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74. 上皮細胞からのサイトカインによるアレルギー発症機序の解明 善本 知広 Key words:上皮細胞,アレルゲン,アレルギー性 結膜炎,IL-33,好酸球 *兵庫医科大学 免疫学・医動物学講座 本邦において, 代表的なアレルギー疾患である気管支喘息, アレルギー性鼻炎・結膜炎, アトピー性皮膚炎と食物アレルギー の患者数は著しく増加の一途にある. 最近の有病率調査によれば, 国民の約3-4%が喘息症状に苦しみ, 30%前後が鼻炎症 状に悩み, 15-20%がアレルギー性結膜疾患に罹患し, 小中学生の約 20%がアトピー性皮膚炎の症状を持つと推定されてい る. 本邦におけるアレルギー性鼻炎または結膜疾患患者の約 75%は花粉によるものである. しかし, 花粉粒子が鼻粘膜または結 膜に曝露される結果, 如何なる機序でアレルギー性炎症を発症するのかについては不明な点が多い. 本研究では, 上皮細胞に 豊富に蓄えられているサイトカイン IL-33 に着目した. IL-33 は IL-1 や IL-18 と相同性の高いアミノ酸配列を有する IL-1 ファミリーに属するサイトカインとして, 2005 年にクロー ニングされた 1) . その受容体は 1989 年富永により発見され, 長い間そのリガンドが不明であった ST2 である 2) . ST2 は Th2 細 3) や好塩基球/マスト細胞そして好酸球 3-5) 上に発現することから, IL-33 は Th2 型アレルギー疾患に関与することが強く示 唆された. 実際, SNP 解析から ST2 遺伝子領域にアトピー性皮膚炎 6) や喘息患者 7) に, IL-33 遺伝子領域に喘息罹患感受性 とその末梢血好酸球数と相関のある遺伝子多型が存在することが報告された 7) . 更に, 我々も IL-33 遺伝子領域に花粉症と相 関する遺伝子多型が存在し, 健常人に比較して花粉症患者では血清 IL-33 が高値を示すことを明らかにした 8) . 以上の結果か ら, IL-33 は Th2 型アレルギー疾患の増悪因子と考えられる. 本研究では, アレルギー性結膜炎の発症あるいは増悪に上皮細胞由来の IL-33 が関与することを証明する目的でブタクサ花 粉 (Ragweed Pollen; RW) を用いた実験的アレルギー性結膜炎モデルマウスを作製し, IL-33 の病因論的役割を検討し た. 1. アレルギー性結膜炎マウスモデル Balb/c マウスに RW を水酸化アルミニウムと共に day0 に皮下注射, day14 に腹腔内注射にて免疫した後, day21 に PBS 単独, RW 単独, IL-33 単独もしくは RW+IL-33 を点眼した. 点眼 15 分後のアレルギー反応の即時相はクリニカルスコアで検 討し, 24 時間後の遅発相は, 眼瞼を含めて眼球を採取し病理組織学的に検討した. また, 点眼 24 時間後の頚部リンパ節細胞 を抗 CD3 抗体+抗 CD28 抗体で 48 時間刺激培養し, 上清中の Th2 サイトカインを ELISA にて測定した. 更に, 点眼 24 時 間後の頚部リンパ節細胞の ST2 (IL-33Rα 鎖) 発現を real time PCR 法にて解析すると共に, 結膜を含めた眼瞼組織中の eotaxin を ELISA にて測定した. 2. 結膜浸潤細胞の同定 眼瞼の凍結切片を作成し, 抗 ST2 (IL-33Rα 鎖) 抗体, 抗 CD4 抗体(T 細胞)及び Siglec-F 抗体(好酸球)を用いて 結膜浸潤細胞を共焦点顕微鏡にて検討した. *現所属:兵庫医科大学 先端医学研究所 アレルギー疾患研究部門 上原記念生命科学財団研究報告集, 25 (2011) 1

74.上皮細胞からのサイトカインによるアレルギー …...3. 好酸球のIL-33Rα鎖 (ST2) 発現とサイトカイン/ケモカイン産生 Balb/cマウスの脾細胞を様々な組み合わせのIL-5,

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74. 上皮細胞からのサイトカインによるアレルギー発症機序の解明

善本 知広

Key words:上皮細胞,アレルゲン,アレルギー性   結膜炎,IL-33,好酸球

*兵庫医科大学 免疫学・医動物学講座

緒 言

 本邦において, 代表的なアレルギー疾患である気管支喘息, アレルギー性鼻炎・結膜炎, アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの患者数は著しく増加の一途にある. 最近の有病率調査によれば, 国民の約3-4%が喘息症状に苦しみ, 30%前後が鼻炎症状に悩み, 15-20%がアレルギー性結膜疾患に罹患し, 小中学生の約 20%がアトピー性皮膚炎の症状を持つと推定されている. 本邦におけるアレルギー性鼻炎または結膜疾患患者の約 75%は花粉によるものである. しかし, 花粉粒子が鼻粘膜または結膜に曝露される結果, 如何なる機序でアレルギー性炎症を発症するのかについては不明な点が多い. 本研究では, 上皮細胞に豊富に蓄えられているサイトカイン IL-33 に着目した.  IL-33 は IL-1 や IL-18 と相同性の高いアミノ酸配列を有する IL-1 ファミリーに属するサイトカインとして, 2005 年にクローニングされた 1). その受容体は 1989 年富永により発見され, 長い間そのリガンドが不明であった ST2 である 2). ST2 は Th2 細胞 3)や好塩基球/マスト細胞そして好酸球 3-5)上に発現することから, IL-33 は Th2 型アレルギー疾患に関与することが強く示唆された. 実際, SNP解析から ST2 遺伝子領域にアトピー性皮膚炎 6)や喘息患者 7)に, IL-33 遺伝子領域に喘息罹患感受性とその末梢血好酸球数と相関のある遺伝子多型が存在することが報告された 7). 更に, 我々も IL-33 遺伝子領域に花粉症と相関する遺伝子多型が存在し, 健常人に比較して花粉症患者では血清 IL-33 が高値を示すことを明らかにした 8). 以上の結果から, IL-33 は Th2 型アレルギー疾患の増悪因子と考えられる. 本研究では, アレルギー性結膜炎の発症あるいは増悪に上皮細胞由来の IL-33 が関与することを証明する目的でブタクサ花粉 (Ragweed Pollen; RW) を用いた実験的アレルギー性結膜炎モデルマウスを作製し, IL-33 の病因論的役割を検討した.

方 法

1. アレルギー性結膜炎マウスモデル   Balb/c マウスに RW を水酸化アルミニウムと共に day0 に皮下注射, day14 に腹腔内注射にて免疫した後, day21 に PBS単独, RW単独, IL-33 単独もしくは RW+IL-33 を点眼した. 点眼 15 分後のアレルギー反応の即時相はクリニカルスコアで検討し, 24 時間後の遅発相は, 眼瞼を含めて眼球を採取し病理組織学的に検討した. また, 点眼 24 時間後の頚部リンパ節細胞を抗 CD3 抗体+抗 CD28 抗体で 48 時間刺激培養し, 上清中の Th2 サイトカインを ELISA にて測定した. 更に, 点眼 24 時間後の頚部リンパ節細胞の ST2 (IL-33Rα 鎖) 発現を real time PCR 法にて解析すると共に, 結膜を含めた眼瞼組織中のeotaxin を ELISA にて測定した. 2. 結膜浸潤細胞の同定 眼瞼の凍結切片を作成し, 抗 ST2 (IL-33Rα 鎖) 抗体, 抗 CD4 抗体(T細胞)及び Siglec-F 抗体(好酸球)を用いて結膜浸潤細胞を共焦点顕微鏡にて検討した. 

*現所属:兵庫医科大学 先端医学研究所 アレルギー疾患研究部門

 上原記念生命科学財団研究報告集, 25 (2011)

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3. 好酸球の IL-33Rα 鎖 (ST2) 発現とサイトカイン/ケモカイン産生  Balb/c マウスの脾細胞を様々な組み合わせの IL-5, IL-33, GM-CSF で 24 時間刺激した後, フローサイトメトリー法で好酸球上のST2 (IL-33Rα 鎖) 発現を検討した. 更に, マウス脾細胞から好酸球(Siglec-F+CCR3+細胞)をセルソーターにて分離精製した後, 様々な組み合わせの IL-5, IL-33, GM-CSF で 24 時間刺激培養し, 培養上清中のサイトカイン/ケモカイン産生を測定した. 4. 結膜上皮における IL-33 の局在とその生理活性 結膜上皮における IL-33 の局在を抗マウス IL-33 抗体で染色後, 共焦点顕微鏡で検討した. 更に, 結膜上皮の IL-33 mRNA 発現(real time PCR 法)と IL-33 蛋白量(ELISA 法)を測定した. また, IL-33 の生理活性はホモゲネートした結膜上皮組織の上清を骨髄由来の好塩基球に添加し, 好塩基球からの IL-6 産生量を指標に検討した.

結 果

1. アレルギー性結膜炎に対する外因性 IL-33 の影響 初めに, RW特異的アレルギー性結膜炎モデルマウスを作製し, アレルギー性結膜炎に対する IL-33 の病因的役割を検討した. その結果, RW 免疫マウスに RW を点眼した群(RW 免疫/RW 点眼)は RW 免疫/PBS 点眼群(コントロール群)に比べ, 即時相のクリニカルスコアが有意に上昇し, 遅発相では結膜組織に好酸球が著明に集積増加した(図 1-A). この臨床症状と組織学的変化は, ヒトのアレルギー性結膜炎の病態を反映している. このモデルマウスを用いて, RW の点眼と共に IL-33を点眼することで, アレルギー性結膜炎に対する外因性 IL-33 の影響を検討した. その結果, RW免疫マウスにRW+ IL-33を点眼した群(RW免疫/RW+IL-33 点眼)では即時相のクリニカルスコアに変化は認められないが, 遅発相の結膜組織への好酸球浸潤がRW単独群(RW免疫/RW点眼)と比較して著明に増加した(図 1-A)9). 次に, 外因性 IL-33 の点眼による好酸球浸潤の増加機序を明らかにする目的で, 眼の所属リンパ節である頚部リンパ節細胞の Th2 サイトカイン産生を測定した. その結果, RW免疫/RW点眼群はコントロール群に比べ, 抗 CD3/抗 CD28 抗体刺激, または可溶性 RW で刺激すると Th2 サイトカイン (IL-4, IL-5, IL-13) 産生と GM-CSF が著明に増強し, RW と共に IL-33を点眼するとこれらサイトカイン産生を更に増強した(図 1-B)9). また, アレルギー性結膜炎発症マウスの眼瞼結膜には eotaxinが正常マウスに比較して著明に増加し, IL-33 の点眼は eotaxin 産生を更に増強した(図 1-B). IL-4 と IL-13 は線維芽細胞を刺激して eotaxin 産生を誘導する 10)ことから, 外因性 IL-33 の点眼によって好酸球浸潤が増加する機序として, 1)RWの点眼によって所属リンパ節に RW 特異的 Th2 細胞が遊走されると共に, IL-33 は Th2 細胞からの Th2 サイトカインと GM-CSF 産生を増強する. その結果, 2)IL-4 と IL-13 は線維芽細胞を刺激して eotaxin 産生を増強すると共に, 3)IL-5 とGM-CSF は好酸球を活性化すると考えられた.

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 図 1. アレルギー性結膜炎モデルマウスに対する IL-33 の影響.

正常または RWで免疫した BALB/c マウスに PBS を点眼または RW and/or IL-33 を点眼した.A. 点眼 15 分後のクリニカルスコア, 点眼 24 時間後の結膜組織の好酸球浸潤を H-E染色で確認し, 好酸球数をグラフ化した.B. 点眼 24 時間後の頚部リンパ節細胞からの Th2 サイトカイン産生と眼瞼結膜中の eotaxin 産生を ELISA にて測定した.C. 点眼 24 時間後の結膜組織における Siglec-F+ST2+細胞(好酸球)を共焦点蛍光顕微鏡にて検討した. Scale bar,50 µm.D. 正常マウス脾細胞からソーティングにて精製した好酸球(Siglec-F+CCR3+)を IL-5, IL-33 又は GM-CSF の単独刺激又は様々な組み合わせで 24 時間刺激後, 培養上清中のサイトカイン/ケモカイン産生を Bio-Plex にて解析した.

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2. アレルギー性結膜炎における好酸球に対する IL-33 の役割 アレルギー性疾患では, アレルゲンの曝露によって局所にアレルゲン特異的Th2 細胞が集積することでアレルギー性炎症を誘導する. しかし, 従来の研究ではアレルゲン特異的 Th2 細胞がアレルギー性結膜炎の眼瞼結膜に集積することを明確に示した研究は存在しない. Th2 細胞は細胞表面に IL-33Rα(ST2)を特異的に発現する 3). そこで, アレルギー性結膜炎モデルマウスの眼瞼結膜における IL-33Rα(ST2)陽性細胞を共焦点レーザー顕微鏡にて検討した. その結果, RW免疫/RW点眼群とRW 免疫/RW+IL-33 点眼群はコントロール群に比べ, 結膜組織に CD4+T 細胞が著しく増加し, その約 70%がIL-33Rα(ST2)陽性であった 9). 以上の結果から, RW 特異的 Th2 細胞が結膜炎の眼瞼結膜部位に集積することが明らかとなった. 一方, 実験の過程で, アレルギー性結膜炎の結膜組織に IL-33Rα(ST2)発現細胞が著明に浸潤増加し, その大半が Siglec-F+の好酸球であることが明らかとなった(図 1-C)9). 次に, 結膜組織に著明に浸潤した ST2+好酸球に対する IL-33 の生理的意義について検討した. 先に述べた様に, RW点眼によって頸部リンパ節に集積した Th2 細胞は Th2 サイトカイン (IL-4, IL-5, IL-13) と GM-CSF を産生する. そこで, これらサイトカインに対する好酸球の ST2 発現に対する影響を検討した. 好酸球として, フローサイトメトリー法で正常マウス脾細胞の顆粒球細胞のうち, 非 B 非 T 細胞分画の約 70%(全脾細胞の約 0.1%)を占める好酸球(Siglec-F+CCR3+細胞)を用いた. その結果, 脾臓好酸球は構成的に IL-33Rα(ST2)を発現し, IL-5, IL-33又は GM-CSF の単独刺激又は様々な組み合わせの刺激でその発現は著明に増強した 9). 更に, IL-5 and/or GM-CSF の刺激によって IL-33Rα(ST2)発現が増強した好酸球は, IL-33 刺激を受けると著明に IL-4/MIP-1α/MIP-1β を産生した(図 1-D)9). 以上の結果から, 結膜組織に増加する ST2+好酸球は IL-5, GM-CSF と IL-33 の刺激を受けることで IL-4/MIP-1α/MIP-1β 産生を誘導し, アレルギー性結膜炎の増悪とリモデリングが誘導されると考えられた. 3. アレルギー性結膜炎に対する内因性 IL-33 の影響 最後に, 花粉曝露に対する結膜上皮細胞からの内因性 IL-33 がアレルギー性結膜炎の発症にどのように関与しているかを検討する目的で, マウス結膜上皮細胞の IL-33 蛋白の局在を我々の教室で作製した抗マウス IL-33 抗体を用いて共焦点レーザー顕微鏡で検討した. その結果, IL-33 蛋白は正常結膜上皮細胞の核内に局在することが明らかとなった 9). 更に, RW点眼によって結膜上皮細胞の IL-33mRNA は増加する. また, ホモゲネートした結膜の上清は好塩基球を刺激して IL-6 産生を誘導し, この産生は抗 IL-33 抗体を添加することで完全に抑制されることから(好塩基球を用いたマウス IL-33 bioassay 法),結膜上皮細胞には生理活性を有する IL-33 が存在することも明らかとなった 9). 以上の結果から, 結膜上皮細胞の核内には生理活性を有する IL-33 が存在し, RW 点眼によって IL-33 を増強することから, RW 曝露によるアレルギー性結膜炎の発症に内因性 IL-33 が関与することが示唆された.

考 察

 図 2 にアレルギー性結膜炎の発症機序と結膜炎に対する IL-33 の病因的役割をまとめた. アレルギー性結膜炎では, アレルゲンの曝露によって所属リンパ節と眼瞼結膜にアレルゲン特異的 ST2+Th2 細胞が遊走する. 次に, この Th2 細胞からの IL-4 と IL-13 は線維芽細胞を刺激して eotaxin 産生を誘導し, 結膜組織内に ST2+好酸球を集積させる. 一方, アレルゲンと共に IL-33 刺激が加わると Th2 細胞からのサイトカイン産生が著明に上昇する結果, 結膜組織への好酸球浸潤が更に増加すると共に, IL-5 と GM-CSF の刺激によって ST2 発現が増強した好酸球は, IL-33 刺激に反応して IL-4/MIP-1α/MIP-1β 産生を誘導する結果, アレルギー性炎症を増強する. おそらく IL-33 刺激を受けた好酸球は MBPや EDNなどの組織障害蛋白を産生増強することで, 角膜障害を伴ったアレルギー性結膜炎の増悪とリモデリングに関与するものと考えられた. 更に我々の研究から, 結膜上皮細胞の核内には恒常的に生理活性を有する IL-33 蛋白が局在し, アレルゲンに曝露されると, その産生が増強することが示された. IL-33 は Th2 細胞と好酸球に対する直接的な遊走作用を有することも報告されており, RW曝露によるアレルギー性結膜炎の発症に内因性 IL-33 が関与することが示唆された. 今回の研究結果から, アレルギー性結膜炎だけにとどまらず, アレルギー性鼻炎や気管支喘息の発症と増悪にもアレルゲンの曝露によって誘導される内因性 IL-33 が関与していると考えられた.

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 図 2. アレルゲンの曝露によって結膜上皮細胞から産生誘導された IL-33 によるアレルギー性結膜炎増強作用.

ブタクサなどの花粉粒子は何らかの機序で結膜上皮細胞の細胞核内に局在する内因性 IL-33 を放出し, この IL-33 はST2+細胞を発現する Th2 細胞と好酸球を刺激する結果, アレルギー性炎症をさらに増悪させると考えられる.

   

共同研究者

本研究の共同研究者は, 兵庫医科大学眼科学講座の松葉沙織と免疫学・医動物学講座の中西憲司教授である. 本研究をご支援頂きました上原記念生命科学財団に心から感謝申し上げます.

文 献

1) Schmitz, J., Owyang, A., Oldham, E., Song, Y., Murphy, E., McClanahan, T. K., Zurawski, G., Moshrefi,M., Qin, J., Li, X., Gorman, D. M., Bazan, J. F. & Kastelein, R. A. : IL-33, an interleukin-1-likecytokine that signals via the IL-1 receptor-related protein ST2 and induces T helper type 2-associated cytokines. Immunity, 23 : 479-490, 2005.

2) Tominaga, S. : A putative protein of a growth specific cDNA from BALB/c-3T3 cells is highly similarto the extracellular portion of mouse interleukin 1 receptor. FEBS Lett., 258 : 301-304, 1989.

3) Kondo, Y., Yoshimoto, T., Yasuda, K., Futatsugi-Yumikura, S., Morimoto, M., Hayashi, N., Hoshino, T.,Fujimoto, J. & Nakanishi, K. : Administration of IL-33 induces airway hyperresponsiveness andgoblet cell hyperplasia in the lungs in the absence of adaptive immune system. Int. Immunol., 20 :791-800, 2008.

4) Smithgall, M. D., Comeau, M. R., Park Yoon, B. R., Kaufman, D., Armitage, R. & Smith, D. E. : IL-33amplifies both Th1- and Th2-type responses through its activity on human basophils, allergen-reactive Th2 cells, iNKT and NK cells. Int. Immunol., 20 : 1019-1030, 2008.

5) Cherry, W. B., Yoon, J., Bartemes, K. R, Iijima, K. & Kita, H. : A novel IL-1 family cytokine, IL-33,potently activates human eosinophils. J. Allergy Clin. Immunol., 121 : 1484-1490, 2008.

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6) Shimizu, M., Matsuda, A., Yanagisawa, K., Hirota, T., Akahoshi, M., Inomata, N., Ebe, K., Tanaka, K.,Sugiura, H., Nakashima, K., Tamari, M., Takahashi, N., Obara, K., Enomoto, T., Okayama, Y., Gao, P.S., Huang, S. K., Tominaga, S., Ikezawa, Z. & Shirakawa, T. : Functional SNPs in the distal promoterof the ST2 gene are associated with atopic dermatitis. Hum. Mol. Genet., 14 : 2919-2927, 2005.

7) Gudbjartsson, D. F., Bjornsdottir, U. S., Halapi, E., Helgadottir, A., Sulem, P., Jonsdottir, G. M.,Thorleifsson, G., Helgadottir, H., Steinthorsdottir, V., Stefansson, H., Williams, C., Hui, J., Beilby, J.,Warrington, N. M., James, A., Palmer, L. J., Koppelman, G. H., Heinzmann, A., Krueger, M., Boezen,H. M., Wheatley, A., Altmuller, J., Shin, H. D., Uh, S. T., Cheong, H. S., Jonsdottir, B., Gislason, D.,Park, C. S., Rasmussen, L. M., Porsbjerg, C., Hansen, J. W., Backer, V., Werge, T., Janson, C., Jönsson,U. B., Ng, M. C., Chan, J., So, W. Y., Ma, R., Shah, S. H., Granger, C. B., Quyyumi, A. A., Levey, A.I., Vaccarino, V., Reilly, M. P., Rader, D. J., Williams, M. J., van Rij, A. M., Jones, G. T., Trabetti, E.,Malerba, G., Pignatti, P. F., Boner, A., Pescollderungg, L., Girelli, D., Olivieri, O., Martinelli, N.,Ludviksson, B. R., Ludviksdottir, D., Eyjolfsson, G. I., Arnar, D., Thorgeirsson, G., Deichmann, K.,Thompson, P.J., Wjst, M., Hall, I. P., Postma, D. S., Gislason, T., Gulcher, J., Kong, A., Jonsdottir, I.,Thorsteinsdottir, U. & Stefansson, K. : Sequence variants affecting eosinophil numbers associate withasthma and myocardial infarction. Nat. Genet., 41 : 342-347, 2009.

8) Sakashita, M., Yoshimoto, T., Hirota, T., Harada, M., Okubo, K., Osawa, Y., Fujieda, S., Nakamura, Y.,Yasuda, K., Nakanishi, K., Tamari, M. : Association of serum interleukin-33 level and theinterleukin-33 genetic variant with Japanese cedar pollinosis. Clin. Exp. Allergy, 38 : 1875-1881, 2008

9) Matsuba-Kitamura, S., Yoshimoto, T., Yasuda, K., Futatsugi-Yumikura, S., Taki, Y., Muto, T., Ikeda,T., Mimura, O. & Nakanishi, K. : Contribution of IL-33 to induction and augmentation ofexperimental allergic conjunctivitis. Int. Immunol., 22 : 479-489, 2010.

10) Ishikawa, Y., Yoshimoto, T. & Nakanishi, K. : Contribution of IL-18-induced innate T cell activationto airway inflammation with mucus hypersecretion and airway hyperresponsiveness. Int. Immunol.,18 : 847-855, 2006.

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