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Taiwan Report 2 台灣報告 2 2013年9月

Taiwan report2 final

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Taiwan Report 2台灣報告2

2013年9月

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はじめに 2

今、台湾市場における日系企業の可能性を改めて見つめ直す取り組みが本格的に始まっている。

中国大陸を消費市場として真剣に踏み込むべきなのかという慎重論や、いわゆる「チャイナプラスワン」が喧伝された2012年後半から2013年前半においては、中国経済の崩壊、成長鈍化など中国市場以外の道を模索する動きが加速した。

しかし、どんなに中国と向き合わずに経済を回す方策を考えたとしても、そこには自ずと限界があることも事実であり、中国市場に対してどのようにアプローチをすれば、よりビジネスの成功が得られるのかを問い直す時期でもあった。

このタイミングで、これまで人口の少なさからあまり注目されていなかった香港、特に台湾が再度脚光を浴びている背景としては、先々に中国市場を睨んだ場合の“はじめの一歩”を手堅く成功に導ける可能性が高いエリアとして魅力が感じられていることに他ならない。台湾は日本と同じ島国であり、大陸の中国人よりも日本人の気質に近い国民性から“中国進出入門エリア”としても日本人にとってなじみやすい国とも言える。

ところで、中国人消費者が経済力を蓄えてきたことや、政策的に人的交流を活発化させていることから、台湾へは圧倒的な数の中国人が大陸から訪れ、これまで日本人がトップだった訪台旅客数を抜き去った。政治や地理的な条件を超え、大陸を一歩飛び出した中国人が台湾や香港など、アジアを中心に世界各地で旺盛な消費をしている。これは中国大陸の外にいながらにして、我々の商品やサービスに触れ、それが中国大陸に還元・循環されるという、スケールの大きなビジネス構造の変化を意味する。台湾および香港はその要衝と言える。

もとより台湾と日本との関わりは深く長い。リピーター観光客として日本に訪れる人も毎年百数十万人に上り、世界有数の親日派が多いエリアとして知られている。政治的に日台の国交は断絶しているが、経済や文化的に見れば台湾は既に日本の延長線上として考えても違和感はなく、街には日本の製品やサービスが溢れており、尚も日本ブランドの製品やサービスは人気を博している。

中期的には中国大陸を見据えつつ、まずは台湾消費者から一層日本ブランドに対する支持を得るため、中国とはまたひと味ちがった台湾の“今”に対する理解を深めるきっかけになれば、このレポートの役割が果たせたと考える。

2013年9月マクロミル

グローバルリサーチ部チャイナスペシャリスト 青葉大助

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台湾はスマートフォン天国 3

今、台北、台中、高雄の台湾三大都市の市内において、フィーチャーフォンを手にしてい

る人を見つけることはかなり難しい。代わりに目にするのは、老若男女問わずスマホやタブ

レットを使う人達。台湾におけるスマートフォンの普及状況は日本で想像する以上に高い。

それもそのはず、ユーザーにとって台湾の主要都市はまさに“スマートフォン天国”なのであ

る。その理由は、駅、空港、バス停、商業施設、街中のカフェなどのターミナルエリアにおい

てWi-Fiが整備されているだけでなく、AC電源、USBソケット、スマホ充電アダプタが非常に

数多く整備されており、また全てが無料のため、バッテリー残量を気にせずに高速通信が

使い放題であるという点だ。無料Wi-Fiは中国においては飲食店などではログインパスワー

ドが掲示されているケースが多い。一方、空港やバス停などの公共エリアでは、ログインパ

スワードをSMS経由で取得する為、国内携帯電話が必要で外国人旅行客にはハードルが

高い。一方、台湾ではもっと開放的で、例えば地下鉄ではパスポートを提示することで、IDと

パスワードは発行してもらえるため、台湾の携帯電話が無い外国人でも無料で利用が可能

である。空港ではそもそもパスワードすら不要だ。このように、利用環境が整っていることが

支えとなって、スマートフォンの普及に弾みがついている。高速鉄道駅(台中)にあるUSB端子、コンセント、Wi-Fi、パソコンの無料使用ゾーン。ビジネスマンが利用していた。

バス停に貼ってある無料Wi-Fiのシール。街中もWi-Fiが飛び交っている。

地下鉄の構内にある無料電源とWi-Fiの案内。電源の前にはPCを置く台がある。夕方には待ち合わせ場所としても活用。

空港にあるイス。背もたれの上の白い四角い部分が電源とUSB端子だ。しか

も複数口ある。空港は電源だらけと言っても過言ではない。

駅に併設されているカフェにあるスマホ端末別充電ケーブル。監視カメラがあり、その場を離れても安心の仕組みがある。

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トヨタ王国。台湾の自動車市場。 4

台北の街中を見渡すと、最初に気がつくことが圧倒的なトヨタ車のシェアの高さだ。台北

のタクシーはその数も日本に比べて多く、走っている車の半分ほどがタクシーではないかと

さえ思える存在感がある。そのタクシーのほとんどがトヨタ車である。日本のタクシーと違い、

主に走っているのはミニバンタイプのウィッシュで、3列シートを荷台として使用したり、人を

乗せたりとシートアレンジを前提として活用されている。大陸からの中国人観光客の場合、

旅行のスタイルは大家族旅行になるケースが多いためウィッシュが採用されたのではない

かと考えられる。

その他の一般的な乗用車などについてもトヨタのシェアが異常に高く、8割にのぼるとい

う。イメージとしては日本の街中で見かけるトヨタ車のシェアを圧倒的に高くしつつ、外車の

シェアをより低くしたマーケットとして考えてよい(トラックやバスなどの大型自動車を除く)。

中国においては日本車は明らかにマイナーな存在で、圧倒的にフォルクスワーゲンが強い

のと対照的だ。

台湾においても日本と同様に車はかなり普及が進んでいる。一定以上の所得水準があ

れば過半数の世帯が車を保有していると見て良い。もちろん、それ以上に普及しているの

はバイクではある。公共交通機関が発達している台湾ではあるが、車に乗って買い物に出

掛ける感覚は日本と近いものがある。例えば高雄市にある「凱旋駅」にある統一夢時代と

いう商業施設は、週末となると駐車場待ちで長い渋滞の列が出来る。周辺エリアからの集

客力がある施設の典型である。

三多商圏駅にある大遠百FE21Mega購物中心の駐車スペース。シネコンが入っているため、映画を見に来た後に、フードコートで食事をするためにくる人が多い。台北に比べメーカーや車種が分散傾向。

統一夢時代と統一阪急を目指して伸びる渋滞の列。バイクで来店する人も多い。スコールが降ると激しい水たまりができるが、ものともせずにレインコートを着てやり過ごす。

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キリンビールが大健闘。台湾ビール事情。 5

台湾においては、日本ほど外食時に自由にお酒が飲める訳ではな

い。特に夜市のようなローカルフードを提供する店ほどそうである。

ローカルフード系は特に日本のような飲食総合店とはなっておらず、

より単品勝負の色合いが濃い為、飲料は切り離される傾向にあるとい

える。食事を提供する店とお酒を中心とした飲み屋は現地の感覚では

分かれているが、日系企業の居酒屋チェーン、スナック、外国料理店、

ホテル等では日本に近い感覚といえる。

ではローカルフードの食堂でどうすれば良いかというと、コンビニな

どで購入して持ち込めば良いので、銘柄選びなどは自由である。但し

持ち込んでまで飲んでいる人はそこまで多くない印象であった。むしろ、

屋台で売られているソフトドリンクの方が多く持ち込まれている。

台湾といえば台湾ビールがポピュラーであるが、日系企業ではキ

リンビールが健闘している。コンビニでの品数も競合する日系企業よ

りも多く取りそろえられている。また、外食店舗との連携がなされてお

り、台湾向けブランドであるBarが展開されている。また、少し高級なレ

ストランになると一番搾りフローズン<生>も飲むことが出来る。

(左)ビールが無い外食店には、自分で買って持ち込むことができる。(右)焼肉屋の店頭に飾られたBarの看板。コンビニで同じパッケージの缶ビールが売られている。

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台湾は世界一熾烈なコンビニ激戦区 6

台湾は人口あたりの店舗数が世界で最も多い国である。繁華街ではコンビニが隣り合う風景はありふれている。

主要なコンビニチェーンの中では、セブンイレブンが圧倒的な存在感を誇っている。店舗数は約4800店と二番手の

ファミリーマートの2600店に対して2倍近くにのぼる。この圧倒的な店舗数の秘密は鉄道にある。出店エリアは主に

路面やビルの中で、出店エリアの争奪戦が繰り広げられる。一方、簡単には競合が出店できないのが駅の構内だ。

セブンイレブンは地下鉄や高速鉄道の駅構内を完全に牛耳ることで、有利な競合戦を展開している。

コンビニエンスストアの仕組み自体は日本と大差がない。台湾の特徴としては、店舗面積が日本の2分の1程度と

狭めではるものの、品揃え自体は日本と変わらない。平均購入単価が60NT$(約180円)程度で飲料、酒、タバコが

中心である。また、日本ほどには中食の売上率が高くない。これは、台湾で盛んな屋台や食堂さらにはファストフード

店とのバッティングが非常に熾烈なためである。おでんなどの加熱調理品、ホットドッグなどのセルフ調理スペース、

広い飲食スペースなど、外食率の高い台湾の消費者に合わせて、モノを売るだけでなく、温かい料理やそれを味わ

う空間も提供することで、少しでもローカルフード店の客を取り込もうと必死だ。

さらに、台湾では日本よりもはるかに早いタイミングで挽き立てのドリップコーヒーを提供するサービスを取り入れ

ている。スターバックスなどのカフェ利用者を取り込むという作戦である。マイカップだと割引がある。ちなみにコー

ヒーの値段であるが、実は日本の金額感とほぼ同じである。物価を考えるとスターバックスの値段は高いと言える。

激しい競争環境に晒されている台湾のコンビニは、これからも常に消費者を惹きつけるための弛まない努力を継

続するだろう。台湾のコンビニで展開されている取り組みは、先行事例として参考となるだろう。

会社名 日本語名称 店舗数

統一超商 セブンイレブン 4,753

全家便利商 ファミリーマート 2,625

萊爾富國際 ハイライフ 1,258

來來超商(OK便利商店) サークルケイ 845

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ドラッグストアに溢れる街 台北 7

コスメ専門店「SaSa(莎莎)」28店舗

「康是美(COSMED)」355店舗

「Watsins(屈臣氏)」450店舗

台北で最も多く見かけるドラッグストアは台湾系のCOSMEDと香港系のワトソンズの2大

チェーンである。コンビニも非常に過密な出店を繰り広げているが、ドラッグストアも同様で、街

中の至る所に出店している激戦区である。COSMEDは後発ながら、セブンイレブングループの

大きなバックアップを得ることで急速な発展を遂げている。地下鉄(MRT)構内や百貨店などへ

の出店も意欲的。セブンイレブンと隣り合って出店する事もある。

店内の様子は日本のドラッグストアをイメージさせる点が多い。中国にもあるワトソンズと

比較すると、日本の製品の取り扱い量が格段に多い。また、日本語のままのパッケージも多く

見られる。日本製品に対する好意度や安心感が高い台湾では、日本語表記が支持される。台

湾のメーカーも日本語をあえて使用することもあるという。中でも人気があるカテゴリーは、化

粧品、薬品、サプリメント、ベビー用品などである。これらのカテゴリーは特に、台湾において

日本語表記のままであることが、商品の魅力を雄弁に消費者に語るのである。

ダイエットが国家的課題である台湾では、ダイエット食品コーナーがかなり充実しているが、

コラーゲンを摂取するサプリはそれとひけをとらない。台湾人女性は美肌と美白に対する意識

が高い。また、日本に比べて若いときからアンチエイジングを行うのも特徴だ。

日本と同様にメンズのケア製品も数多く並んでいる。メンズビオレのジェルボディウォッシュ

は父の日のプレゼントとしても扱われ、百貨店の催事用ポスターの提案商品となっている。

ちなみに、肝臓をケアする製品が日本に比べると目立つ。台湾料理にもよく出てくるシジミ

由来のサプリが、店入口のエンドに陳列されている。外ではほとんど飲まないが、家でそれな

りに飲むので肝機能に対する意識が高いのだ。

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台湾の交通広告・屋外広告 8

中国に比べれば日本人の感覚に近い街作りがされている台湾。建

物のサイズも中国に比べれば大きすぎることは無いものの、屋外広告

については日本に比べてかなり大胆な大きさを採用している。壁面の

使い方は台湾と中国は比較的共通の感覚を持っているようだ。屋外

広告を行う際は、大きく目立ち且つ分かりやすいもの目指すべきだ。

日本をよりイメージさせる化粧品や家電製品のような商品の場合は、

日本語もそのまま使われている。

地下鉄(MRT)においても、大きさの限界こそあれ使えるところは使

い切る発想が見られる。とにかく大きいので、あまり至近距離から見た

ら全体像が分からないのではないかとさえ思う。

また、テレビを用いた動画によるプロモーションも駅のホームで展

開されている。テレビのサイズももちろん日本に比べれば大きめだ。

(左)電車を待つ間に目立つように大型且つ横長のタブレットの広告(右)駅のエスカレーターに展開されているお茶の広告 (上)ATT4FUNの屋外広告。MUJIの看板も大きい。

(下左)ホームにあるディスプレイ動画広告(下右)ホームに続くエスカレーター横のLED照明の広告

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台湾の百貨店における店頭プロモーション 9

台湾においても中国ほどではないにしても、ニセモノブランドに対する警戒は怠

るべきではない。実際、台湾人が日本に来てショッピングする時は、どこで買っても

基本的にニセモノを掴まされることが無いため、あたかも日本全体が百貨店のもつ

安心感に包まれている感覚に近いという。台湾国内において、百貨店は楽しく買い

物ができる場所として、また大切な人への贈り物を買う場所として、かつての日本

のように大変活況だ。盛況な理由の一つは買い物ではあるが、もう一つの大きな

理由は台湾人が大好きなフードコートの存在である。「食」を重んじる国民性である

事に加え、複合商業施設との競争激化から、飲食施設は非常に充実している。清

潔かつ快適な場所で、様々な味が一度に味わえることが魅力になっている。

百貨店の入口では、様々なキャンペーンのデモンストレーションが執り行われて

いる。台北ではボビイブラウンの仮設スタジオや、大規模サンプリングを伴うSK-Ⅱ

のイベントが盛んだ。特にボビイブラウンは台北のどの百貨店でも多くの客を引き

寄せている。一方、高雄市三多商圏の百貨店では化粧品ではなく、父の日というこ

ともあって電気シェーバー主要3社のブースを連ねた販促が見られた。エリアによっ

てターゲットの百貨店に対するニーズが少しずつ異なっている。

(上)三多商圏新光三越でのボディショップの着ぐるみ

(右)太平洋そごう復興店ではSK-Ⅱとボビイブラウンの特設イベントが入口を挟んですぐ真横で行われている。店内も盛況。

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百貨店 攻めの販促と積極的なEC活用 10

日本と同じようにチラシやティッシュ配りをする光景は台湾でも珍しくない。特に台湾で特徴的なのは

非常に礼儀正しいティッシュ配りの人が多いことだ。これは場所を問わず共通している。物腰の柔らかさ

と、相手に「謝謝」と心を込めて言うあたりは、中国ではまず見られない風景と言える。

さて、台北のある百貨店の家電製品コーナーに人だかりが出来ているのでのぞいてみると、プロ野球

チームのチアガールとマイクを持った司会の女性がリハーサルをしている。商品はエレクトロラックス社の

掃除機なのだが、プロモーションを行っている場所は、実はエスカレーターの踊り場の目の前で非常に狭

い。イベント会場に人を呼ぶのではなく、百貨店の人通りの多い場所で攻めの販促を行っている。高級掃

除機にチアガール。野球好きのお父さんがターゲットか。(下の写真)

百貨店の近くの露天食堂に座っていると、プラカードを掲げ赤く目立つベストを着た10人程の集団が

近づいてくる。何かの抗議活動かと思いきや、靴の販促でティッシュに割引券をつけて配布している。実

に丁寧なセールスの説明をしてくれる。これも座っている人を中心にした攻めの販促だ。(右上の写真)

新光三越の敷地内。巨大なピンク色のショッピングバッグは遠くからでも非常に目立つ。中には雑貨

や家具などがディスプレイされていて、そばに説明係の女性がいる。これは新光三越のネットショップの

キャンペーンなのだ。リアル店舗の目の前でネット購買を促すという、これも攻めの販促の一つ。

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台湾のレシートは販促力が違う 11

台湾で買い物をしたら、レシートを捨ててはならない。もしかすると、レシート一枚でその後の人生が大

きく変わる可能性があるからだ。

台湾には多くの個人経営会社があり、かつては法人登録をしないまま営業を行い脱税が横行するな

ど、税金を徴収をする政府としては頭痛の種であった。そこで政府が発案したのが消費者を巻き込んだ、

“ある作戦”である。それは、消費者側がより積極的にレシートを発行するようにお店に対して求めるよう

に、レシートに宝くじ機能を持たせたのだ。台湾人は賭けがとても好きである。街中の宝くじ売り場はいつ

も盛況だ。それに目をつけた政府は、なかなかの戦略家と言える。

レシートを発行せざるを得ないお店にとっては、売上が明示的に外に出るため、脱税することに対する

ハードルが一気に上がった。これにより政府は税収を健全化することに成功したという。また、ともすると

ゴミとして路上に捨てられがちだったレシートが大切に保管されるという副次的効果もあったようだ。

宝くじの当選金額は最高約3000万円。ローカルフードなら300~450円もあればお腹がふくれる。日本

円であれば1億円程度の使い勝手に相当するのだから魅力的だ。当選金を元手にさらに買い物をするこ

とで、次の当選チャンスを手にすることも自然と可能になる。消費を加速させる効果も併せ持っている。と

ころで、抽選は2ヶ月に1度、奇数月の25日にWEB上で公開される。さらに、台湾人以外でも当選金は受け

取り可能だ。台湾で買い物をすることは外国人旅行者にとっても魅力的といえる。

さて、台湾国内で圧倒的な店舗数で他のコンビニの追随を許さないセブンイレブン。「セブンイレブンの

レシートは良くあたる」というまことしやかなウワサは本当だろうか。どうせ同じ物を買うなら宝くじ付きレ

シートの当選確率が高そうな店で買おうとするのは人間の心理だろう。毎朝、朝食を買うために立ち寄る

コンビニの混み方が尋常ではないセブンイレブン。勢い、レシートの発行枚数は増えるため、当選確率も

高まるという訳だ。

そんなセブンイレブンもレシートに頼り切りというわけではなく、様々な販促を行っている。例えばス

マートフォンであまりにも有名になった大人気のゲームアプリである「ANGRY BIRDS」のキャラクターを活

用している。スマートフォンユーザーが多いこの国だからこそ、こういったキャラクターが注目される。

お店側の売りたいものがキャンペーン対象商品として印刷されたレシートを発行する日本とは一線を

画す台湾。 「ANGRY BIRDS」の活用も含め消費者の心を鷲づかみにする台湾の販促に注目だ。レシートに記載された宝くじの抽選番号(赤枠の中の数字)セブンイレブンで配布されている「ANGRY BIRDS」のクリップ。

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台湾は巨大な健康ダイエット市場 12

台北の市庁舎を見上げると巨大なゆるキャラのポスターに目を奪われる。一見コミカルだが、そこで訴求していること

は、肥満に対する警鐘だ。実は台湾では肥満が社会問題化している。日本のダイエットブームのような“かわいい”レベ

ルではなく、当局が取り組んでいることからも深刻度が伺える。実際、アジアで最も肥満率が高いのが台湾であり、男性

の肥満度に至っては韓国の20倍にのぼると言われる。運動不足、高い喫煙率、不健康な食生活、飲酒などがその原因

であると政府の民衆健康部門が語っている。外食が多いことも原因の一つだ。外食率が高いのは始業時間が早い、残

業が多いことが影響している。このため運動する時間が確保できない上、より安くて便利な通勤手段としてバイクが活用

されることで、運動不足に拍車がかかる。

子供に関しては、4人に1人が肥満児と言われている。この深刻な事態を受け、2011年にはファストフード店で「おまけ

付きお子様セット」の販売を禁じる法案が可決された。肥満だと徴兵検査にも通らないので、軍事的な面で課題が残る。

ところで日本食は低カロリーで健康的であることは世界でも有名だ。台湾で和食が大人気の理由はこういったところ

にもある。海鮮丼専門店などは、昼を待たずに満席だ。日本食ビジネスはまだ発展の余地がある。

これらの背景から、ダイエット産業が熱気を帯びているのは想像に難くない。街ではダイエットやフィットネスクラブの

広告をよく目にする。百貨店の最上階は富裕層向けのスポーツクラブがある。ショッピングセンターのイベントにも有名

人のダイエットがテーマとして採用されるのである。言うまでもなくドラッグストアのダイエット食品コーナーも店舗の大き

さに比べて、売り場面積は広く、日本の製品も数多く売られており、かつ人気である。この分野においては日系企業は

もっとビジネスチャンスを拡大出来るはずだ。

こういったマス向けの商品やサービスに加え、口コミを重視する台湾で強い力を持っているのがいわゆるネットワーク

ビジネスである。彼らは微信などのSNSを活用して情報を発信し、顧客を捜し出し商品を勧めるのである。

ティッシュ広告にある“ビフォーアフターアフター”の減量のケタが違う。このような前後比較をする手法は非常に盛んに取り入れられている。電車、バス、ビルなどを使って大々的に宣伝がされている。また、韓流整形も流行っており、同様に前後比較広告が主流。

市庁舎の肥満警告ポスター。

微信を使った宣伝活動。自分の周りにいる人を探す機能を使って勧誘する。

そごう最上階にあるスポーツクラブのポスター。

商業施設「統一夢時代」のイベント告知がこれ。あなたも痩せよう!

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