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日本原子力研究開発機構 June 2014 Japan Atomic Energy Agency JAEA-Research 2014-007 福島第一原子力発電所事故に係る圧力容器/格納容器の 健全性評価技術の開発 ―人工海水への照射済燃料成分の溶出と 炭素鋼の腐食に及ぼす影響因子の評価― Long Term Integrity of Reactor Pressure Vessel and Primary Containment Vessel after the Severe Accidents in Fukushima Daiichi Nuclear Power Station - Leaching Property of Spent Oxide Fuel Segment and Corrosion Property of a Carbon Steel under Artificial Seawater Immersion - 大洗研福島技術開発特別チーム 福島燃料材料試験部 Fukushima Project Team Fukushima Fuels and Materials Department 大洗研究開発センター Oarai Research and Development Center

福島第一原子力発電所事故に係る圧力容器/格納容 …jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA...- Leaching Property of Spent Oxide Fuel Segment and Corrosion

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  • 日本原子力研究開発機構

    June 2014

    Japan Atomic Energy Agency

    JAEA-Research

    2014-007

    福島第一原子力発電所事故に係る圧力容器/格納容器の

    健全性評価技術の開発

    ―人工海水への照射済燃料成分の溶出と

    炭素鋼の腐食に及ぼす影響因子の評価―

    Long Term Integrity of Reactor Pressure Vessel and Primary Containment Vessel

    after the Severe Accidents in Fukushima Daiichi Nuclear Power Station

    - Leaching Property of Spent Oxide Fuel Segment and Corrosion Property

    of a Carbon Steel under Artificial Seawater Immersion -

    大洗研福島技術開発特別チーム

    福島燃料材料試験部

    Fukushima Project TeamFukushima Fuels and Materials Department

    大洗研究開発センター

    Oarai Research and Development Center

  • http://www.jaea.go.jp

    319-1195 2 4029-282-6387, Fax 029-282-5920, E-mail:[email protected]

    This report is issued irregularly by Japan Atomic Energy Agency.Inquiries about availability and/or copyright of this report should be addressed toIntellectual Resources Section, Intellectual Resources Department,Japan Atomic Energy Agency.2-4 Shirakata Shirane, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken 319-1195 JapanTel +81-29-282-6387, Fax +81-29-282-5920, E-mail:[email protected]

    © Japan Atomic Energy Agency, 2014

    国際単位系(SI)

    乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

    1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ µ1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

    表5.SI 接頭語

    名称 記号 SI 単位による値分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 ° 1°=(π/180) rad分 ’ 1’=(1/60)°=(π/10800) rad秒 ” 1”=(1/60)’=(π/648000) rad

    ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

    リットル L,l 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

    トン t 1t=103 kg

    表6.SIに属さないが、SIと併用される単位

    名称 記号 SI 単位で表される数値電 子 ボ ル ト eV 1eV=1.602 176 53(14)×10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1.660 538 86(28)×10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1.495 978 706 91(6)×1011m

    表7.SIに属さないが、SIと併用される単位で、SI単位で表される数値が実験的に得られるもの

    名称 記号 SI 単位で表される数値キ ュ リ ー Ci 1 Ci=3.7×1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 2.58×10-4C/kgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2×10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325/760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

    1cal=4.1858J(「15℃」カロリー),4.1868J(「IT」カロリー)4.184J(「熱化学」カロリー)

    ミ ク ロ ン µ 1 µ =1µm=10-6m

    表10.SIに属さないその他の単位の例

    カ ロ リ ー cal

    (a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できる。しかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない。(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で、量についての情報をつたえるために使われる。 実際には、使用する時には記号rad及びsrが用いられるが、習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない。(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中に、そのまま維持している。(d)ヘルツは周期現象についてのみ、ベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される。(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称で、セルシウス温度を表すために使用される。セルシウス度とケルビンの  単位の大きさは同一である。したがって、温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである。

    (f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)は、しばしば誤った用語で”radioactivity”と記される。(g)単位シーベルト(PV,2002,70,205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照。

    (a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度  (substance concentration)ともよばれる。(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるが、そのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない。

    名称 記号SI 基本単位による

    表し方

    秒ルカスパ度粘 Pa s m-1 kg s-1

    力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

    表 面 張 力 ニュートン毎メートル N/m kg s-2角 速 度 ラジアン毎秒 rad/s m m-1 s-1=s-1角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rad/s2 m m-1 s-2=s-2熱 流 密 度 , 放 射 照 度 ワット毎平方メートル W/m2 kg s-3

    熱 容 量 , エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン J/K m2 kg s-2 K-1比熱容量,比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J/(kg K) m2 s-2 K-1比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム J/kg m2 s-2熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W/(m K) m kg s-3 K-1

    体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル J/m3 m-1 kg s-2

    電 界 の 強 さ ボルト毎メートル V/m m kg s-3 A-1電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル C/m3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル C/m2 m-2 sA電 束 密 度 , 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル C/m2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル F/m m-3 kg-1 s4 A2

    透 磁 率 ヘンリー毎メートル H/m m kg s-2 A-2

    モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル J/mol m2 kg s-2 mol-1

    モルエントロピー, モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J/(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

    照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム C/kg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gy/s m2 s-3放 射 強 度 ワット毎ステラジアン W/sr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

    放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W/(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル kat/m3 m-3 s-1 mol

    表4.単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

    組立量SI 組立単位

    名称 記号

    面 積 平方メートル m2体 積 立法メートル m3速 さ , 速 度 メートル毎秒 m/s加 速 度 メートル毎秒毎秒 m/s2波 数 毎メートル m-1密 度 , 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kg/m3

    面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kg/m2

    比 体 積 立方メートル毎キログラム m3/kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル A/m2磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル A/m量 濃 度 (a) , 濃 度 モル毎立方メートル mol/m3質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kg/m3輝 度 カンデラ毎平方メートル cd/m2屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

    組立量SI 基本単位

    表2.基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

    名称 記号他のSI単位による

    表し方SI基本単位による

    表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) m/m立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2/m2周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

    ントーュニ力 N m kg s-2圧 力 , 応 力 パスカル Pa N/m2 m-1 kg s-2エ ネ ル ギ ー , 仕 事 , 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2仕 事 率 , 工 率 , 放 射 束 ワット W J/s m2 kg s-3電 荷 , 電 気 量 クーロン AsC電 位 差 ( 電 圧 ) , 起 電 力 ボルト V W/A m2 kg s-3 A-1静 電 容 量 ファラド F C/V m-2 kg-1 s4 A2電 気 抵 抗 オーム Ω V/A m2 kg s-3 A-2コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S A/V m-2 kg-1 s3 A2

    バーエウ束磁 Wb Vs m2 kg s-2 A-1磁 束 密 度 テスラ T Wb/m2 kg s-2 A-1イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H Wb/A m2 kg s-2 A-2セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) ℃ K

    ンメール束光 lm cd sr(c) cdスクル度照 lx lm/m2 m-2 cd

    放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1吸収線量, 比エネルギー分与,カーマ

    グレイ Gy J/kg m2 s-2

    線量当量, 周辺線量当量, 方向性線量当量, 個人線量当量 シーベルト

    (g) Sv J/kg m2 s-2

    酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

    表3.固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

    組立量

    名称 記号 SI 単位で表される数値バ ー ル bar 1bar=0.1MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133.322Paオングストローム Å 1Å=0.1nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

    ノ ッ ト kn 1kn=(1852/3600)m/sネ ー パ Npベ ル B

    デ ジ ベ ル dB

    表8.SIに属さないが、SIと併用されるその他の単位

    SI単位との数値的な関係は、    対数量の定義に依存。

    名称 記号

    長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

    基本量SI 基本単位

    表1.SI 基本単位

    名称 記号 SI 単位で表される数値エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=0.1Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

    ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

    フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

    マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (103/4π)A m-1

    表9.固有の名称をもつCGS組立単位

    (c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため、等号「   」   は対応関係を示すものである。

    (第8版,2006年改訂)

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    福島第一原子力発電所事故に係る圧力容器/格納容器の健全性評価技術の開発- 人工海水への照射済燃料成分の溶出と炭素鋼の腐食に及ぼす影響因子の評価 -

    日本原子力研究開発機構 大洗研究開発センター

    大洗研福島技術開発特別チーム

    福島燃料材料試験部

    (2014 年 3 月 31 日 受理)

    福島第一原子力発電所1~3号機の格納容器(PCV)、原子炉圧力容器、ペデスタル等の主要構造物は、炉心溶融事象と応急措置的な冷却のために注入された海水の影響により、熱的・化学

    的・機械的に厳しい環境に曝されている。今後の PCV 内の継続的冷却と燃料デブリ取出し作業時の水張りを展望すると、主要構造物の全部あるいは一部は長期にわたり水浸漬状態になると予

    想される。

    炉心に注入された冷却水はデブリ等と接触して成分を溶解し、同時に滞留している水と混合し

    て汚染水になる。そこで、50℃程度の低温期におけるデブリ等から汚染水への核分裂生成物の移行に着目した。「ふげん」照射済燃料を使用した浸漬試験を行い、核分裂生成物、アクチニド等の

    溶出特性を評価した。

    PCV はその内側に存在する核分裂生成物を包蔵する重要な障壁であり、汚染水との接触による腐食特性が注目される。汚染水を想定した人工海水を調整し、50℃における浸漬試験と電気化学試験により、PCV 構成材料である炭素鋼の腐食特性を評価した。評価にあたっては、影響因子として溶存する核分裂生成物(特に、セシウム)と放射線の化学的効果を考慮した。

    大洗研究開発センター:〒311-1393 茨城県東茨城郡大洗町成田町 4002

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    Long Term Integrity of Reactor Pressure Vessel and Primary Containment Vessel after theSevere Accidents in Fukushima Daiichi Nuclear Power Station

    - Leaching Property of Spent Oxide Fuel Segment and Corrosion Property of a Carbon Steelunder Artificial Seawater Immersion -

    Fukushima Project TeamFukushima Fuels and Materials Department

    Oarai Research and Development Center,Japan Atomic Energy Agency

    Oarai-machi, Higashiibaraki-gun, Ibaraki-ken

    (Received March 31, 2014)

    Primary containment vessel (PCV), reactor pressure vessel and pedestal in FukushimaDaiichi Nuclear power station units 1 through 3 have been exposed to severe thermal,chemical and mechanical conditions due to core meltdown events and seawater injections foremergent core cooling. These components will be immersed in diluted seawater withdissolved fission products under irradiation until the end of debris removal.Fresh water injected into the cores contacts with debris to cool, dissolves or erodes their

    constituents, mixed with retained water, and becomes "accumulated water" with radioactivenuclides. We have focused the leaching of fission products into the accumulated water underlower temperature (323 K). FUGEN spent oxide fuel segments were immersed to determinethe leaching factor of fission product and actinide elements.Since PCV made from carbon steel is one of the most important boundaries to prevent from

    fission products release, corrosion behavior has been paid attention to evaluate their integrity.Carbon steel specimens were immersion- and electrochemical-tested in diluted seawater withsimulants of the accumulated water at 323 K in order to evaluate the effect of fission productsin particular cesium and radiation.

    Keywords: Severe Accident, Fukushima Daiichi Nuclear Power Station, Spent Fuel Pool,Sea Water, Corrosion, Chloride Ion, Accumulated Water

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    目次

    1.序論-------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 11.1 背景---------------------------------------------------------------------------------------------------- 11.2 目的及び概要---------------------------------------------------------------------------------------- 1

    2.照射済燃料からの核種溶出試験-------------------------------------------------------------------------- 22.1 背景・目的------------------------------------------------------------------------------------------- 22.2 試験方法---------------------------------------------------------------------------------------------- 22.3 結果及び考察---------------------------------------------------------------------------------------- 4

    3.炭素鋼の腐食に及ぼす影響因子の評価----------------------------------------------------------------- 63.1 背景・目的------------------------------------------------------------------------------------------- 63.2 評価方法---------------------------------------------------------------------------------------------- 63.3 結果及び考察---------------------------------------------------------------------------------------- 10

    4.結論-------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 12

    謝辞-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 12

    参考文献-------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 13

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    Contents

    1. Introduction------------------------------------------------------------------------------------------------------11.1 Background----------------------------------------------------------------------------------------- 11.2 Objectives and Outline-------------------------------------------------------------------------- 1

    2. Leaching Behavior of Spent Oxide Fuel ----------------------------------------------------------------22.1 Background and Objectives-------------------------------------------------------------------- 22.2 Experimental Procedure------------------------------------------------------------------------ 22.3 Results and Discussion-------------------------------------------------------------------------- 4

    3. Corrosion Behavior of Carbon Steel in Artificial Seawater with Simulants---------------- 63.1 Background and Objectives-------------------------------------------------------------------- 63.2 Experimental Procedure------------------------------------------------------------------------ 63.3 Results and Discussion-------------------------------------------------------------------------- 10

    4. Conclusions------------------------------------------------------------------------------------------------------ 12

    Acknowledgements------------------------------------------------------------------------------------------------12

    References----------------------------------------------------------------------------------------------------------- 13

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    表リスト

    表 2.1 人工海水組成(アクアマリン)----------------------------------------------------------------------15表 2.2 燃料仕様--------------------------------------------------------------------------------------------------- 15表 2.3 試験片組成-------------------------------------------------------------------------------------------------15表 2.4 線量評価結果(アラニン線量計)-------------------------------------------------------------------16表 2.5 溶液測定結果(溶存酸素、過酸化水素、pH)-------------------------------------------------- 16表 2.6 ICP-AES 測定結果(試験前溶液及び燃料浸漬試験溶液)----------------------------------- 17表 2.7 ICP-MS 測定結果----------------------------------------------------------------------------------------17表 2.8 γ線及びα測定結果-------------------------------------------------------------------------------------18表 2.9 ICP-MS 測定結果に基づく FP 成分及び燃料由来成分の溶出率評価結果---------------- 18表 2.10 γ線測定結果に基づく Cs-134 及び Cs-137 の溶出率評価結果----------------------------18

    表 3.1 浸漬液条件-------------------------------------------------------------------------------------------------19表 3.2 浸漬試験に使用した燃料中のα放射能及び吸収線量(α線)(浸漬時間:100 時間)-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 19表 3.3 計算条件及び拡散係数----------------------------------------------------------------------------------19表 3.4 G 値--------------------------------------------------------------------------------------------------------- 20表 3.5 模擬 FP 添加人工海水浸漬試験による炭素鋼腐食量------------------------------------------- 20表 3.6 電気伝導率測定結果-------------------------------------------------------------------------------------21表 3.7 酸化還元電位(ORP)測定結果--------------------------------------------------------------------- 21表 3.8 腐食電位測定結果--------------------------------------------------------------------------------------- 21表 3.9 照射済燃料共存条件及びリファレンス条件における炭素鋼の腐食量--------------------- 21

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    図リスト

    図 2.1 共存試験片の形状----------------------------------------------------------------------------------------22図 2.2 試験片吊下げ用ガラス製台座------------------------------------------------------------------------ 22図 2.3 試験体系--------------------------------------------------------------------------------------------------- 23図 2.4 FP ガス放出率と Cs 溶出率との関係---------------------------------------------------------------23

    図 3.1 浸漬試験片の形状----------------------------------------------------------------------------------------24図 3.2 浸漬試験機器外観----------------------------------------------------------------------------------------24図 3.3 浸漬試験模式図-------------------------------------------------------------------------------------------25図 3.4 ISO 8407 に準拠した腐食量評価方法--------------------------------------------------------------25図 3.5 水に付与されるα線エネルギーの割合の比表面積依存性(α線エネルギー5MeV)-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 26図 3.6 破砕した「ふげん」照射済 MOX 燃料-------------------------------------------------------------26図 3.7 α線ラジオリシス計算体系の模式図----------------------------------------------------------------27図 3.8 水分解生成物の拡散モデル模式図-------------------------------------------------------------------27図 3.9 Cs 添加人工海水浸漬による炭素鋼腐食量-------------------------------------------------------- 28図 3.10 腐食生成物の SEM/EDS 分析結果(人工海水 200 倍浸漬液)----------------------------28図 3.11 腐食生成物の SEM/EDS 分析結果(人工海水 200 倍+Cs100ppm 添加浸漬液)-----29図 3.12 腐食生成物の XRD 測定結果(人工海水 200 倍浸漬液)----------------------------------- 29図 3.13 腐食生成物の XRD 測定結果(人工海水 200 倍+Cs100ppm 浸漬液)------------------ 30図 3.14 200 倍希釈人工海水と Cs 濃度が 100ppm の 200 倍希釈人工海水における分極曲線-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 30図 3.15 照射済燃料共存下における炭素鋼腐食量------------------------------------------------------- 31図 3.16 α線ラジオリシス計算結果--------------------------------------------------------------------------31図 3.17 100 時間浸漬時における水分解生成物濃度の線量率依存性-------------------------------- 32

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    1.序論

    1.1 背景

    平成 23 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波により、福島第一原子力発電所1~4号機は全交流電源を喪失した後、1~3号機は炉心冷却機能を喪失し、炉心溶融事故に

    発展した 1-1)。燃料、制御棒、炉内構造物等の混合物からなる融体の全部あるいは一部は圧力容器

    (以下、RPV)壁面を溶融貫通するか、制御棒駆動機構等の貫通部を経由し、RPV 外に漏出したと予想される。

    応急措置的な炉心冷却のために海水が使用された。RPV 内側には冷却のために現在も注水が続けられている。注入された冷却水は、炉心に残存あるいはペデスタルに落下したデブリ等に接触

    して核分裂生成物(以下、FP)等を溶出あるいは壊食させるとともに、滞留水と混合し、放射性物質を含む汚染水になる。滞留水には初期に注入した海水に由来する成分が残存している。デブ

    リ等との接触による FP 等の溶出は今後も継続すると予想され、その溶出特性が注目される。 原子炉建屋、格納容器(以下、PCV)、RPV、ペデスタル等の主要構造物は燃料デブリの取り出し作業が終了するまでの 20~25年間 1-2)にわたり、確実に健全性を維持する必要がある。特に、PCV は水張りに対する構造健全性と FP 等の包蔵性を発揮すること必要がある。PCV を構成する炭素鋼 1-3)は溶存酸素を含む水に浸漬されると腐食が起こりやすく、その腐食特性が注目される。

    循環注水冷却系の稼働により、汚染水のなかの塩化物イオン濃度と FP の濃度は漸減傾向にある。サンプル水の塩化物イオン濃度は、平成 25 年 4 月 1 日の時点では、100ppm 未満(200 倍希釈海水未満)に低下している 1-4)。また、平成 25 年 5 月 22 日現在の状況によると、PCV の基部は既に汚染水に浸漬された状態にあり、内部温度は 50℃未満である 1-5)。

    1.2 目的及び概要

    福島第一原子力発電所1~3号機の PCV は、事故事象進展にともない想定されていなかった水環境に曝されている。今後のPCV 内の継続的な冷却と燃料デブリ取り出し作業を展望すると、設計段階では想定していなかった長期にわたり、PCV の全部あるいは一部が汚染水への浸漬状態に置かれる見通しである。

    注入された冷却水はデブリ等と接触して成分を溶解し、同時に滞留している水と混合して汚染

    水になる。また、PCV はその内側に存在する FP を包蔵する重要な障壁であり、デブリ等が共存する汚染水に接触した状態にある。そこで、本報告書では、塩水浸漬によるデブリ等からの FP等の溶出特性評価に加え、汚染水を想定した水環境における PCV の腐食特性に及ぼす影響因子に関する基礎的知見を得ることを目的とする。なお、水環境は低温期に着目し、水温 50℃・200倍希釈海水を標準にした。

    2章では、低温期におけるデブリ等から汚染水(炉内水)への FP の移行に着目し、「ふげん」照射済燃料を使用して人工海水への浸漬を行い、溶出特性を評価する。

    3章では、汚染水を想定した人工海水を調整し、浸漬試験と電気化学試験によって炭素鋼の腐

    食特性を評価する。試験にあたっては、影響因子として溶存 FP と放射線の化学的影響に着目する。なお、「ふげん」照射済燃料を人工海水原液に浸漬したときの溶出成分(濃度)はセシウムが

    支配的であることが報告 1-6)されており、溶存 FP としてはセシウムに着目する。また、照射済燃料はα線強度が高いため、放射線の化学的影響はα線の影響に着目する。

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    2.照射済燃料からの核種溶出試験

    2.1 背景・目的

    福島第一原子力発電所(1F)事故では炉心溶融が発生し、原子炉の冷却機能維持のために建屋の外部から注水が行われ、その際、緊急措置として一時的に海水が使われた。デブリ等と海水が

    有意な時間直接的に接触するこの状態においては、デブリ等から核分裂生成物(FP)等が海水中に溶出することが想定される。FP 等の溶出に伴い、炉内水環境が変化することが予想され、原子炉格納容器(RPV)や圧力容器(PCV)の長期的な健全性に影響を与える可能性がある。今後実施される 1F からデブリ等を取り出すまでの多くの作業を安全に実施するためには、RPV やPCV の健全性に関する評価が不可欠であり、これら材料の腐食劣化損傷等を評価する上で、海水や照射済燃料由来の成分を含む炉内水の特性を把握することが重要である。そこで、FP 等の海水への溶出挙動に係る基礎的な知見を得ることを目的として、照射済燃料を 50℃の人工海水中に50、100 時間浸漬させる試験を実施した。溶液の組成分析により、溶出した核種を同定するとともに、その量を把握し、溶出率を評価した。

    2.2 試験方法

    2.2.1 試験概要 照射済燃料棒片を切断し、被覆管と分離した燃料ペレットを破砕した後、人工海水中に浸漬さ

    せ、得られた溶液の組成を分析した。浸漬試験の温度は 50℃とし、照射済燃料からの溶出特性に及ぼす時間の効果を観察するため、50 時間及び 100 時間の2ケース実施した。なお、浸漬にあたっては、PCV を構成する炭素鋼を共存させた条件とした。

    2.2.2 人工海水調製 浸漬試験に使用した人工海水は、八洲薬品株式会社製金属腐食試験溶液(アクアマリン)であ

    る。これは A 剤(粉末剤)、B 剤(液剤)及び 0.13N 水酸化ナトリウム溶液から構成されている。まず、A 剤を精製水 18L に溶解(完全溶解に約 1 時間)したのち、B 剤を添加して撹拌した。精製水をさらに加えて 20L とした(pH:7.3)のち、付属の水酸化ナトリウム溶液を 49mL 加え、pH をアクアマリンの推奨値である 8.2 に調整した。表 2.1 に調製した人工海水成分を示す。この人工海水を 200 倍に希釈し、浸漬試験に使用した。

    2.2.3 照射済燃料試料 本試験に供した照射済燃料試料は、新型転換炉原型炉「ふげん」で最高燃焼度を達成した集合

    体である PPFE09(以下、E09)において照射された MOX 燃料(製造時 Pu 富化度:5.6%)である。「ふげん」は減速材に重水、冷却材に軽水をそれぞれ利用しており、燃料集合体が圧力管内

    に装荷された重水減速沸騰軽水冷却圧力管型原子炉 2-1)である。「ふげん」は軽水炉ではないが、

    燃料棒の仕様及び使用環境は BWR のそれと近い。 燃料ペレットの原料粉は、マイクロ波加熱脱硝法による混合転換粉に天然 UO2粉末と乾式回収粉を混合したものを用いている。ペレットのノミナル形状は外径 12.4mm、高さ 13mm であり、密度は 95%TD(TD:理論密度)である。表 2.2 に燃料仕様を示す。 E09 は「ふげん」炉心の第 16~25 サイクルまで、炉心中心位置(21-69)で照射された。照射

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    日数は、1725EFPD(Effective Full Power Days)である。中間層燃料棒の照射履歴中における最大線出力は 34.1kW/m であり、最高約 45GWd/t の燃焼度を達成している。 本試験に用いた試料は中間層に装荷された燃料棒M-10で照射されたMOX燃料である。また、対象試料の燃焼度は約 41GWd/t である。なお、本試験に用いた試料は、照射終了後約 16 年間経過したものである。

    本試験対象試料の隣接位置から採取した試料における照射後試験において、燃料中心部ではFPガスバブルが析出していること、燃料最外周部や Pu スポット部では多孔質・細粒化を伴うリム組織に類似する高燃焼度組織がわずかに形成されていることが観察された 2-2)。また、被覆管内面

    には、Cs、Cd、Ag 等の沈着が認められている 2-3)2-4)。なお、燃料棒 M-7 における FP ガス放出率は約 21%2-5)であった。

    2.2.4 試料調製 中間層燃料棒 M-10 からダイヤモンドホイールを用いて乾式にて輪切り切断を実施した。その後、燃料ペレットを機械的に除去(脱ミート)し、表面積を増やす観点から小片に破砕した。破

    砕した燃料ペレット片の重量は、13.54g(50 時間浸漬用)及び 13.36g(100 時間浸漬用)である。

    2.2.5 共存炭素鋼 共存させた炭素鋼は STS410 製であり、寸法は 20mm×10mm×2mm である。炭素鋼の組成及び形状を表 2.3 及び図.2.1 に示す。共存させる炭素鋼試験片は、ガラス製の台座(図 2.2)にテフロンで被覆したワイヤで吊り下げ、試験片同士の接触がないように考慮した。なお、炭素鋼試験

    片面積に対する人工海水溶液量の比(比液量)は 40mL/cm2であった。

    2.2.6 浸漬試験 浸漬試験は、以下に列記するように、溶液組成、温度、装荷燃料ペレット片重量、共存する炭

    素鋼試験片数、液量等は固定し、溶出に及ぼす時間の効果を観察するため、時間をパラメータ(ケ

    ース①:50 時間浸漬、ケース②:100 時間浸漬の2ケース)にした。 ・溶液組成:人工海水 200 倍希釈 ・温度:50℃ ・時間:50、100 時間 ・装荷燃料ペレット片重量:13.54g(50 時間)、13.36g(100 時間) ・共存する炭素鋼試験片数:4 枚 ・液量:840mL ・バブリング:10mL/min ・溶液攪拌:なし

    また、浸漬試験は照射燃料試験施設(AGF)のセル内において実施した。

    2.2.7 加熱体系 図 2.3 に加熱試験体系を示す。1L 用のセパラブルフラスコ・還流管・熱電対・バブリング用チューブからなる。これらをヒーター上に設置し、加熱試験に供した。その際、セパラブルフラス

    コをステンレス製のブロックに装荷し、保温性を高めるとともに、転倒防止を図った。なお、ス

    テンレスブロックの温度もモニターした。

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    2.2.8 分析方法 各種液性を以下の方法で測定した。

    ①溶存酸素濃度:デジタル多項目水質計(共立理化学研究所製ラムダ 9000) ②過酸化水素濃度:デジタル多項目水質計(共立理化学研究所製ラムダ 9000) ③塩化物イオン濃度:デジタル多項目水質計(共立理化学研究所製ラムダ 9000) ④pH:pH メーター ⑤金属元素濃度:ICP-AES 及び ICP-MS ⑥α核種分析:α線スペクトロメーター

    ⑦γ核種分析:γ線スペクトロメーター

    2.3 結果及び考察

    2.3.1 線量評価 アラニン線量計を液中の試験片装荷位置に 1 時間固定し、試験片が受ける線量を測定した。測定は、JEOL JES-FR30:FREE RADICAL MONITOR を用いた。表 2.4 に測定結果を示す。試料No.3 はアラニン線量計の移動の際、AGF におけるセル試料移動装置の不具合で 40 分程度余計にセル内線量に曝されている。これらの結果から、試験片の受けた照射量は 4Gy/h 程度であると求められた。アラニン線量計で評価できる照射線量の下限値は 10Gy と言われており、本測定結果は参考値扱いとなるが、本試験で浸漬した試験片が受けた放射線は一時間あたり数 Gy 程度であると考えられる。

    2.3.2 溶存酸素・過酸化水素濃度・pH 表 2.5 に浸漬試験前後における溶存酸素・過酸化水素濃度・pH をそれぞれ示す。溶存酸素は試験条件によらず、浸漬試験前と試験後の値に大きな違いはなく、8~9mg/L である。pH 値についても、試験前後とも 6.1 から 6.2 程度でほとんど変化はないが、50 時間浸漬した条件では、6.8までわずかに上昇した。過酸化水素は本試験条件下では検出できなかった。

    2.3.3 ICP-AES 測定結果 表 2.6 に ICP-AES による海水成分の分析結果を示す。長時間浸漬に伴う水分の蒸発により海水成分のわずかな高濃度化の傾向も見られるが、浸漬試験前後で大きな成分変化は認められない。

    2.3.4 ICP-MS 測定結果 表 2.7 に ICP-MS による燃料及び FP 成分の分析結果を示す。有意な FP 元素は Cs である。50時間浸漬と 100 時間浸漬を比較すると、50 時間浸漬液における FP の含有量が多く、燃料成分も検出された。

    2.3.5 放射線計測測定結果 表 2.8 にγ線スペクトロメトリ及びα線スペクトロメトリの測定結果を示す。Cs、Am、Pu を検出した。ICP-MS の測定結果と同様に、50 時間浸漬溶液における放射能量(及び重量)は、100時間浸漬溶液よりも高い値を示した。

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    2.3.6 溶出挙動 ICP-MS により測定した結果に基づき、本浸漬試験における溶出率を評価した。溶出率の指標としては、地層処分研究分野で使用されている下記の FIAP(Fraction of Inventory in AqueousPhase)の値 2-6)を用いた。ここで、MAQは溶液中の核種重量、MSNFは浸漬前試料中の核種重量である。

    100SNF

    AQ

    MM

    FIAP (1)

    表 2.9 は、本試験における FIAP の評価結果とともに、地層処分環境を想定した溶液中での燃料の浸漬試験(先行研究)により得られた浸漬直後(数日以内)の FIAP の値 2-6)を示したものである。100 時間浸漬で検出された Rb-85 及び Cs-133 の FIAP 値は文献値を概ね同等の値を示す結果が得られた。50 時間浸漬の結果では検出された核種は多いが、Cs の測定結果を除き、文献値と同等かそれ以下の値を示した。Cs については、100 時間浸漬の結果は文献値よりもわずかに高い値を示した。表 2.10 には、γ線計測で得られた Cs-134 及び Cs-137 の含有量から FIAP を求めた結果である。ICP-MS で測定した Cs-133 と同等の結果が得られた。Cs は揮発性の高い元素であり、照射中に燃料ペレット内で生成した Cs の一部は、ペレット外へ放出される。特に、照射中に 1200℃以上の温度になる燃料ペレット領域からの Cs 放出挙動は、FP ガスである Xeのそれと類似していることが知られており、結果として Cs の燃料ペレットからの放出は FP ガスの放出経路に従うと考えられている 2-7)。このため、地層処分環境を想定した溶液における燃料

    浸漬試験において、Cs の溶出率は、FP ガス放出率と相関があることが報告されている 2-8)。図2.4 は、本試験で得られた Cs 溶出率(ICP-MS 分析表 2.9)及びγ線核種分析結果(表 2.10)から評価した値)と推定局所 FP ガス放出率との関係を先行研究結果 2-9)2-10)2-11)と比較したものである。図のように、本試験結果は、地層処分環境を想定した溶液中における浸漬試験結果から得ら

    れた FP ガス放出率と Cs の溶出率との関係と一致する傾向を示すことがわかった。 50 時間浸漬と 100 時間浸漬で核種の存在量が異なっている(50 時間浸漬条件の溶液中に含まれる核種量が多い)原因は明確ではないが、燃料の粉砕の仕方(程度)に起因した試料の表面積

    の大小が、溶出挙動に影響している可能性が考えられる。

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    3.炭素鋼の腐食に及ぼす影響因子の評価

    3.1 背景・目的

    照射済燃料共存下での塩水浸漬において、照射燃料に起因する材料の腐食挙動に及ぼす主な効

    果としては、核分裂生成物(Fission Products:FP)による化学的効果と、燃料から放出される放射線の化学的効果が挙げられる。燃料浸漬における炭素鋼の腐食に及ぼす影響因子を抽出する

    ため、それぞれの効果が炭素鋼の腐食挙動に及ぼす影響を評価することとした。

    3.2 評価方法

    FP の化学的効果については、照射済燃料の塩水浸漬試験 3-1)において抽出量の多い Cs を模擬FP として選択し、Cs 濃度を変えた人工海水を用いて浸漬試験を行い、浸漬前後の重量変化等を確認することとした。

    また、燃料からの放射線の化学的効果については、燃料浸漬試験時の放射線状況を推定し、こ

    れをパラメータとしてラジオリシス計算を行い、放射線により生成する物質が腐食挙動に及ぼす

    影響を評価することとした。

    3.2.1 腐食に及ぼす FP の影響評価方法3.2.1.1 浸漬条件 FP の化学的効果を確認するための浸漬試験については、使用済燃料から塩水に溶出する Cs が数 ppm 程度 3-1)であることから、模擬 FP として添加する Cs 濃度は 0、10、100ppm を目標とした。浸漬時間については、2 章の照射済燃料からの核種溶出試験と合わせた 50、100 時間とより長時間の腐食挙動確認のため 250 時間を追加した 3 条件を設定し、浸漬液の温度はいずれも 50℃とした。これら浸漬条件を表 3.1 に示す。3.2.1.2 浸漬液の調製 浸漬液は 2.2.2 項と同様の手順で pH=8.2 の人工海水を調製した後、これを精製水で 200 倍に希釈したものをベースとした。Cs の添加については、金属 Cs 単体を直接水に溶解した場合、水酸化セシウムと水素を発生し、爆発的な反応を起こすとともに、溶液の水素イオン濃度(pH)が大きく変化してしまうため、化合物(セシウム塩)を用いることとした。水酸化セシウムや炭酸

    セシウムについては、Cs 濃度が 100ppm になるよう人工海水に溶解した際、pH が 10 以上になり、浸漬条件を設定することが困難になるため、塩化セシウム(CsCl)を用いることとした。CsClを添加した場合、人工海水中の塩化物イオン濃度が変化するが、200 倍希釈人工海水における塩化物イオン濃度が 100ppm 程度であるのに対し、Cs が 100ppm になるよう CsCl を添加した際の塩化物イオン増加量は Cs(原子量 132.91)と Cl(原子量 35.45)の原子量比から 27ppm 程度と評価され、腐食挙動に対する大きな影響はないと推測されたが、浸漬試験後の重量変化を評価

    する際に考慮することとした。

    3.2.1.3 供試材 浸漬試験に用いる試験片は 2.2.5 項と同様の炭素鋼 STS410 から製作し、図 2.1 に示す試験片に加え、40mm×10 mm×2mm の試験片を用いた(形状を図 3.1 に示す)。試験片の表面及び端面はいずれも#600 相当の研磨仕上げとした。

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    3.2.1.4 浸漬試験方法 浸漬試験の試験体系(機器外観)を図 3.2 に、その模式図を図 3.3 に示す。セパラブルフラスコ、トラップ球、冷却管、熱電対、バブリング用チューブからなっており、これらをヒーターに

    て加熱した。セパラブルフラスコ及びヒーターはステンレスバケツ内に設置し、保温性を高める

    とともに、転倒防止及び浸漬液の漏洩防止を図った。炭素鋼試験片は、テフロン製の吊り下げ治

    具にて吊り下げられ、試験片同士の接触がないように考慮した。バブリングについては、フロー

    メータを用いたが、事前にメスシリンダーを用いて 10 mL/分程度になる泡の量を確認した。試験片は各条件 3 枚ずつ浸漬試験に供することとした。浸漬液の量については、浸漬液量(mL)を浸漬試験片の表面積(cm2)で除した値を比液量(mL/cm2あるいは cm3/cm2)といい、金属材料などの腐食防食試験では一般的にこれを 20 以上で実施しているが、本試験では 40 以上になるよう十分な浸漬液を用意した。

    浸漬後試験後に腐食量を評価するための重量測定については、、JIS H 8502(めっきの耐食性試験方法)及び ISO 8407(Corrosion of metals and alloys – Removal of corrosion products fromcorrosion test specimens の規定に準拠し、下記手順により除錆及び重量測定を行った。①除錆液(腐食生成物除去液):クエン酸水素ニアンモニウム[(NH4)2HC6H5O7]とする。②除錆液作成条件:クエン酸水素ニアンモニウムを 200 g 秤量し、蒸留水を加えて 1000 ml の溶液(腐食生成物除去液)を作成する。

    ③除錆手順は以下の通りとする。

    ・浸漬後の試験片の重量を測定する。

    ・浸漬後の試験片と無垢(未浸漬材)の試験片を同時に 70℃に加熱した腐食生成物除去液に 15秒間浸漬させる。

    ・ブラシで軽く試料表面をこすり、100℃の熱湯中で洗浄し、乾燥後の重量を測定する。・70℃に加熱した腐食生成物除去液に 45 秒間浸漬させる。・ブラシで軽く試料表面をこすり、100℃の熱湯中で洗浄し、乾燥後の重量を測定する。・70℃に加熱した腐食生成物除去液に 1 分間浸漬させる。・ブラシで軽く試料表面をこすり、100℃の熱湯中で洗浄し、乾燥後の重量を測定する。・以下 1 分間ごとに上記を繰り返す。④除錆作業は無垢の試験片も同時に実施し、浸漬液の除錆能力を確認する。

    ⑤上記除錆作業を最低 4 回繰り返す。

    3.2.1.5 評価項目 炭素鋼試験片については、上記の除錆及び重量測定データから ISO 8407 に準拠して腐食量を評価した。図 3.4 に ISO 8407 に規定されている除錆による試験片の重量変化の模式図を示す。図中の A は腐食試験後の試料重量であり、除錆ごとに重量が減少し、B から C まではほぼ一定の勾配に沿って減少する。この B から C にかけての重量減少は試験片の素地が腐食生成物除去液で浸食されている領域である。そこで、BC ラインを原点まで外挿した値である D が素地自体の重量となる。図 3.4 の腐食試験前の重量(A)と D の差をとることで、腐食による正味の重量減少量を評価した。

    また、浸漬液については、下記項目について測定を行った。

    ①溶存酸素濃度:光学式溶存酸素計(HAMILTON 製 VISIFERM DO) ②塩化物イオン濃度:デジタル多項目水質計(共立理化学研究所製ラムダ 9000) ③pH:pH メーター ④導電率:マルチ水質計(東亜 DKK 製 MM-60R)

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    ⑤腐食電位測定:ポテンショガルバノスタット

    (プリンストンアプライドリサーチ社製 Versastat 4) 炭素鋼試験片については、200 倍希釈人工海水と Cs 濃度が 100ppm の 200 倍希釈人工海水における腐食電位を 50℃で測定した。繰返し数は2とした。 浸漬試験後の浸漬液に沈殿した腐食生成物(錆)については、XRD 解析及び SEM/EDS による元素分析を実施した。

    3.2.2 腐食に及ぼす放射線の影響評価方法3.2.2.1 照射済燃料共存が腐食に及ぼす影響の評価方法 照射済燃料共存の影響を模擬した浸漬試験を実施した。試験は2章で共存炭素鋼として使用し

    た試験片の重量測定を測定し、腐食量を評価した(浸漬試験条件は 2.2.6 項参照)。照射済燃料共存条件における炭素鋼の浸漬試験と同等の条件で、燃料のない体系での浸漬試験をコールド環境

    下で実施しリファレンスとした。1 回の浸漬試験で 4 個の炭素鋼試験片を使用した。照射済燃料共存条件の 50 時間及び 100 時間浸漬試験において、いずれも 1 個ずつが吊り下げ用ガラス製台座の脚に接触していることがわかった。これらは隙間腐食の影響を受けている可能性があること

    から、評価対象から除外した。なお、除錆には腐食生成物除去液としてクエン酸水素ニアンモニ

    ウムを用いた。浸漬後の試験片の重量を測定した後、70℃に加熱した腐食生成物除去液に 1 分間浸漬させた。その後、ブラシで軽く試料表面をこすり、100℃の熱湯中で洗浄し、乾燥後の重量を測定した。これを繰り返し、除錆による重量の経時変化から浸漬試験直後の素地の重量を評価

    し、試験前の重量と比較することにより腐食量を評価した。なお、照射済燃料共存環境下での試

    験片における除錆作業はグローブボックス内で実施する必要があることから、腐食生成物除去液

    を通常使用量の 500mL よりも少ない 150mL で行った。腐食生成物除去液の量を変えると腐食量評価に影響がある(少ない腐食生成物除去液で除錆すると素地の溶解速度が低下し、腐食量の評

    価値が高い値を示す傾向がある)ことから、リファレンス条件の試験片における除錆作業も腐食

    生成物除去液を 150mL とした。

    3.2.2.2 放射線の種類による影響の評価方法 表 2.4 に示したアラニン線量計による測定結果から、試験片周辺におけるγ線の線量率は数Gy/h 程度と十分小さい値であると評価されたことから、この試験体系におけるγ線の影響は無視できると考えられる。

    一方、照射済燃料から放出されるα線量の評価については、実体系での実測は困難である。そ

    こで、燃料からのα線ラジオリシス効果が腐食におよぼす影響について、解析コードによる人工

    海水の放射線分解挙動を「2.照射済燃料からの核種溶出試験」で行った浸漬試験を模擬した体系において計算するとともに、炭素鋼の海水腐食におよぼす化学的影響を評価した。

    燃料浸漬試験に使用した「ふげん」照射済 MOX 燃料のα放射能を ORIGEN2 コードにより求めた。浸漬試験に使用した燃料重量 13.45g(50 時間試験と 100 時間試験の平均値)に対するα放射能(トータル放射能 1×107 Bq 以上のアクチニド核種)を表 3.2 に示す。α放射能に起因した浸漬溶液に対する吸収線量についての先行研究例として、Sugo ら 3-2)は、加速器から発生するHe+ビームを用いたα線照射試験において、α線が衝突した物体に全てのエネルギーが付与されると仮定してα線に起因する吸収線量を評価した。この導出方法に基づき、Watanabe ら 3-3)はAm-241 を吸着剤に内包させて行ったα線照射試験において、α核種周囲の物質(吸着剤)にα線の全てのエネルギーが付与されると仮定してその吸収線量を評価した。このほか、Magnusson

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    ら 3-4)及び Mezyk ら 3-5)も同様の仮定のもと吸収線量を評価していると考えられる。本評価においても同様に、燃料周囲の物体(海水)にα線の全てのエネルギーが付与されると仮定し、α線に

    起因する吸収線量を以下のように算出した。なお、α線放出率とα線エネルギーは文献 3-6)の値を

    使用した。また、浸漬試験は海水 840mL を用いて実施しているため、水の質量を 840g とした。「吸収エネルギー(J/kg)」=「α粒子 1 つあたりのエネルギー(MeV)」×1.60×10-13(J/MeV)×「放射能(Bq =(崩壊/秒))」×「1 崩壊あたりのα線放出率(%)」÷ 100×「照射時間(秒)」÷「水の質量(kg)」 α線に起因する吸収線量を表 3.2 に示す。燃料全量が水中へ完全溶解していると仮定する場合、α線吸収線量は 100 時間当たり約 9.4MGy(94kG/h)という結果が得られた。 照射燃料が粒子などの塊状で存在する場合は、α線のエネルギーは固相(照射燃料)と水の両

    方に付与される。また、粒子状照射燃料の粒径増加に伴い、水に付与されるα線エネルギーの割

    合が減少することが報告されている 3-7)。文献 3-7)に記述のある単一粒子が水中に存在する場合に

    おける水に付与されるα線エネルギーの割合の検討結果から、α線(5MeV)について燃料粒子の比表面積と水に付与されるエネルギーの割合(=Energy Fraction in Water)の相関を整理したものを図 3.5 に示す。この図から log(比表面積)と log(Energy Fraction in water)は比例関係であるとみなすことができる。この関係を利用し、燃料ペレット(外径 12.4mm、高さ 12mm、比表面積 0.49mm-1(log(比表面積)=-0.31))を想定した場合、水に付与されるα線エネルギーの割合は約 0.1%(log(Energy Fraction in water)=-3.09):94Gy/h となる。また、図 3.5 及び表 3.2 から、直径 1mm 及び直径 100μm破砕片相当の燃料からの線量率はそれぞれ 940Gy/h、9.4kGy/h と求められた。

    「2.照射済燃料からの核種溶出試験」とほぼ同一の仕様、燃焼度の照射済燃料を同様の手法で破砕した試料の金相観察結果を図 3.6 に示す。わずかな微小片がみられるが、ほとんどの破砕片は円相当径で 200μm 以上の大きさである。そこで、上記評価結果を踏まえ、ラジオリシス計算に使用するα線吸収線量を燃料ペレット状態から直径 100μm 破砕片までの範囲での条件と設定し、①9.4kGy/h、②940Gy/h、③94Gy/h の 3 ケースとした。 ラジオリシス計算は「Facsimile コード(MCPA Software, UK)」を用いて実施した。計算体系は図 3.7 に示す2章における試験ジオメトリを想定して設定し、セパラブルフラスコ底部に存在する線源(照射済燃料)から距離 L の範囲を照射領域、それより上の溶液部をバルク領域と定義した。計算では化学種の空間分布を考慮できていないため、まず、照射領域においてα線のエネ

    ルギーが均一に付与されると仮定して発生する水分解生成物の過酸化水素、水素、酸素

    (H2O2(a)・H2(a)・O2(a))の濃度を計算した。これらの水分解生成物が、それぞれ H2O2(b)・H2(b)・O2(b)という化学種に変化すると仮定し、バルク領域中で均一濃度となるとみなして計算を実施した(図 3.8)。これは、拡散によりバルク領域へ移行することを模擬している。これら化学種のバルク領域への移行を、フィックの法則に基づく拡散速度により化学種(a)から化学種(b)に変化するものとしてモデル化した。バルク領域の H2O2(b)・H2(b)・O2(b)は照射領域におけるH2O2(a)・H2(a)・O2(a)とは便宜上別々の化学種と見なしているため、照射領域におけるラジオリシス反応には寄与しない。また、体系中の鉄イオンの存在は考慮していない。このため、本計算

    では、水分解生成物の過酸化水素、水素、酸素の消滅に係るラジオリシス反応は考慮しておらず、

    α線のエネルギー付与により溶液中に増加する水分解生成物を評価してしている。計算に必要な

    各種物性値は文献値を使用して解析を実施した。表 3.3 及び表 3.4 に計算に使用した各種条件、物性値を示す。

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    3.3 結果及び考察

    FP の化学的効果評価のための浸漬試験及び放射線化学的影響評価の計算結果、及びそれぞれの腐食挙動に対する影響について以下に述べる。

    3.3.1 腐食に及ぼす FP の影響3.3.1.1 腐食量

    浸漬前後の重量測定から求めた腐食量を図 3.9 に示す。浸漬時間に対する腐食量については、浸漬液の種類によらず浸漬時間の増加とともにほぼ直線的に増加する傾向が見られた。また、各

    浸漬液条件における腐食量と腐食速度を整理したものを表3.5に示すが、腐食速度は人工海水200倍希釈のみの浸漬液においても 0.32~0.42 mm/y のばらつきがあり、他の浸漬液条件の結果は概ねこの範囲に収まるため、模擬 FP 添加による有意な腐食速度への影響はないと考えられる。

    3.3.1.2 浸漬液分析結果 表 3.6 に、200 倍希釈人工海水と Cs 濃度が 100ppm の 200 倍希釈人工海水における電気伝導率を示す。Cs 濃度が 100ppm の 200 倍希釈人工海水は 200 倍希釈人工海水に CsCl 試薬を添加しているため、存在するイオンが相対的に多く、電気伝導率はわずかに高い値を示した。表 3.7は、酸化還元電位(ORP)の測定結果を示したものである。いずれの溶液も-400mV 程度であり、概ね同程度の値を示す結果となった。

    3.3.1.3 錆の分析結果 人工海水 200 倍希釈及び Cs 濃度 100ppm での浸漬試験後の浸漬液を濾過し、取出した腐食生成物(錆)をカーボンテープに付着させて SEM による微細組織及び EDS による元素分析結果を図 3.10 及び図 3.11 に示す。SEM 観察結果では、錆の形状について Cs 添加による明確な違いは見られなかった。また、EDS による元素分析結果については、カーボンテープを使用しているため C が検出されているが、それ以外には Fe と O のみが検出され、浸漬液中の Cl や模擬 FP として添加した Cs は検出されなかった。これらは、Cs 添加の有無に依存しない結果となっており、浸漬液の違いによる錆の構成元素への影響は小さいことが明らかとなった。

    図 3.12 及び図 3.13 は、200 倍希釈人工海水及び Cs 濃度が 100ppm の 200 倍希釈人工海水を用いた浸漬試験で発生した錆の XRD 測定結果を示したものである。いずれの錆もマグネタイト(Fe3O4)及びヘマタイト(Fe2O3)からなる酸化物とゲーサイト(α-FeOOH)及びレピドクロサイト(γ-FeOOH)からなるオキシ水酸化物で構成されていることがわかった。これらの錆の結晶構造上からは、溶液の違いによる影響は認められなかった。

    3.3.1.4 腐食電位測定結果 作用電極に試験片(表面積 1cm2)を固定し、参照電極はルギン細管付き Ag/AgCl、対極は Ptをそれぞれ用いた。試験片を溶液に挿入してから 2 分間経過した後、電位を-0.9V から-0.3V(vs.Ag/AgCl)まで 50mV/min の速度で掃引した。図 3.14 に 200 倍希釈人工海水と Cs 濃度が 100ppmの 200 倍希釈人工海水における分極曲線を示す。それぞれの溶液で 2 回測定を実施したところ、ほぼ同様の曲線形状を示す結果が得られた。また 200 倍希釈人工海水における曲線と Cs 濃度が100ppm の 200 倍希釈人工海水における曲線とで、明確な差異は認められなかった。表 3.8 に腐食電位測定結果を示す。いずれの測定結果も-420mV(vs. Ag/AgCl)程度であり、得られた腐食電位に溶液の違いは認められなかった。

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    3.3.1.5 FP の化学的効果 FP の化学的効果を確認するために、本試験では模擬 FP として Cs を添加した人工海水を用いて炭素鋼の浸漬試験を実施した。浸漬による炭素鋼腐食量変化や浸漬液の電気化学特性、さらに

    は腐食生成物の分析を実施したが、そのいずれにおいても Cs 添加量に対する明確な違いは認められなかった。このことから、炭素鋼の塩水浸漬において、FP の化学的効果が腐食挙動に及ぼす影響は小さいと考えられる。

    3.3.2 腐食に及ぼす放射線の影響3.3.2.1 照射済燃料共存が腐食に及ぼす影響の評価 表 3.9 に照射済燃料共存条件及びリファレンス条件における炭素鋼の腐食量を示す。また、図3.15 にはこれらのデータをプロットしたものである。いずれの条件においても、腐食量は概ね同程度の値を示しており、照射済燃料の共存が炭素鋼の腐食量に与える明確な影響は認められなか

    った。なお、3.3.1 項で示した腐食量に比べて、全体的に高いが高めの傾向があるが、これらは、3.2.2.1 項で示したとおり、腐食生成物除去の使用量が異なることが原因であると考えられる。3.3.2.2 放射線(特に、α線)による影響の影響評価 図 3.16 は α 線吸収線量が 94Gy/h(燃料ペレット形状相当)、940Gy/h(直径 1mm 破砕片相当)、9.4kGy/h(直径 100μm破砕片相当)におけるバルク領域での水分解生成物(過酸化水素:H2O2、水素:H2、酸素:O2)の濃度変化を示す。いずれの条件においても、各生成物はほぼ直線的に上昇している。図 3.17 は 100 時間浸漬時における水分解生成物の線量率依存性を示したものである。炭素鋼の腐食挙動に影響をおよぼす過酸化水素濃度は、線量率の増加により単調に

    増加し、燃料形状がペレット相当で約 0.01ppm、直径 1mm 破砕片相当で約 0.1ppm、直径 100μm破砕片相当で約 1ppm となった。バルク領域における各種水分解生成物の濃度は、炭素鋼試験片周辺での値を見なせる。3.2.2 項で述べたとおり、本計算結果はラジオリス反応における水分解生成物の消滅反応を考慮していない。上記評価結果から、炭素鋼試験片周辺における過酸化水素濃

    度は 1ppm よりも小さい値であると予想されることから、炭素鋼腐食挙動におよぼす α 線ラジオリシスの影響は小さいと考えられる。

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    4.結論

    福島第一原子力発電所1~3号機の PCV、RPV、ペデスタル等の主要構造物は、事故事象進展にともない熱的・化学的・機械的に厳しい環境に曝されている。今後の PCV 内の継続的冷却と燃料デブリ取り出し作業を展望すると、主要構造物の全部あるいは一部は長期にわたって水浸漬

    状態に置かれる見通しである。

    炉心に注入された冷却水はデブリ等と接触して成分を溶出あるいは壊食させ、滞留水と混合し

    て汚染水になる。そこで、低温期におけるデブリ等から汚染水への核分裂生成物の移行に着目し

    た。「ふげん」照射済燃料を使用し、人工海水 200倍希釈水溶液に 50℃で 50 時間と 100 時間浸漬した。溶出溶液を分析した結果、溶出元素はセシウムが支配的であり、その他の元素は非常に

    少なかった。また、浸漬した照射済燃料中のセシウムインベントリに対する溶出率は、約 8%程度であった。

    PCVはその内側に存在する核分裂生成物を包蔵する重要な障壁であり、汚染水との接触による腐食特性が注目される。そこで、汚染水環境を模擬した人工海水を調整し、浸漬試験と電気化学

    試験によって炭素鋼の腐食特性を評価した。試験にあたっては、影響因子として溶存 FP(特に、セシウム)と放射線の化学的効果に着目した。

    人工海水 200 倍水溶液を基準にセシウム濃度を 0~100ppm の範囲で変えた溶液に対し、炭素鋼を 50℃で 50 時間・100 時間・250 時間浸漬し、腐食速度を測定した。その結果、腐食速度に及ぼすセシウムの影響は観察されなかった。

    また、照射済燃料を共存させた人工海水 200倍水溶液において炭素鋼の浸漬試験を行った。本報告書の試験条件に対しては、炭素鋼の腐食速度に及ぼす照射済燃料共存の影響は認められなか

    った。

    謝辞

    Facsimile コードによる計算は、安全研究センター軽水炉長期化対応研究ユニット材料・水化学研究グループの端邦樹氏に御協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

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    参考文献

    1-1) 東京電力株式会社、「福島原子力事故調査報告書」、2012 年 6 月 20 日(2012). http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/interim/index-j.html(東電 HP) (アクセス日:2012 年 6 月 21 日).1-2) 原子力災害対策本部政府・東京電力中長期対策会議、「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」、2011 年 12 月 21 日 (2011). http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/conference-j.html(東電 HP) (ファイル名:111221c.pdf、アクセス日:2012 年 10 月 24 日).1-3) 深谷祐一、「福島第一原子力発電所の腐食課題への取組状況」、公益社団法人腐食防食学会第 60 回材料と環境討論会、講演番号 A-101 (2013).1-4) 東京電力株式会社、「循環注水冷却の小ループ化について」、第2回汚染水処理対策委員会、2013 年 5 月 16 日開催(【資料2】現在の対応の進捗状況等について) http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/c130516_04-j.pdf (ファイル名 c130516_04-j.pdf、アクセス日:2013 年 5 月 17 日).1-5) 東京電力株式会社、「16.各号機のプラントデータ」、第3回汚染処理対策委員会、2013 年 5 月 30 日開催(【資料3】参考資料集) http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/c130530_05-j.pdf (ファイル名 c130530_05-j.pdf、アクセス日:2013 年 6 月 3 日).1-6) 田中康介、須藤光男、大西貴士、圷葉子、吉武庸光、山下真一郎、関岡健、石ヶ森俊夫、大林弘、小山真一、「照射済燃料を浸漬させた人工海水の組成分析」、JAEA-Research 2013-036(2013).2-1) S. Uematsu et al., Proc. Int. Topical Meeting on Light Water Reactor Fuel Performance,(1997), p.115-125.2-2) 田中康介、前田宏治、「ふげん」高燃焼度 MOX 燃料 E09 における燃料ペレットの組織変化と元素分布、JNC TN9400 2004-025 (2004).2-3) 田中康介、前田宏治、「ふげん」高燃焼度 MOX 燃料 E09 における被覆管内外面反応層の形成、JNC TN9430 2004-005 (2004).2-4) K. Tanaka et al., Fuel-cladding chemical interaction in MOX fuel rods irradiated tohigh burnup in an advanced thermal reactor, J. Nucl. Mater. 357 (2006) pp. 58-68.2-5) 生澤佳久他、「ふげん」照射用ガドリニア燃料集合体の照射後試験報告書(II)燃料要素破壊試験(その 1)、JNC TN8410 2003-015 (2004).2-6) D. Serrano-Purroy et al., Instant release fraction and matrix release of high burn-upUO2 spent nuclear fuel: Effect of high burn-up structure and leaching solution composition, J.Nucl. Mater. 427 (2012) pp. 249-258.2-7) C. T. Walker et al., Observations on the release of cesium from UO2 fuel, J. Nucl. Mater.240 (1996) pp. 32-42.2-8) P. Carbol et al., Spent Fuel as Waste Material, Comprehensive Nuclear Materials, vol.5,Elsevier, 2012, pp. 389-420.2-9) L. Johnson et al., Estimates of the instant release fraction for UO2 and MOX fuel at t=0,Nagra Technical Report, NTB 04-08, 2004.

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    2-10) L. Johnson et al., Rapid aqueous release of fission products from high burn-up LWRfuel: Experimental results and correlations with fission gas release, J. Nucl. Mater. 420(2012) pp.54-62.2-11) 田中康介、須藤光男、大西貴士、圷葉子、吉武庸光、山下真一郎、関岡健、石ヶ森俊夫、大林弘、小山真一、「照射済燃料を浸漬させた人工海水の組成分析」、JAEA-Research 2013-036(2013).3-1) 田中康介、須藤光男、大西貴士、圷葉子、吉武庸光、山下真一郎、関岡健、石ヶ森俊夫、大林弘、小山真一、「照射済燃料を浸漬させた人工海水の組成分析」、JAEA-Research 2013-036(2013).3-2) Y. Sugo et al, Radiolysis study of actinide complexing agent by irradiation with heliumionbeam, Rad. Phys. Chem., 78 (2009) pp. 1140-1144.3-3) S. Watanabe et al., Alpha-ray irradiation on absorbents of extraction chromatographyfor minor actinide recovery, 12th IEMPT, 2012.3-4) D. Magnusson et al, Investigation of the radiolytic stability of a CyMe4-BTBP basedSANEX solvent, Radiochim. Acta 97 (2009) pp. 497-502.3-5) S. P. Mezyk et al, Alpha and gamma radiolysis of nuclear solvent extractionligands used for An(III) and Ln(III) separations, J. Radioanal. Nucl. Chem., 296 (2013) pp.711-715.3-6) 独立行政法人日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門核データ評価研究グループ、http://wwwndc.jaea.go.jp/NuC/index_J.html(JAEA HP).3-7) Miller WH et al, Dosimetry Modeling for Predicting Radiolytic Production at the SpentFuel - Water Interface, 11th International High-Level Radioactive Waste ManagementConference (IHLRWM), pp. 698-711. American Nuclear Society, Las Vegas, NV, 2006.3-8) 山口彦之、「放射線生物学」、裳華堂.3-9) M. Domae et al., Modeling of primary chemical processes of water radiolysis andsimulation by spur diffusion model, Radiat. Phys. Chem. 48 (1996) pp.487-495.3-10) 山下真一、「HIMAC からの GeV 級重粒子線を用いた水分解の研究:収量測定とシミュレーションによるトラック構造の検討」、東京大学博士論文、(平成 20 年).3-11) 独立行政法人日本原子力研究開発機構、平成 19 年度地層処分技術調査等委託費高レベル放射性廃棄物処分関連 処分システム化学影響評価高度化開発 報告書 平成 20 年 3 月.

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    表 2.1 人工海水組成(アクアマリン)元素 濃度(mg/L)Na 10862Cl 19451S 910

    Mg 1263Ca 394Sr 14K 448C 28Br 67B 4.1F 1.3

    表 2.2 燃料仕様外径 1.24 cm密度 95 %TDPu 富化度 5.64 wt%U 同位体組成(wt%)U-234 0.01U-235 0.75U-236 0.03U-238 99.21Pu 同位体組成(wt%)Pu-238 1.00Pu-239 65.84Pu-240 22.94Pu-241 6.94Pu-242 3.28Am-241 (wt%) 1.60

    表 2.3 試験片組成鋼種 C Si Mn P S Al Cu Ni Cr Mo N

    STS410 0.21 0.24 0.80 0.015 0.008

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    表 2.4 線量評価結果(アラニン線量計)No. 浸漬試験 線量率 照射場条件

    hr Gy/h1 100 3.8 燃料、人工海水装填後、試験片装荷位置で保持(1 時間)2 3.7 浸漬試験後、試験片を取り出し、試験片装荷位置で保持(1 時間)

    350

    5.4 燃料、人工海水装填後、試験片装荷位置で保持(1 時間)ただし、コンベア内で 40 分間放置

    4 3.8 浸漬試験後、試験片を取り出し、試験片装荷位置で保持(1 時間)

    表 2.5 溶液測定結果(溶存酸素、過酸化水素、pH)

    燃料浸漬 50h 燃料浸漬 100h

    before after before after溶存酸素(mg/L) 8.9 8.7 8.9 8.2過酸化水素(mg/L) N.D. N.D. N.D. N.D.

    pH 6.2 6.8 6.2 6.1

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    -Rev

    iew

    2013

    -SFP

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    表2.

    6 IC

    P-AE

    S測定

    結果

    (試験

    前溶

    液及

    び燃料浸漬

    試験

    溶液

    分析元素

    分析波長

    nm

    人工海水

    (200

    倍)

    mg/

    L

    人工海水

    (200

    0倍

    )m

    g/L

    燃料

    浸漬

    50h

    (200

    倍)

    mg/

    L

    燃料浸漬

    50h

    (200

    0倍

    )m

    g/L

    燃料浸漬

    100h

    (200

    倍)

    mg/

    L

    燃料

    浸漬

    100h

    (200

    0倍

    )m

    g/L

    測定値

    不確

    かさ

    測定

    不確

    かさ

    測定

    不確かさ

    測定値

    不確

    かさ

    測定

    不確かさ

    測定

    不確

    かさ

    Na

    589.

    593

    61.1

    57.

    356.

    860.

    8163

    .02

    7.50

    7.14

    0.84

    67.0

    87.

    886.

    690.

    78M

    g27

    9.55

    7.67

    0.76

    0.94

    0.09

    7.48

    0.73

    0.94

    0.09

    7.81

    0.76

    0.87

    0.08

    Ca31

    5.88

    62.

    460.

    260.

    300.

    034.

    440.

    440.

    540.

    053.

    660.

    370.

    400.

    04K

    766.

    501

    2.41

    0.26

    0.34

    0.05

    2.44

    0.27

    0.35

    0.06

    2.59

    0.27

    0.30

    0.07

    表2.

    7 IC

    P-M

    S測定結果

    質量数

    核種

    定量

    下限

    浸漬液中

    濃度

    分析値

    D.L

    .50

    h浸漬

    100h

    浸漬

    ppb

    ppb

    ppb

    測定

    不確かさ

    測定

    不確

    かさ

    85Rb

    -85

    9.29

    E-01

    2.92

    E+01

    9.78

    E-01

    2.18

    E+01

    6.97

    E-01

    95M

    o-95

    2.50

    E+00

    3.02

    E+00

    1.08

    E+00

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    表 2.8 γ線及びα線測定結果

    溶液内換算重量(μg)50h 浸漬 100h 浸漬

    測定値 不確かさ 測定値 不確かさ

    Cs-134 3.00E-01 9.01E-03 1.49E-01 4.48E-03Cs-137 8.87E+02 2.66E+01 4.51E+02 1.35E+01Am-241 7.54E+02 2.26E+01 6.68E+02 2.00E+01Pu-241 3.64E+02 1.09E+01 1.84E+02 7.70E+00

    表 2.9 ICP-MS 測定結果に基づく FP 成分及び燃料由来成分の溶出率評価結果

    核種FIAP(%) FIAP1(%)

    50h 浸漬 100h 浸漬 文献値※Rb-85 2.520 1.884 2.1~3.4Mo-95 0.028 - 0.2~1.7Cd-111 0.556 - -Cs-133 7.840 3.808 2~4.5U-235 0.004 - 0.16~2.0U-238 0.004 - 0.16~2.0Pu-239 0.002 - 0.03~1.4Pu-240 0.003 - 0.03~1.4Pu-241+Am-241 0.001 - 0.07~1.6 (Am)

    ※:出典 参考文献 2-6

    表 2.10 γ線測定結果に基づく Cs-134 及び Cs-137 の溶出率評価結果

    核種FIAP(%)

    50h 浸漬 100h 浸漬Cs-134 7.499 3.733Cs-137 7.514 3.819

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    表 3.1 浸漬液条件浸漬液

    条件

    浸漬液

    ベース

    Cs 濃度(ppm)

    pH(人工海水調製時)

    浸漬温度

    (℃)

    浸漬時間

    (時間)

    ① 200 倍希釈人工海水

    08.2 50 50, 100, 250② 10

    ③ 100

    表 3.2 浸漬試験に使用した燃料中のα放射能及び吸収線量(α線)(浸漬時間:100 時間)アクチニド

    核種

    放射能

    (Bq)α線放出率(Total)

    (%)α線エネルギー(平均)

    (MeV)吸収線量(α線)

    (MGy)Pu-241 1.28E+11 0.002 4.896 8.77E-04Pu-238 9.34E+09 100 5.486 3.52E+00Cm-242 7.57E+09 100 5.795 3.01E+00Am-241 6.32E+09 100 5.479 2.38E+00Pu-240 8.37E+08 100 5.156 2.96E-01Pu-239 1.95E+08 100 5.148 6.89E-02Cm-243 1.12E+08 100 5.810 4.47E-02Np-239 1.06E+08 0 - -Am-243 1.06E+08 100 5.269 3.83E-02

    Am-242m 9.30E+07 0.5 5.209 1.53E-04Am-242m 9.26E+07 0 - -Cm-242 7.66E+07 100 6.101 3.21E-02合計 - - - 9.39E+00

    表 3.3 計算条件及び拡散係数容器寸法・溶液量

    フラスコ内径(m) 8.26E-02面積(m2) 5.36E-03液量(L) 8.40E-01液量(m3) 8.40E-04液高さ(m) 1.57E-01燃料[線源]高さ(m) 0.00E+00飛程[照射領域高さ](m)※1 1.00E-04バルク液高さ(m) 1.57E-01バルク液量(m3) 8.39E-04バルク液量(L) 8.39E-01照射液量(m) 5.36E-07照射液量(L) 5.36E-04

    拡散係数 D H2O2 (m2s-1)※2 2.20E-09H2 (m2s-1)※3 2.20E-09O2 (m2s-1)※3 2.00E-09※1:出典 参考文献 3-8※2:出典 参考文献 3-9※3:出典 参考文献 3-10

    - �� -

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  • JAEA-Research 2014-007

    - 20 -

    - 2

    0 -

    表 3.4 G 値

    G 値文献※ [Cl-] / M0.25 0.50 0.60 1.00

    G(-H2O) 2.35 2.33 2.33 2.41G(H+) 0.00 0.00 0.00 0.00G(OH-) 0.16 0.28 0.32 0.40G(e-aq) 0.00 0.00 0.00 0.03G(H) 0.10 0.09 0.07 0.06G(H2) 1.12 1.12 1.13 1.16G(OH) 0.23 0.20 0.19 0.20G(H2O2) 0.95 0.85 0.82 0.73G(HO2) 0.01 0.00 0.00 0.00G(O2-) 0.00 0.00 0.00 0.00G(-Cl-) 0.38 0.71 0.82 1.18G(ClOH-) 0.06 0.15 0.18 0.32G(Cl) 0.00 0.00 0.00 0.00G(Cl2-) 0.16 0.28 0.32 0.43G(Cl3-) 0.00 0.00 0.00 0.00

    ※:出典 参考文献 3-11

    表 3.5 模擬 FP 添加人工海水浸漬試験による炭素鋼腐食量浸漬液 浸漬時間(h) 腐食量*2(mg/cm2) 腐食速度*3(mm/y)

    人工海水 200 倍希釈50 1.889 0.42

    100 3.106 0.35250 7.831 0.35500 14.416 0.32

    人工海水 200 倍希釈+Cs10ppm*1

    50 1.778 0.40100 3.836 0.43250 7.507 0.34

    人工海水 200 倍希釈+Cs100ppm*1

    50 1.605 0.36100 3.633 0.41250 7.933 0.35

    *1:Cs は塩化セシウム(CsCl)にて添加。*2:(腐食量)=((浸漬前重量)-(浸漬後重量))/(試料表面積)により算出。*3:1 年間を 8760 h として算出。

    - �0 -

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  • JAEA-Research 2014-007

    - 21 -

    - 2

    1 -

    表 3.6 電気伝導率測定結果測定試料 電気伝導率 (実測)(mS/cm) 液温(℃)

    200 倍希釈人工海水 0.372 25200 倍希釈人工海水+Cs 100ppm 0.472 25

    表 3.7 酸化還元電位(ORP)測定結果測定試料 ORP (mV)(vs 標準水素電極) 液温(℃)

    200 倍希釈人工海水(Cs = 0 ppm) 407 23200 倍希釈人工海水(Cs = 100 ppm) 386 23

    表 3.8 腐食電位測定結果腐食電位(mV vs. Ag/AgCl)

    200 倍希釈人工海水(Cs = 0 ppm) 200 倍希釈人工海水(Cs = 100ppm)1 -0.419 -0.4212 -0.413 -0.428

    平均 -0.416 -0.424

    表 3.9 照射済燃料共存条件及びリファレンス条件における炭素鋼の腐食量

    浸漬時間(h) 腐食量(mg/cm2) 腐食速度(mm/y)

    照射済燃料共存 リファレンス 照射済燃料共存 リファレンス

    50

    2.684 2.663 0.60 0.60 2.710 2.612 0.61 0.58 2.781 2.741 0.62 0.61

    - 2.597 0.58

    100

    5.049 4.525 0.56 0.51 4.705 4.251 0.53 0.48 4.539 4.188 0.51 0.47

    - 4.681 0.52

    - �� -

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    - �� -

    図2.1 共存試験片の形状

    Φ3±0.1

    10±0.1

    20±0.1

    2±0.1

    4±0.1

    刻印位置

    単位:mm

    図2.2 試験片吊下げ用ガラス製台座

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    - �� -

    図2.3 試験体系

    還流管

    熱電対(液温用)

    熱電対(ステンレスブロック用)

    ステンレスブロック

    ヒーター

    セパラブルフラスコ

    マニプレータでのハンドリング治具

    バブリング用チューブ

    図2.4 FPガス放出率とCs溶出率との関係

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    0 5 10 15 20 25 30

    Cs re

    leas

    e fra

    ctio

    n (%

    )

    Fission gas release rate (%)

    Johnson et al.[2-9] Johnson et al.[2-10] Tanaka et al. [2.11] This study (Cs-133) This study (Cs-134) This study (Cs-137)

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    40±0.1

    4±0.1

    φ3±0.1

    原材料圧延方向

    刻印位置

    図3.1 浸漬試験片の形状

    [単位:mm]

    図3.2 浸漬試験機器外観

    セパラブルフラスコ(5L用)

    ステンレスバケツ(底部にヒーター設置)

    温度記録用データロガー

    フローメーター

    エアーポンプ

    温度コントローラー

    トラップ球

    冷却管

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    - �� -

    図3.3 浸漬試験模式図

    ヒーター

    セパラブルフラスコ(5L用)

    吊り下げ治具(テフロン製)

    腐食試験片

    フローメーター及びエアーポンプに接続 熱電対

    トラップ球

    冷却管

    図3.4 ISO 8407に準拠した腐食量評価方法

    試験片重量

    除錆時間

    B

    A

    CD

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    - �� -

    図3.5 水に付与されるα線エネルギーの割合の比表面積依存性(α線エネルギー 5 MeV)

    y = 1.0051x - 2.7806

    -4

    -3

    -2

    -1

    0

    -1 0 1 2 3

    log(

    Ener

    gy F

    ract

    ion

    in W

    ater

    )

    log(比表面積(mm-1))

    図3.6 破砕した「ふげん」照射済MOX燃料

    100μm 100μm 100μm

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    - �� -

    図3.7 α線ラジオリシス計算体系の模式図

    L

    アルファ線源

    面積:S5.36 10-3 m2

    溶液組成: NaCl 0.6 MNaBr 0.8 mM

    溶液量: 840 ml初期pH: 6.2初期DO: 8.9ppm (0.278 mM)

    照射領域

    バルク領域

    図3.8 水分解生成物の拡散モデル模式図

    アルファ線源

    H2O2(a) H2(a) O2(a)

    拡散係数D (m2 s-1)H2O2: 2.2 10-9H2: 2.2 10-9O2: 2.1 10-9

    H2O2(b) H2(b) O2(b)

    照射領域

    バルク領域

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    図3.9 Cs添加人工海水浸漬による炭素鋼腐食量

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    100 200 300 400 500 600

    腐食量(

    mg/

    cm2 )

    浸漬時間(h)

    人工海水200倍希釈

    人工海水200倍希釈+Cs 10 ppm

    人工海水200倍希釈+Cs 100 ppm

    図3.10 腐食生成物のSEM/EDS分析結果(人工海水200倍浸漬液)

    20 µm

    100 µm

    (1)

    (2)

    (3)

    EDSスペクトル代表例 -分析点(1)-

    定量分析結果

    wt% at% wt% at% wt% at%

    C 3.3 9.0 3.7 9.8 3.8 10.5

    O 23.6 48.2 24.5 49.1 22.8 46.6Fe 73.1 42.8 71.8 41.1 73.3 42.9

    元素分析点(1) 分析点(2) 分析点(3)

    腐食生成物の微細組織

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    - �� -

    wt% at% wt% at% wt% at%

    C 3.2 7.8 2.0 5.1 2.4 6.4

    O 30.9 57.3 27.8 55.1 25.7 51.9Fe 65.9 35.0 70.2 39.8 71.9 41.7

    元素分析点(1) 分析点(2) 分析点(3)

    図3.11 腐食生成物のSEM/EDS分析結果(人工海水200倍+Cs 100ppm添加浸漬液)

    20 µm

    100 µm

    (1)

    (2)

    (3)

    EDSスペクトル代表例 -分析点(2)-

    定量分析結果

    腐食生成物の微細組織

    20 40 60 80 100 120 140 0

    500

    1000

    0

    50

    100 Magnetite, syn, Fe3 O4, 01-076-2948

    0

    50

    100 Goethite, syn, Fe O ( O H ), 01-081-0464

    0

    50

    100 Lepidocrocite, Fe O ( O H ), 01-074-1877

    20 40 60 80 100 120 140 0

    50

    100 Hematite, syn, Fe2 O3, 01-071-5088

    2θ (deg)

    測定データ:MMFsabi①-1140225/Data 1Magnetite, syn,Fe3 O4,01-076-2948Goethite, syn,Fe O ( O H ),01-081-0464Lepidocrocite,Fe O ( O H ),01-074-1877Hematite, syn,Fe2 O3,01-071-5088

    強度

    (cp

    s)

    図3.12 腐食生成物のXRD測定結果(人工海水200倍浸漬液)

  • JAEA-Research 2014-007

    - �0 -

    20 40 60 80 100 120 140 0

    500

    1000

    1500

    0

    50

    100 Lepidocrocite, Fe O ( O H ), 01-070-8045

    0

    50

    100 Magnetite, syn, Fe3 O4, 01-076-2948

    0

    50

    100 Hematite, syn, Fe2 O3, 01-071-5088

    20 40 60 80 100 120 140 0

    50

    100 Goethite, syn, Fe O ( O H ), 01-081-0464

    2θ (deg)

    測定データ:MMFsabi②-1140225/Data 1Lepidocrocite,Fe O ( O H ),01-070-8045Magnetite, syn,Fe3 O4,01-076-2948Hematite, syn,Fe2 O3,01-071-5088Goethite, syn,Fe O ( O H ),01-081-0464

    強度

    (cp

    s)

    図3.13 腐食生成物のXRD測定結果(人工海水200倍+Cs100ppm浸漬液)

    図3.14 200倍希釈人工海水とCs濃度が100ppmの200倍希釈人工海水における分極曲線

    -0.9

    -0.8

    -0.7

    -0.6

    -0.5

    -0.4

    -0.3

    0.001 0.01 0.1 1 10 100

    Pote

    ntia

    l(V

    vs.A

    g/A

    gCl)

    Current density (A m-2)

    200倍希釈 (1)

    200倍希釈 (2)

    -0.9

    -0.8

    -0.7

    -0.6

    -0.5

    -0.4

    -0.3

    0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000

    Pote

    ntia

    l(V

    vs.A

    g/A

    gCl)

    Current density (A m-2)

    Cs-100ppm (1)

    Cs-100ppm (2)

  • JAEA-Research 2014-007

    - �� -

    図3.15 照射済燃料共存下における炭素鋼腐食量

    y = 0.049x

    y = 0.0459x

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    0 20 40 60 80 100 120

    腐食量(

    mg/

    cm2 )

    浸漬時間(h)

    燃料浸漬 リファレンス

    図3.16 α線ラジオリシス計算結果

    0.00E+00

    1.00E+00

    2.00E+00

    3.00E+00

    4.00E+00

    5.00E+00

    6.00E+00

    7.00E+00

    8.00E+00

    9.00E+00

    1.00E+01

    0.00E+00

    2.00E-01

    4.00E-01

    6.00E-01

    8.00E-01

    1.00E+00

    1.20E+00

    0 20 40 60 80 100

    バルク領域中の濃度(

    O2

    :ppm)

    バルク領域�