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やってみよう! マッソントリクローム染色 埼玉県臨床検査技師会 病理検査研究班 平成27年度 4回研修会 2016.02.05

やってみよう! マッソントリクローム染色 · 質問2.マッソントリクローム染色以外に行われている膠原線維染色はありますか? アザン染色

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やってみよう!マッソントリクローム染色

埼玉県臨床検査技師会 病理検査研究班平成27年度 第4回研修会

2016.02.05

今回のコンペにご協力いただいた施設

参加数:16施設および企業1社 計17

埼玉県東京都神奈川県

ご協力ありがとうございました。

14施設1施設1施設

今回の染色コンペの目的

・いろいろな施設のマッソントリクローム染色を見てみよう!

・自施設の染色との違いはあるか?探してみよう!

・今後の日常業務に取り入れられる技術の参考にしよう!

本日の内容

Ⅰ.アンケート集計報告と最頻値によるプロトコールはこれだ!

Ⅱ.色素の違いによる色調の差

Ⅲ.染色過程における媒染剤の意味と効果

Ⅳ.各施設の結果の違いを検討

質問1.1ヶ月あたりのマッソントリクローム染色の頻度はどのくらいですか?

0~5枚6施設

6~10枚3施設

11~20枚3施設

21~50枚3施設

51~枚1施設

質問2.マッソントリクローム染色以外に行われている膠原線維染色はありますか?

アザン染色 10施設 67%

ワンギーソン染色 6施設 43%

その他 4施設 33%

その他:マロリー染色

エラスチカマッソン染色

エラスチカワンギーソン染色

質問3.切片の厚さはどのくらいですか?

目的や臓器により変えている2施設

HEと同等10施設

HEより薄く4施設

脱パラ・水洗

第1媒染

洗浄

核染色

分別

洗浄・色出し

第2媒染

オレンジ

G

洗浄

細胞質染色

洗浄

媒染(リンタングステン酸)

洗浄

膠原線維染色

洗浄

脱水・透徹

マッソントリクローム染色手順

第1媒染

実施している実施していない

14施設2施設

媒染剤の種類 時間

10%重クロム酸カリウム+10%トリクロール酢酸 12施設

10~20分 5施設

21~30分 4施設

31分~ 3施設

ブアン固定液 2施設 56~60℃1時間 or 室温1晩

核染色

鉄ヘマトキシリン(自家調製)12施設

鉄ヘマトキシリン(武藤化学)4施設

<染色液について> <染色時間>

0 2 4 6 8 10 12 14

11分~

5~10分

~4分

<核染色後の分別について> 実施している実施していない

5施設11施設

第2媒染

実施している実施していない

8施設8施設

媒染剤の種類 時間

リンタングステン酸+リンモリブデン酸

30秒 1施設

45~60秒 6施設

2分 1施設

時間

オレンジG

~1分 7施設

2~5分 3施設

6分~ 4施設

オレンジG

実施している実施していない

14施設2施設

細胞質染色

<染色液について> <染色時間>

ポンソーキリジン・酸フクシン・アゾフロキシン

9施設

ビーブリッヒスカーレット酸フクシン 1施設

アゾカルミンG1施設

マッソン染色液B(武藤化学)4施設

クロモトープ2R(Alfa Aesar)1施設 染色液 時間

ポンソーキリジン・酸フクシン・アゾフロキシン

9施設

~10分 2施設

11~20分 3施設

21~40分 4施設

ビーブリッヒスカーレット酸フクシン 1施設 10分以上

アゾカルミンG 1施設 12分

マッソン染色液B(武藤化学) 4施設

20分 2施設

30分 1施設

1時間 1施設

クロモトープ2R(Alfa Aesar) 1施設 30分

媒染剤 時間

2.5%リンタングステン酸 13施設

~5分 4施設

6~10分 6施設

11分~ 2施設

リンタングステン酸+リンモリブデン酸 2施設15分 1施設

30分 1施設

5%リンタングステン酸 1施設 10分

媒染

膠原線維染色

<染色液について>

<染色時間>

アニリン青7施設

メチル青3施設メチル青・オレンジG液

1施設

アニリン青(武藤化学)4施設

アニリン青(和光純薬)2施設

全ての染色液について1~10分の間に鏡検しながら止めるという施設が多かった

最多は5分 6施設

質問8.臓器や材料によって染色方法を変えていますか?

臓器によって変えている5施設

材料によって変えている2施設

原則、同じ方法11施設

10%重クロム酸カリウム、10%トリクロール酢酸 20分

水洗

鉄ヘマ 10分

分別なし

水洗 5分

リンタングステン酸+リンモリブデン酸 1分

オレンジG 1分

1%酢酸水 軽く

ポンソーキシリジン・酸フクシン・アゾフロキシン 20分

1%酢酸水 軽く

2.5%リンタングステン酸 10分

1%酢酸水 軽く

アニリン青 5分

1%酢酸水 軽く

最頻値による染色プロトコール

本日の内容

Ⅰ.アンケート集計報告と最頻値によるプロトコールはこれだ!

Ⅱ.色素の違いによる色調の差

Ⅲ.染色過程における媒染剤の意味と効果

Ⅳ.各施設の結果の違いを検討

1 2

3 4 5 6 7

8 9 10 11 12

13 14 15

各施設の比較(ルーペ像)

16 17

1 2

3 4 5 6 7

8 9 10 11 12

13 14 15

各施設の比較(対物X2)

16 17

膠原線維染色液の違いによる色調差

6 9 11

1 4 15

アニリン青

メチル青

差は微妙ですが、アニリン青は「明るい青色」に近く、メチル青は「群青色」に近い

細胞質染色液の違いによる色調差(1)

4 5 6

8 9 10

11 12 16

3 7

13 14

ポンソーキシリジン・酸フクシン・アゾフロキシン マッソン染色液B(武藤化学)

4

細胞質染色液の違いによる色調差(2)

5 10

3 13 14

ポンソーキシリジン・酸フクシン・アゾフロキシン

マッソン染色液B(武藤化学)

ポンソーキシリジン・酸フクシン・アゾフロキシンは「えんじ色」に近い マッソン染色液Bは「赤紫色」に近い

色素の違いによる色調の差まとめ

膠原線維 細胞質

アニリン青 明るい青色に近いポンソーキシリジン・酸フクシン・

アゾフロキシンえんじ色に近い

メチル青 群青色に近い マッソン染色液B 赤紫色に近い

染色手技だけでなく染色液の違いによっても若干の色調の違いが生じる

本日の内容

Ⅰ.アンケート集計報告と最頻値によるプロトコールはこれだ!

Ⅱ.色素の違いによる色調の差

Ⅲ.染色過程における媒染剤の意味と効果

Ⅳ.各施設の結果の違いを検討

脱パラ・水洗

第1媒染

洗浄

核染色

分別

洗浄・色出し

第2媒染

オレンジ

G

洗浄

細胞質染色

洗浄

媒染(リンタングステン酸)

洗浄

膠原線維染色

洗浄

脱水・透徹

マッソントリクローム染色手順

マッソントリクローム染色の染色原理

①化学的親和性(イオン結合)

酸フクシン(赤)、アニリン青(青)などの色素:酸性色素水溶液中でマイナスに荷電する部位がある

蛋白質は酸性下でプラスに荷電する(R-NH3+)

②分子量による染め分け

色素の分子量と組織部位の構築の疎密よって染め分けられる

第1媒染の意味と効果(1)

重クロム酸カリウム+トリクロロ酢酸

蛋白質 蛋白質ーNHーCH2ーNHー

ホルマリン固定

メチレン架橋

蛋白質 蛋白質ーNH2 NH2ー

アミノ基がたくさん露出してくる

酸性色素が結合しやすい状態

酸フクシン、アニリン青のいずれも結合しやすくなる?

一般的には、赤い色素の染色性を良くするために行うと言われている。

第1媒染の意味と効果(2) 時間、剖検材料、生検材料による各色素の染色性の違い

剖検材料 生検材料

30分

1時間 3時間

30分なし なし

1時間 3時間

第1媒染の処理時間に比例して、赤の染色性がよくなっている

剖検材料では、3時間処理で赤、青ともにバランスの良い染色性。生検材料では、3時間では各色素が過染気味。短い処理でOK.

→剖検材料のような過固定検体(固定だけの問題ではないが)は、長めに処理することで赤の染色性がよくなる

第2媒染の意味と効果(1)

①鉄ヘマトキシリンの黒をはっきりさせる②青が細網線維にも染まる?

第1媒染 30分第2媒染 1分

第1媒染 30分第2媒染 なし

赤:アゾカルミンG青:アニリン青

第2媒染の意味と効果(2)

第1媒染 30分第2媒染 1分

第1媒染 30分第2媒染 なし

第1媒染 なし第2媒染 1分

第1媒染 なし第2媒染 なし

第2媒染の意味と効果(3)

第2媒染剤:リンタングステン酸+リンモリブデン酸

リンタングステン酸

[P(W3O10)4]3-

核PO4

-

DNAPO4

-

DNANH3

+

蛋白質NH3

+

蛋白質NH3

+

蛋白質NH3

+

蛋白質

鉄ヘマトキシリン

核内に存在するプラス荷電を有する蛋白質を媒染剤がブロックし、酸性色素を入りにくくする

酸フクシン

×

細胞質のプラス荷電もマスクしてしまうため、長時間処理すると赤い色素が入りにくくなる

マイナスに荷電している

リンタングステン酸の意味と効果(1)

第1媒染:30分、第2媒染:1分、リンタングステン酸:10分 第1媒染:30分、第2媒染:1分、リンタングステン酸:なし

リンタングステン酸の意味と効果(2)

ーNH3+

ーNH3+

ーNH3+

赤血球

細胞質

膠原線維

オレンジG MW452.4

ポンソーキシリジン MW480酸フクシン MW585.5アゾフロキシン MW509.4

アニリン青 MW737.7

SO3-ー

SO3-ー

SO3-ー

リンタングステン酸[P(W3O10)4]

3-

リンタングステン酸[P(W3O10)4]

3-

リンタングステン酸[P(W3O10)4]

3-

SO3-ー

×

×

×

染色過程における媒染剤の意味と効果まとめ

第1媒染ホルマリン固定によるメチレン架橋を切断し、アミノ基を露出させる→ 酸性色素が結合しやすい状態を作り出す

第2媒染核内に存在するプラス荷電を有する蛋白質を媒染剤がブロック→ 核への赤の共染を防ぐ→ 過剰な処理は、細胞質への赤の入りが悪くなる

リンタングステン酸

蛋白質のプラス荷電に対して結合し、酸性色素(青)のイオン結合を阻害する→ 青は構築の疎な部分に入りやすく、膠原線維への選択性が生じる

本日の内容

Ⅰ.アンケート集計報告と最頻値によるプロトコールはこれだ!

Ⅱ.色素の違いによる色調の差

Ⅲ.染色過程における媒染剤の意味と効果

Ⅳ.各施設の結果の違いを検討

第1媒染 なし第2媒染 30秒

横紋筋繊維にもアニリン青が入り込んでいる最も赤い色素が入りにくい媒染条件

1 1

赤:アゾカルミンG 13分 青:アニリン青 3分

赤:マッソンB液 20分青:アニリン青 5分

第1媒染 40分第2媒染 なし

かなり赤が強めに出る。筋線維の濃淡が少なく、一様に染まった印象がある。

14

赤:ポンソーキリジン・酸フクシン・アゾフロキシン 8分

青:アニリン青 3~5分

第1媒染 20分第2媒染 なし

赤が強めに出る媒染条件だが、赤の染色時間を8分に抑えているため、バランスがとれている。赤血球のオレンジもしっかり残っている。

4

赤:マッソン染色液B 20分

リンタングステン酸15~60分

アニリン青 3~10分

リンタングステン酸を比較的に長めに処理し、アニリン青も比較的に長めに染めている。

7

8 9

リンタングステン酸 2~3分 アニリン青 2~3分 リンタングステン酸 30秒 メチル青 10回

いずれも、リンタングステン酸の処理時間は比較的に短いが、後の青を短くすることで調整している。

赤:ポンソーキリジン・酸フクシン・アゾフロキシン 20分 赤:ポンソーキリジン・酸フクシン・アゾフロキシン 20分