2 7 59 © 2 94 82 使[4]木の花ファミリー通信 Vol.59 2012 年 7 月号 3 5 30 25 2 50 ファミリーのビニールハウスでピートンの生育の様子を観察され る柳下先生

木の花ファミリー通信 Vol.59 2012年7月

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木の花ファミリー通信 Vol.59 2012年7月

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Page 1: 木の花ファミリー通信 Vol.59 2012年7月

木の花ファミリー通信

2012年7月号・第59号

編集・制作/木の花ファミリー

©2012

木の花ファミリー

★木の花ファミリーとは

94年創立、富士山の麓で有機農業による

自給自足を生活の基盤に82人が血縁を超

えた家族として生活を営む共同体です。

 

このニューズレターはクリエイティ

ブ・コモンズにもとづき、原著作者の

クレジットを表示し、改変せず、非営

利目的で使用する限りにおいて、自由

に複製、頒布、展示することができます。

[4]木の花ファミリー通信 Vol.59 2012 年 7 月号

 

こんにちは!畑隊のたっちゃんで

す。ファミリーの畑では、今年から

「ピートン」という野菜を育てていま

す。と言っても、皆さんはきっとご

存知ないかもしれません。実は、ピー

トンはピーマンとトウガラシを掛け

あわせた品種で、遺伝学の歴史を塗

り替えたと言っても過言ではない、

貴重な野菜です。その品種の維持と

採種をファミリーでさせていただく

ことになったのです。

畑だより

 

ピートンを開発されたのは、東京

農工大学名誉教授の柳や

なしたのぼる

下登先生で

す。1950年代、ソビエト連邦の

農学者であったルイセンコは接ぎ木

で雑種を作ることができると主張し

ましたが、当時の学説では花粉の交

配以外の方法では雑種はできないと

され、「遺伝学論争」として世界を

沸かせました。その頃、学生だった

柳下先生は「自然科学上のことは実

験で解決すべきだ」と考えて、八つ

房トウガラシ(台木)にピーマン(穂

木)を接ぎ木して雑種を育成する実

験に取り組みました。その年に変異

した果実(ピーマン状の形をした八

つ房トウガラシ)が得られ、その後、

3年、5年と接ぎ木を繰り返してい

くと、変異する率が高くなっていき

ました。選抜を繰り返し、1978

年、モスクワの国際遺伝学会で「ピー

トン」一世としてデビュー。接ぎ木

によって変異した性質が、種子によ

る繁殖で子孫に遺伝することが証明

されたのです。

 

しかし、この接ぎ木による変異は、

当時、大多数の学者が認めていませ

んでした。「ピートン」についても、

ピーマンと交雑したのではないか、

突然変異ではないか、といった疑問

が投げ掛けられ、実験でそれに答え

ていくには30年かかりました。一般

的に認められていない学説の実験と

あって研究条件は悪く、先生は作付

の場所の確保にも苦労したそうです。

 

実は、接ぎ木で果実の香りや色を

よくする試みは、古代ギリシア人も

行っていました。「接ぎ木でピートン

一世ができるまでは苦労も多かった

が、古代ギリシア人のロマンを実現

した思いだった」と柳下先生は言い

ます。

 

その後、実が小さく辛いピートン

一世を「おいしく食べられるものに

したい」という思いから、柳下先生

は1983年から品種改良に取り組

みます。果肉が厚く、長いピーマン

にピートン一世を交配し、選抜を繰

り返しました。25年をかけて大きく

肉厚でさっぱりした甘さに変貌した

ピートン二世は、2007年に農水

省に正式に「柳下2号」として品種

登録されました。ピートン一世の作

出から50余年、理論的実証から実用

品種の育成まで一貫した研究は、非

ファミリーのビニールハウスでピートンの生育の様子を観察される柳下先生

常に稀だそうです。そんな歴史のつ

まった品種の採種を任せていただく

ことに、喜びと責任を感じています。

 

ファミリーでは、今もたくさんの

種の維持、管理、品種開発をしてい

ます。かつて作物の種は農家ごとに

採種するのが普通でしたが、現在は

少数の多国籍企業が種の生産や販売

を独占しつつあります。エコビレッ

ジの人的資源を生かして、近い将来、

大切な種を保存したり、新しい品種

を作り出したりして、多くの人とシェ

アしていく「シードバンク(種の銀

行)」を作れたら、と思っています。

(文/たつや)

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[3]木の花ファミリー通信 Vol.59 2012 年 7 月号

メンバー紹介

たかやん、5 月のユース・ビジョン・サミットで

夏野菜のローストハーブマリネ

【材料】なす1本、ズッキーニ1本、いんげん4本、ししとう4個、トマト1個、玉ねぎ1個、好みのハーブ適宜(バジル、タイム、オレガノ、青じそなど)<マリネ液> サラダ油大さじ2、酢大さじ1、塩小さじ1、紫玉ねぎ1/2個【作り方】1. マリネ液の材料をミキサーにかける。2. なす、ズッキーニは1cmの輪切りにしていんげん、ししとうとともに網かフライパンでこんがり焼き、1に漬け込む。

3. 薄切りの紫玉ねぎとくし切りしたトマトを加え、好みのハーブであえる。

今月の木の花菜食レシピ

たかやんの巻

今回は、今月ファミリー宣言をした

ばかりの新メンバー、たかやんをご

紹介します!

 

ファミリーで唯一、対戦車誘導ミ

サイルを扱えるという異色の資格を

持つたかやんは、元陸上自衛隊員。

「沖縄に行った時に平和を想い、『抑

止力』って何なんだろうって考え

た。何事も、その中に入ってみない

と本当にそこを知ることはできない

から」。その言葉の通り、2年間の自

衛隊経験のみならず、日本や世界中

を旅して様々な経験を積んできたた

かやん。「笑顔は世界共通!」と語る

彼の存在は、不思議と

周囲に調和的な空気を

もたらし、ファミリー

内ではいつの間にか「調

和くん」というニック

ネームが付きました。

 

そんなたかやんです

が、子どもの頃は「す

ぐに怒る子」だったと

いいます。「親が離婚し

た影響もあったのかも

しれないけど、不満の

感情とかは、正直忘れ

ちゃった。どこかで人

生のリセットボタンを

押したんだと思う。誰かのせいにし

て生きていくのか、それとも自分の

人生を謳歌するのかの選択を迫られ

た時に、人のせいになん

てしてられない、いさ

ぎよく生きよう!って

思ったんだ」。そして旅

をしていく中で、子ども

の頃に見出すことので

きなかった様々な物ご

とに対する意味に気付

いていったといいます。

 

今年の5月に木の花に出会ったた

かやんは、自然と調和しつつ経済的

にも安定した持続可能な状態を実現

していることを「社会の人へのやさ

しさだと思う」と表現しました。「未

来への不安から『仕方ない』という

思いでお金のために仕事をしている

人たちにとって、経済的にも不安の

ない永続的な場を現実の形にして現

していることは、押し付けではなく、

こんな生き方もできるよ、というサ

ンプルになれる。自分自身がそう

やって生きることが、社会へのやさ

しさになると思うんだ」

 

やさしさと客観的な視点を合わせ

持ち、今やみんなの心の学びのけん

引役になりつつあるたかやん。実は

「みんなの中にいる時が一番バランス

が保てる」といいます。「一人で考え

るとどんどんずれていって抜け出せ

なくなる。だけどいろんな人たちの

中にいると、それだけでエネルギー

をもらえる。ありがたいね。そのエ

ネルギーを社会に送り出すことがで

きたら、我が人生に悔いなし!」

(文/ともこ)

調理:のんちゃん

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木の花ファミリー通信 Vol.59 2012 年 7 月号[2]

「血縁を超える自給自足の大家族」出版記念イベント、全国で開催中!

9/16(日)石川・いちの谷村

石川県加賀市にある「百ひゃくしょう

笑の郷・いちの谷」は、山中温泉から車で 20 分の静かな場所。その大いなる自然の中で、さまざまな出会いや体験の機会を提供している林昌則さんは、ファミリーで開催された第 1 期 EDE の受講生です。今回はそのご縁もあって、「いちの谷」でコンサートが開催されることになりました。* 日時:2012 年 9 月 16 日(日)14:00 開場* 会場:「百笑の郷・いちの谷」 石川県加賀市山中温泉市谷町イ 47 番地 予約電話:0761-78-2301 http://hyaku-warai.jp/event/* 参加費:2,000 円

【 お知らせ掲示板】

みんなのくらし

「相性抜群」と評された、おみくん(左)とサポーターのよしどんのコンビ。卒業記念の笑顔です!

おみくんの

ケア・ストーリー

 

こんにちは!よしどんです。ファ

ミリーでは、心の病などを抱えた方

の滞在を受け入れ、回復へのお手伝

いをする「自然療法プログラム」に

取り組んでいます。滞在する方には

必ず「ケア・サポーター」がつき、

同室で寝泊まりしながら、サポート

のメイン・スタッフであるいさどん

の補佐役を務める体制をとっていま

す。

 

5月21日から滞在したおみくんは、

35歳。僕にとって初めてのサポーター

体験となったのが、幻聴や幻覚の症

状のあった彼のサポートでした。

 

おみくんは、一見、ごく普通の雰

囲気で、実際に数日間は何事もなく

過ごしていました。ところがある日、

ささいなことをきっかけにして、彼

が周囲に対して抱えていた不満の気

持ちが噴出してきたのです。

 

そこから、彼の心の癖が病気を作

り出している構図が見えてきました。

それは、日頃から自分の不満を表に

出さずにため込み続け、目の前の現

実から逃避し続けてきた結果として、

幻聴や幻覚が現れてきたのではない

か、ということです。

 

当初はなかなかいさどんや周囲の

アドバイスに耳を貸さず、ケアを打

ち切って帰りたいと言い出したこと

もありました。しかし、そこでいさ

どんは彼に日々の細かな変化や気づ

きを日記に書いたり、サポーターの

僕に伝えたりするように、とアドバ

イスして、おみくんもそれを真面目

に実行し始めました。すると、自分

の変化を日々感じ取れるようになり、

おみくんの症状はどんどん改善して

いきました。そして、一ヶ月でケア

を卒業することになったのです。

 

その後、おみくんは実家に戻りま

したが、自分自身のケアを一段落し

た次のステップとして、家族との関

係を改善するためにいったん実家を

離れ、今度は農業ヘルパーという形

でファミリーに滞在することになり

ました。現在は、毎日畑で農作業に

励んでいます。

(文/よしどん)

る仁子さんに対して、私たちもでき

る限りのサポートをしていこう、と

訪れた蓮笑庵は、山の中を縫うよう

に工房や応接空間、絵本館などが建

ち並び、庭の草木の一つひとつまで

もが芸術作品のように息吹いていま

した。仁子さんに案内された高台で

楽団が歌い出すと雲間から太陽が現

れ、「まるで祝福されているようだっ

た」とメンバーたち。さて、これか

ら蓮笑庵はどのように活かされてい

くのでしょうか。とても楽しみです。

(文/ともこ)

Page 4: 木の花ファミリー通信 Vol.59 2012年7月

出張コンサート@福島

「銀河祭り」 

 

7月7日の七夕の日、福島県須賀

川市の自然食レストラン「銀河のほ

とり」にて、木の花ファミリーのチャ

リティコンサートおよびお話会が開

催されました。

 

現在も多くの問題を抱える福島で、

「心と体と地球のために」をモットー

に営業を続ける銀河のほとりは、震

災関連の相談窓口や市民放射能測定

所など、様々な活動の拠点となって

います。「みんなで力を合わせてこの

問題を乗り越えていきたい」という

オーナーの有馬克子さんの心意気に

触れたファミリーは、自分たちもで

きることをしよう、と、今回のチャ

リティーイベントを企画。原発関連

の講演会が続いて頭がパンパンに

なっている人たちがふわっとリラッ

クスできるような場にしたい、とい

う有馬さんの想いを受けて、コンサー

トでは、誰もが心の中に思い描く懐

かしい風景を歌った『その景色の中

で』や、自然の中からの深い声に耳

を傾ける『精霊から』など、これま

でめったに歌われることのなかった

曲を取り入れ、40人ほどの人でいっ

ぱいになった小さな会場は、アット

ホームな空気に包まれたのでした。

 

コンサート後の交流会では、ファ

ミリーの暮らしに加えて放射能問題

に関する質問も上がり、今の問題を

私たち自身が前向きに捉えるか否か

で未来が変わっていく、ということ

が話し合われました。会場の方々か

らは、ぜひ木の花を訪れたいという

声も上がり、この出会いが未来への

Vol.59

木の花ファミリー通信

トピックス

「結びの年」も早、折り返し点を過ぎました。各地で開催中の出版記念コンサートでは様々な御縁が結ばれ、ここ富士山麓では新メンバーやケア滞在者とともに安心という絆が結ばれています。これから何が生み出されていくのか、楽しみです!(ようこ)

2012 年 7 月号

[1]木の花ファミリー通信 Vol.59 2012 年 7 月号

木の花ファミリー/特定非営利活動法人 青草の会  電話 : 0544(66)0250 FAX : 0544(66)0810

〒 419-0302 静岡県富士宮市猫沢 238-1 おひさまハウスひまわり

ホームページ : http://www.konohana-family.org メールアドレス : [email protected]

新しい動きにつながっていくことを、

私たちも心から願っています。

(文/ともこ)

「銀河のほとり」で。アットホームな雰囲気です

「蓮笑庵」の一部、「万菜」の玄関

「蓮れんしょうあん

笑庵」を訪ねました

 

銀河のほとりでのイベントの翌日、

同じく福島県の田村市にある「蓮笑

庵」を尋ねました。

 

蓮笑庵は「人と自然が対話し喜び

合える美の浄土」として民画家の故・

渡辺俊明氏によって建てられたアト

リエです。訪問のきっかけは、今月

初めに渡辺仁子夫人がファミリーを

訪れたことでした。福島に新しい形

のコミュニティを立ち上げたいと語