第4回 「研究機構」設け産連・研究両部門を融合 · 2011-06-22 · 41...

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http://sangakukan.jp/journal/産学官連携ジャーナル Vol.7 No.6 201140

連載 大学の社会貢献・産学官連携 三重モデル

 平成 23年度を迎え三重大学では、実質的で機能的な産学官連携を推進するため、新施設・機能を立ち上げるとともに産学官連携部門の改組を行った(図1)。具体的には以下の3点である。 1. 「研究展開支援拠点」と「新産業創成研究拠点」を社会連携研究セ

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略センター(通称ラスク:RASC:Regional Area Strategy Center, Mie University)」を設置

せわ合を門部進推究研と門部携連官学産ため含を織組設新のられこ .3 た産学連携・社会貢献分野全体を束ねる「三重大学研究機構」を構築

 今回は、本学の「次のステージの産学官連携を実現するために推進している新たな取り組み」について紹介する。

」点拠究研成創業産新「 ◆と「研究展開支援拠点」を新設

 平成 23年4月1日に「新産業創成研究拠点」と「研究展開支援拠点」を開設したのは、教育・研究による成果の社会還元を推進する機能を強化することと、社会連携活動をより具体的に実行するためである。【新産業創成研究拠点】 事業化を目指した戦略的な産学共同プロジェクト研究を実施する。本学が戦略的に取り組む国際的に高く評価される独創的な研究開発を推進するとともに、高度の専門的能力を持つ創造性豊かな人材を育成すること

三重大学は平成 23年度、これまで体制を整備し機能強化を図ってきた産学官連携部門と研究推進部門を機能的に融合させるため「三重大学研究機構」を創設した。実質的な効果を挙げるため産学官連携部門の新施設・機能も立ち上げた。

第4回「研究機構」設け産連・研究両部門を融合

図1 平成 23 年度に行った三重大学における組織再編の概要

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を目的として、VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)の利用形態を見直すことで再編した施設である。開設時には学内審査で利用承認された 10名の研究者(11件のテーマ)が入居し、独創的な研究開発の推進と高度な専門的能力を持つ創造性豊かな人材の育成を行っている。【研究展開支援拠点】 共同利用機器を活用した学内外の研究開発支援を行う。教育・研究による成果の社会還元を推進する機能を強化することと、社会連携活動をより具体的に実行するために、生命科学研究支援センター機器分析施設(学内向けの機器共同利用施設)を本学の産学官連携担当部門である社会連携研究センター内に発展的に組み入れることで開設した施設である。このため同拠点は、共同利用機器を活用した学内外の研究者に対して機器利用を開放し共同利用を可能にすることと、最先端機器を活用した共同研究の実施を通した研究開発支援を行うことを目的としている。この目的を達成するために、前身である生命科学研究支援センター機器分析施設の機能を引き継ぎ、主に本学の教育研究者、学生および研究生が利用して実施する分析・計測技術の研究・開発等の支援を行う「機器分析担当部門」と学外からの分析機器や研究室の利用および学外から依頼された分析・計測ならびに機器操作等の支援を行う「地域研究支援担当部門」を内部組織として設置している。 なお、地域研究支援担当部門は、「みえ“食発・地域イノベーション”創造拠点」と一体となった活動を行う機能も併せ持っている。「みえ“食発・地域イノベーション”創造拠点」とは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)地域産学官共同研究拠点整備事業の採択を受け、三重県と三重大学が協力することで整備した施設であり、三重県産の競争力のある天然資源(農林水産物など)を活用した高付加価値食品の開発から、天然資源素材の大量生産技術の確立、高付加価値食品の製品化、医学的な機能性の評価とブランド構築までを総合的に技術支援する研究拠点である。また一方では、優れた地域資源を持ちながら産業化への取り組みが遅れている県中南勢地域の活性化を促進する拠点でもある。

◆自治体支援の三重大学地域戦略センター 人口減少と高齢化ならびに国家財政の逼迫(ひっぱく)等を背景に、国家経済の低迷が慢性化しており、地方自治体は対応として経済的、政策的に自立することが必要となっている。一方で国立大学は、国からの運営費交付金を継続して削減されており、特に三重大学のような中堅規模の地方国立大学では、存続するための意義を明確にし、運営費交付金以外の資金源を確保することが課題となっている。このように地方自治体と地方国立大学は厳しい状況に置かれているが、逆の視点から捉えれば、地域を熟知した自治体と地方大学がお互いの機能を補完しながら連携することが、自立した強い地域社会を形成することにつながる可能性がある。以上のような認識に立ち、地方自治体を政策面で支援することで地域課題の解決に貢献することを実践する母体として三重大学地域戦略センターを設置した。 地域戦略センターは社会連携研究センター内の一部門として設置した。

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事業の検討機関として、三重大学関係者とともに三重 TLO、百五銀行、百五経済研究所、野村證券、三重県庁などの外部連携先関係者で構成する連絡調整会議と、意思決定機関として学長を議長とし、研究担当理事、地域戦略センターを担当する副学長・学長補佐等、および外部連携先の関係者により構成される幹部会議を置いている。連絡調整会議および幹部会議には産学官のそれぞれの立場の関係者が参加することで、実践的で効果的な地域貢献のための連携施策が策定できる体制としている。 三重大学は、従来も各教員が自治体や地域の審議会や委員会の委員として関わるなどで地域貢献を行ってきたが、大学として総合的な取り組みを行うことはできていなかった。このため地域戦略センターでは、複数教員によってチームを編成し、プロジェクト・マネジメントを担当する専門スタッフが総合的なプロジェクト運営を行うなど、教員個人の共同研究とは違った特命チーム体制で課題解決に取り組むことを特徴としている。また地域戦略センターは、三重県庁ならびに県内の市町などの地域自治体ならびに地域内の企業に対して、総合的な政策提言・提案、地域ならびに産業活性化のための企画提案を行うとともに、その実施を担当する「活動する地域シンクタンク」として地域活性化に貢献することを目指している。なお、地域戦略センターが取り扱う領域としては、産業育成、地域振興、産業インフラ政策、観光政策、防災政策、医療・福祉政策、文化振興、環境政策などである。

◆地域貢献は実行段階 三重大学では、大学の第3の使命である「研究成果の社会還元」を実現する組織の構築・改組を平成 16年の法人化後から進めてきており、企業・自治体との社会連携活動を担当する「創造開発研究センター(平成 21年4月から社会連携研究センターに改名)」、知財管理を一元的に行う「知的財産統括室」、を平成 16年4月に設置したことを皮切りに、平成 21年4月には産学官連携を通した教育・研究に特化した大学院(修士・博士課程)として「地域イノベーション学研究科」を設置してきた。また、このように本学が築いてきた産学官連携のための組織・体制を活用する具体的な活動として、平成 20年度からは、「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)特色ある優れた産学官連携活動の推進」(現在は大学等産学官連携自立化促進プログラム【機能強化支援型】)を実施している。 平成 23年4月に「三重大学研究機構」を構築したのは、上記のような背景を持つ産学官連携部門と研究推進部門を機能的に融合させるためである。この組織再編は「産学官連携の三重モデル」を永続的に実施できる組織体とするという目的に加え、「産学官連携を推進する体制整備・機能整備の段階」を経て、これからは「産学官連携による地域貢献を実行する段階」に移行するという三重大学の意思表示でもある。

 次回は、三重大学が現在進行形で行っている「産学官連携による地域貢献」の事例を紹介することで、地方大学が今の時代に果たすべき役割について考察したいと思う。

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