは,グローバルチ

ェーンの考え方である。河村の報告書によれば,アジア市場を中心に日本法人が海外展開をより推

し進めていることがわかる。特に,海外現地法人の増加とともに現地の域内調達比率も上がり,サ

プライチェーンの中心も海外に移ってきている。このため現地生産に必要な素材や部品を供給する

日本国内のサプライヤーたちは,自ずと海外現地法人との取引を強制されることとなる。その結

果,サプライヤーも生産拠点の海外移転が進み,国内の事業所数も大きく減少してきたのである。

国土交通省が2013年に公布した 新版の物流大綱でも,グローバル・サプライチェーンが進ん

できた動向が記されている。このグローバルチェーンの深化は,国内に付加価値の高い業種のみを

残して多くの事業が海外へと進出する,いわゆる産業の空洞化へつながったとされている。特筆す

べき点は,生産を行う製造業や関連企業だけでなく,実際に物流を担う流通・物流業者も海外現地

法人に事業の中心を移しつつあることである。海外にも古くから展開してきた流通・物流業者があ

るため,現地における競合他社の増加現象も発生し始めている。こうした状況の中で抜本的な物流

問題を解決する方法として,サプライチェーンを構成する製造,卸売,小売,物流業全体による一

貫体制作りが求められている。

ここで問題となってきたことは,サプライチェーンの考え方に新しい動きがあるにもかかわら

ず,昔ながらの在庫管理手法が少なからず維持されていることから,製造,卸売,小売業の物流担

当者や物流業への負担が年々大きくなっていることにある。この問題は,主に社会的状況の変化に

起因していると同時に,日本国内における製造,卸売,小売業による物流業への甘い認識に起因す

るものとされている。

こうした問題への対応策として美藤は,日本企業の販売戦略としては,グローバルロジスティク

スを考慮したうえでサプライチェーンを構築し,国内,海外,第三国と複数の販売先を考慮する必

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(図表)繊維産業のサプライチェーンについて

資料片岡 進著『繊維産業の現状及び今後の展開について』経済産業省製造産業局繊維課,2013年,8 頁,

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/130117seisaku.pdf(2015年 9 月

18日)より引用。

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要があるとしている。このことを達成するためには,在庫に注力しがちな既存の物流意識では不十

分であり,全方位的な情報の把握が必要となる。さらに,Christopher が述べたチェーン全体に

おける時間を短くするという方針も,既存の日本における物流への考え方では導入しづらい。

実際,佐々木は,日本の伝統的な流通系列と欧米の垂直的取引制限の違いを述べている。この二

つは本質上同義のものであると日本人は認識しているが,他国ではそうではない。日本の流通系列

はアメリカ人からは排他的にみえ,生産の系列関係にある親企業と下請企業との取引構造に似てい

るものと扱われる。こうした認識の違いが生じている原因に,歴史的な背景がある。つまり,アメ

リカでは流通を産業の一つとして認識していた時期に,日本では企業が独自でコストが割高なこと

もある非合理的な流通システムを構築していた。そのため,日本は市場全体の風潮として,ある程

度,排他的かつ固定的な流通システムが根強い。こうした違いは,海外事業所を含めたサプライチ

ェーンが当たり前となってきた現在では,日本とそれ以外の国との間に認識の差を生み出す要因に

なる。

従って,グローバル・サプライチェーンを展開するにあたっては,日本と海外とでは物流の様式

や速度が違うということを認識する必要があるといえる。そこで,事例として取り上げる産地であ

る桐生の繊維産業も含む,繊維業界全体におけるグローバル・サプライチェーンの概要についてみ

ていくと(図表 2 参照),糸メーカーからスタートし,生地メーカー,染料メーカー,染色事業者

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を経て,縫製メーカーとアパレルメーカーに至るまでのサプライチェーン,つまり産地の繊維産業

で行われている取引構造である。これら製造業間での取引は直取引もあるが,織物卸や商社を通じ

ての取引構造も並列して行われていることがわかる。

一方,海外でも,糸メーカーからスタートし,生地メーカー,染色事業者を経て,縫製メーカー

へと製造業者間で取引が行われる。ほぼ日本国内での構造と同じであるが,海外の生地メーカーか

ら国内の織物卸と商社への取引,海外の縫製メーカーから国内の商社への取引の両方が行われてい

る。

なお,国内ではアパレルメーカーを通じて製品が小売業に流通する経路が主流であるが,海外で

は縫製メーカーから国内の商社とアパレルメーカーを経て小売に流通する経路と国内の商社から直

接,小売に流通する経路に分かれている。つまり,商社経由で海外の縫製メーカーから出荷される

製品の国内流入が増えることで,国内の糸,生地,染料,染色事業者,縫製,アパレルから国内市

場向けに出荷される産地の製品がとってかわられる構造にあるといえる。

さらに,繊維製品は,産業資材として流通する割合が40にものぼっていることから,小売相

手の衣料や家庭向け以外にも,大きな市場が存在している。グローバル・サプライチェーンの拡大

は,国内市場に対しては小売向け市場を狙う産地の製品が海外からの輸入に置き換えられていると

同時に,産業資材も含めた取引構造の多様化,複雑化をもたらす可能性がある。

第節 グローバル・サプライチェーンが与える産地への影響

前節で明らかにしたように,グローバル・サプライチェーンは,商社経由で海外の縫製メーカー

から出荷される製品の国内流入が増えることで,国内の産地製品が容易に取って代わられる構造を

持っている。また,産業資材向けの市場にも海外メーカーからの流入がうかがえ,繊維産業全体に

おける同業他社,競合相手の増加が懸念される。

実際に,2009年の繊維の生産・加工・流通のフローチャートを,4 つの生産段階別に輸出入の実

態に絞ってみていくと(図表 3 参照),まず原料段階(繊維原料の生産・流通)については輸出が

1,061億円,輸入が399億円で輸出超過(662億円)であった。同様に,糸段階(糸の生産・流通)

については輸出が778億円,輸入が763億円でわずかに輸出超過(15億円),織物段階(織・編物の

生産・流通)についても輸出が2,531億円,輸入が913億円で輸出超過(1,618億円)であった。し

かし, 終製品となる繊維製品段階(衣類等=繊維二次製品の生産・流通)では,輸出が2,776億

円,輸入が28,153億円で大幅な輸入超過(25,377億円)となっていた。

つまり,繊維産地で主に生産されているものは 終製品であることから,繊維製品の多くが国産

から輸入に取って代わられているのである。そこで,詳細な流通経路をみると,繊維製品段階で輸

入される製品は,国内の衣類・身回品卸業を経由して,国内の小売段階(織物・衣類等小売業およ

び百貨店・総合スーパー)へと流通し, 終的に消費者の手に届いている。従って,繊維製品が国

産から輸入に取って代わられることは,国内の衣類等製造業の生産が,大量に海外生産へ移行して

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(図表)繊維の生産・加工・流通フローチャート

資料片岡 進著『繊維産業の現状及び今後の展開について』経済産業省製造産業局繊維課,2013年,9 頁,

http: //www.meti.go.jp /policy /mono _ info _ service /mono / fiber /pdf /130117seisaku.pdf(2015年 9 月18日)より引用。

― ―

いることにつながっている。グローバル・サプライチェーンの中で,繊維製品段階が も大きな影

響,つまり産業の空洞化につながるほどの影響を受けているのである。

また, 終製品の国内生産が減少することは,織物段階における国内の織物卸の販売額減少へと

波及し,その前工程で産地に多く展開している織物業などの製造業の出荷額減少へとさらに波及し

ていく。このように, 終製品である繊維製品段階の後工程(川下)で生じている輸入の拡大は,

順次,前工程(川上)へと遡り,国内繊維産業の縮小を招いているのである。言い換えると,グロー

バル・サプライチェーンは,川上よりも川下の工程で も大きな影響を及ぼし, 終製品の国産か

ら輸入品への代替を促している。その影響は,川下から川上へと波及し,国内産地の生産全体を縮

小させることにつながっているのである。

このような厳しい状況にある産地でも,域内の取引構造を改革しようとする動きもある。愛媛県

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今治市を中心とする四国タオル工業組合では,タオル製造業を中心とする組合員で構成されている

が,輸入品を増やす国内の衣類・身回品卸業を経由しての国内の小売段階への流通を打破するため

に,産地の製造業が小売業へ直販する,あるいは製造業自らが小売を行う(直営店経営)ことで,

サプライチェーンを大幅に短縮する取組を行い,成果をあげている。

こうした四国タオル工業組合のような産地をあげた取組は,同じ繊維の産地である桐生では,ま

だ展開されていない。特に,後者は問屋と製造業との関係から,サプライチェーンの改革に至って

いないのである。

ここまでをまとめると,グローバルサプライチェーンの拡大は海外生産品の流入を引き起こし,

産地製品の出荷額を大きく下げることとなっている。また,産地の取引構造が変化し,海外事業者

との取引を考慮する必要が出てきている。こうした取引の複雑化などに対して,サプライチェーン

・マネジメントを導入し,実践することが産地改革には効果的なのである。

一方で,桐生地域は伝統的な地場産地の様相を持ち,生産工程の社会的分業形態から,多様な事

業形態を持つ中小製造業によって繊維産業を構成している。だが,国外輸出向けの製品市場が,度

重なる経済環境の変化から弱体化したことで,内需型の取引構造の重要性も上昇している。加え

て,海外を含めたサプライチェーンの拡大以前からも,産地特有の複雑な取引構造が存在した可能

性を有する。

ここで問題となるのは,こうした産地に必要な戦略として,国内と海外の既存市場に加えた,第

三市場までも考慮に入れた販路開拓策が提案されている点である。現状の統計状況から顧みても,

この方針は将来的に必要なこととはいえ,急激に導入することは不可能と考えられる。特に,これ

は資本面での不利性が強い産地に限らず,伝統的に物流面でのみサプライチェーンを見てきた,日

本企業全般の弱点だといえる。この状況では,複雑なサプライチェーン理論の導入もまた,現実的

な戦略とは言えない。

第章 縮小する産地におけるサプライチェーン変革の実態~桐生地域を事例とし~

本章では,筆者が2015年 8 月27,28日に実施した群馬県桐生地域インタビュー調査結果をまと

めた『群馬県桐生地域インタビュー調査報告書』に基づき,織物業の産地である桐生におけるサプ

ライチェーン変革の実態を明らかにする。

第節 桐生における織物業の変化と実態

桐生は,繊維産業を中心とした伝統的産地である。しかし,現実の桐生地域の取引構造は一般的

な伝統的産地とは異なる。桐生の織物業は,平安時代から絹糸の産地であった過去を含めると

1300年の歴史がある。その後,明治時代の近代産業化以降,現在の取引構造が成立したが,他の

伝統的産地と比べて卸問屋の重要性は比較的薄い。その原因は,桐生の織物業の事業形態が伝統的

産地と異なる点にある。

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つまり,伝統的産地の特色である社会的分業についても,桐生では歴史的にそれぞれの業者が独

自の販売ルートを構築することが多かったのである。その結果,地域内で同じ事業に携わっている

事業者間でも,地域内取引をはじめ,分業上のつながりは薄い。現在でも,域内事業者にとって,

他の生産工程に携わる繊維関連企業との交流や取引はゼロではないが,他産地と比較するとその数

は少ない。

こうした独特な取引構造は,東京のアパレル系企業が安い製造工賃を求めて地方に足を延ばした

際,桐生の産地に目を付けたことに端を発するという。つまり,卸問屋が中心となって産地内の企

業をまとめ,製品を出荷する体制を構築したのではなく,産地外の企業が産地内の優秀な企業を取

捨選択し,取引を行うようになったことで,現在の構造が生まれたのである。

他の伝統的な産地とは違うこの点は,逆に時代の変化へ対応しやすいということも意味してい

る。実際,多くの織物業者は自社が有していた取引相手を中心に事業を継続・拡充している。ま

た,外部との取引が多いことにも起因して,桐生には親企業が系列の下請企業を有する二重構造を

形成する大企業は存在しない。大規模事業者は存在するが,域内の取引構造の中では,中小規模の

事業者であっても,そうした企業に経営を左右されていないのである。

一方,産地問屋は必ずしもゼロではなく,完全に無視することはできない。こうした販路が維持

されている理由としては,サプライチェーンを構築し,運営するにあたって必要な物流面での管理

・運営を,産地問屋を介して発注元が行うことが多い点があげられる。受注側の織物業者にとって

は,引き受けた仕事をやるだけで済むというシンプルさに優位性を持つ。また,生産を受注する企

業にとっては,安定した契約を確保するうえで,自社独自の販路に絞り込むのではなく,産地問屋

を含む複数の流通チャネルを通じた取引のほうが,発注サイドからの突然の取引中止というリスク

が避けられ,自社販売よりも安定した事業を構築しやすい。たとえ総合的なコストが上がることに

なるにしても,産地問屋といった仲介業者を小売業者や発注元の大手メーカーとの間に入れること

が重要となるのである。このように,桐生の織物業に必要なサプライチェーンのもう一つの形態と

して,産地問屋を介した安定的な契約があるのである。

サプライチェーンのもう一つの方向性であるメーカーの商社化・小売化といった,いわゆる垂直

統合に関しては,必ずしも有益ではない場合もある。それは,チェーン内の一社,特に小売業とし

ての立場からコストの削減に注力しすぎることで,かつては製造と小売の双方が同程度の専門的知

識を伴って行ってきた取引がうまく機能しなくなるためである。つまり,発注元の小売企業が製品

デザインや品質などよりもコストに対して厳しくなるあまりに, 終製品の品質劣化が目立つよう

になってしまうのである。こうした製品の劣化を打開するのは,産地企業が独自にサプライチェー

ン・マネジメントを行い,自社の取引領域における製品品質を管理していく方針に他ならない。

後に,産地企業の多くが中小企業である桐生地域では,サプライチェーンの統合化は難しい状

況にある。企業の経営状態や方針に,サプライチェーンのあり方は左右されるからである。桐生産

地のように,問屋が大きく関与しない場合,個々の中小企業によるグローバルチェーンに対応した

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販路開拓は構築しやすい状況にある。しかし,こうした新規販路は,採算が取れる販路である必要

がある。長年,産地全体が縮小し,経営が不安定な現状では,海外市場での適切な 終顧客に至る

サプライチェーンの構築は困難を極めるものと思われる。

一方,一部問屋との取引を含む継続取引がある顧客以外に,新たな取引を獲得していくことも至

難の技である。産地問屋自体の数が少なく,もともと産地内での影響力が弱いことからも,製造業

が産地問屋を通じた新たな販路を拡大することは難しい。また,グローバルチェーンは,国内外の

他産地における同業他社との競争が厳しくなることも意味し,他社との差別化も急務な課題として

産地企業に重くのしかかってきている状況にあるといえる。

これらの現地情報からまとめると,桐生地域に必要なサプライチェーン・マネジメントとは,自

社の所属するチェーンの段階を把握した的確な生産工程におけるマネジメントと考えられる。特

に,多くの企業が自社の取引構造を構築していることから,地域全体を中心に考えたチェーン・マ

ネジメントを急激に構築することは難しい。反対に,各企業がそれぞれ独自の販路をすでに保有し

ている桐生地域においては,複雑さはあるが,こうした自社の取引関係こそ生産面での優位性を高

めるために必要な情報源である。

第節 廃業企業のサプライチェーンと事業の特徴

繊維産業がグローバルな取引にシフトするにつれて,桐生における中小製造業の廃業が進行して

きた。桐生市内に点在していた産地問屋の多くは,素材系の 4,5 社と一部製造卸を残して,全て

消失してしまっている。域内織物業全体も産地問屋の廃業に伴い,その数を減らしている。また,

コスト競争力のある海外生産が中心となった今,織物業の製造技術の革新,つまり自動化が進み,

品質の格差が生じなくなってくるほど,国内生産を継続する意義が少なくなってきた。繊維産業以

外でも同じ兆候があるが,域内業者の多くが中小零細企業の桐生では,より一層大きな影響,すな

わち小規模企業の激減につながっているのである(図表 1 参照)。

特に繊維産業の場合,かつては業界内で低い地位であったいわゆる大量消費型小売業のチェーン

店,例えばユニクロなどが,従来アパレル業者が果たしてきた事業領域に大きく入り込み,その地

位を大幅に上昇させてきた。このため,業界内で重要な機能と役割を果たし,桐生産地の多くの織

物業取引があった各種アパレル業が,ここ20~30年の間に大幅に数を減らした。桐生の織物業者

も,各種アパレル業との取引を失った結果,大幅にその数を減らしたのである。こうした廃業企業

のサプライチェーン上で発生した問題は具体的に特定し難いが,少なくとも,業界の取引構造の変

化への対応が不十分だったといわざるを得ないのである。

第節 革新的企業のサプライチェーンと事業の特徴

本節では,インタビュー調査を通じて明らかとなったサプライチェーンの革新を図る経営努力を

実践する,有限会社 E と株式会社 A をモデルケースとして取り上げ,その事業の特徴をみていく

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こととする。

有限会社 E における生産情報の共有への取組

有限会社 E(従業員数14名)は,ジャガード刺繍を含め,多様な刺繍を手がける企業である。

小規模であることから自社完結型の製造能力を有しているわけではなく,大量受注の場合は域内同

業者への外注も行っている。

現在,繊維産業の世界的な中心地は中国であり,世界市場へ向けて大量生産が行われている。日

本国内外の産地にかかわらず,繊維関連の中小企業は過酷な経営環境におかれている。桐生に多い

繊維加工業者も,自社の独自性を磨き,差別化を実現できなければ,規模の経済やコスト面から中

国の事業者に太刀打ちすることは不可能である。

そこで,同社では生産情報の共有というサプライチェーン・マネジメント手法を駆使した改革を

進めてきた。具体的には,第 1 に製造現場を本社工場の建屋内どこからでも,目でみてわかる構

造とし,誰もが生産状況を把握できるようにした。これは自社の従業員による情報の共有化だけで

はなく,外部から訪れたデザイナーや取引関係者などにも,生産状況が一目瞭然の環境を整えたの

である。

また,製造現場の見える化を行いつつ,さらに製品を企画・設計する工程,検品,梱包などの

終工程も,同様に見える化を進めた。この目でみてわかる工場では,製品設計を自社ではなく外注

する際には,外部のデザイナーに自社設備を貸与して,現場でデザインの試作が行えるようにもし

ている。このように,製造現場の見える化を社内のみではなく,社外の取引関係者にも同様な状態

で実現することで,より迅速で細かな情報の共有を果たすことに成功している。こうした取組は,

まさしくサプライチェーン・マネジメントにおける社内外での情報の円滑化を意識したものである。

第 2 に,外注をお願いするなどの取引関係を持つ同業他社との仕事情報の共有,譲り合い,助

け合いといった,垂直統合とは異なる水平展開が行われている。具体的には,自社の生産能力では

不可能な事業も,同社が外注すること,つまり他社の協力を仰ぐことで可能になる。いわゆる「仲

間回し」といわれる横のつながりを活用したこの外注方法は,同社も加入している産地内の事業協

同組合でも実践されている。この外注を円滑に実施するためには,繊維産業全体の動向を把握しつ

つ,自社を含む産地内の協力企業の生産能力や設備の稼働状況などの把握が必要不可欠となる。こ

うした産地内での水平展開は,受注量の変動への対応力の向上や, 大受注に合せた設備や人的資

源の投入を不要とすることなど,サプライチェーン・マネジメントにおける効率的な生産体制を構

築する具体的な取組であるといえる。

株式会社 A による物流面における製品情報の共有

株式会社 A(従業員数97名)は,主に生地の撥水加工,柔軟加工,消臭加工など,多様な染色

整理事業を展開している。事業の主力である染色整理事業の顧客は,大手繊維メーカーからの受注

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であり,同社の取引構造は自動車産業における下請取引に近い。他にもインクジェット・プリント

事業,テキスタイル事業,繊維製品の販売事業を手がけている。染色整理事業から派生する多様な

技術力を活かした事業を展開する,産地を代表する企業である。

同社では,顧客向けの物流をサプライチェーン全体で管理を行うことはなく,請負業務を主体と

していることから,発注元の大手繊維メーカーがその役目を担っている。また,自社への生地や原

材料の入荷,自社からの製品の出荷といった物流に関わる業務も,モノそれ自体の出入の頻度が高

く,かつ広範囲にわたっていることから,物流業者に外注している。

しかし,自社から出荷される製品に関する物流情報は社内で管理されている。代表的なものとし

ては,トヨタ生産方式でいうところのカンバン方式に類似した製品ごとのバーコード管理による情

報の共有である。こうした情報は,社内での生産から,出荷後の配送に至るまで,一貫した全ての

工程で確認することができる。具体的には,生地の加工に使用した原料や成分,加工方法,製品に

関して特別注意すべき点などの全てを明らかとすることができる。また,欠陥が発生した場合,直

ちにその情報が自社と他社,双方のシステムで把握できるようになっている。

また,在庫の削減にも取り組んでおり,自社倉庫の在庫保管を短く設けている。在庫期間が長期

化すると製品の品質にも影響するため,倉庫内の製品は, 長でもひと月以内に出荷することを原

則としている。季節性の製品や納期の条件次第では,製品の完成後,即,出荷することができるよ

うに外注先の運送業者による協力体制ができている。

さらに,社員教育を通じて,ルール化された製品の情報,管理,製造の手順を習得させることで

も,製品品質の向上と生産のリードタイムの短縮を果たしている。

このように,社内工程ごとのモノの流れは自社の物流管理体制の整備によって管理が行き届き,

サプライチェーンにおける内部物流のコストダウンとリードタイムの短縮を達成している。これ

は,直接的な物流面での取り組みではないが,社内における JIT を達成することで,前述したサ

プライチェーン・マネジメントによる優位性を達成している。

後に,販路に関わることとしては,卸問屋を含めた多くの取引先を持つことで,事業の安定性

を高めている。複数の販路を持つことは,顧客ごとのサプライチェーン管理が複雑になる可能性も

あるが,同社は請負企業であって管理される側にあるため,自社による負担を下げることができ,

かつ収益の安定性を確保している。これは,かつての産地問屋を経由した販売取引と類似してお

り,産地本来の特色を活かした取引構造であるといえる。

以上二つの事例から,桐生地域におけるサプライチェーン・マネジメントは,高度ではないもの

の,生産基盤に即した十分な管理体制が行われていることがわかった。一方で,企業規模と事業の

形態などから,物流全般に関連した管理や,チェーン全体までの把握を行うことが適切なサプライ

チェーン活動とは言えない。ただし,自社を含めた水平的な関係構築は可能であり,サプライチ

ェーン・マネジメントの一つの目的として提示できる。

こうしたことからも,桐生地域に適したサプライチェーン・マネジメントは,自社ごとにおける

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生産工程の管理といえる。ここで重要なのは,自社がチェーン上のどの工程に位置しているかを,

事業ごとに設定する必要がある。例えば,自社製品を集中して製造している場合, 終顧客の重要

性は本来の産地企業と質が違うものとなる。製品に求められる情報も違うため,どの情報をどのよ

うに管理して共有するのか,日々の経営努力による把握は一層重要なものとなる。特に,これまで

横のつながりが薄かった桐生地域を,産地として強固にするうえで,取引企業間におけるサプライ

チェーン・マネジメントによる生産情報の共有は,製品品質の向上,リードタイムの短縮,新規ブ

ランドの創出といった優位性の獲得に必須である。

第章 産地再生に資するサプライチェーン改革

本章では今後,産地に求められるサプライチェーンの方向性を探るとともに,具体的な方法につ

いて提言する。前章で産地企業一社ごとに必要な方針は述べたが,産地全体の方針について,ブラ

ンド化など多様な経営戦略を取り入れて考察する。

第節 変革するサプライチェーンとマーケティング展開

今後,産地の企業にとってグローバルなサプライチェーンの構築が必要であることはいうまでも

ない。歴史的に卸問屋といった仲介業者の重要性が薄い桐生地域では,グローバル化は比較的簡易

に実行できる戦略である。これまでも,外注先としての中国をはじめとする海外の工場を利用する

ことはあったが,現代の潮流において大切なことは,どのようにグローバル企業との取引関係を獲

得し,継続していく点にある。単なる生産拠点としての海外企業との取引ではなく,欧米の大手ブ

ランド企業とは異なる,国外の中小アパレル企業との提携といった現実的な取組が求められる。

しかし,海外の企業との取引を実現するためには,自社の生産技術や生産能力のみならず,納期

短縮や遵守能力,品質保証といった社内や産地内でのサプライチェーン自体の能力向上が必要不可

欠となるのである。製造業において,海外国内問わず共通の重要認識は存在し,サプライチェーン

による生産工程の管理はそうした重要点の導き出しに非常に効果的である。

また,新たな販路開拓のためには,中小企業におけるマーケティング活動によるブランドの構築

が重要性を増すことになるが,産地においても,この重要性は現実的なものであるといえる。

第節 産地ブランドとしてのサプライチェーン

桐生ブランド,いわゆる産地ブランドを構築しようとする動きが,織物業関連の事業協同組合か

ら出始めている。理論上は,産地内のみで一つのサプライチェーンを構築することは,リードタイ

ムの短縮やコストの削減,各種情報共有の容易性などから,推奨されるべきことである。しかし,

実際には組合に加盟する個々の組合員企業の既存販路によって,すでに域内企業の産地内外での取

引構造は大きく異なっている。というのも,前述したように桐生の産地企業の多くは,独自の販路

を構築してきたことから,産地内の企業間で連携する場合,各社の経営方針や製品のターゲットと

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する市場などが一致していない可能性のほうが高い。

こうした既に販路が異なっている場合に重要となる取組は,各企業間に入った調整役的存在とな

る企業,あるいは産地全体を先導していく存在となる組織が必要となる。

そこで,もう一つの産地ブランドとしてのサプライチェーンの考え方として,企業ごとに既に構

築されているサプライチェーン自体を,産地全体として集約化,組織化し,複数ブランドの集合体

としての産地ブランドを推進していくことである。つまり,産地から域外へと流通されていくプロ

セスを一元管理する方法である。この一元管理を行う組織や組合の存在こそが,産地ブランドを達

成させるために必要な先導役でもある。また,ここでは一般的にイメージされる完成品の出入庫を

管理する物流面での一元管理に留まらず,産地製品全てに関わる品質管理と保証を行う,生産基盤

に関連したサプライチェーンを産地として共同運営することが重要となる。

以上のように,産地におけるサプライチェーンの導入には,複数の考え方と方法があり, 適な

サプライチェーンを選択するためには,既存の取引構造を含めた産地全体のモノの流れを把握する

ことが求められるのである。

(注)

山崎 充著『日本の地場産業』ダイヤモンド社,1977年,6~9 頁参照。

前掲書『日本の地場産業』6~9 頁参照。

荻久保 嘉章著『杞柳産業の盛衰―地場産業産地の淘汰―』成文堂,2013年,239頁参照。

関 満博稿「地場産業の直面する課題」関 満博・佐藤 日出海編著『21世紀型地場産業の発展戦略』新

評論,2002年,11頁参照。

新井直樹著「地域産業政策の変遷と産業集積における地方自治体の役割に関する一考察―三重県の「クリス

タルバレー構想」と液晶産業集積を事例として―」『地域政策研究 第 9 号』日本地域政策学会,2007年,

176頁参照,および桐生市繊維振興協会編著『桐生繊維業界の実態』桐生市繊維振興協会,2014年,8 頁参

照。

梅村 仁著『地方自治体の産業政策と産業集積地域の魅力化 ~地域的近接性の視点から~』帝国データバ

ンク,2012年,1 頁参照。

栗沢尚志稿「日本の織物地場産業が直面するもの」,前出書『21世紀型地場産業の発展戦略』186頁参照。

伊東維年稿「現代の地域産業振興策」伊東維年ほか著『現代の地域産業振興策』ミネルヴァ書房,2011年,

245~249頁参照。

前出書『地域政策研究 第 9 号』11頁参照。

前出書『日本の地場産業』215頁参照。

前出書『桐生繊維業界の実態』8~11頁参照。

See, S. Chopra and P. Meindl, Supply Chain Management ―strategy, planning, and operations―, Pearson

Education International, 2004, pp. 46, Ondieki John Nyamasege and Oteki Evans Biraori, ``EŠect of Suppli-

er Relationship Management on The EŠectiveness of Supply Chain Management in The Kenya Public Sector,''

International Journal of Managing Value and Supply Chains, 2015, pp. 2527, and Craig R. Carter, Dale S.

Rogers, and Thomas Y. Choi, Toward the theory of the supply chain, Arizona State University, 2015, pp. 89

92.

阿保栄司稿「ビジネス・ロジスティクス・システムの構造の変革」阿保栄司・矢澤秀雄共著『サプライチェー

ンコストダウン』2000年,中央経済社,137頁,唐沢 豊著『現代ロジスティクス概論』NTT 出版,2000

年,31~40頁,および小熊和雄稿「地域経済を担う中小企業―集積地の未来―」百瀬惠夫編著『中小企業

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論新講』白桃書房,2000年,141~159頁参照。

前出書『現代ロジスティクス概論』38頁参照。

前出書『日本の地場産業』24~29頁参照。

前掲書『日本の地場産業』41~44頁参照。

前掲書『日本の地場産業』108~136頁参照。

関 満博稿「地場産業の直面する課題」,前出書『21世紀型地場産業の発展戦略』11頁参照。

前出書『日本の地場産業』139~148頁参照。

ただ,この時期のダメージは大きかったものの尾を引きはしなかったという。オイルショック自体は当時,

円がもう一度固定相場制へ戻ったことから。その後のニクソンショックや円の変動相場化は,事前の通知か

ら変化が予測されたことから,厳しい状況にはなったものの長期化の原因ではなかったという。前田啓一著

『岐路に立つ地域中小企業~グローバリゼーションの下での地場産業の行方~』ナカニシヤ出版,2005年,

1~18頁参照。

伊東維年稿「本書の研究の背景と研究課題・方法」,前出書『現代の地域産業振興策』1 頁参照。

前出書『岐路に立つ地域中小企業~グローバリゼーションの下での地場産業の行方~』6 頁参照。

ただし,桐生地域は通常の伝統的地場産地と違い,産地問屋の権威があまり大きくない,自由な気風を持つ

という特徴がある。筆者が2015年 8 月27日~8 月28日に実施した群馬県桐生地域インタビュー調査結果を

まとめた『群馬県桐生地域インタビュー調査報告書』に基づく。なお,訪問企業数は非公式含め 7 社。

前出書『群馬県桐生地域インタビュー調査報告書』4 頁,および前出書『桐生繊維業界の実態』8 頁参照。

阿保栄司稿「SCM をてこに改革を」,前出書『サプライチェーンコストダウン』8 頁参照。

前掲書「SCM をてこに改革を」,『サプライチェーンコストダウン』9~14頁参照。

小藤 計・金子 昌稿「序論」,旭川大学地域研究所編『地域産業の課題』旭川大学地域研究所,1981年,

11~12頁参照。

阿保栄司稿「ビジネス・ロジスティクス・システムの構造の変革」前出書『サプライチェーンコストダウン』

137頁参照。

前出書『現代ロジスティクス概論』31頁参照。

op.cit., Supply Chain Management ―strategy, planning, and operations―, p. 5.

土井隆寛著『サプライチェーン・マネジメントにおける No./BC 戦略の適用』筑波大学大学院博士前期課程,

システム情報工学研究科修士論文,2007年,7~9 頁参照。

op.cit., Supply Chain Management ―strategy, planning, and operations―, p. 9.

M. Christopher 著,e-Logistics 研究会訳『ロジスティクスマネジメント戦略~eビジネスのためのサプラ

イチェーン構築手法~』ピアソンエデュケーション,2006年,21~30頁参照。

前掲書『ロジスティクスマネジメント戦略~eビジネスのためのサプライチェーン構築手法~』141~167

頁参照,および See, Chavhan R, Mahajan, S. H., and Sarang J, ``Supplier Developmet: Theories and Prac-

tices'', Journal of Mechanical and Civil Engineering, 2012, pp. 37.

前出書『現代ロジスティクス概論』384頁参照。

前出書『ロジスティクスマネジメント戦略~eビジネスのためのサプライチェーン構築手法~』183頁参照。

See, Yan Liu, Soemon Takakuwa, Enhancing Simulation as A Decision-Making Support Tool or A Cross-

Docking Center in A Dynamic: Retail-Distribution Environment, Nagoya University, 2007, pp. 20892093.

ibid., pp. 20892093.

Barbara Flynn, Xiaowen Huang, and Xiande Zhao, ``Supply Chain Management in Emerging Markets: Critical

Research Issues'', Journal of Supply Chain Management, 2015, pp. 34.

Christopher Degain, Hubert Escaith 著「大量消費からグローバルなサプライチェーンへ」,ユベール・エス

カット・猪俣哲史編著『東アジアの貿易構造と国際価値連鎖』WTO/IDE-JETRO, WTO Publication,

2011年,8~15頁参照。

経済産業省・厚生労働省・文部科学省編著『ものづくり基盤技術の振興施策(概要)』経済産業省・厚生労

働省・文部科学省,2015年,29頁参照,

Page 20: サプライチェーン改革による産地再生に関する研究...― ― 論文受付日 2015年9 月25日 大学院研究論集委員会承認日 2015年10月26日 経済学研究論集

― ―― ―

http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2015/honbun_pdf/pdf/gaiyou.pdf(2015年 9 月19日所収)

See, Kai Foerstl, Arash Azaedegan, Thomas Leppelt and Evi Hartmann, ``Drivers of Supplier Sustainability:

Moving Beyond Compliance to Commitment'', Journal of Supply Chain Management, 2015, pp. 6770, and

Cristina Sancha, Cristina Gimenez, Vicenta Sierra and Ali Kazeminia, ``Does Implementing Social Supplier

Development Practices Pay OŠ?'', Supply Chain Management: An International Journal, 2015, pp. 389392.

河村雅彦著『サプライチェーンの CSR リスクに疎い日本企業「日本型 CSR」に潜むリスク促進要因』ニ

ッセイ基礎研究所,2013年,1~5 頁参照。

国土交通省物流審議官部門物流政策課および道路局企画課道路経済調査室,経済産業省商務流通保安グルー

プ物流企画室編著『総合物流施策大綱(20132017)』国土交通省,2013年,1~18頁参照。

前掲書『総合物流施策大綱(20132017)』11頁,および阿保栄司稿「SCM をてこに改革を」,前出書『サ

プライチェーンコストダウン』13頁参照。

美藤信也著『グローバル・サプライチェーンにおける販売戦略に関する実証分析―欧米におけるロジスティ

クスの議論展開を中心として―』大阪産業大学,2013年,52~54頁参照。

前出書『ロジスティクスマネジメント戦略~eビジネスのためのサプライチェーン構築手法~』169~203

頁参照。

佐々木 實雄稿「垂直的取引制限と流通系列」植草 益編著『日本の産業組織』有斐閣,1995年,143~

163頁参照。

サプライチェーンの改革と併せ,四国タオル工業組合ではブランド戦略も展開している。詳しくは,佐藤

可士和・四国タオル工業組合著『今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略』朝日新聞出版,2014

年を参照。

前出書『群馬県桐生地域インタビュー調査報告書』を参照。