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- 25 - 栄養生理研究会報 Vol.60No.1 2016 1.はじめに 幼雛期の摂食量はその後の成長や効率的家禽生産 に影響を与えることから、ニワトリヒナにおける摂 食調節機構の解明が進められている。哺乳類を対象 とした研究により、動物の摂食は脳に作用する様々 な生理活性物質によって調節されていることが明ら かになり、摂食調節因子の概念が生まれた。その後 鳥類であるニワトリではニワトリヒナを中心に脳内 における摂食調節因子の解明が進められてきた。 その結果、ニワトリヒナの摂食に影響を与える摂 食調節因子が多数報告されるに至った 1。しかし、 それらの摂食調節因子の作用の一部は哺乳類とは異 なることが明らかにされつつある。例えば、哺乳類 の摂食を促進するメラニン凝集ホルモンやモチリ ン、オレキシンはニワトリヒナの摂食には影響を与 えない 23。また、脂肪細胞から分泌されるレプチン は哺乳類の摂食を抑制することで知られているが 4ニワトリヒナに哺乳類由来のレプチンを脳室内投与 しても摂食に変化は見られない 5。興味深いことに、 キンギョをはじめとする硬骨魚類における摂食調節 因子の作用は哺乳類と類似しているものが多い 6これらの事実からニワトリヒナの摂食調節機構は脊 椎動物の進化の過程で独自に発達したものと考えら れている。 哺乳類や硬骨魚類とは明確に異なる作用を示す因 子の中には、成長ホルモン(GH)の分泌調節に関 わるものが多い。例えば、哺乳類の胃から分泌され るグレリンは、GH の分泌を促すとともに摂食を亢 進させるが 78、ニワトリヒナにグレリンを脳室内 投与すると哺乳類とは正反対に摂食が抑制される 9さらに GH の分泌を抑制するソマトスタチンを哺乳 類に脳室内投与すると、低濃度では摂食を亢進し、 高濃度では摂食を抑制するが 1011、ニワトリヒナ では一様に摂食を亢進する 12。このように、ニワ トリヒナでは GH の分泌に関わる摂食調節因子の作 用が哺乳類とは正反対であることが多い。不思議な ことに、ニワトリヒナでは GH の分泌を促す因子(グ レリン)が摂食を抑制し、GH の分泌を抑制する因 子(ソマトスタチン)が摂食を亢進する。GH の分 泌を促し成長を亢進するはずの因子が摂食を抑制す るという事実は、成長と摂食の関係においては矛盾 するように見えるが、その原因については未だ明ら かにされていない。 GH の分泌に影響を与える因子の一つとして成長ホ ルモン放出ホルモン(GH-releasing hormoneGHRHがある。 GHRH は哺乳類の GH 分泌を促すとともに、 摂食を亢進することで知られている 13。哺乳類由来 GHRH をニワトリヒナに脳室内投与すると摂食 が抑制されることから 14、この GHRH も前述の GH 関連ホルモンと同様に哺乳類と異なる作用を示すと 考えられる。ただし、この哺乳類由来の GHRH はニ ワトリ由来の GHRH との間の相同性が低く、哺乳 類由来の GHRH をニワトリに静脈内投与すると GH 分泌を促すものの 15、ニワトリ由来の GHRH を投与 しても血中 GH 濃度には変化が見られない 16。さ らにニワトリ GHRH の近傍遺伝子座を哺乳類のも のと比較すると明らかに異なる。ニワトリの GHRH 2 番染色体にある下垂体アデニレートシクラー ゼ活性化ポリペプチド(pituitary adenylate cyclase- activating polypeptidePACAP)と同じ遺伝子に由来 ニワトリヒナの脳内摂食調節機構における成長ホルモン関連ホルモンの役割 橘 哲也 (愛媛大学農学部畜産学研究室) Proceedings of Japanese Society for Animal Nutrition and Metabolism 60(1): 2533, 2016. Role of growth hormone-related hormone on feeding regulatory mechanism in the brain of chicks Tetsuya Tachibana Laboratory of Animal Production, Faculty of Agriculture, Ehime University

ニワトリヒナの脳内摂食調節機構における成長ホルモン関連 ... · 2016-02-15 · ニワトリヒナの脳内摂食調節機構における成長ホルモン関連ホルモンの役割

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栄養生理研究会報 Vol.60,No.1 2016

1.はじめに

 幼雛期の摂食量はその後の成長や効率的家禽生産に影響を与えることから、ニワトリヒナにおける摂食調節機構の解明が進められている。哺乳類を対象とした研究により、動物の摂食は脳に作用する様々な生理活性物質によって調節されていることが明らかになり、摂食調節因子の概念が生まれた。その後鳥類であるニワトリではニワトリヒナを中心に脳内における摂食調節因子の解明が進められてきた。 その結果、ニワトリヒナの摂食に影響を与える摂食調節因子が多数報告されるに至った 1)。しかし、それらの摂食調節因子の作用の一部は哺乳類とは異なることが明らかにされつつある。例えば、哺乳類の摂食を促進するメラニン凝集ホルモンやモチリン、オレキシンはニワトリヒナの摂食には影響を与えない 2,3)。また、脂肪細胞から分泌されるレプチンは哺乳類の摂食を抑制することで知られているが 4)、ニワトリヒナに哺乳類由来のレプチンを脳室内投与しても摂食に変化は見られない5)。興味深いことに、キンギョをはじめとする硬骨魚類における摂食調節因子の作用は哺乳類と類似しているものが多い 6)。これらの事実からニワトリヒナの摂食調節機構は脊椎動物の進化の過程で独自に発達したものと考えられている。 哺乳類や硬骨魚類とは明確に異なる作用を示す因子の中には、成長ホルモン(GH)の分泌調節に関わるものが多い。例えば、哺乳類の胃から分泌されるグレリンは、GHの分泌を促すとともに摂食を亢進させるが 7,8)、ニワトリヒナにグレリンを脳室内投与すると哺乳類とは正反対に摂食が抑制される9)。

さらに GHの分泌を抑制するソマトスタチンを哺乳類に脳室内投与すると、低濃度では摂食を亢進し、高濃度では摂食を抑制するが 10,11)、ニワトリヒナでは一様に摂食を亢進する 12)。このように、ニワトリヒナでは GHの分泌に関わる摂食調節因子の作用が哺乳類とは正反対であることが多い。不思議なことに、ニワトリヒナでは GHの分泌を促す因子(グレリン)が摂食を抑制し、GHの分泌を抑制する因子(ソマトスタチン)が摂食を亢進する。GHの分泌を促し成長を亢進するはずの因子が摂食を抑制するという事実は、成長と摂食の関係においては矛盾するように見えるが、その原因については未だ明らかにされていない。 GHの分泌に影響を与える因子の一つとして成長ホルモン放出ホルモン(GH-releasing hormone、GHRH)がある。GHRHは哺乳類のGH分泌を促すとともに、摂食を亢進することで知られている13)。哺乳類由来の GHRHをニワトリヒナに脳室内投与すると摂食が抑制されることから14)、このGHRHも前述の GH

関連ホルモンと同様に哺乳類と異なる作用を示すと考えられる。ただし、この哺乳類由来の GHRHはニワトリ由来の GHRHとの間の相同性が低く、哺乳類由来の GHRHをニワトリに静脈内投与すると GH

分泌を促すものの15)、ニワトリ由来の GHRHを投与しても血中 GH濃度には変化が見られない 16)。さらにニワトリ GHRHの近傍遺伝子座を哺乳類のものと比較すると明らかに異なる。ニワトリの GHRH

は 2番染色体にある下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド(pituitary adenylate cyclase-

activating polypeptide、PACAP)と同じ遺伝子に由来

ニワトリヒナの脳内摂食調節機構における成長ホルモン関連ホルモンの役割

橘 哲也(愛媛大学農学部畜産学研究室)

Proceedings of Japanese Society for Animal Nutrition and Metabolism 60(1): 25-33, 2016.Role of growth hormone-related hormone on feeding regulatory mechanism in the brain of chicksTetsuya TachibanaLaboratory of Animal Production, Faculty of Agriculture, Ehime University

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するとされていたのに対し、ヒトの GHRH遺伝子は PACAP遺伝子がある18番染色体になく、20番染色体に独立して存在している 17)。以上のことから、ニワトリ GHRHは哺乳類とは全く異なるものであり、GH分泌作用が欠如していると考えられてきた。 しかし、2007年に既知の GHRHとは別の GHRH

がニワトリで発見された 17)。この新しく発見された GHRHの遺伝子は20番染色体に存在しており、近傍の遺伝子群も哺乳類のものと完全に一致していること、さらにニワトリの GH分泌を促したことから 18)、これが真のニワトリ GHRH(以下 cGHRH)であることが判明した。そしてこれまでニワトリの GHRHと考えられていたものは、脊椎動物の進化の過程で生じた全ゲノム重複によって生じたもので、GH分泌促進作用を失った GHRH様ペプチド(GHRH-like peptide、以下 cGHRH-LP)であることが明らかとなった。すなわち、ニワトリには20番染色体に存在する cGHRH(新しく発見された GHRH)遺伝子と、2番染色体に存在する cGHRH-LP(過去に発見されていた GHRH)遺伝子の 2種類があることになる。なお、哺乳類では PACAP遺伝子の近傍に存在する遺伝子によってコードされているPACAP関連ペプチドが cGHRH-LPと相同であると考えられている。 以上の様にニワトリには cGHRHと cGHRH-LPという2つの GHRH関連ペプチドがあることが明らかとなった。ただし、これらの GHRH関連ペプチドがニワトリヒナの摂食にどのような影響を与えるかは明らかにされていない。本研究ではニワトリヒナの摂食調節機構における cGHRHおよび cGHRH-LP

の役割を明らかにすることを目的とした。これらに加え、GH分泌に影響を与えるとされているプロラクチン放出ペプチド(prolactin-releasing peptide、PrRP)の役割についても明らかにすることを目的とした。

2.cGHRHおよび cGHRH-LP の脳室内投与による

摂食量の変化

 本研究には卵用種オスヒナを用いた。1日齢ヒナを室温30±1℃、24時間点灯条件下で市販飼料と水を不断給与して飼育した。実験前日に個別ケージに

移し、実験環境に馴化させた。実験直前にニワトリヒナの体重を測定し、各群の平均体重が等しくなるように実験群に分けた。 脳室内投与はDavisの方法19)に基づいて実施した。簡潔に説明すると、透明アクリル製の頭部固定装置にヒナの頭部を挿入して保定し、固定装置の上部の穴にマイクロシリンジを挿入して試薬液を10μ1投与した。なお、試薬液にエバンスブルーを加えることで、脳室内に正確に投与されたかを開頭後に目視により確認した。 自由摂食状態の 5~6日齢ヒナを 4群に分け、0

(溶媒のみ、対照群)、0.04、0.2または 1.0nmolのcGHRHを脳室内投与し、投与 30、60および 90分後の摂食量を測定した。cGHRHはその全長にあたる cGHRH(1-47)の他、N末端側から27番目のみの cGHRH(1-27)、さらにその C末端がアミド化された cGHRH(1-27)NH2が存在すると考えられている。そこで、この3種の cGHRHを脳室内投与した後の摂食量を調べた。その結果、cGHRH(1-47)および cGHRH(1-27)NH2を脳室内投与した場合にニワトリヒナの摂食量が有意に減少した(図1)20)。cGHRH(1-27)に摂食抑制作用が見られなかったことから、C末端側のアミド化が摂食抑制作用に関わっていると考えられる。また、全長であるcGHRH(1-47)が最も強い摂食抑制作用を示したため、cGHRHの摂食抑制作用には C末端側配列が重要な役割を果たしていることが示唆された。 この摂食抑制作用は cGHRH-LPを脳室内投与した場合にも見られた(図1)20)。したがって、ニワトリに存在している二つの GHRH関連ペプチドは両者とも摂食抑制作用を有していることが明らかとなった。

3.cGHRHおよび cGHRH-LP の腹腔内投与による

摂食量の変化

 これまでの研究により、cGHRHおよび cGHRH-

LPは脳以外の末梢組織にも発現していることが明らかにされている 17)。したがって、末梢組織のGHRH関連ペプチドが脳に作用することで摂食を抑制している可能性がある。そこで GHRH関連ペプチドを腹腔内投与した場合の摂食量の変化を調べた。

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 上述の GHRHを生理食塩水に溶解したものを腹腔内投与に用い、一羽あたり200μ1投与した。自由摂食状態の6~7日齢ヒナを3群に分け、0(溶媒のみ、対照群)、0.2または 1.0nmolの cGHRH(1-47)を腹腔内投与し、その30、60および90分後に摂食量を測定した。cGHRH(1-27)、cGHRH(1-27)NH2

および cGHRH-LPについても同様の検討を行った。その結果、cGHRH(1-47)を腹腔内投与した場合にのみ摂食量が有意に減少したことから(図 2)21)、末梢由来の cGHRHも摂食抑制に関わっている可能性が示唆された。

図1.cGHRHおよび cGHRH-LP の脳室内投与による摂食量の変化数値は平均値±標準誤差で示す(各群 n=6~10)。同一時間帯において異符号間に有意差あり(P<0.05)。

図2.cGHRHおよび cGHRH-LP の腹腔内投与による摂食量の変化数値は平均値±標準誤差で示す(各群 n=6~9)。同一時間帯において異符号間に有意差あり(P<0.05)。

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4.cGHRHおよび cGHRH-LP の投与によるヒナの

行動の変化

 以上のように GHRH関連ペプチドを投与するとニワトリヒナの摂食量が低下した。ただし、これはGHRH関連ペプチドが他の行動を活性化させたり、あるいは睡眠様行動や痙攣等を引き起こすことで、ニワトリヒナの摂食行動が阻害されたためなのかもしれない。そこで、GHRH関連ペプチドの投与がニワトリヒナの行動にどのような影響を与えるかを調べた。 自由摂食状態の5日齢ヒナを2群に分け、0(溶媒のみ、対照群)または1.0nmolの cGHRH(1-27)NH2または cGHRH-LPを脳室内投与し、その後30

分間の行動を観察した。ニワトリヒナの自発運動量はニワトリヒナのケージの上に取り付けた赤外線センサーと、それを接続した自発運動量測定装置にて測定した。さらにケージの正面にデジタルビデオカメラを設置してニワトリヒナの行動を撮影し、録画した映像を基にニワトリヒナの立位時間と座位時間を測定するとともに、毛繕いやジャンプなどの回数を計数した。その結果、cGHRH(1-27)NH2および cGHRH-LPの脳室内投与は毛繕いの回数を除いてニワトリヒナの行動に影響を与えないことが明らかとなった 20)。また、血中コルチコステロン濃度も cGHRH(1-27)NH2および cGHRH-LPの脳室内投与による影響を受けなかったことから 20)、両ペプチドはストレス反応の内分泌経路である視床下部-下垂体-副腎皮質軸を活性化させないと考えられた。以上のことから、GHRH関連ペプチドは行動の活性化や睡眠、痙攣など異常行動の誘発によるものではないことが明らかとなった。

5.GHRH関連ペプチドの摂食抑制作用とPACAP

との関連

 前述の様に、cGHRH-LP遺伝子は PACAP遺伝子の近傍にあり、哺乳類ではPRPと名付けられている。PACAP受容体を発現させた培養細胞を用いた研究により、高濃度の cGHRHや cGHRH-LPが PACAP受容体を活性化させることが明らかになっている 17)。PACAPの脳室内投与は PACAP受容体を介してニワトリヒナの摂食を抑制するため 22)、GHRH関連ペ

プチドが PACAP受容体を介している摂食を抑制している可能性が残る。そこで、GHRH関連ペプチドの摂食抑制作用と PACAP受容体の関係を調べた。自由摂食状態の5日齢ヒナを、溶媒のみ(対照群)脳室内投与、1.0nmolの cGHRH(1-27)NH2または cGHRH-LPを単独で脳室内投与、そしてこれらの GHRH関連ペプチドおよび PACAP受容体アンタゴニストである PACAP(6-38)を同時に脳室内投与する群の3つに分けた。それぞれの脳室内投与を実施し、その30、60および90分後の摂食量を測定した。その結果、PACAP(6-38)は cGHRH(1-27)NH2および cGHRH-LPの摂食抑制作用には影響を与えなかった(図3)20)。以上のことから、GHRH

関連ペプチドによる摂食抑制作用には PACAP受容

図3 cGHRHおよび cGHRH-LP の摂食抑制作用に対するPACAP受容体アンタゴニストの効果この実験は 12時間絶食後に実施した。PACAP受容体アンタゴニストとして PACAP(6-38)を用いた。cGHRHおよび cGHRH-LPの投与量は1nmolであり、PACAP(6-38)の投与量は 0.5 nmolである。数値は平均値±標準誤差で示す(各群 n=8~12)。同一時間帯において異符号間に有意差あり(P<0.05)。

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体が無関係であることが明らかとなった。 cGHRHと cGHRH-LPはそれぞれの受容体があり、cGHRH-LPの受容体は cGHRH-LPによってのみ活性化されるのに対し、cGHRHの受容体は cGHRH

と cGHRH-LPの両者によって活性化されると考えられている 23)。したがって、cGHRHと cGHRH-LP

の摂食抑制作用には cGHRH受容体が関わっている可能性がある。

6.摂食行動の変化に伴うGHRH関連ペプチド遺伝

子発現の変動

 これまでは cGHRHや cGHRH-LPを外因的に投与した後の摂食反応について調べてきたが、脳内のGHRH関連ペプチドが実際に摂食調節に関わっているかはわからない。内因性 GHRH関関連ペプチドが摂食に関わっているかを調べるため、絶食に伴うcGHRHおよび cGHRH-LPの遺伝子発現量の変化を調べた。7日齢ヒナを2群に分け、片方には飼料を自由に摂取させ、もう片方には24時間絶食させた。絶食後に間脳を採取し、全 RNAを抽出、cDNAを合成し、リアルタイム PCRを用いた相対定量により cGHRHおよび cGHRH-LPの mRNA発現量を調べた。その結果、cGHRH-LPの mRNA発現量は増加する傾向にとどまったものの、cGHRHでは有意に増加した(図4)20)。絶食期間中は食欲が低下するため摂食抑制作用を持つ GHRH関連ペプチドの

遺伝子発現量は低下すると考えられたが、それとは正反対の結果になった。この理由については今のところ明らかにされていない。ただし、間脳のうち漏斗部のみ取り出しその cGHRHの mRNA発現量を調べたところ、絶食により有意に低下した(未発表)。これは cGHRHの摂食抑制作用が絶食により低下したと判断する考えと一致する。いずれにしても、間脳には絶食に応じて様々な変化を示す cGHRH含有細胞が数種類存在することが考えられる。 このように脳内の cGHRH遺伝子は絶食に応じて変化することが明らかとなった。しかし、この実験の絶食期間が24時間と長いため、この変化が食欲の変化に伴って生じたのか、あるいは絶食による代謝の変化によって生じたのかは現在のところ分からない。cGHRHおよび cGHRH-LPの受容体アンタゴニストが開発されれば行動薬理学的な解析が可能になり、また cGHRHや cGHRH-LPあるいはそれらの受容体を遺伝子発現の操作あるいは遺伝子改変ニワトリを作製すれば、GHRH関連ペプチドの摂食における作用が解明できるであろう。

7.cGHRHと成長との関係

 これまでの研究により、cGHRHの末梢投与がニワトリの GH分泌を促すことが明らかにされている18)。この結果は、cGHRHの摂食抑制作用が GHを介している可能性をしている。そこで、ニワトリヒナにGHを腹腔内投与した後の摂食量の変化を調べたが、摂食量に有意な変化は見られなかった 21)。この結果から、cGHRHの作用には GHが関与していないと考えられた。cGHRH-LPには GH分泌作用はないことも、GHRH関連ペプチドの摂食抑制作用にはGHが無関係であることを支持している。 また、浸透圧ポンプを用いた cGHRH(1-47)の慢性的末梢投与を行い、数日間の摂食量の変化を調べたが各日の摂食量に変動は見られなかった(未発表)。これは、cGHRH(1-47)の摂食抑制作用はあくまで短期的なものであり、成長に影響をもたらすものではないことを示唆している。

8.ニワトリヒナの摂食調節におけるPrRP の役割

 PrRPはその名の通り当初は視床下部から下垂体

図4 異なる摂食条件における間脳 cGHRHおよびcGHRH-LP の mRNA発現量数値は平均値±標準誤差で示す(各群 n=7~8)。*自由摂食群と比較して有意差あり(P<0.05)。

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前葉のプロラクチンの分泌を促すホルモンとして単離された 24)。しかし、その後の研究により PrRP含有神経細胞終末が視床下部内側隆起外層に投射していないこと 25)、PrRPにプロラクチン分泌作用がほとんどないことから 26)、PrRPはプロラクチン分泌にはそれほど関わっていないと考えられている。ただし、哺乳類では PrRPが摂食抑制作用を有し 27)、そしてストレス反応に関与していることが明らかにされているので 28)、現在ではこれらの作用に注目が集まっている。 なお、哺乳類に PrRPを脳室内投与すると血中GH濃度が低下することが報告されている 29)。この作用はニワトリヒナに哺乳類由来の PrRPを脳室内投与した場合にも見られることから 30)、PrRPはGH分泌に影響を与える因子の一つである可能性がある。この哺乳類 PrRPをニワトリヒナに脳室内投与したところ、哺乳類とは正反対に摂食が有意に亢進することから 31)、PrRPもニワトリヒナ独自の作用を示す摂食調節因子である可能性が高いと考えられていた。しかし、ニワトリヒナに哺乳類 PrRPを脳室内投与すると血漿中プロラクチン濃度が低下することから 30)、この PrRPがニワトリヒナにおいて本当に PrRPとして作用しているのかという疑問が残っていた。 これらの研究とは別に、硬骨魚類では哺乳類 PrRP

と類似したアミノ酸配列を持つ C-RFaというペプチドが単離されている 32)。このペプチドは20個のアミノ酸からなり、哺乳類の PrRPの C末端側のアミノ酸配列と完全に一致していたこと、そしてプロラクチン分泌作用を示したことから 33)、硬骨魚類のPrRPと考えられていた。さらにこの C-RFaは硬骨魚類の GH分泌を抑制することも明らかにされている 33)。著者らの研究グループでは、ニワトリにおいてこの C-RFaと相同の遺伝子を単離し、その成熟ペプチドが脳に存在することを見出している 34)。さらに、C-RFaをニワトリヒナに脳室内投与したところ、摂食が有意に亢進することを報告している 34)。 ところが後のシンテニー解析により、この C-RFa

の遺伝子は PrRP遺伝子と相同ではなく共通の祖先遺伝子が遺伝子重複したことによって作られたことが明らかとなった 35)。すなわち、C-RFaは PrRPの

パラログにあたることになり、脊椎動物には PrRP

と C-RFaの両遺伝子が存在することになる。実際に様々な硬骨魚類や爬虫類、両生類、鳥類に両者の遺伝子が存在していることが明らかにされている 37)。これらの事実から、著者は C-RFaを PrRP2と改称することを提案している 37)。なお哺乳類では PrRP2

遺伝子が欠損していると考えられている 36)。これらの事実から、プロラクチン分泌作用および GH分泌抑制作用を有する祖先遺伝子が遺伝子重複によって PrRPと PrRP2になり、哺乳類では PrRP2が欠損して PrRPにそれらの作用が残ったと考えられる。硬骨魚類では PrRP2にプロラクチン分泌作用と GH

分泌抑制作用があるが、PrRP遺伝子が失われておらず、硬骨魚類の PrRPの生理作用については今後の研究が必要である。 以上のことから、著者らが調べてきた C-RFaはPrRP2であったことになる。現在、著者らはニワトリの PrRPを合成し、ニワトリヒナに脳室内投与すると PrRP2と同様に摂食が亢進することを見出している(未発表)。PrRP2に加えて PrRPの摂食に対する作用も哺乳類とは正反対であることになる。ニワトリにおける PrRPおよび PrRP2の生理作用を調べ、哺乳類をはじめとする脊椎動物のものと比較することで、脊椎動物の脳内摂食調節機構における PrRP

の役割とその進化が明らかになるかもしれない。

9.おわりに

 以上の様に、ニワトリヒナの脳内摂食調節機構に、GH分泌に関わる GHRHと PrRPが関わっている可能性を示した。さらにこれらのホルモンの摂食に対する作用がニワトリヒナと哺乳類で異なっていたことから、成長と摂食の関係が両者で異なっている可能性を示している。ただし、過去の研究により、ニワトリは幼雛と中雛以降では摂食調節機構に違いがあることも報告されている。例えば哺乳類由来のレプチンを3週齢までのニワトリヒナに脳室内投与しても摂食に影響を与えないが 5)、4週齢以降では摂食を抑制する 37)。ニワトリヒナだけではなく、中雛、大雛または成鶏を用いた研究を実施することで、ニワトリの脳内摂食調節機構における GH分泌に関わるホルモンの役割がより明らかになるだろう。

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 ニワトリヒナには祖先遺伝子の重複によって作られた2種類の GHRHおよび PrRPがあることを紹介したが、それらは硬骨魚類にも見出されている17,35)。したがって、この遺伝子重複は少なくとも硬骨魚類の誕生までには生じていたことを意味する。そのような長い歴史をもつペプチドであるにも関わらず、摂食と言う生命維持に必須の行動に対する作用がニワトリヒナのみ独自の作用を示すことは実に興味深い。本稿では GHRHおよび PrRPについて、外因的に投与した実験結果を中心に説明した。これらのペプチドの内因性の作用について明らかにすることができれば、ニワトリヒナの脳内摂食調節機構、ニワトリヒナにおける成長と摂食の関係、そして脊椎動物の摂食調節機構の進化を解明できるのかもしれない。

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