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組織の経済学 2015125

20150125 第1回組織の経済学勉強会

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Page 1: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

組織の経済学 2015年1月25日

Page 2: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:自己紹介

グループでそれぞれ自己紹介をお願いします

お名前

お仕事

参加の動機 等

2

Page 3: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

古い経済学

企業=利潤最大化を行う経済主体であり、インプットからアウトプットへの変換を行う

どのように変換するのかは説明されない(ブラックボックス)

3

インプット アウトプット企業=ブラックボックス

Page 4: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

4

組織の経済学

ビジネスにおける組織デザインや慣行の合理性を経済学の観点から検討

ケーススタディ中心の経営学と補完関係

Page 5: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

5

市場 組織

境界

オリバー・ウィリアムソン→2009年 ノーベル経済学賞

Page 6: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

(過去の)日本的経営にも経済合理性があった?

終身雇用・年功序列

株式の持ち合い、メインバンク

自動車メーカーが部品メーカーをケイレツ化

経済合理性がなければ継続しない→キャッチアップ型の経済成長を行っている時期の環境には適応していたが・・・

6

Page 7: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

具体例①:鉄鋼会社のM&A

鉄鋼業界第2位のA社が同業他社(製造方法や製品が同じ)で第4位のB社を買収

B社単独(スタンドアローン)の株式価値は100億円だが、A社はプレミアムを付けて120億円で買収した

なぜか?

7

Page 8: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

規模の経済

生産規模が大きい程、単位当りの固定費の負担が低くなる

同業他社を買収(水平統合)する理由

8

Page 9: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

具体例②:電機メーカーのM&A

総合電機メーカーのX社はY社を買収することにより、X社としては新規事業であるリチウム電池市場に参入

Y社単独(スタンドアローン)の株式価値は100億円だが、X社はプレミアムを付けて120億円で買収した

なぜか?

9

Page 10: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

範囲の経済

共通の経営インフラ(購買、営業等)を活用して、異なる製品・サービスを一緒に生産・提供することで、単品しか生産・提供しない場合よりもコストが下がる

企業が多角化する理由

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Page 11: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

具体例③:繊維メーカーのM&A

飛行機メーカーのα社は、機体を作るために炭素繊維を購入しているサプライヤーのβ社を買収

β社単独(スタンドアローン)の株式価値は100億円だが、α社はプレミアムを付けて120億円で買収した

なぜか?(グループディスカッション)

11

Page 12: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

不完備契約、ホールドアップ問題

複雑な取引において、お互いの義務を網羅的に定義する契約は不可能

• α社:生産能力を拡大するため、β社に設備投資をして欲しい

• β社:α社専用設備(関係特殊的投資)への投資はしたくない→α社との取引が終了すると回収できないから(埋没費用)

過少投資を解消するために買収(垂直統合)

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Page 13: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

応用例

垂直統合型 vs 水平分業型

(日本の総合電機メーカー vs アップル)

アウトソーシング

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Page 14: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

ゲーム理論

寡占市場等、少数の参加者で構成される市場をモデル化

相手の行動を考慮にいれて、自分の行動を決定

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Page 15: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

じゃんけん

「グー」と「パー」しか出せない場合、あなたは何を出しますか?

15

Page 16: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

じゃんけん

「チョキ」は手の動きが複雑になるので、最初の手としては(一般的に)避けられる傾向

従って、(一般的に)最初は「グー」か「パー」を出す可能性が高い

これを前提にすると「パー」を出すことで勝つ確率が高まる ⇒ ゲーム理論の実践

ただし、上記を理解している人は戦略的に「チョキ」を出す可能性も

16

Page 17: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

具体例④:製紙会社の生産能力拡大

N社とO社は同じ製品を生産しており、翌年の生産能力を拡大するか、決めなくてはいけない

生産能力を拡大すると大きなシェアを確保できる可能性があるが、供給過多により市場価格を下げる可能性もある

100%の稼働率を想定

17

Page 18: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

戦略形ゲーム(同時に意思決定を行う場合)

両者はお互いの行動に対して結果(経済的利得)を正しく予測できる場合、どのように行動する?(グループディスカッション)

18

O社

拡大しない 拡大する

N社

拡大しない (18,18) (15,20)

拡大する (20,15) (16,16)

左側がN社、右側がO社の利得

Page 19: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

N社の視点

O社の視点

O社

拡大しない 拡大する

N社

拡大しない (18, 18) (15, 20)

拡大する (20, 15) (16, 16)

オリエンテーション:組織の経済学って?

ナッシュ均衡→相手が他の選択肢を選ぶ動機が無くなる(安定)

N社の戦略:O社の選択に係わらず「拡大する」

O社の戦略:N社の選択に係わらず「拡大する」

19

ナッシュ均衡

本当はお互い「拡大しない」方が良いのに・・・

→囚人のジレンマ

Page 20: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

応用例:支配戦略が存在しない場合

下表におけるナッシュ均衡は?(グループディスカッション)

20

O社

拡大しない 小規模拡大 大規模拡大

N社

拡大しない (18,18) (15,20) (9,18)

小規模拡大 (20,15) (16,16) (8,12)

大規模拡大 (18,9) (12,8) (0,0)

左側がN社、右側がO社の利得

Page 21: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

ナッシュ均衡は両者とも「小規模拡大」

21

N社の視点

O社の視点

O社

拡大しない 小規模拡大 大規模拡大

N社

拡大しない (18, 18) (15, 20) (9, 18)

小規模拡大 (20, 15) (16, 16) (8, 12)

大規模拡大 (18, 9) (12, 8) (0, 0)

ナッシュ均衡

Page 22: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

応用例:後出しじゃんけん

コニーちゃんがチョキを出した時、あなたは何を出しますか?

22Copyrights: Fuji Television Kids Entertainment Inc

Page 23: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

オリエンテーション:組織の経済学って?

応用例②:展開形ゲーム

もしN社の1年後にO社が意思決定する場合はどうなる?(グループディスカッション)

23

O社

拡大しない 小規模拡大 大規模拡大

N社

拡大しない (18,18) (15,20) (9,18)

小規模拡大 (20,15) (16,16) (8,12)

大規模拡大 (18,9) (12,8) (0,0)

左側がN社、右側がO社の利得

Page 24: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

N社

拡大しない O社

拡大しない (18, 18)

小規模拡大 (15, 20)

大規模拡大 (9, 18)

小規模拡大 O社

拡大しない (20, 15)

小規模拡大 (16, 16)

大規模拡大 (8, 12)

大規模拡大 O社

拡大しない (18, 9)

小規模拡大 (12, 8)

大規模拡大 (0, 0)

オリエンテーション:組織の経済学って?

24

O社の視点

N社の視点

N社による戦略的コミットメント→O社の選択肢を

限定する

T+1年

T年

Page 25: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

組織の経済学 目次

1. 組織は重要か

2. 経済組織と効率性

3. コーディネーション:市場と組織

4. 計画と行動のコーディネーション

5. 限定合理性と私的情報

6. モラル・ハザードと業績インセンティブ

7. リスク・シェアリングとインセンティブ契約

8. レントと効率性

25

9. 所有と財産権

10.雇用政策と人的資源のマネジメント

11.内部労働市場、職務配置、昇進

12.報酬と動機づけ

13.経営者および管理者の報酬

14.投資とファイナンスの古典的理論

15.金融構造、所有、コーポレート・コントロール

16.企業の境界と構造

17.経営・経済システムの進化

Page 26: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

第1章:組織は重要か

GM:アルフレッド・スローンがCEOに就任、事業部制を採用

市場をセグメント化し、それぞれに独立した権限を持つ経営チームが担当(独立採算制)

本部はスタッフ機能及び全体戦略に関するコーディネーション(部品共通化による規模の経済性)

「組織は戦略に従う」A.D.チャンドラー

トヨタで販売の神様と呼ばれた神谷正太郎氏も日本GM出身

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Page 27: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

第1章:組織は重要か

トヨタ:JIT生産によって在庫を削減

工程保証(品質の作り込み)

アンドン(不具合が見つかった場合は作業者が生産ライン停止)

ケイレツ化(サプライヤー支援)

自働化(産業用ロボット等への省人化投資)

多能工化(作業員間の助け合い)

大部屋(チーフエンジニアを中心に設計・開発に関する情報を共有することで開発期間を短縮)

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Page 28: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

ハドソン・ベイ(HBC)vsノースウエスト(NWC):カナダでビーバーの毛皮を加工してロンドンへ輸出

28

HBC NWC

意思決定 • 現地のことを知らないロンドンの貴族によって経営

• (ハドソン湾の凍結で航海ができない期間がある等)意思決定に時間がかかった

• 2つの事業体(マーケティングを行うロンドンの企業家とカナダの毛皮産地の商人)によるパートナーシップ

• 現地への権限委譲が行われており、迅速な意思決定

取引形態 • 仲買人 • 直接取引

賃金体系/昇進

• 固定給• 貴族が支配しており、経営者にはなれない

• 責任/業績に見合った報酬• 共同経営者になれる可能性

第1章:組織は重要か

Page 29: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

ソロモン・ブラザーズ:トレーダー

クオンツを駆使して、トレーディング・自己勘定取引を活発化→トレーダーが大きな権限を保有

ジョン・メリウェザーによる債券アービトラージ(ウォール街の帝王)

業績給→従業員間の競争・情報共有を阻害→報酬の一部を株式→企業と個人の利害を一致

米国国債の不正入札によって信用失墜→ウォーレン・バフェットの仲介によって、トラベラーズ・グループ(現シティグループ)傘下のスミス・バーニーと合併して現在に至る

29

第1章:組織は重要か

Page 30: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

共産主義(旧ソ連)

資本は国家もしくは集団で所有

国家による資源配分(計画経済)

− 市場メカニズムによる調整機能が働かない

− ノルマを達成するために品質を犠牲にする

− ラチェット効果:今期のノルマを達成すると、来期は更に高いノルマが課される

• ノルマ以上の生産量を達成する必要がない

• 適当な理由を付けて、生産能力をごまかすインセンティブ

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第1章:組織は重要か

Page 31: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

グループディスカッション

ファーストフードのチェーン店:本社決定事項 vs 現場の管理者が決定する事項

− バイトの時給

− 価格

− 調理方法

− 仕入先

戦場:司令官が決定する事項 vs 現場の指揮官が決定する事項

31

第1章:組織は重要か

Page 32: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

(参考)イラク戦争

高度にIT化された中央集権組織による空爆・無人兵器・特殊部隊中心の機動戦(ラムズフェルド)

− フセイン政権打倒までは効果的→治安維持に失敗

− 市街地は遮蔽物等もあり、自爆テロや即製爆弾に対して、無人偵察機も軍事衛星も効果無し

− 中央からの指示に数分間(敵も味方も移動)

− テロ組織は市民に紛れ込み、米軍はテロを恐れて作戦行動以外の時間を強固な砦で過ごす

− 市民はテロ組織を支援してはいないが、米軍に協力したら後でテロ組織に殺されることの恐怖 32

第1章:組織は重要か

Page 33: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

現場指揮官による試行錯誤+ラムズフェルド更迭

ペトレイアス司令官による分権型組織

− 現場の意見を尊重(ボトムアップ型)

− 被害を恐れて砦に隠れることなく、(現場に近い)交番に駐在

− 市民の理解(テロを匿わなくなった)を得て、テロと市民を隔離することで米軍被害が激減

(出所:ティム・ハーフォード「アダプト思考」)

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第1章:組織は重要か

Page 34: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

中央集権組織 vs 分権型組織

中央集権組織の課題

− 情報伝達(タイムリーに正しく、暗黙知をどう伝えるか)

• 例:イラクに大量破壊兵器が存在しないと報告してきた調査員を冷遇→トップに近づく程、情報が劣化

− 環境(情報)に適応するまでにタイムラグが発生

分権型組織の課題

− 個別最適に陥りがち(タコツボ化)→全体戦略との整合を図るための調整費用が高くなる

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第1章:組織は重要か

Page 35: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

(参考)分権型組織のコーディネーションの難しさ

− 米空軍がイラク飛行禁止区域に飛行する機体を撃墜

• 実は、米陸軍のブラックホーク(ヘリ)だった

• 空軍の定義において航空機(高高度)にはヘリコプター(低高度)が含まれていなかった→空軍の敵味方識別信号は独自のもの(陸軍に通知していない)

• 飛行禁止区域に入る全ての航空機は特定の周波数に切り替える義務・ルールがあったが陸軍の慣習(周波数の切り替えは危険を伴うので行わない=実用的逸脱)に従い、ブラックホークは遠距離用周波数を使い続けた

35

第1章:組織は重要か

Page 36: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

優れた組織

情報を持つ人に意思決定の権限を委譲することで環境の変化に迅速に対応

− GM:事業部長

− トヨタ:主査、現場の作業者

36

第1章:組織は重要か

Page 37: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

第2章:経済組織と効率性

組織の定義

契約論からのアプローチ

− 契約の束

• 顧客や従業員、仕入先等がそれぞれ個別に契約して事業を行うと・・・→n人の場合、契約の数はn(n-1)/2

• それよりは法人としてまとめて契約する方が効率的(利害調整が容易)

37

Page 38: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

第2章:経済組織と効率性

組織の定義

取引費用からのアプローチ→取引費用の最小化

− 調整費用(マッチング)

• 証券取引所等の市場運営費用

• 市場調査の費用等

− 動機付け費用(モニタリング)

• 情報の非対称性によって生じる機会損失

• 機会主義的行動を抑止するための費用

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Page 39: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

取引特性

資産の特殊性

− 特定取引以外に活用できない資産に投資する場合、十分な回収見込みがなければ投資できない

取引の頻度と継続期間

− 一時的な取引ではなく、長期間継続する取引の場合、明文化された契約書がなくても、相互調整によって紛争解決等の費用を低減することが可能

不確実性と複雑性

− 契約時点で取引内容が明確に決まっていない場合、権利や義務等の手続きを規定する

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第2章:経済組織と効率性

Page 40: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

グループディスカッション

道路沿いのレストランと地元の人がよく通うレストランでは、どちらの方がチップが高いか?その理由は?

CATV会社が各家庭にケーブルを敷設する際、この投資はどの程度特殊性を持つか?料金設定についてはどのように考えるべきか?

• スカパーが割引キャンペーンを行った結果、衛星放送に乗り換えられてしまった場合・・・

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第2章:経済組織と効率性

Page 41: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

関係特殊的資産→ホールドアップ問題の例

A社は自社製品のみに使用可能な専用部品の生産と、専用設備への投資をB社に依頼

部品生産開始後、A社は当初の約束よりも低い価格をB社に要求

• 拒否=取引を打ち切ると通告(ホールドアップ)

• B社にとっては埋没費用であり、少しでも回収できた方がまし→A社の要求を受け入れざるを得ない

ホールドアップ問題のリスクを考えると十分な投資はできない→過少投資に陥る可能性

41

第2章:経済組織と効率性

Page 42: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

取引特性

業績測定の難しさ

− 契約履行の程度が正確に測定できない場合は有効なインセンティブを与えることが困難なので、正確に測定できる仕組みが必要

42

第2章:経済組織と効率性

Page 43: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

グループディスカッション

棒高跳びのセルゲイ・ブブカは世界記録を35回も更新したが、なぜ、こんなに回数が多くなったのか?

ホワイトカラーの人事評価はどのような仕組みで行われているのか?またそれはなぜか?

アメリカのCEOの報酬が従業員の平均よりも数百倍も高いのはなぜか?

43

第2章:経済組織と効率性

Page 44: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

業績測定

世界記録を更新する度にボーナスが支給された

− 練習ではもっと高く飛べたかもしれないのに、1cm刻みで記録を更新していった

− インセンティブ設計が重要

ホワイトカラーの生産性→客観的な測定が困難

− 相対的(A/B/C/D)に評価(トーナメントモデル)

44

第2章:経済組織と効率性

Page 45: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

業績測定

CEO本人の業績に対する報酬というよりも、部下がよく働くためのインセンティブ

高額の報酬=クビになったときのコスト(機会損失)が大きくなる→株主から解任されないように意思決定が行われる

企業がお互い、社外役員に就任する(インターロック)ことで牽制機能が機能せず、報酬が高止まり

45

第2章:経済組織と効率性

Page 46: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

取引特性

他の取引との連結性

− 個別の取引が相互に関連する場合、中央の調整メカニズムを強化するか、取引関係者を少なくすることでコーディネーション費用を低減する

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第2章:経済組織と効率性

Page 47: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

グループディスカッション

19世紀のアメリカで鉄道が全国を網羅するまで数十年を要した主な理由は?

− 1840年:2,808マイル→1870年:52,922マイル(大陸横断鉄道開通)→1890年:163,597マイル

47

第2章:経済組織と効率性

Page 48: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

規格の統一

鉄道のレールの幅が異なっていると、いちいち貨物を積み替えなければならない

− 日本では世界標準と比べて狭い軌道が一般的(明治時代、新橋~横浜間で採用されたため)

− 一部の地下鉄(銀座線・丸の内線等)や私鉄(京急)は標準の軌道を採用→乗り入れが難しい

政府や業界団体等の上位組織による技術・規格の標準化(コーディネーション)が必要

− 多くの企業が参入→価格競争が生まれ、市場が拡大

48

第2章:経済組織と効率性

Page 49: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

資産効果=資産額の違いによる選択の変化

誰にとっても10,000円紙幣の価値(効用)が同じ

− 資産効果が存在しないと仮定した場合、いかに価値を分配するかという問題はいかに価値を創出するかという問題と完全に分離できる

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第2章:経済組織と効率性

Page 50: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

資産効果=資産額の違いによる選択の変化

価値最大化原理(コース)

− 当事者が交渉によって効率的な合意に達し、彼らの選好に資産効果が存在しない場合(=分配が問題にならない)、効率性だけが活動を選択する上での決定要因となる→全ての経済活動が当事者たちの総価値を最大化するように決定される

− 従って、取引費用を最小化(=総価値を最大化)することが最適

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第2章:経済組織と効率性

Page 51: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

米国における医学部生インターンと病院のマッチング

安価な労働力を求める病院側の求人数が応募者数を上回る→青田刈り、内定辞退(契約違反)等

ゲール=シャプレー(GS)アルゴリズム→安定マッチング

− 全参加者にとって手の届く相手の中でベストなパートナーとマッチしている状況(パレート最適)

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第2章:経済組織と効率性

Page 52: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

具体例(3対3の合コン)

それぞれの好みは下表の通り

全員が一人で帰るのは嫌だと考えている

可能な限り、お互いが好みの相手を見つけたい場合、どのような組み合わせが一番良いか?

(グループディスカッション)

52

第2章:経済組織と効率性

男性陣の好み 女性陣の好み

A君 B君 C君

1位 Xさん Xさん Zさん

2位 Yさん Zさん Xさん

3位 Zさん Yさん Yさん

Xさん Yさん Zさん

1位 C君 C君 B君

2位 A君 A君 C君

3位 B君 B君 A君

Page 53: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

1. 各男性が第一希望の女性に一斉にプロポーズ

A君とB君はXさんへ

C君はZさんへ

2. 複数の男性からプロポーズされた女性はその中でベストの男性をキープして後はリジェクト

XさんはA君をキープ、B君をリジェクト

ZさんはC君をキープ

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第2章:経済組織と効率性

A君 B君 C君

1位 Xさん Xさん Zさん

2位 Yさん Zさん Xさん

3位 Zさん Yさん Yさん

Xさん Yさん Zさん

1位 C君 C君 B君

2位 A君 A君 C君

3位 B君 B君 A君

Page 54: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

3. リジェクトされたB君が第二希望のZさんへ

4. 女性は毎回ベストな男性をキープ、残りをリジェクト(キープしていた男性をリジェクトすることも)

ZさんはC君をリジェクトして、B君をキープ

XさんはA君をキープしたまま

54

第2章:経済組織と効率性

A君 B君 C君

1位 Xさん Xさん Zさん

2位 Yさん Zさん Xさん

3位 Zさん Yさん Yさん

Xさん Yさん Zさん

1位 C君 C君 B君

2位 A君 A君 C君

3位 B君 B君 A君

Page 55: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

5. リジェクトされたC君が第二希望のXさんへ

6. 女性は毎回ベストな男性をキープ、残りをリジェクト(キープしていた男性をリジェクトすることも)

XさんはA君をリジェクトして、C君をキープ

ZさんはB君をキープしたまま

55

第2章:経済組織と効率性

A君 B君 C君

1位 Xさん Xさん Zさん

2位 Yさん Zさん Xさん

3位 Zさん Yさん Yさん

Xさん Yさん Zさん

1位 C君 C君 B君

2位 A君 A君 C君

3位 B君 B君 A君

Page 56: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

7. リジェクトされたA君が第二希望のYさんへ

8. リジェクトされる男性がいなくなった時点で確定(下表参照)

各ラウンドで直ちにペアが確定するのではなく、暫定的な仮マッチとなっているのがポイント。

1対多数の形にも拡張可能。

56

第2章:経済組織と効率性

A君 B君 C君

1位 Xさん Xさん Zさん

2位 Yさん Zさん Xさん

3位 Zさん Yさん Yさん

Xさん Yさん Zさん

1位 C君 C君 B君

2位 A君 A君 C君

3位 B君 B君 A君

Page 57: 20150125 第1回組織の経済学勉強会

ひたすら読むエコノミクス(伊藤秀史)

戦略の経済学(デイビット・ベサンコ他)

アダプト思考(ティム・ハーフォード)

人は意外に合理的(ティム・ハーフォード)

市場を創る(ジョン・マクミラン他)

経済システムの比較制度分析(青木昌彦他)

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参考文献