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8・9月号August / September 2015
[経済産業ジャーナル]
いま、躍動する! 伝統的工芸品第2特集「コラボ」で現状を打ち破れ !
沖縄からアジアへ~「沖縄国際物流ハブ」を活用したアジア展開~Special Report
「見える化」 で地域をもっと元気に!
長企業のつくり方
02 METI Journal Top Interview
インタンジブルなものへの挑戦東京大学大学院総合文化研究科教授
松原 宏さん
ここ数年、大学院生の力を借りて、3つのことに力を入れている。1つは、「強い工場群」の探索である。公開されている「工業統計メッシュデータ」をもとに、従業者1人当たりの製造品出荷額等が飛び抜けて大きなメッシュを摘出し、地図ソフトを重ねて工場名をリストアップしている。広域関東圏は完了したが、全国制覇にはまだ時間がかかる。2つめは、三重県の企業誘致推進課の方々と「工
場カルテ」を考案し、それをもとに30近い工場を訪問、外観ではわからない工場の機能変化を中心に、お話をうかがった。研究開発機能の強化など、既存工場の進化に注目し、新たな立地施策につなげようとしている。3つめが、知識フローの可視化である。産学連携
のデータをもとに、社会ネットワーク分析とGISによる地図化を通じて、知識の地理的流動のありようが、地域イノベーションにどのようにつながるかを検討している。共通しているのは、捉えにくいインタンジブルな
ものへの挑戦といえるかも知れないが、そうした挑戦の先に政策の果実が見えてくるように思われるのである。
まつばらひろし/1956年生まれ。専門は経済地理学。1985年東京大学大学院理学系研究科地理学専門課程博士課程修了、西南学院大学経済学部に12年間在職、産業立地と地域経済の調査研究に従事。97年東京大学大学院総合文化研究科・教養学部人文地理学教室助教授、2007年より同教授。
Top In
terview
トップインタビュー
42Vol.
03METI Journal
CLICK!をクリックするとより詳しい情報にアクセスできます。
編集・発行/経済産業省大臣官房広報室東京都千代田区霞が関1丁目3番1号TEL.03-3501-1511(代表)編集協力/株式会社コンセント
Contents 8・9 月号
METI JournalFacebookページ
METI Journalヘルプページ 24 成長戦略「3つの見える化」/中核企業創出支援ネットワーク/
伝統的工芸品
いまを読み解く経済キーワード from METIPEDIA
20 沖縄からアジアへ~「沖縄国際物流ハブ」を活用したアジア展開~
Special Report
14 いま、躍動する伝統的工芸品
「コラボ」で現状を打ち破れ!第 2特集16
17
18
04
12 地域の拠点を強化、連携し支援のネットワークを全国へ
経済産業省 担当者の声
10 お悩み解決 ! 支援制度中小・中堅企業の成長をサポート!
08 成功する戦略づくりの鉄則敏腕コーディネーターに聞く
08
10
第 1特集
「見える化」で地域をもっと元気に!
成長企業のつくり方
16
職人×バイヤーイベントで魅力をダイレクトに発信!
17
産地×産地「持ち味の融合」で新たな可能性を
18
伝統的工芸品×デザイナー 海外の専門家が可能性を引き出す
04
04 METI Journal 成長企業のつくり方
日本には、大企業に匹敵する技術や収益率を有する中小・中堅企業が多く存在します。そうした企業が成長の階段を上るには、自社の状況にマッチした戦略が必須でしょう。そのためにも、今、個別企業にも、国にも、「成長戦略の見える化」が求められています。
分野に進出。さらに自社ブランド製品も積極的に手がけています。それまで同社の事業の中心は、いわゆる“孫請け受注”の部品生産。「メーカーの海外生産シフトや発注企業の不
振などが業績を大きく左右していた」と言います。では、どうして現在のような体制へと転換することができたのか? 改革のきっかけの一つとなったのが、企業連携など外部
「変化こそが、当社の普段の状態。失敗を恐れず先に進むだけです」。
(株)スズキプレシオンの鈴木庸介会長の言葉です。同社は自慢の精密切削加工技術を生かし、医療機器
「見える化」
で
地域をもっと
元気に!
長企業のつくり方
05METI Journal
見える化」「『支援体制』の見える化」の3つで構成。ウェブサイトや支援機関などの「システム」とそれらをつなぐ「人」の両面から、中小・中堅企業の成長戦略を後押しします
(詳細はP10-11で紹介)。
“成長余力”のある企業を しっかりとサポート !
中小・中堅企業が中核となって、独自の技術や研究開発力を生かした新事業を創出する──。地域が元気になれば、日本が元気になります。
では、日本、そして世界が、大きく変貌していく中で、いかに地域企業の成長力を引き出していくのか。地域には“成長余力”を秘めた企業がたくさんあります。今回の「見える化」プロジェクトでは、企業連携や産官学連携を担うコーディネーターも活用。全国各地の経済産業局と
ともに、目配りの利いたサポート体制で、企業を応援していきます。
次ページからは、冒頭で紹介したスズキプレシオンの事業戦略の実例、また今回の施策の中身などを紹介します。ぜひ、事業を成長に導くヒントにしてください。
資源の積極的な活用でした。
企業が抱える悩みに 「見える化」で応える
地域の中小・中堅企業が抱える主な悩みは次の3つにまとめられます。
「成長のための具体的な方法がわからない」「世の中のニーズを把握できず、系列内・地域内から飛躍できない」「企業連携などの支援体制の存在を知らない」。
経済産業省ではこれまで中小・中堅企業の成長へ向け、さまざまな支援策を実施してきました。しかし、それらの取り組みが必ずしも支援を本当に必要とする企業に十分には届いていない──。そうした反省から、今回「成長戦略『3つの見える化』」プロジェクトを新たにスタートします。具体的には、「『成功の秘訣』の見える化」「『ビジネスチャンス』の
質の高い金属加工技術を生かし、さまざま業界に精密部品を供給するスズキプレシオン。将来を見据え、新たに医療機器分野などに進出することで、経営の安定性を高めている。
06 METI Journal 成長企業のつくり方
「いらっしゃいませ」「こんにちは」。あちこちから元気な声が飛んできます。スズキプレシオン(栃木県鹿沼市)への取材は、本社に入る前から、敷地内にいた社員の方々の挨拶で幕を開けました。
経営の安定化を目指し 医療機器メーカーへ「うちの社員は元気で優秀。人材に恵まれているんです」と微笑むのは、代表取締役会長の鈴木庸介さん。社員数65名。精密切削加工技術で部品・部材を製造する同社は、前のページでも紹介したように、医療機器メーカーとしての顔をもっています。
「医療機器分野へ本格的に進出したきっかけは、2005年の薬事法改正です」と鈴木会長。すでに1990年代に医療用インプラント部品を製造していた同社は、「この薬事法改正は他社と差別化できるチャンス」と医療機器製造業の許可取得を決断したといいます。新たな薬事法ではメーカーに製造許可の取得が義務づけられており、それを持っていることが大きなアドバンテージになるからです。
社内体系の見直しや専門スタッフの育成など多様な改革を進めた結果、06年に医療機器製造業許可を取得。翌年には医療機器の品質保証のため
の国際規格ISO13485、さらに10年には自社製品の製造・販売ができる第一種医療機器製造販売業許可も取得し、医療機器メーカーの体制を整えていきました。
外部との連携を推進し オリジナル製品を開発
医療機器メーカーへの足がかりをつける一方で、同社が注力したのが、企業連携など外部資源の活用でした。99年には地域の中小製造業13社が集まった「鹿沼ものづくり技術研究会」を発足。そして04年には地域を超え、関東、関西、九州の企業5社で「ファイブテックネット」を
花輪 潤さん株式会社スズキプレシオン 専務執行役員
2000年入社。エンジニアの視点を持ちながら、販路開拓などの営業も担当。「まず経営者が “本気”になる。そして不退転の決意で社員に説明する。これが事業改革のポイントだと思います」。
鈴木拓也さん株式会社スズキプレシオン 取締役社長
2006年入社。10年に創業から数えて3代目の社長に。「対等なパートナーとして取引ができるお客様を大事にしながら成長を目指したい。海外展開にもさらに力を入れ、市場の拡大を進めます」。
鈴木庸介さん株式会社スズキプレシオン 代表取締役会長
1970年入社。91年に社長に就任し、翌年に(有)鈴木精機を(株)スズキプレシオンに改組。10年に会長へ。「変化の激しい時代は早めに次の布石を打つことが重要。まずはスタートすることです」。
リーダーシップと信頼関係で連携は動き出す !
07METI Journal
結成。各社のコア技術を持ち寄り連携することで、大型案件の受注や共同製品開発につなげていきました。「ファイブテックネットの結成当時、私は入社4年目でした」と振り返る専務の花輪潤さんは、以来、担当者として共同開発案件の企画や展示会出展などを主導。「そこで培った企業ネットワークの力が産学官連携による複数の研究開発事業にも生かされている」と説明します。
経済産業省の「戦略的基盤技術高度化事業」や「課題解決型医療機器開発事業」などがその具体例。連携する企業などと組んだプロジェクトは、商工会議所や産業技術センター、さらに大学や専門家からの支援やアドバイスを受け、内視鏡下手術用細径鉗子や縫合用高機能持針器、また医療分野以外でも自動旋盤で4倍速回転を実現する「IBスピンドル」といった自社製品を生みました。「連携で大事なのは、リーダー企業を明確にすること。そして関係者相互のメリットを確認し、信頼関係をつくる。成果を生むにはこの2つが欠かせません」(鈴木会長)。
スズキプレシオンは、海外展開にも積極的です。JETRO(日本貿易振興会)や地元自治体の支援を受け、欧州や米国での展示会に参加。すでに米国オフィスを開設し、医療用部品の輸出もスタートしました。
鈴木会長から経営のバトンを引き継ぎ、経営体質のさらなる強化を進める鈴木拓也社長は次のように言います。「やはり自社ブランドがあると組織も人も変わります。従来、旋盤加工を担当していた者がCADを使った設計を行うようになった例もある。さらに専門知識を備えた人材も増えました。当社には変化を恐れず、新分野に挑戦する社員が多い。これが一番の強みです」
1961年に個人商店として創業したスズキプレシオン。今、地域発の医療機器メーカーとして、新たな道を歩みを始めました。先を読んだ成長戦略を実践し、自社製品の売上比率も着実に高まっている同社のこれからが楽しみです。
私たち次世代産業課の仕事は、今後成長が期待される産業分野の支援。具体的には医療機器産業、航空宇宙産業、バイオ産業などで、私自身は医療機器分野を担当しています。
スズキプレシオンさんも進出している医療機器分野は、特有の法規制や商習慣などから、参入ハードルが高いといわれています。また顧客となる医療機関のニーズの把握や、販路開拓も容易ではありません。そこで産学官連携による研究開発支援や、地域のものづくり力のある企業と医
療機器メーカーとのマッチング商談会など、地域企業をサポートすることが求められています。
産業機械、精密機器というと、日本の得意分野のようなイメージがあるかもしれませんが、日本の医療機器市場は大幅な輸入超過となっており、日本のものづくり技術が、必ずしも生かされているとはいえません。産業力強化のためにも、スズキプレシオンさんのように技術と熱意をもった企業のがんばりに期待しています。私たちは、その一助となるべく、
今後とも政策に関する情報発信はもとより、連携ネットワークの構築などにいっそう努めていきたいと思っています。
坂口 伸さん
経済産業省 関東経済産業局地域経済部次世代産業課 課長補佐
2015年4月に現在の次世代産業課に異動。セミナーを通じた国による支援策の情報提供や、企業間のマッチングを行う場づくりなどを行う。
これからの日本の成長産業をつくる!
チタンなど加工の難しい素材も含め、あらゆる金属切削加工に対応するスズキプレシオン。また、設計から開発、製造まですべてのプロセスを自社内で対応できるのも強み。
精密切削・微細加工を軸に設計から製造までを手がける
● 株式会社スズキプレシオンCLICK!
08 METI Journal 成長企業のつくり方
成功する戦略づくりの鉄則例えば経済成長著しいアジア地域
では、経済発展と環境対応の両立が緊喫の課題となっています。その解決に役立つ技術を持っていながら、海外展開に向けて何をすべきか、具体的な道筋が描けない。そうした日本の中小・中堅企業は少なくありません。
まずは、現地のニーズの把握が第一歩。関西地域の中小・中堅企業や関 係 団 体 で 構 成 す る「Team E-Kansai」の場合は、日中企業間の商談会実施などに加え、中国の環境問題や現地企業が必要としている環境関連技術について情報収集。
「排水処理」や「大気汚染物質の除去」など、具体的なニーズをつかん
でいます。クリアすべき課題や必要な技術が
明確になると、企業側も、自社の技術をどう売り込めばいいのかなど、現実的な議論を始めることができるでしょう。抽象論ではなく、具体的なレベルまで話を詰めていくことが大事です。
技術のデータ化を進め 自社の強みを可視化する
海外でビジネスを進めようとする中小・中堅企業は、商談の場でうまく意思疎通が図れなかったり、効率的な活動ができずに苦慮しがちです。海外展開を円滑に進めるには、現地の言葉や商慣習に通じた人材はやは
これまで中小・中堅企業が意識すべき主なリスクは、取引先である大企業の生産拠点の海外移転や、円高による国際的競争力の低下などでした。しかし産業構造が急速に変化する中、現在は「事業領域そのもの」がなくなるかもしれない時代を迎えつつあります。
そうした状況で活路を見いだすにはどうしたらいいか──。一つは、オープンイノベーションによる新たな気づきです。限られたリソースを最大限に生かすには、業種・業態の枠を超えた連携が今後ますます重要となるはずです。大企業ではオープンイノベーションが盛んに行われておりますが、中堅・中小企業にも業
種業態を超えた協業が必要な時代になってきたと思います。
企業連携のポイントは トップの意思決定
しかし、私たちのような支援機関が交流の機会などを提供しても、中小・中堅企業の参加は、今のところまだ限定的だと感じています。大企業に比べて人員の余裕が少ないことにも起因しているようです。
また、具体的なアクションを起こしても企業連携が成果を生むまでには時間が掛かります。そこでは、困難があっても腰を据えて取り組むという、トップのブレない意思決定。これも成否を分けるポイントとなる
開かれた連携で自社のリソースを最大限活用する
京都の公的機関や大学、外部機関と連携を図り、新産業創出のプラットフォームを提供。クリエイティブ産業からエネルギー関連など、広範囲で産学公連携のコーディネート活動を行う。
Coordinator #1
Coordinator #2
京都リサーチパーク(株) 執行役員 産学公連携部長
木村千恵子さん
第三者の視点を取り入れ「強みの明確化」を
関西企業の持つ優れた環境・省エネ技術や製品を集約し、アジア諸国の環境問題の解決や持続的成長に役立つ環境ビジネスを創出できるよう、マッチングやフォローアップを行う。
関西・アジア 環境・省エネビジネス交流推進フォーラム(Team E-Kansai)広東省コーディネータ林 慈生さん
敏腕コーディネーターに聞く
09METI Journal
異業種の協働によるビジネスチャンスの創出や、海外進出による新市場の開拓──。地域や系列の枠を超えた挑戦は、中小・中堅企業の可能性を引き出してくれます。企業の取り組みを支えるコーディネーターのお2人に、成功のポイントを聞きました。
● 京都リサーチパーク株式会社CLICK!
り重要。また、予想どおりの事業が可能なのか、ある程度お金がかかっても調査をしておくべき。経験不足を補う人がいれば心強いでしょう。
そこで私たちのような海外コーディネーターをはじめ、“モノサシ”の異なる第三者が加わると、視点が変わり、自社の新しい強みや課題の解決方が見えることがあります。また、自社技術のデータ化や海外との比較分析などを通じて、技術の可視化を図っておくことも、海外展開を進めるうえで有効な手段です。既存の支援制度などと合わせて、うまく活用してほしいと思います。
と思います。一方で、国や自治体による支援策
をいかに使いこなすかも、中小・中堅企業における課題の一つです。とはいえ膨大な支援メニューから、自社に最適なものだけを選び出すのは簡単な作業ではありませんから、その内容を熟知している支援機関と密に連携し、知見を活用することが有効です。
情報への感度を研ぎ澄ませて、外に開かれたネットワークを構築していく。これこそが、今後の中小・中堅企業の成長の重要なカギになるのではないでしょうか。
こんなコーディネートをしています !
● Team E-KansaiCLICK!
光化学スモッグの原因ともなるVOC(揮発性有機化合物)の排出が問題となっていた広東省佛山市で、大和化学工業(大阪)と現地企業の合弁会社を設立。大気汚染防止対策プロジェクトをサポートしました。 例えば、現地政府との交渉などをフォロー。この合弁会社は現地の環境保護局等とも連携しながらVOC排出のオンラインモニタリング事業を手掛けており、「国家環境サービス業華南集積区」のモデル事業として中国環境保護部の認定を受けています。
中国の大気汚染防止へ合弁企業設立を支援
環境保護局合弁会社
オンラインモニタリング
VOC排出データ
VOC排出データ
VOC排出事業所
大気汚染防止
こんなコーディネートをしています !
経済産業省委託の「新分野進出支援事業」では、各領域に精通したコーディネーターと連携し、「情報提供」「シーズの発信」
「新規プロジェクトの創出」の観点から連携づくりを後押ししています。 例えば次世代リチウム二次電池の開発に関連して、新しい技術の市場開拓を促す「I2技術フォーラム」を開催。また、部品開発などをリードする企業紹介集や勉強会、セミナーの開催などを通じて、企業が新たな新しい気づきを得るための機会を提供しています。
気づきの機会を提供し新たな連携づくりを後押し
次世代の電子・エネルギーシステム産業の創出
〈 イノベーション・イニシアティブ(I2) 〉
基盤技術を担う中堅・中小企業
先端の研究開発を行う大学・研究機関
最終製品のメーカー・大企業
産業支援機関技術・事業に精通する専門家
関西地域や海外の企業・
有望なベンチャー
10 METI Journal 成長企業のつくり方
失敗談も含めて他社のリアルな事例を知りたいんだけど?
公的な支援制度には、国や都道府県、市区町村がそれぞれ独自に展開しているものもあります。中小企業・小規模事業者向けの支援施策を確認できる「施策マップ」を使えば、自社に最適な施策をインターネットで簡単に検索可能。目的、分野、対象者など検索条件を指定することで、必要な施策だけを表示することもできます。「比較表示」機能もあるので、気になった施策を見比べながら、じっくりと検討してみてください。
うちの会社が使える公的な支援制度にはどんなものがある?
ニッチトップやオンリーワンの技術や製品を持ちながらも、営業や宣伝にコストをかけられず、PRに苦労している中小企業は少なくありません。一方で、大企業は中小企業などの優れた技術を求めています。そこで役立つのが、中小機構が運営するマッチングサイト「J-GoodTech(ジェグテック)」です。中小企業の情報をサイトに掲載し、各社の技術に興味を持つ国内大手メーカーや海外企業につないでいます。
技術力には自信あり! どうしたら大手企業に売り込める?
地域の詳しい情報を知るには、地域経済分析システム(RESAS)が役立ちます。情報はホームページで見ることができ、その内容は「観光マップ」「人口マップ」「自治体比較マップ」などで構成。各地域の特性や人口動態、観光客の動き方などをグラフや図などで分かりやすく掲載しています。例えば、これまでは経験や勘に頼りがちだった立地戦略や地域戦略も、RESASを使えば、より実態に即したものにできるはずです。
進出先を検討中。各地域の詳細情報を手に入れられる?
優れた日本の中小・中堅企業
大手企業・海外企業
シーズ発信ニーズ収集
シーズ収集ニーズ発信
仲介サポート
新たなビジネスを展開するにあたっては、資金調達や人材の確保、情報収集などさまざまな課題が立ち上がります。そこで経済産業省では、各地の経済産業局や金融機関が足で稼いだ失敗事例、成功事例を整理、分析して、ホームページで公開。資金、人材、情報など課題別にまとめています。リアルな事例から抽出された「成功のカギ」「陥りやすいワナ」は、きっと今後の事業展開のヒントになるはずです。
CLICK! ● ミエル☆ヒント―成長のカギ/ワナ―
CLICK! ● 施策マップ
CLICK! ● RESAS ※Google Chromeでご覧ください。
CLICK! ● ジェグテック
経済産業省は現在、「見える化」をキーワードに中小・中堅企業への支援を強化しています。このページでは、経営者の方々からのよくある声に応える形で、代表的な施策の内容を解説。また、今回新たにできる「中核企業創出支援ネットワーク」の仕組みもご紹介します。
お悩み解決 ! 支援制度
お悩み
お悩み
お悩み
お悩み
中小・中堅
企業の成長を
サポート!
11METI Journal
発信 連携
成長のための課題を把握
人材や機関の斡旋などフォローアップ
戦略分野に応じて誘導
中小・中堅企業に向けた、国や地方自治体のさまざまな支援制度。これらは、各企業がそれぞれ置かれた状況や成長プロセスに合わせて活用することで、より効果を発揮します。 そのため経済産業省では、「成長戦略『3つの見える化』」プロジェクトとして、既存の施策の充実も含め、支援体制の整備、強化を進行中。左ページで紹介している支援策も、その中の重要な取り組みの例です。 加えて今回のプロジェクトでは、
自治体、支援機関が推進する「支援機関ネットワーク」が新分野・新事業に挑戦する中小・中堅企業をバックアップします。具体的には、企業を戦略分野ごとの「中核企業支援プラットフォーム」へと適切に誘導。そのプラットフォームにおいて、中核企業を中心とした個別プロジェクトを立ち上げたり、支援機関や専門人材などへの橋渡しを行います。また同時に、プラットフォーム間の連携も進めていく計画です。
中核企業創出支援ネットワーク
マッチングで成長へ導く
成長余力のある企業(数万社)
支援機関ネットワーク各種支援機関や大学、商工会議所、JETRO地方事務所、金融機関などで構成。さらなる成長を目指す中小・中堅企業の窓口となり、中核企業支援プラットフォームに誘導する役割も担う。
中核企業支援プラットフォーム群例えば、環境や食品、航空機、医療機器など、分野ごとにプラットフォームを設置。産総研や中小機構をはじめ、国の機関とも連携して、挑戦する中小・中堅企業を支援する。
環境分野プラットフォーム
食分野プラットフォーム
航空機分野 プラットフォーム
医療機器分野 プラットフォーム
バイオ分野 プラットフォーム
大手企業/海外企業研究機関/大学
企業ニーズ・研究シーズ
産業技術研究所/中小機構/JETROなど
国の機関による支援
12 METI Journal 成長企業のつくり方
ットワーク」の形成に力点を置いています。本省では、例えば成長企業に対する税制優遇措置など、支援ツールの拡充などを行っていきます。各地の経済産業局とも、日々緊密に連絡を取り合っています。飯村 私は関東経済産業局の金融連携推進室に所属。地元の銀行や信用金庫などと協力し、中小・中堅企業の課題解決をサポートするのが仕事です。関東経済産業局は1都10県を管
轄しており、当然ながらエリア内では非常に多くの企業が事業活動を行っています。その中で、金融機関は
広範なネットワークをもち、地域企業の事情にも通じている。企業の支援窓口としての機能も見込めます。地域の金融機関との連携は、その面で新たな支援体制のモデルケースとなり得ると考えています。1年ほど前まで、私は地域振興課
で地域産業活性化プロジェクトを担当しており、企業が抱える課題の多さと複雑さを目の当たりにしてきました。多様な課題に対応できる支援機関の重要性を実感しています。相馬 私はもともと九州経済産業局の局員です。今は本省の立地環境整備課の一員として、内閣官房「まち・ひと・しごと創生本部」で、地方創生関連政策のとりまとめに携わっています。今回のプロジェクトは政府が進め
る地方創生の政策パッケージの一環。それぞれの産業支援機関をどう結びつけるのか。総合戦略という形に仕上げるべく、各省庁と協働で進めています。今回のプロジェクトのポイントは、
やはり支援体制やツールの「見える化」だと思います。九州経済産業局でも、「そんな支援策があったのですか」「でも、どう活用していいか分からない」という声を地域の企業からよく聞きました。相談窓口を含め支援体制の見える化は、早急に進めるべきだと思います。
──まず、それぞれの業務内容や担っている役割を教えてください。小島 私は以前から、産学官の広域ネットワークを基盤に、各地域での新たな成長セクターの育成に取り組んできました。そこで見えてきたのは「出口戦略」があるかどうかが、成功と失敗を分けるカギだということ。つまり製品・サービスの事業化への道筋です。そしてもう一つ、自らリスクを取りながらも、周囲の企業を引っ張る中核企業の重要性です。今回のプロジェクトでは、成長余
力のある企業に注目し、地域の中核企業へと育成する「中核企業創出ネ
地域の拠点を強化、連携し支援のネットワークを全国へ
│担当者の声
成長を目指す中小・中堅企業を支援するにあたっての課題やポイントはどこにあるのか。立地環境整備課の小島英里子さんと相馬克彦さん、関東経済産業局の飯村道さん、地域の企業の現状をよく知る3人に、それぞれの視点から語ってもらいました。
上:経済産業省では、中小・中堅企業の経営者などに向けた「成長戦略『3つの見える化』プロジェクト」の説明会を全国で実施。「見える化」の内容などについて紹介した。左:企業連携には「フェイス・ツー・フェイス」が効果的との観点から、各地の経済産業局は多様なマッチングイベントを企画、開催している。
13METI Journal
地域を超えて伴走する コーディネーターが重要──施策を進める上での課題やポイントは何でしょう。飯村 今も話のあった支援策などの情報が行き渡っていない、というのはまさにそのとおり。それについては「施策マップ」やマッチングシステム「J-GoodTech」などが、すでに稼働しています。あと非常に重要なのは、コーディネーターの役割ですね。ある信用金庫さんは、企業連携のマッチングにあたって企業個々のニーズやシーズを相当深く掘り下げている。伴走型支援といいますか、会社と二人三脚で課題解決まで導いてくれるコーディネーターがポイントだと思います。小島 確かに適切なコーディネーターを発掘するのは、中核企業候補を絞り込むよりもハードルが高いかもしれません。だからこそ、コーディネーター機能をもつ支援機関の見える化が重要。各地の産業支援機関だけでなく、大学や公的研究センター、さらに金融機関にも、その道に長けた人材がいます。一方で、行政区単位でその機能が閉じている傾向があります。それをオープンにし、ネットワークへとつないでいく。これが私たちの役割だと思います。
相馬 例えば、九州でもオンリーワンの技術をもった企業がたくさんあります。しかし地域に閉じた支援策では、技術提携や販路開拓などにも限界がある。そんなとき、地域経済分析システム「RESAS」を使えば、中核企業の発掘や、地域を超えた取引の可能性がある程度見えてくる。いま2人が述べたように、ビッグデータや施策の活用策を、必要な企業へとアドバイスできる機能や体制。さらに企業に寄り添ってサポートできる人材が重要です。創生本部でもしっかりと、その道筋を示していきたいと考えています。──最後に仕事に込める思いを。
小島 地域に根ざし、人を雇い、関係先を大事にし、世界に伍して戦っている中小企業はかっこいい! そんな優良企業を応援することに、仕事の手応えを感じています。飯村 頑張る企業の方に「経済産業局があってよかった」といわれるくらい、足腰の強い支援ネットワークをつくりたい。金融機関との連携で、その波及効果を高めたいですね。相馬 個人的には、コーディネーターに匹敵するぐらいのスキルを備えた職員を目指したい。そして県や市や支援機関との連携なども充実させ、地域を引っ張る中核企業を育成していきたいと思います。
経済産業政策局 地域経済産業グループ立地環境整備課 課長補佐小島英里子さん地域経済産業グループ 立地環境整備課 係長相馬克彦さん
(左から)関東経済産業局 地域経済部 地域経済課 金融連携推進室 連携推進係長飯村 道さん
立地環境整備課は、起業・創業から海外展開まで、中小企業の新たな事業活動に幅広く係わっています。地域資源法も所管の1つで、がんばる地域の事業者を応援しています。
成長戦略「3つの見える化」事業展開のヒントを見える化すべく、企業の失敗事例、成功事例を紹介。また、経営者・従業員が一体となった経営改善なども後押しします。
「成功の秘訣」の見える化
大手企業・海外企業などのニーズを、中堅・中小企業にマッチングする仕組みを提供。また、ビジネス品質の評価・認証制度も導入します。
「ビジネスチャンス」の見える化
産業振興公社などを事務局に「中核企業創出支援ネットワーク」を構築。コーディネーターが他の地域の情報を集約し、企業につなぎます。
「支援体制」の見える化
14 METI Journal いま、躍動する伝統的工芸品
産地と販売店、消費者を直接つなぐ仕掛けとして、イベント
「JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK」を、この秋に開催。
職人 × バイヤー
123
地域を超えて広がる、ものづくりのネットワーク。
「産地間コラボ事業」など、ユニークな取り組みが注目されています。
産地 × 産地
中小企業基盤整備機構により「海外専門家招聘支援事業(NEXT MARKET-IN事業)」を推進中。
海外からデザイナーなどの専門家を招き、昨年度は15作品が完成!
伝統的工芸品 × デザイナ
ー
「コラボ」で現状
を打ち破れ !
Collaboratio
n
Collaboratio
n
Collaboratio
n
15METI Journal
新たな市場開拓へ向けて 多様な「つながり」を
職人の卓越した技術や、長い歴史を重ねてきたからこそ醸し出せる味わい。そうした「変わらない」部分が伝統的工芸品の大きな魅力である一方、消費者のニーズやライフスタイルの多様化が進む現代では、「守り」だけでなく、新たな市場を開拓していく必要性も高まっています。
しかしながら、事業者たちは、情報発信やブランディングのノウハウを持っていなかったり、小売店やバイヤーとのネットワークをなかなか
構築できなかったりと、さまざまな悩みを抱えているのも事実。
そこで、近年、これまでの枠にとらわれない「コラボレーション」によって、現状を打開しようという試みが活発化しています。例えば、気鋭のデザイナーとタッグを組むことによって、洗練された姿に進化する。あるいは、作り手と売り手が結びつくようなイベントを展開し、両者の連携を促進する。このように、「可能性」を掘り起こすための挑戦が、各地で増えているのです。
では、どんな成果を収めているのでしょうか。最前線を追いかけます。
年8月現在)。これらは、昭和49年に公布された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(伝産法)によって指定されたものです。
大量に生産しては、消費していく。そんな使い捨ての文化が浸透していった当時、伝統的工芸品産業は後継者不足や、原材料の入手難などの問題に直面していました。そこでもう一度、失いかけた基盤を立て直そうという動きが起こり、伝産法の成立を後押ししたのです。
本人の暮らしを支え続けてきた伝統的工芸品は、現在222品目(平成27日
16 METI Journal いま、躍動する伝統的工芸品
昨年度は北海道から九州まで、計21の伝統的工芸品が参加。職人と各ショップは、産地への訪問などを通して交流を深めた上で、コラボレーション企画に着手。参加店舗はインテリアショップをはじめ、書店や着物店、ジュエリーショップなども名を連ね、参加店舗を巡ってもらうためのスタンプラリーも実施されました。期間中のワークショップや実演では、職人による技の数々や、素材の持つ魅力を披露。消費者のニーズをとらえる機会ともなり、「新たな商品開発」への意欲を高めた産地も多かったようです。
作り手から売り手へ、売り手から使い手へ──。これまで、あまり直接的に結びつく機会がな
かった三者。それを「輪」としてつなぐことを目指すイベントが、昨年からスタートした「JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK」です。
今年の開催期間は、10月24日(土)〜11月3日(火)にかけて。前回は東京エリアを中心に22店舗での開催でしたが、大きな反響があったことから、規模を拡大。インテリアショップを中心に、東京の40店舗、さらには名古屋の10店舗が参加し、「1ショップにつき1産地」の組み合わせで、各地の伝統的工芸品と「共演」します。
展示販売やワークショップを行うほか、伝統的工芸品産業振興協会が運営するギャラリー&ショップ「伝統工芸青山スクエア」では、伝統工芸士の指導による製作体験なども実施。作り手にとっては消費者のニーズをダイレクトに感じることができ、また次世代のファンを獲得したり、販路を拡大したりする足がかりとして、貴重な場となるはずです。
一方、各ショップにとってもこのイベントは、さまざまな刺激や収穫をもたらしてくれるようです。「作り手の方から、じかに商品の良さを聞くことで、ものづくりに対する理解を深めることができた。今後もぜひ取り入れたい」「イベントに参加している店舗間のコミュニケーションも促進された」「ショップの新たな魅力づくりに役立つと思う」(昨年の参加店舗の声)。
実際、この出会いがきっかけとなり、オリジナル商品の開発に発展したり、コラボした伝統的工芸品を継続的に販売するようになったりと、試みは着実に実を結んでいます。その動向から、目が離せません。
イベントで魅力を
ダイレクトに発信! 「持ち味の融合」で
新たな可能性を
CLICK! ● JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2015
商品の価値をもっと知って欲しい。これまでとは異なる販売チャネルを開拓したい。産地がショップや消費者と結びつく仕掛けが注目されています。
職人 × バイヤーCollaboration
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17METI Journal
「持ち味の融合」で
新たな可能性を長い歴史の中で磨かれ、そして地域の中で守られてきた伝統の技──。
その殻を破り、異なる地域、分野と融合することで、新しい価値が生まれます。
写真は、伊万里・有田焼と輪島塗のコラボから生まれた器「有輪」(YOUWA)。名前は、それぞれの伝統的工芸品から1字ずつ取られており、「融和」の意味も込められています。作品の中には、完成までにさまざまな課題を乗り越えなければならないものもありましたが、いずれも
「次につながる」収穫があったようです。
毎年11月は「伝統的工芸品月間」。伝統的工芸品への理解を深めてもらい、いっそうの普及を目指して、
「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」などが実施されています。
2014年に佐賀で行われた同大会では、ある初めての試みが注目されました。それは、伊万里・有田焼の産地と全国の伝統的工芸品によるコラボレーション、
「産地間コラボ事業」です。佐賀県が呼びかけ、11の産地が応えることで実現。「出会いから新たな革新、創造へ」をコンセプトに、産地間が連携したものづくりと人的交流を促進することで、伝統的工芸品の新たな可能性を探りました。
例えば、日本を代表する漆器である輪島塗とのコラボレーションで誕生したのが「有輪(YOUWA)」。輪島塗の表面に、伊万里・有田焼の絵付けの技法で描かれた「麻の葉くずし」が印象的です。また、山中漆器との出会いがもたらした成果は、「Material to co-
star〜素材協演」。木材と磁器、それぞれの風合いが生きています。
そして、「人的交流」においては、伊万里・有田焼の未来を担う若手職人と、他県の伝統的工芸品の関係者が、互いの産地を行き来しました。各地にいる仲間たちとの対話や、工場を訪ね歩く中で得た、先駆的な取り組みのヒント。参加者たちは、交流プログラムから大いに刺激を受けたようです。
今後は、地元の若手デザイナーとのコラボレーションなども予定。商品化に向けた準備も進んでいます。個々の窯元が持っている旺盛なチャレンジ精神を、いかにまちぐるみのプロジェクトとして生かし、産地の魅力として昇華させていくか──。「産地間コラボ事業」には、次代の伝統的工芸品産業を切り拓くための手がかりがありそうです。
CLICK! ● 「第31回伝統的工芸品月間国民会議 全国大会(佐賀大会)」レポート
産地 × 産地Collaboration
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治・大正期には、工業化されていく日用品や輸入品に負けないよう、職人達は従来の技術を活かし、より洗練されたデザインや商品を生み出し、反対に伝産品を、外貨を稼ぐ主要品目にまで育て上げました。
工業化の進展、安価な海外製品の増加・・・約100年を経て、再び各産地に訪れている試練に立ち向かう、現代の革命者たる伝産品事業者達を、しっかり支えていくことが我 の々使命だと考えています。
今こそ、「伝産維新」を !
│担当者の声
伝統的工芸品と聞くと、皆さん何を思い浮かべますか。江戸時代使われていた食器?昔ならの仕事を続ける職人達?
でも、それらは過去において「最先端」のものであったことをお忘れではないでしょうか。
「伝統」と名前が付くものについて、「昔のまま何も変わらないことが素晴らしい・・・」と言う方がいます。そういった価値観も大切です。しかし、過去の日本人は、「伝統」をそのような概念で捉えていませんでした。明
海外の専門家が可能性を引き出す
海外で売る。そのためには、現地のニーズを的確にとらえた商品の企画・開発が不可欠。準備段階から「海外向け」を意識しておくことが大切です。
そこで、現地の市場に精通したデザイナーやバイヤー、コーディネーターなどを海外から招へい。継続的なサポートで商品開発を後押しする取り組みが、「海外専門家招聘支援事業(NEXT MARKET-IN事業)」です。 「結果を出しつつあり、自信を深めています」と手応えを語るのは、この事業の実施責任者である西堀耕太郎さん。京和傘で知られる日吉屋の5代目であり、各地の伝統産業の海外展開事業をプロデュースする、T.C.I.研究所の代表も務めています。「例えば海外での展示会に参加しても、まったく現地のライフスタイルや趣向に合わなかったり、流通経路が異なるため取り扱ってもらえなかったり。海外展開を断念
◆ 木本硝子海外専門家が、新たな日本酒の飲み方として「Sake Ceremony」を提唱。コンセプトに合う江戸硝子の酒器セットを開発しました。
◆ 熊谷聡商店京焼・清水焼が出来上がるまでの工程を、段階的に表現したマルチカップセットが完成。「連結」するデザインがポイントです。
「伝産法」の運用、経産大臣が指定する伝統的工芸品の産業振興を担当しています。「日本人らしさ」の結晶である伝産品は、クールジャパンの核となるものですが、疲弊産地が少なくないのが現状です。様々な施策をフル稼働させ、状況を打破すべく日々奮闘中です!
商務情報政策局 伝統的工芸品産業室松村栄作 室長補佐(左)藤枝 隆 (右)
海外市場に精通した専門家を日本に招いたり、イタリアで伝統的工芸品をアピールするショップがオープンしたり。海を越えたも連携が、広がっています。
Collaboration
3 伝統的工芸品 × デザイナー
19METI Journal
創業・新事業促進課 海外展開支援室では、中小企業・小規模事業者の方々の海外展開に向けて、情報提供から事業計画策定支援、販路開拓支援、現地進出後のフォローアップまで、幅広くサポートを行っています。
中小企業庁 経営支援部 創業・新事業促進課 中嶋 和 海外展開二係長(左)林 達也 海外展開係長(右)
確に反映させた海外向け商品の開発支援を行う事業です。海外専門家が、企業の商品開発段階から関与し、工場等の現場にも赴いてもらうことで、海外専門家ならではの視点から企業の強みや商品の魅力を引き出すことができると考えています。
当該事業等を通じて、海外市場に新たな活路を見出し、海外展開後も成長していく中小企業・小規模事業者を応援していきます。
「日本のモノづくり技術と海外のデザインを融合させた売れる商品開発支援を」「海 外 専 門 家 招 聘 支 援 事 業(NEXT MARKET-IN事業)」では、海外展開を目指す中小企業・小規模事業者のために、海外現地の市場ニーズに精通する海外の専門家を招聘しています。そして、継続的に商品の企画開発のアドバイスを行うとともに、海外展示会出展を通じた現地ニーズの確認や商品改良のフォローアップを行うことにより、国内の準備段階から現地の市場ニーズを的
してしまうケースを、数多く見てきました」それでも試行錯誤を繰り返す中で、少しずつ海外の代
理店やデザイナーとのネットワークを構築。彼らのアドバイスを得て、商品の改良や販路の拡大を進めていきました。この西堀さんの経験を元に独自に構築した海外展開手法(T.C.I.メソッド)が、「NEXT MARKET-IN事業」の土台となっています。 「デザイン、共感を呼ぶストーリー、特殊な技術や素材。これらを重視した、日本ならではの商品が求められています。歴史を紐解くと、誕生してから現在まで、変化していない商品というのはほぼ皆無でしょう。なぜなら、市場環境に適応できなければ衰退していくからです。“伝統は革新の連続 -Tradition is Continuing Inovation-”という考え方のもと、新しい市場に適応した商品を、自らの高い技術を生かしてつくる。そして、フラットに自分を見つめ直す目と、変化を恐れない気持ちを持つ。そんな姿勢でものづくりができれば、可能性は大いに広がると確信しています」
◆ 井助商店伝統的京漆器のデザインが進化。漆と無垢の木地のコントラストを生かした、「漆の木」をイメージしたテーブルウェアです。
2004年に5代目就任。企業理念は「伝統は革新の連続である」。伝統の継承のみならず、新商品を積極的に開発し、グローバル・老舗ベンチャー企業を目指す。
京和傘 日吉屋 五代目当主(兼T.C.I.研究所代表)西堀耕太郎さん
CLICK! ● Next Market In ~ Contemporary Japanese Design Project
CLICK! ● 伝統工芸ミラノスクエア
ミラノの街で和の魅力を発信
現在開催中の「ミラノ国際博覧会」に合わせて、伝統的工芸品産業振興協会は、ミラノ市内に期間限定の展示場「伝統工芸ミラノスクエア」をオープンしています(5月1日〜10月31日まで)。日本各地の伝統的工芸品の紹介はもちろん、海外市場の獲得などを見すえたテストマーケティングも実施。さらに現地の和食レストランと連携したイベントや、職人による実演など、「多様な文化の中に取り入れてもらう」ための積極的なPRを続けています。
20 METI Journal Special Report
沖縄総合事務局経済産業部では、沖縄が日本と東アジアの架け橋となるため、「沖縄国際物流ハブ」機能を活かしたアジアへのビジネス拡大に向けた
様々な取り組みを進めています。
「沖縄国際物流ハブ」とは琉球王国時代、沖縄は海洋交易国
家として、日本や韓国、中国、東南アジア諸国と交易・中継貿易を行い、「万国の津梁(=世界の架け橋)」としての役割を担い、繁栄してきました。そして今、アジアの急速な経済発展に伴い、沖縄の地理的優位性がふたたび注目されています。 沖縄は日本の中では最南端にありますが、東アジアの主要都市に飛行4時間圏内で結ぶ位置にあり、いわば20億人の巨大マーケットの中心に存在します(→1)。この近接する強みを活かし、那覇空港において、2009年に「沖縄国際物流ハブ」が構築されました。24時間稼働する那覇空港を基点とした、日本とアジアの主要都市を結ぶ航空貨物便ネットワークにより、リードタイムを大
( August / September 2015 )
沖縄からアジアへ~「沖縄国際物流ハブ」を活用したアジア展開~
111120億人の巨大マーケットの中心に存在する沖縄
羽田名古屋
関西
成田ソウル
大連北京
青島
上海
台北広州
香港ハノイ
ホーチミンマニラバンコク
シンガポール
ジャカルタ
クアラルンプール
日本1.3億人
中国13億人
ASEAN6億人
人口20億人の巨大マーケットの中心
沖縄から4時間圏内
沖縄
KEY WORD 沖縄国際物流ハブ
21METI Journal
左/クラスター活動をリードする「沖縄国際ハブクラスター推進会議(議長:玉城義昭 沖縄経済同友会代表幹事(株式会社沖縄銀行頭取))」。産学金官が一堂に集まり、アジアとの商流・物流両面での様々な意見やアイディアが飛び交う。右/「アジアのバイヤーが求めるのはジャパンブランド。地域を越えて連携していけば、もっとニーズに応えられるのではないか」と語る与那覇クラスターマネージャー。
支援機関、行政等をつなぐネットワーク組織「沖縄国際ハブクラスター」を構築し、ビジネスマッチングやテーマ別研究会などを通じて、アジアへのビジネス拡大に取り組む企業をサポートしています(→3)。メ
ンバーの1人である与那覇義隆 クラスターマネージャーは、長年輸出入業務に携わった経験と人脈を活かし、特に香港、台湾のバイヤーからの様々なニーズを踏まえ、メーカーとのマッチングを行っています。
幅に圧縮し、アジア主要都市へ翌日配送を実現しております(→2)。那覇空港の国際貨物取扱量はめざましい勢いで伸び、国内第4位へと急成長しております。
官民一体! 「沖縄国際ハブクラスター」
沖縄は、かつてから人的交流も含めてアジアとの貿易が盛んに行われてきたことから、ユニークな「地域商社」が複数存在し、中国や台湾、香港などとの商流を構築しています。こうした「地域商社」と県内外メーカー、金融機関、支援機関、行政等が官民一体となって、「沖縄国際物流ハブ」を活用し、アジアとのビジネス交流のための様々な取組が展開されています。そこで、沖縄総合事務局経済産業
部では、産業界、大学、金融機関、
2222沖縄空港からアジア主要都市へ翌日配送日本やアジアの主要空港を出発した貨物専用機が、深夜2時頃次々と那覇空港に集まる。ここで荷物が積み替えられて、翌朝にはそれぞれの目的地へと届けられる。
33333産業界、大学、金融機関、支援機関、行政等をつなぐネットワーク組織
CLICK! ● 沖縄国際ハブクラスターHP
22 METI Journal Special Report
合事務局経済産業部では、ヤマト運輸(株)と連携し、香港ECサイトを使った「OTORIYOSE(おとりよせ)」テストマーケティングを行いました(→5)。これは、「沖縄大交易会」に参加する全国のサプライヤーが、香港ECサイトに商品を掲載し、注文された商品をヤマト運輸(株)が「沖縄国際物流ハブ」を経由して、香港の消費者の自宅にクール宅急便で直接届けるものです。「沖縄大交易会」の当日、情報発信
社のサプライヤー、国内外から150社のバイヤーが沖縄に集まり、商談を行います。海外バイヤーは香港、台湾、シンガポール、中国、タイ、マレーシア等から参加し、昨年は商談件数1,861件、成約率27.2%(商談会直後バイヤーアンケートベース)と高い成約率を誇っています。
日本のおいしい!を 「OTORIYOSE(おとりよせ)」
昨年の沖縄大交易会にて、沖縄総
日本最大級の食の 国際商談会「沖縄大交易会」日本全国には新鮮な食材や素晴ら
しい特産品がたくさんあります。そこで、海外展開に取り組む全国の企業や農林水産業者の方々に、「沖縄国際物流ハブ」を活用し海外とのビジネスチャンスを掴んでいただくため、沖縄では国際食品商談会「沖縄大交易会」を開催しています(→4)。ここには、全国から200
食の国際商談会「沖縄大交易会」右/日本全国から200社のサプライヤーが集まる(北海道からは最多の23社が参加)。下/事前マッチング形式の個別商談会としては日本最大級。
CLICK! ● 沖縄大交易会オフィシャルサイト
4444食の国際商談会4食の国際商談会食の国際商談会4食の国際商談会右/日本全国から200社のサプライヤーが集まる(北海道か4右/日本全国から200社のサプライヤーが集まる(北海道か右/日本全国から200社のサプライヤーが集まる(北海道か4右/日本全国から200社のサプライヤーが集まる(北海道か
KEY WORD 沖縄国際物流ハブ
23METI Journal
力の高い香港のグルメブロガーやシェフ、メディア関係者が会場を訪れ、試食の感想や商品のストーリーをSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で発信しました。カリスマ主婦ブロガーのSallyさんが一番気に入ったのは「天然だし」。そのおいしさをSNSで発信したところ、「買ってきてほしい」との声が殺到し、Sallyさんはスーツケースいっぱいにこれを持って帰りました。香港の消費者にとって、口コミの影響力が非常に大きいことがうかがえました。
めざせ成約! 「輸出戦略セミナー」
中小企業者や農林水産業者にとって、海外バイヤーとの商談は貿易手
続きや商慣習の違い等、ノウハウ不足が大きな課題です。そこで、沖縄総合事務局経済産業部、沖縄県、JETRO沖縄、中小企業基盤整備機構沖縄事務所、沖縄県産業振興公社の5機関が連携し、「沖縄大交易会」に参加する県内中小企業者等を対象とした「輸出戦略セミナー」を実施
しています(→6)。このような機会を通じて、1社でも多くの企業が海外との商談成約に繋がることを期待しています。沖縄総合事務局経済産業部では、
今後も全国の事業者とともに、沖縄国際物流ハブを活用したアジアへの販路開拓に取り組んで参ります。
CLICK! ● 輸出戦略セミナー
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輸出戦略セミナー昨年のセミナーの様子。「事前準備の有無で商談に大きく差が出る」と、講師の曽我しのぶ氏(貿易ビジネスコンサルタント)。
666輸出戦略セミナー6輸出戦略セミナー輸出戦略セミナー6輸出戦略セミナー
「OTORIYOSE (おとりよせ)」テストマーケティング
左/熱心におとりよせ商品を取材する香港ブロガー上/香港 ECサイト「Fingershopping」
CLICK!
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い ま を 読 み 解く
経 済キーワード今号の
発行人/経済産業省〒100-8901 東京都千代田区霞が関1丁目3番1号
http://www.meti.go.jp/
経済産業ジャーナル 2015年8・9月号
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【せいちょう・せんりゃく・みっつの・みえるか】
成長戦略
「3つの見える化」
「成功の秘訣」「ビジネスチャンス」「支援体制」の3点を
わかりやすく「見える化」することで、意欲ある中小・中
堅企業が自らの成長に向けた取組の具体化を図り、中
小・中堅企業が更に飛躍できるよう後押しをする取組。
新たなビジネスに挑戦する中小・中堅企業の支援のた
め、身近な相談先として地域の各種支援機関、大学等の
支援体制を整備し、支援人材や国の各専門機関がサポー
トするプラットフォームを全国規模で構築し、事業化に
必要な人・企業・情報を地域の企業につなぐ取組。
【ちゅうかく・きぎょう・そうしゅつ・しえん・ねっとわーく】
中核企業創出支援
ネットワーク
伝統的工芸品とは、伝統的工芸品産業の振興に関する法
律(昭和49年法律第57号)に基づき、経済産業大臣が
指定した工芸品のこと。
伝統的工芸品
【でんとうてき・こうげいひん】
※
METIPEDIAでは、「伝統的工芸品産業の振興」内「日用
品・伝統的工芸品」において紹介。
あ
い
う
え
お
か
き
く
け
こ
さ
し
す
せ
そ
た
ち
つ
て
と
な
に
ぬ
ね
の
は
ひ
ふ
へ
ほ
ま
み
む
め
も
や
ゆ
よ
ら
り
る
れ
ろ
わ
を
ん