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1 磁気を使って細胞を 任意形状に配置する 信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科 准教授 秋山 佳丈

磁気を使って細胞を 任意形状に配置する - JST...Y. Akiyama & K. Morishima (2011) Appl. Phys. Lett., 98, 163702. 1000 μ m 6 細胞凝集のシミュレーション

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  • 1

    磁気を使って細胞を任意形状に配置する

    信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科

    准教授 秋山 佳丈

  • 2

    従来技術とその問題点

    最も一般的な手法として,ソフトリソグラフィー法による細胞接着分子の印刷等があるが,

    • 平滑かつ硬質な基板上に限定されている.• パターンの変更が出来ない.等の問題があり,細胞の複雑な配置は行えず,微小組織構築には至っていない.

    パターンを作製

    細胞接着分子を塗布

    基板と密着させて転写

    細胞を播種

    非接着細胞を除去

    Y. Xia and G. M. Whitesides, Angew.Chem.Int.Ed.Engl, 37, 550 (1998)

  • 3

    反磁性について

    水も反磁性体.従って,生体も・・・・・

    A.Geim et al, Eur. J. Phys., 1997, 18, 307-313.

    反磁性浮遊(グラファイトシート)

    磁束密度:16 T

  • 4

    磁気アルキメデス効果

    溶媒中の粒子にかかる磁力 BBF )()(

    0

    ∇⋅−

    =µχχ V

    m mp

    粒子の磁化率、溶媒の磁化率 (+:常磁性,-:反磁性)

    磁石

    0> mp χχ水中の磁性粒子

    磁石 磁石 磁石

    BB )( ∇⋅

    培養液中の細胞 常磁性培養液中の細胞0,0 ≈≈ mp χχ 0,0 >≈ mp χχ

  • 5

    ラベルフリー磁気アセンブリ

    • ウシ血管内皮細胞(HH)• 細胞数: 1 x 105 cells• 培養液: DMEM with

    10 % FBS & 40 mM Gd-DTPA

    常磁性培養液+細胞 プラスチックチューブ(内径12 mm)

    NN

    SS

    ネオジム磁石• 10 mm Cubic• Br: 1.2 T

    Simulated by COMSOL Multiphysics 4.0

    (z = 0.2 mm)

    Y. Akiyama & K. Morishima (2011) Appl. Phys. Lett., 98, 163702. 1000 μm

  • 6

    細胞凝集のシミュレーション

    • 重力 =約 1.6 pN/細胞– 𝐹𝐹 = −Δ𝜌𝜌𝑉𝑉𝑔𝑔– 細胞比重: 1050 [kg/m3]– 培地: 1010 [kg/m3]– 直径20 [μm]の球状

    • 抗力(ストークス近似)– 𝐹𝐹 = −6𝜋𝜋𝜋𝜋𝑟𝑟𝑟𝑟– 粘度𝜋𝜋: 1 [mPa s]

    • 磁力(磁気泳動力)

    – 𝑭𝑭𝒎𝒎 =𝑉𝑉𝑚𝑚 ∆𝜒𝜒2𝜇𝜇0

    𝛻𝛻𝐵𝐵2

    – 磁化率の差∆𝜒𝜒: -11*10-6 Chamber: 7x7x5 mm

    Simulated by COMSOL Multiphysics 4.3a

    Time: 0~2400 s

  • 7

    蛍光ビーズ凝集の様子 X100 speed

    実験条件チャンバサイズ: 7x7x15 mm蛍光ビーズ: 500個/チャンバGd-DOTAの濃度: 40 mM

    シミュレーション結果同様,約40分でほとんどの粒子が凝集

  • 8

    磁気アルキメデス効果を利用した細胞パターニング

    本手法の特徴• 細胞接着分子等の事前のパターニングが不要.• 細胞シートなど生体材料上へのパターニング可能• パターンの変更が可能(動的パターニング)• マイクロ流路など閉鎖空間へ適用可能

  • 9

    磁場解析によるアレイの検討

    ネオジム磁石(30x5x1 mm)の間に,テフロンシート(t=0.1 mm)を挟んだもの

    [pN]磁力による浮力=重力による沈降力

    𝐹𝐹𝑔𝑔 = 0.52 pN• 細胞のサイズ:直径15 μm• 細胞の密度: 1.055 g/mL• 培養液の密度: 1.025 g/mL

    実験条件

    • 細胞種: マウス繊維芽細胞 NIH 3T3 (CellTracker Greenにて染色)• 細胞数: 105 個/チャンバ• 培地: ハンクス塩MEM(10% FBS,1 % 抗生物質)+40 mM Gd-DOTAを含む)• チャンバ:内寸9x9x9 mm

  • 10

  • 11

    ImageJによる分布の算出パターニングの評価

    300 μm

    細胞1つにかかる磁力の分布89 %300 μm

    背景削除と二値化

    重なっている粒子の分割(Watershed)

    重心の算出

    1100 μm

    100 μm

    約9割の細胞は,解析結果と同様に300 μmの範囲におさまったが,残り1割は,磁力が重力より強い領域に配置された.原因としては

    • 細胞がパターニングされる際に生じる流れの影響

    • 一度接着した細胞は,動かない

  • 12

    細胞シート上への細胞パターニング

    格子サイズ:100 μm

    底面一面に培養(細胞シートの形成)

    細胞(緑)がパターニング

    細胞(緑)播種&磁場印可

    細胞数:105個

  • 13

    パターニングの原理

    1. 常磁性培地に細胞を均一に播種.2. 細胞は,重力により徐々に沈降し,

    底面に近づくと,チャンバーの下にある磁場の影響を受ける.

    3. このとき,磁石を走査することで,不要なエリアにある細胞を弾き飛ばすように移動させる.

    磁気走査による細胞パターニング

    実験装置概要・円柱型ネオジム磁石(N35)

    直径1, 1.5, 2 mm,高さ1~10 mm・1軸自動ステージ

    LabViewによる制御速度: 1 mm/s,距離: 5 mm

  • 14

    磁石の長さの検討円柱型磁石(φ1, 1.5, 2 mm)において,パターニングに適した長さを検討.

    解析条件• COMSOL Multiphysics• 残留磁束密度Br = 1.15 T• 磁石の長さ:1~20 mm

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0 10 20

    点A

    2次元軸対称モデル

    重力と磁力(z方向)の均衡線

    [T]

    磁石の長さ (mm)点

    Aにおける磁束密度

    (T)

    φ2 mm

    φ1.5 mm

    φ1 mm

    磁石の長さと磁場の強さ(点A)

    磁力による浮力=重力による沈降力

    𝐹𝐹𝑔𝑔 = 0.52 pN

  • 15

    蛍光ビーズパターニングの様子

    実験条件・粒子: 蛍光ポリスチレンビーズ

    (直径15 μm)・粒子の数: 5.67x104 個/チャンバ・溶液:40 mM Gd-DOTAを含むDPBS ・自動1軸ステージ

    移動速度:1 mm/s,移動距離: 5 mm

  • 16

    ビーズが除去された領域の評価

    • 磁石がφ1,φ1.5 mmの場合,解析値より,実験値が小さかった.

    →小さい磁石ほど,距離の影響を受ける?→磁石とチャンバー底面の距離?

    除去された領域の幅の比較

    磁石の直径 1 1.5 2解析値 1.32 1.94 2.52

    実験値 0.74 1.76 2.62単位: mm

    解析値

    実験値

    磁石の直径

    除去

    され

    た幅

  • 17

    磁気走査による細胞パターニング

    蛍光ビーズの実験値0.79 mmとほぼ一致

  • 18

    新技術の特徴・従来技術との比較

    • 培養液に磁性化合物を添加し相対的に疑似的に反磁性粒子することで,従来技術の問題点であった、磁性粒子による細胞を標識を不要とすることに成功した.

    • 従来は,細胞接着分子を印刷することにより細胞の接着領域を制限していたため,適用が平坦かつ硬質の基板上に限られていたが,細胞シートなど生体材料上への細胞パターニングが可能となった.

    • 従来は,一度の決めたパターンの変更が出来なかったが,時間に伴う変更など動的なパターニングな可能となった.

  • 19

    想定される用途

    • 特に,マイクロ流路内等の閉鎖空間に適用することで,従来困難だった流路内での細胞パターニングや微小組織構築が可能となるメリットが大きいと考えられる。

    • また,細胞だけではなく,微粒子の溶液中における操作や配置技術として展開することも可能と思われる。

  • 20

    実用化に向けた課題

    • パターニング幅が現在300 μm程度と,細胞と比べて大きい.単一細胞レベル(20 μm)まで向上させたい.

    • 現在,磁性化合物の細胞毒性については,十分に低いことを確認済み.ただし,より安定な磁性化合物の開発が望まれる.

  • 21

    企業への期待

    • 磁石の精密な走査や電磁石などにより,任意の磁場を発生することが出来れば,より複雑なパターニングが可能となる.

    • 細胞への影響については,より安定な磁性化合物の開発により克服できると考えている.

    • 磁場関連,精密位置決め技術や磁性化合物の合成技術を持つ,企業との共同研究を希望。

    • また,再生医療や創薬を目指した3次元組織構築技術を開発中の企業、Organ-on-chip, バイオMEMS 分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。

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    本技術に関する知的財産権

    • 発明の名称: 細胞パターニング装置及び細胞パターニング方法• 出願番号: 特願2015-178107• 出願人: 信州大学• 発明者: 秋山佳丈

    • 発明の名称: スフェロイド作製装置およびスフェロイド作製方法• 登録番号: 第5889253号• 権利者: 信州大学,大阪大学• 発明者: 秋山佳丈,森島圭祐

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    お問い合わせ先

    (株)信州TLO

    コーディネーター 勝野 進一

    TEL 0268-25-5181

    FAX 0268-25-5188

    e-mail info @ shinshu-tlo. co . jp

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