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インピーダンスアッテネータ Ayumi’s Lab. 2018 7 13 これま ,アナログディスク ディジタル うオーディオインターフェイス して,M- AUDIO FAST TRACK ULTRA ハイインピーダンス ってきましたが,ゲイン 囲が バランスが りづらく, した.また,ライ ミキサー けるこ しているよう ,レベル きず,しか っている RIAA イコライザ オーバーレベル っていしまいます. そこ レベル バランス えるアッテネータを しよう いたちまし た. うせ インピーダンス にしてみました. インピーダンス アッテネータ すが, 1. たせ 確に られる 2. いに影 するこ きる ります. ,インピーダンスをマッチングさせるメリット ありません. 1 設計 インピーダンスアッテネータ について インピーダンスアッテネータ フィル 1 しています. パッシブ アッテネータ ,アッテネータ インピーダンス いにくく,シー ルド けにくい 600 しました. くて T しました. それ スイッチ ステレオ 4 ります. 12 える 4 ロー タリースイッチが ってしまい,5,000 円以 してしまいます. 12 あれ 2 4 12 ロータリースイッチがあり,3,000 きる ,これを いるこ しました. アッテネータ 10 dB ステップ 60 dB きる 1 dB ステップ 10 dB きる バランスを 0.5 dB ステップ 2 dB きる 3 ステージ しました. てみる KENWOOD アッテネータ 0.1 dB ステップ,1 dB ステッ プに T っていますが,10 dB ステップに T り替えていますし,30 dB ステップ T 2 しています. T 60 dB よう する 0.6 ってしまい, るため えられます. 1 //ayumi.cava.jp/audio/att/att.html 1

定インピーダンスアッテネータの製作ayumi.cava.jp/audio/cz_att.pdf定インピーダンスアッテネータの製作 Ayumi’s Lab. 2018年7月13日 これまで,アナログディスクなどのディジタル化を行うオーディオインターフェイスとして,M-AUDIOのFAST

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  • 定インピーダンスアッテネータの製作

    Ayumi’s Lab.

    2018年 7月 13日

    これまで,アナログディスクなどのディジタル化を行うオーディオインターフェイスとして,M-AUDIOの FAST TRACK ULTRAのハイインピーダンス入力を使ってきましたが,ゲインの調整範囲が広いので,左右の微妙なバランスが取りづらく,設定の再現性も低いものでした.また,ライ

    ン入力はミキサーの出力を受けることを前提としているようで,レベルの調整ができず,しかも今

    使っている RIAAイコライザの出力ではオーバーレベルとなっていしまいます.そこで,微妙なレベル調整とバランス調整が行えるアッテネータを製作しようと思いたちまし

    た.どうせ作るのならと定インピーダンス型にしてみました.

    定インピーダンス型アッテネータの特徴ですが,

    1. 条件を満たせば,設計時の減衰量が正確に得られる

    2. 互いに影響することなく何段でも縦続接続ができる

    となります.高周波ではないので,インピーダンスをマッチングさせるメリットはありません.

    1 設計定インピーダンスアッテネータの設計法については,定インピーダンスアッテネータとフィル

    タ1で解説しています.

    パッシブのアッテネータとなるので,アッテネータのインピーダンスは,雑音を拾いにくく,シー

    ルド線の線間容量の影響を受けにくい 600Ωとしました.形式は,抵抗の本数が少なくて済む橋絡T型としました.それでもスイッチの回路数はステレオで 4回路になります.接点数が 12を超えると 4段のロー

    タリースイッチが必要となってしまい,5,000円以上してしまいます.接点数が 12であれば,2段4回路 12接点のロータリースイッチがあり,3,000円程度で購入できるので,これを用いることにしました.

    アッテネータの構成は,10 dBステップで 60 dBまで減衰できるもの,1 dBステップで 10 dBまで減衰できるもの,左右のバランスを 0.5 dBステップで 2 dBまで調整できるもの,の 3ステージ構成としました.

    あとで調べてみると,KENWOODなどの測定用アッテネータでは,0.1 dBステップ,1 dBステップには橋絡 T型を使っていますが,10 dBステップには T型の入出力を切り替えていますし,30 dBステップでは T型を 2段縦続接続しています.橋絡 T型で 60 dBの減衰を得ようとすると,0.6Ωの抵抗が必要になってしまい,精度が保証できなくなるためと考えられます.

    1//ayumi.cava.jp/audio/att/att.html

    1

    //ayumi.cava.jp/audio/att/att.html//ayumi.cava.jp/audio/att/att.html

  • レベル粗調整10 dBステップ∞, 60, . . . , 10, 0

    レベル微調整1 dBステップ∞, 10, . . . , 1, 0

    バランス0.5 dBステップ∞, 2, 1.5, . . . , 2,∞

    レベル粗調整10 dBステップ∞, 60, . . . , 10, 0

    レベル微調整1 dBステップ∞, 10, . . . , 1, 0

    バランス0.5 dBステップ∞, 2, 1.5, . . . , 2,∞

    L INL GND

    L OUTL GND

    R INR GND

    R OUTR GND

    図 1: ブロックダイアグラム

    抵抗は 1 %精度の金属皮膜抵抗を使い,計算値に近くなるよう,適宜直列,並列接続を行います.100Ω以下では,E24系列すべての値が店頭にあるわけではないので,組み合わせに注意が必要です.

    600Ω 600Ω

    · · ·

    R1

    R2· · ·

    IN OUT

    図 2: 各ステージの橋絡 T型アッテネータ

    各ステージの抵抗値は以下のとおりです.

    ステージ 1

    減衰量 (dB) R1 (理論値) R1 (実際) R2 (理論値) R2 (実際)10 1.2974k 1.3k 277.49 7.5+27020 5.4k 2.7k+2.7k 66.667 120//15030 18.374k 360+18k 19.593 36//4340 59.4k 3.3k+56k 6.0606 6.2//27050 189.14k 9.1k+180k 1.9034 2.2//1560 599.4k 300k+300k 0.6006 1//2.2//4.7

    ステージ 2

    減衰量 (dB) R1 (理論値) R1 (実際) R2 (理論値) R2 (実際)1 73.211 110//220 4.9173k 620+4.3k2 155.36 160//5.6k 2.3173k 820+1.5k3 247.52 7.5+240 1.4544k 2.2k//4.3k4 350.94 51+300 1.0258k 27+1k5 466.97 510//5.6k 770.93 91+6806 597.16 820//2.2k 602.86 43+5607 743.23 62+680 484.37 560//3.6k8 907.13 1.3k//3k 396.86 6.8+3909 1.091k 91+1k 329.96 330

    10 1.2974k 1.3k 277.49 7.5+270

    2

  • ステージ 3

    減衰量 (dB) R1 (理論値) R1 (実際) R2 (理論値) R2 (実際)0.5 35.552 36//3k 10.126k 130+10k1 73.211 110//220 4.9173k 620+4.3k

    1.5 113.10 120//2k 3.183k 180+3k2 155.36 160//5.6k 2.3173k 820+1.5k

    2 製作ロータリースイッチは,東京測定機材株式会社の RS500シリーズの RS500N2-4-12 P1520R (図

    3)で,神保商会で購入しました.門田無線でも同社の製品を扱っていますが,接点数のバリエー

    図 3: ロータリースイッチとコモンバー.

    ションが違います.クリックは軸に向かって上下にあるボールと板バネによって得られていますが,

    少し硬いため,片側の板バネとボールを外しています (図 4).

    図 4: ロータリースイッチのクリックを軽くする.

    ツマミは RITEL社風のデザインのもので,軸の横からネジで固定するのではなく,チャックを軸方向から締めるタイプのものです.造りがあまりよくないし,製造者名が入っていませんので,

    いわゆるジェネリック製品でしょうか.昔は鈴蘭堂で本物を扱っていましたが,今回は門田無線で

    購入しました.その他トモカプロショップにもいくつかあったようです.

    入出力はピンジャックとしました.以前は秋月電子通商で絶縁型が 1個 100円だったはずですが,今は 200円となっているので,トモカプロショップで 210円のものを購入しました.こちらは正面から見ると絶縁のプラスチックが白,赤,黄などに着色されており,秋月のものより視認性に優れ

    ています.

    3

  • ケースは,タカチ電機工業のUC17-5-12DD (ブロンズアルマイト色)にしました.このケースは,前面と後面のパネルが浮いており,ガタがあるため,振れ止め金具 UCF-26を使うべきですが,残念ながら奥行 120mmのケースには対応していません.また電気的にも接続されていないので,前後パネルと底板には菊ワッシャーと卵ラグをつけ,上板にはロータリースイッチの本体にはんだ付

    けして導通を確保しています.

    今回は試作的なもので,目盛りは白色の裏面糊付きのプラスチックシートにインクジェットプリ

    ンタで印刷したものをパネルに貼り付けました (図 5).

    図 5: アッテネータの外観.

    アッテネータ部分は R2 側をパネルに近い段に配し,R2 をすべて取り付けたところで,スイッチ

    を切り替えて抵抗値を測定し,間違って取り付けていないかを確認してから R1 の取り付けを行い

    ました.それでも微妙に違う抵抗 (2.2 kΩと 2 kΩを間違えた)を付けていた場所がありました.

    図 6: ロータリースイッチへの抵抗の取り付けの様子.

    すべての抵抗を付け終わったらパネルに取り付け,ステージ間を接続すれば完成となります.

    3 測定出力インピーダンス 600Ωのオーディオアナライザーから 1 Vを出力し,アッテネータの出力を

    600Ωでターミネートして出力電圧をマルチメータで測定しました.

    ステージ 1

    4

  • 図 7: ステージ間の配線.

    規定負荷

    減衰量 (dB) Vo.L (V) Vo.R (V) 減衰量.L (dB) 減衰量.R (dB) 誤差.L (dB) 誤差.R (dB)0 1.006 1.005 0.000 0.000 0.000 0.00010 318.5m 318.1m 9.990 9.992 −0.010 −0.00820 100.7m 100.6m 19.991 19.991 −0.009 −0.00930 31.83m 31.82m 29.995 29.989 −0.005 −0.01140 10.09m 10.06m 39.974 39.991 −0.026 −0.00950 3.22m 3.22m 49.895 49.886 −0.105 −0.11460 1.03m 1.03m 59.795 59.787 −0.205 −0.213

    負荷オープン

    減衰量 (dB) Vo.L (V) Vo.R (V) 減衰量.L (dB) 減衰量.R (dB) 誤差.L (dB) 誤差.R (dB)0 2.018 2.016 0.000 0.000 0.000 0.00010 638m 637m 10.002 10.007 0.002 0.00720 201.9m 201.5m 19.996 20.004 −0.004 0.00430 63.8m 63.8m 30.002 29.993 0.002 −0.00740 20.2m 20.15m 39.991 40.004 −0.009 0.00450 6.41m 6.41m 49.961 49.953 −0.039 −0.04760 2.04m 2.04m 59.906 59.897 −0.094 −0.103

    50 dBで減衰量が設計値より小さくなっているのは,2本の抵抗で合成しているためで,抵抗を 3本 (5.1//5.1//7.5)使えば精度はよりよくなります.60 dBではリード線の抵抗の影響を受けているという可能性もありますが,マルチメーターの精度による可能性もあります.それ以外では,誤差の

    最大値は 0.03 dB以下であり,十分な精度があると言えます.

    ステージ 2

    規定負荷

    5

  • 減衰量 (dB) Vo.L (V) Vo.R (V) 減衰量.L (dB) 減衰量.R (dB) 誤差.L (dB) 誤差.R (dB)0 1.006 1.005 0.000 0.000 0.000 0.0001 898m 897m 0.986 0.987 −0.014 −0.0132 800m 799m 1.990 1.992 −0.010 −0.0083 714m 713m 2.978 2.982 −0.022 −0.0184 636m 636m 3.983 3.974 −0.017 −0.0265 568m 567m 4.965 4.972 −0.035 −0.0286 505.4m 504.5m 5.979 5.986 −0.021 −0.0147 450.7m 450.2m 6.974 6.975 −0.026 −0.0258 401.5m 401m 7.978 7.980 −0.022 −0.0209 357.8m 357.5m 8.979 8.978 −0.021 −0.02210 318.8m 318.1m 9.982 9.992 −0.018 −0.008

    負荷オープン

    減衰量 (dB) Vo.L (V) Vo.R (V) 減衰量.L (dB) 減衰量.R (dB) 誤差.L (dB) 誤差.R (dB)0 2.018 2.016 0.000 0.000 0.000 0.0001 1.798 1.796 1.003 1.004 0.003 0.0042 1.602 1.6 2.005 2.007 0.005 0.0073 1.427 1.425 3.010 3.014 0.010 0.0144 1.27 1.269 4.022 4.021 0.022 0.0215 1.134 1.132 5.006 5.013 0.006 0.0136 1.01 1.008 6.012 6.021 0.012 0.0217 901m 900m 7.004 7.005 0.004 0.0058 802m 801m 8.015 8.017 0.015 0.0179 716m 715m 9.000 9.004 0.000 0.00410 638m 636m 10.002 10.021 0.002 0.021

    誤差の最大値は 0.04 dB以下であり,十分な精度があると言えます.

    ステージ 3

    規定負荷

    減衰量 (dB) Vo.L (V) Vo.R (V) 減衰量.L (dB) 減衰量.R (dB) 誤差.L (dB) 誤差.R (dB)0.0 1.006 1.005 0.000 0.000 0.000 0.0000.5 951m 949m 0.488 0.498 −0.012 −0.0021.0 897m 896m 0.996 0.997 −0.004 −0.0031.5 847m 845m 1.494 1.506 −0.006 0.0062.0 800m 798m 1.990 2.003 −0.010 0.003

    負荷オープン

    減衰量 (dB) Vo.L (V) Vo.R (V) 減衰量.L (dB) 減衰量.R (dB) 誤差.L (dB) 誤差.R (dB)0.0 2.018 2.016 0.000 0.000 0.000 0.0000.5 1.905 1.903 0.501 0.501 0.001 0.0011.0 1.798 1.796 1.003 1.004 0.003 0.0041.5 1.696 1.695 1.510 1.506 0.010 0.0062.0 1.601 1.6 2.011 2.007 0.011 0.007

    誤差の最大値は 0.01 dB強であり,非常によい精度が得られています.以上より,E24系列の抵抗を 2本合成して使用することで,橋絡 T型で 40 dBまでのアッテネー

    タを高精度で実現できることがわかりました.

    6

  • 0 10 20 30 40 50 60

    −0.

    20−

    0.15

    −0.

    10−

    0.05

    0.00

    Attenuation (dB)

    Err

    or (

    dB)

    L terminatedR terminatedL openR open

    図 8: 製作したアッテネータの誤差.

    アンプに組み込んで音量調節に使用する場合は,ステージ 2を 1 dBステップで 20 dBまで減衰できるようにすれば,とても使いやすいものになると思います.普段の音量調節はステージ 2で行い,ミューティングなどの大きな変化はステージ 1で行います.アッテネータの接続順は,減衰量の少ない順,すなわちステージ 3, 2, 1の順にしたほうが,S/Nが多少良くなると思います.今の接続でも,出力側から入力すれば電気的には同じになりますが,

    部品の配置の影響が多少あるかもしれません.

    オーディオ用であれば,600Ωにこだわる必要はなく,10 kΩ程度のほうがソースの負荷が軽くなるし,低抵抗も不要になるので作りやすいと思います.

    A インピーダンスがミスマッチの場合の定インピーダンスアッテネータの動作

    定インピーダンスアッテネータは,信号源抵抗および負荷抵抗が設計値 (今回の場合は 600Ω)であることを前提としていますが,このような前提条件が成り立たない場合にどのように動作するの

    か,明確に書かれた文献はありません.この節では,インピーダンスがマッチングしていない場合

    の動作を検討します.

    定インピーダンスアッテネータとフィルタ2では,信号源抵抗 RS と負荷抵抗 RL が共に Rであ

    ると仮定してきましたが,この制約を外します.また計算を簡単にするため,橋絡 T型ではなく T型で検討します.回路図は図 9となります.これより,

    Vo =RL

    R1 + RLV2 (1)

    V2 =R2//(R1 + RL)

    R1 + R2//(R1 + RL)V1

    2//ayumi.cava.jp/audio/att/att.html

    7

    //ayumi.cava.jp/audio/att/att.html

  • RS R1 R1

    R2 RL

    V1 V2

    VoVS

    図 9: T型アッテネータ

    =

    R2(R1+RL)R1+R2+RL

    R1 +R2(R1+RL)R1+R2+RL

    V1 =R2(R1 + RL)

    R1(R1 + R2 + RL) + R2(R1 + RL)V1 (2)

    V1 =R1 + {R2//(R1 + RL)}

    RS + R1 + {R2//(R1 + RL)}VS

    =R1 +

    R2(R1+RL)R1+R2+RL

    RS + R1 +R2(R1+RL)R1+R2+RL

    VS =R1(R1 + R2 + RL) + R2(R1 + RL)

    (RS + R1)(R1 + R2 + RL) + R2(R1 + RL)VS (3)

    V2 =R2(R1 + RL)

    (RS + R1)(R1 + R2 + RL) + R2(R1 + RL)VS (4)

    Vo =R2RL

    (RS + R1)(R1 + R2 + RL) + R2(R1 + RL)VS (5)

    点 1から出力までの減衰率 (通常の減衰率)を K1,電圧源の出力から出力までの減衰率を KS とします.すなわち,

    K1 =V1Vo=

    R1(R1 + R2 + RL) + R2(R1 + RL)R2RL

    =R21 + R1R2 + R1RL + R1R2 + R2RL

    R2RL

    =R21 + 2R1R2 + R1RL + R2RL

    R2RL

    =R21

    R2RL+ 2

    R1RL+

    R1R2+ 1 (6)

    KS =VSVo=

    (RS + R1)(R1 + R2 + RL) + R2(R1 + RL)R2RL

    = K1 +RS (R1 + R2 + RL)

    R2RL

    = K1 +RSRL

    (R1R2+ 1)+

    RSR2

    (7)

    ここで,R1, R2 は,減衰率が K である (設計値)として求めると,

    R1 =K − 1K + 1

    R (8)

    R2 =2K

    K2 − 1R (9)

    であるので,これを式 (6), (7)に代入すると,

    K1 =(K − 1)2(K + 1)2

    R2 · K2 − 1

    2KRRL+ 2

    K − 1K + 1

    · RRL+

    K − 1K + 1

    · K2 − 12K

    + 1

    =(K − 1)3

    2K(K + 1)· R

    RL+ 2

    K − 1K + 1

    · RRL+

    (K − 1)22K

    + 1

    =K3 − 3K2 + 3K − 1 + 4K2 − 4K

    2K(K + 1)· R

    RL+

    K2 + 12K

    8

  • =K2 − 1

    2K· R

    RL+

    K2 + 12K

    (10)

    KS = K1 +RSRL

    (K − 1K + 1

    · K2 − 12K

    + 1)+

    K2 − 12K

    · RSR

    = K1 +RSRL

    { (K − 1)22K

    + 1}+

    K2 − 12K

    · RSR

    = K1 +K2 + 1

    2K· RS

    RL+

    K2 − 12K

    · RSR

    (11)

    RS = RL = Rのとき

    K1 =K2 − 1

    2K+

    K2 + 12K

    =2K2

    2K= K (12)

    KS = K1 +K2 + 1

    2K+

    K2 − 12K

    = K +2K2

    2K= 2K (13)

    となり,K1 は設計時の値 K となり,信号源の出力の半分の 1/K が負荷に現れます.

    RL = Rのとき

    K1 = K (14)

    KS = K1 +K2 + 1

    2K· RS

    R+

    K2 − 12K

    · RSR= K +

    2K2

    2K· RS

    R= K +

    RSR

    K

    =

    (1 +

    RSR

    )K =

    R + RSR

    K (15)

    となり,信号源の出力を R/(R + RS )倍したものに対して K の減衰率が得られます.この場合,RSが小さいほど出力が大きくなり,RS ≪ Rであれば,減衰がないとみなして構いません.

    RS = Rのとき

    K1 =K2 − 1

    2K· R

    RL+

    K2 + 12K

    (16)

    KS = K1 +K2 + 1

    2K· R

    RL+

    K2 − 12K

    =K2 − 1

    2K· R

    RL+

    K2 + 12K

    +K2 + 1

    2K· R

    RL+

    K2 − 12K

    =RRL

    K + K =R + RL

    RLK (17)

    となり,信号源の出力を RL/(R+RL)倍したものに対して K の減衰率が得られます.この場合,RLが大きいほど出力が大きくなり,RL ≫ Rであれば,減衰がないとみなして構いません.

    RL = Rとして減衰量を 0 dBから 20 dBまで 2 dBステップで変化させ,RS を変化させた場合のK1および K の変化を図 10に示します.赤い線,すなわちアッテネータの入力から出力までの減衰量は,RS が変化しても一定の値 (設計値)を取ります.電圧源からの減衰量である青い線も一定間隔であり,アッテネータとして正しく動作することがわかります.信号源インピーダンスが設計値

    であれば,すなわち RS /R = 1であれば,信号源からの減衰量は設計値より 6 dB大きくなります.RS = Rとして減衰量を 0 dBから 20 dBまで 2 dBステップで変化させ,RL を変化させた場合の

    K1 および K の変化を図 11に示します.赤い線,すなわちアッテネータの入力から出力までの減衰量は,間隔が一定ではなく,減衰量が等間隔で変化しなくなってしまいます.RL/Rが大きいと,

    9

  • 010

    2030

    40

    RS R

    Atte

    nuat

    ion

    (dB

    )

    0.01 0.1 1 10 100

    010

    2030

    40

    K1KS

    図 10: RL = Rとした場合の減衰量.

    010

    2030

    40

    RL R

    Atte

    nuat

    ion

    (dB

    )

    0.01 0.1 1 10 100

    010

    2030

    40

    K1KS

    図 11: RS = Rとした場合の減衰量.

    減衰量が小さいときに設計値よりも減衰量が小さくなってしまい,逆に RL/Rが小さいと,減衰量

    が小さいときに設計値よりも減衰量が大きくなってしまいます.減衰量が大きい場合は相対的に正

    しく動作するようです.一方,電圧源からの減衰量である青い線は一定間隔であり,アッテネータ

    として正しく動作することがわかります.

    ロー出しハイ受けの場合の例を,図 12に示します.ここでは,R = 600Ω, RS = 100Ωとしています.RL = 10 kΩとすると,RL/R = 16.67となります.青い線の間隔が下の方で詰まっているので,減衰量が小さいとほとんど減衰しなくなってしまいます.赤い線は信号源抵抗と関係ないので,

    図 11と同じです.以上のように,信号源抵抗 RS または負荷抵抗 RL のいずれかが設計値であれば,アッテネータ

    として正しく動作します.

    一般に,最近のオペアンプ出力のオーディオ機器では出力インピーダンスが 100Ω程度ですが,600Ω負荷に耐えられるかは微妙です.仮に出力インピーダンスが 100Ωであるとして,600Ωを負荷としたアッテネータを駆動すると,高インピーダンス負荷の場合と比べて出力が 6/7となります.600Ωの負荷を駆動できる (NE5532など)であれば,この方法で使えます.一般に,図 13のよ

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    2030

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    RL R

    Atte

    nuat

    ion

    (dB

    )

    0.01 0.1 1 10 100

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    2030

    40

    K1KS

    図 12: RS = 100Ωとした場合の減衰量.

    うに 620Ω程度を次段の機器の入力端子と並列に接続します.

    RS =100Ω アッテネータ

    Z = 600Ω RL =620Ω

    Zin = 10 kΩ.

    図 13: 負荷抵抗を設計値に一致させる.

    信号源インピーダンスを 600Ωに変更できる場合は,アッテネータに接続する機器のインピーダンスは高くてもよく,その場合,オペアンプの負荷は最悪で 1.2 kΩになりますので,先ほどの場合よりも負荷が軽く,またレベルの減衰も少なくなります.図 14のように 510Ω程度を前段の機器の出力端子と直列に接続し,信号源の出力インピーダンスを適切に調整できるのであれば,こち

    らの方法のほうが良いのではないかと思います.

    RS =100Ω

    R′S =510Ω アッテネータ

    Z = 600ΩZin = 10 kΩ

    .

    図 14: 出力インピーダンスを設計値に一致させる.

    11

    1 設計2 製作3 測定A インピーダンスがミスマッチの場合の定インピーダンスアッテネータの動作