21
ポリブチレンテレフタレート樹脂

ポリブチレンテレフタレート樹脂5 GF含量と物性の関係 図3-8 引張強さのGF含量依存性 図3-9 DTULのGF含量依存性 図3-10 衝撃強さののGF含量依存性

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ポリブチレンテレフタレート樹脂

1

ノバデュラン®(NOVADURAN®)は、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社のポリブチレンテレフ

タレート樹脂(PBT樹脂)製品の商品名です。

PBT樹脂は成形性、電気特性、耐熱性、耐薬品性、機械特性等に優れ、エンジニアリングプラスチック

スの中でもバランスの取れた特徴を有してます。

またPBT樹脂は強化充填剤の配合により、機械特性、熱的特性の向上が容易な樹脂であり、ノバデュ

ラン®は、その特徴を活かし自動車分野、電気電子分野等で幅広くご採用頂いております。

ノバデュラン®には、下表に示す標準グレードの他、難燃性、耐加水分解性、低反り性、良外観、高衝

撃性、低ガス性、高耐電圧、柔軟性等、押出成形用グレード等用途に応じた特性を付与した種々グレー

ドを揃えております。

一 般

難 燃

非強化

5010R5010CR

5010N

強 化

5010G5010F

5010GN15010GN25010GN6

1 は じ め に

2

ノバデュランは、他のプラスチックや金属と比較して、次のような特徴をもっています。

(1)機械的特性が優れています。

(2)耐熱性が優れています。

(3)結晶化速度が速く、流動性も良好で、成形性に優れています。

(4)吸水率が非常に小さく、寸法安定性が良好です。

(5)表面光沢に優れ、着色性も良好です。

(6)耐油性、耐溶剤性に優れ、ほとんどの薬品に侵されません。

(7)電気的性質に優れています。

(8)摩擦・摩耗特性に優れています。

(9)優れた難燃グレードの供給が可能です。

2 「 ノ バ デ ュ ラ ン 」 の 特 徴

3

■物理的性質

プラスチックはその使用状況が様々であり、その環境下での物性の変化があります。

ここでは、ノバデュランの物性の温度依存性、耐熱老化性、耐候性等について説明します。

3 「 ノ バ デ ュ ラ ン 」 の 各 種 物 性

図3-1 吸水率(23℃水中:100mm角×3mmt) 図3-2PVT特性(5010R5の圧力・比容積・温度の関係:等温測定)

図3-3 5010R5の溶融粘度特性

4

■機械的性質の温度依存性

図3-4 引張強さの温度依存性 図3-5 引張弾性率の温度依存性 図3-6 曲げ強さの温度依存性 図3-7 曲げ弾性率の温度依存性

5

■GF含量と物性の関係

図3-8 引張強さのGF含量依存性 図3-9 DTULのGF含量依存性 図3-10 衝撃強さののGF含量依存性

PBT樹脂は耐熱性に優れていますが、樹脂をガラス繊維(GF)で強化することによって、これをさらに

改善することができます。下図は、ノバデュランのGF強化の効果を示したものです。 一般グレードのGF

含有量と引張強さ、DTUL、および衝撃強さの関係を、図3-8、3-9、および3-10に示します。

6

■耐熱老化性

5010G30および5010R5の120℃および140℃における引張強さの耐熱老化性試験の結果をそれぞれ

図3-11、3-12に示します。これらの図が示すように、ノバデュランは耐熱性に優れています。

また、5010R5、5010G30の引張強さ50%低下時間のアーレニウスプロットを図3-13に示します。

図3-13 耐熱老化性図3-12 140℃における耐熱老化性図3-11 120℃における耐熱老化性

7

■電気的性質

ノバデュランは、電気的性質に優れています。5010R5、5010N6、5010G30、5010GN1-30AM2の電気

的性質の温度依存性を図3-14、3-15に示します。5010R5、5010G30、5010GN1-30AM2の誘電率、誘電

正接の周波数依存性を図3-16、3-17に示します。

図3-16

誘電率の周波数依存性

図3-15 体積抵抗率の温度依存性図3-14 耐電圧の温度依存性

図3-17

誘電正接の周波数依存性

8

■耐候性

プラスチックの耐候性は多くの用途で重要になり

ます。耐候性の試験には、加速試験ができる試験

機器を使う方法と、成形品を屋外に曝露する方法

の二つの方法があります。

サンシャインウェザロメーターおよび屋外曝露(北

九州市)により試験した、5010R5、5010G30、

5010GN1-30AM2の耐候性を図3-18、3-19に示し

ます。これによると、非強化HBグレードの5010R5

は、引張強さの低下は少ないですが、伸びが急速

に低下していることが分かります。また、GF強化の

グレードの5010G30および5010GN1-30AM2は、引

張強さの低下は非強化HBグレードほど大きくなく、

伸びの低下も少ないことが分かります。

図3-18 サンシャインウェザロメーターによる耐候性試験

図3-19 屋外曝露による耐候性試験

9

■耐薬品性

耐薬品性は、多くの用途で重要な要因

となります。ノバデュランの代表的グレー

ド5010R5、5010G30、5010GN1-30AM2

の、アルカリおよび酸に対する耐薬品性

を表3-1に示します。

PBTのようなポリエステルは、その化

学的構造上アルカリ溶液にはあまり耐

性がありません。当社の試験結果でも、

水酸化ナトリウム(NaOH)10%水溶液で

引張強さの低下が 大になっています。

ガラス繊維強化グレードでは、この強度

低下はより顕著でした。

表3-1 耐薬品性

グレード薬品名

(水溶液)

温度

(℃)

引張強さ保持率(%)

7日後 30日後

重量増加(wt %)

7日後 30日後

5% NH3

10% NaOH

10% HCI

36% H2SO4

36% H2SO4

5% NH3

10% NaOH

10% HCI

36% H2SO4

36% H2SO4

5% NH3

10% NaOH

10% HCI

36% H2SO4

36% H2SO4

23

23

23

23

70

23

23

23

23

70

23

23

23

23

70

97

94

94

99

91

97

34

95

100

92

96

35

94

100

92

95

93

96

99

92

95

2

89

97

84

94

2

88

96

84

0.1

0.2

0.2

0.1

0.4

0.1

1.6

0.1

0.1

0.6

0.1

1.8

0.2

0.1

0.6

0.2

0.2

0.3

0.1

0.3

0.2

0.4

0.1

0.1

1.1

0.2

0.5

0.2

0.1

0.1

5010R5

5010G30

5010GN1-

30AM2

10

表3-2 耐油性

グレード オイル温度

(℃)

引張強さ保持率(%)

7日後 30日後

重量増加(wt %)

7日後 30日後

232370237023702370232370237023702370232370237023702370

10010010010092

100100100100100100100100100100100100100100100100100100100100100100

10010010010087

100100100100100100100100100100100100100100100100100100100100100100

0.00.00.30.00.30.10.00.00.20.10.00.30.00.20.10.00.00.10.10.00.30.00.20.10.00.10.3

0.00.00.50.00.60.10.00.00.20.10.10.50.00.40.00.00.00.20.10.10.50.00.40.00.00.20.4

5010R5

5010G30

5010GN1-

30AM2

ガソリン

トランスミッションフルイド

ブレーキフルイド

シリコンオイル(東レSH200)

水溶性切削油(共石ソルカットW11)

ガソリン

トランスミッションフルイド

ブレーキフルイド

シリコンオイル(東レSH200)

水溶性切削油(共石ソルカットW11)

ガソリン

トランスミッションフルイド

ブレーキフルイド

シリコンオイル(東レSH200)

水溶性切削油(共石ソルカットW11)

表3-2は、ノバデュラン5010R5、

5010G30、5010GN1-30AM2の耐油性を

示したものです。5010R5で70℃のブレー

キフルイドで引張強さの若干の低下が

見られますが、それ以外は優れた耐油

性を持っています。

11

■原料樹脂の乾燥

この章では、ノバデュランの 適射出成形条件について説明します。

4 「 ノ バ デ ュ ラ ン 」 の 成 形

ノバデュランは、原料樹脂中に少量の水分があっても

射出成形で機械的性質が低下します。使用前には原料

樹脂中の水分を除去することが重要です。一般的な乾

燥条件は以下のとおりです。

熱風乾燥140℃で…4~6時間

120℃で…5~8時間

図4-1 5010R5のペレット乾燥速度

図4-1は、各種乾燥速度の影響を示したものです。

乾燥温度は140℃を超えないようご注意下さい。

また乾燥温度100℃未満では乾燥効果は期待できません。

12

■成形性および機械的性質への水分の影響

ノバデュラン成形品の機械的性質に対する、

原料樹脂中の水分の影響を図4-2に示します。

原料樹脂ペレットの水分が0.03%を超えると、

成形品の表面の異常および/または機械的性

質の低下が起こることがあります。原料樹脂を

前記の手順で完全に乾燥させることが極めて

重要です。

完全乾燥した原料樹脂は容易に吸湿します。

図4-3は5010R5の吸湿性を示したものです。室

内に30分以上放置した原料樹脂の成形は避け

て下さい。

図4-2 水分と成形性および機械的性質 図4-3 5010R5の吸湿性

●ノバデュランの成形は、スクリューインラインタイプの射出成形機の使用が一般的です。

●1回の射出容量が 大射出容量の30~70%となる射出成形機の使用をお勧めします。

●ノズルについてはオープンノズルを用い、ノズル温度をコントロールすることでほとんど問題ありません。ただし、非強化低粘度グレードでは

鼻たれを起こしますので、シャットオフノズルを用いた方がよい場合があります。

●強化タイプ(ガラス繊維または無機フイラー)を成形する場合には、スクリュー及びシリンダーの摩耗に対する配慮が必要となります。

■成形機について

13

代表的な成形条件を以下に示します。

■成形条件

グレード

●ノバデュランの 適樹脂温度は240~265℃です。樹脂温度が275℃を超えると、樹脂の成形機内滞留時間が比較的

短くても、機械的性質の低下や焼けが起こることがあります。

●金型温度は、通常60~100℃が適当です。成形品の表面状態や寸法によって、金型温度を調節する必要があります。

強化樹脂を成形する場合、あるいは成形品の使用環境温度が高くなる場合には、金型温度は高い方が良好です。

●成形操作を中断する場合には、シリンダー内に残っている樹脂をすべてパージすることが重要です。シリンダー内の

樹脂のパージは、他のエンジニアリングプラスチックと同様にPE、PP、PSなどを使用します。

シリンダー温度(後部)

シリンダー温度(中央部)

シリンダー温度(前部)

ノズル温度

金型温度

射出圧力

スクリュー回転数

射出速度

Mpa

Rpm

5010R

235

240

250

245

60~80

20~150

80~150

中速~高速

5010F5010G

240

245

255

255

80~100

20~150

80~120

中速~高速

5010N

235

240

250

245

60~80

20~150

80~120

中速~高速

5010GN

235

240

255

250

80~100

20~150

80~150

中速~高速

14

●金型の表面仕上げ

強化樹脂の成形では、金型を焼き入れするか表面をメッキ加工して十分な耐久性を持たせる必要が

あります。

●ゲート

サイドゲートまたはピンゲートのご使用をお勧めします。ゲート寸法の目安を下記に示します。

■金型について

外 形

●ガス抜き

成形品の焼けを防止するためにガス抜きを設けます。

ガス抜きには、厚さ0.02mm×幅1~5mm幅をお勧めします。

成形品厚さ(mm)

ゲート寸法(mm)

サイドゲート

1

3

5

0.5×1.0

1.5~2.0×2.5~3.0

2.5~3.5×3.5~5.0

ピンゲート<3

3~5

0.8~1.2( )

1.0~2.0( )

15

ノバデュランの流動性を図4-4、4-5に示します。

■流動性

図4-4 流動長の厚み依存性 図4-5 流動長の射出圧力依存性

ノバデュランの熱安定性を図4-6に示します。図4-6で

分かるように、樹脂を通常の成形温度で成形機で1時間

保持しても、樹脂の固有粘度[η]の低下は約10%で非常

に安定しています。

しかし270℃では30分の滞留時間でも固有粘度[η]は

約20%低下し、高温での劣化が速いことを示しています。

■溶融時の熱安定性

図4-6 5010、5008の250℃および270℃における熱安定性

16

■成形収縮率

図4-75010R5の成形収縮率の金型温度依存性

図4-85010G30の成形収縮率の金型温度依存性

図4-9 5010G30の後収縮(流動方向) 図4-10 5010G30の後収縮(直角方向)

■後収縮

17

ノバデュランには多くの優れた性質があり、色々な用途に広く使用されています。

現状および将来考えられる用途の例を以下に示します。

5 「 ノ バ デ ュ ラ ン 」 の 用 途

電気機器

および

電子機器関係

コネクター、スイッチ、絶縁材、端子、コイルボビン、蛍光灯キャップ、電話機の押しボタン、TVフライバックトラン

ス部品、ヘアドライヤーのノズル、ヘアカーラーの櫛、マイクロスイッチ部品、マイクロモーターのハウジング、端

子群、タイマー部品、シェーバー回路、および空調機の空気出口、リレー部品。

自動車関係

電気コネクター、ディストリビューター部品(ボディ、キャップ、ローター)、ワイパーギアケース、ウィンドウウォシャ

ーノズル、ドアハンドル、カップラー、点火装置部品、ギア、ABS装置ハウジング、ドアミラー部品、コンソールボッ

クス、エアバッグのGセンサハウジング、排気ガス処理装置のバルブ、フロントスカート、エアー入口ルーバー。

その他の

工業関係

事務用機器の冷却ファンおよびファンハウジング、ファクシミリおよび写真複写機の紙ガイド、光ファイバーケー

ブルの鞘、シーケンサーハウジング、キーボードのキー、腕時計および時計の部品、カメラ部品、およびパイプ継

ぎ手。

その他の用途 繊維用途(パンティーストッキング、水着)、フィルム、およびポリマーアロイのブレンド材。

18

5010R5

表5-1 UL規格認定値

燃焼性

UL94電気的

性質 衝撃あり 衝撃なし

HWI

(PLC)

HAI

( PLC )

HVTR

( PLC )

D495

( PLC )

CTI

(PLC)

厚さ

(mm)

94HB

94HB

94HB

94HB

94HB

94HB

94HB

94HB

94V-0

94V-0

94V-0

130

130

130

130

140

140

140

140

130

130

130

75

120

120

120

120

120

120

120

120

120

130

140

140

140

140

140

140

140

140

130

140

140

4

4

3

1

2

1

1

0

3

2

1

1

0

0

0

3

0

0

0

0

0

0

0

0

0

1

1

1

1

2

4

5

5

6

0

1

3

0.83

1.5

3.0

6.0

0.81

1.5

3.0

6.1

0.71

1.59

3.1

RTI(℃)

機械的性質

5010G30

5010GN1-30AM2

19

量 SI SI以外の単位

N

1

1×10-5

9.80665

dyn

1×105

1

9.80665×105

kgf

1.01972×10-1

1.01972×10-6

1

Pa

1

9.80665×104

1.01325×105

1.33322×101

kgf/cm2

1.01972×10-5

1

1.03323

1.35951×10-3

atm

9.86923×10-6

9.67841×10-1

1

1.35951×10-3

圧力

atm

9.86923×10-6

9.67841×10-1

1

1.35951×10-3

kW・h

2.77778×10-7

1

2.7778×10-14

2.72407×10-6

1.16222×10-6

erg

1×107

3.600×1013

1

9.80655×107

4.18605×107

kgf・m

1.01972×10-1

3.67098×105

1.01972×10-8

1

4.26649×10-1

cal

2.38889×10-4

8.60421×105

2.38889×10-11

2.34385×10-6

1

Pa or N/m2

1

9.80665×106

9.80665×104

kgf/mm2

1.01972×10-7

1

1×10-2

kgf/cm2

1.01972×10-5

1×102

1

応力

J

1

3.600×106

1×10-7

9.80655

4.18605

エネルギー

仕事

熱量

量 SI SI以外の単位

W

1

9.80665

1.16279

kgf・m/s

1.01972×10-1

1

1.18572×10-1

kcal/h

8.5985×10-1

8.43371

1

仕事率

工率

動力

Pa・s

1

1×10-3

1×10-4

cP

1×103

1

1×102

P

1×10

1×10-2

1

粘度

(粘度係数)

m2/s

1

1×10-6

1×10-4

cP

1×106

1

1×102

P

1×104

1×10-2

1

動粘度

(粘度係数)

W/(m・K)

1

1.16279

4.18604×103

cP

8.600×10-1

1

3.600×103

P

2.3889×10-4

2.7778×10-4

1

熱伝導率

kJ/(kg・K)

1

4.18605

kcal/(kg・℃)

2.38889×10-1

1

比熱

主 要 単 位 換 算 表

20

ご 注 意

●本資料に記載されているデータは、当該試験方法に準じた当社所定の試験法による測定値の代表例です。

●本資料に記載の用途例は、当社製品の当該用途への適用結果を保証するものではありません。

●本資料に記載の用途や応用にかかわる工業所有権や使用条件などについては貴社にてご検討下さい。

●当社製品の取り扱い(輸送、保管、成形、廃棄など)に当たっては、使用される材料、グレードの技術資料や安全デ

ータシート(SDS)をご参照下さい。特に、食品容器包装、医療部品、安全器具、小児用玩具等の用途へのご使用の

際は、別途ご相談下さい。

●日本国内においては、当社製品の各グレード着色品の場合、適用法令である労働安全衛生法第57条の2に基づく

施行令18条の2中の別表9にある名称等を通知すべき化学物質を含有している場合があります。詳細は、お問い

合わせ下さい。

●当社製品の輸出及び当社製品を組み込んだ製品の輸出に当たりましては、外国為替及び外国貿易法等の関係法

令の遵守をお願い致します。

●各国の化学物質管理制度により、当社製品に使用している化学物質が規制を受け、別途申請が必要な場合や輸

出入ができない場合があります。お客様が当社製品の輸出者又は輸入者となる場合は、該当国での規制適合状況

をお問い合わせ下さい。

*本資料の内容は、改訂のため予告なく変更することがありますのでご了承下さい。