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光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化 誌名 誌名 光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化 著者 著者 金井, 龍二 掲載ページ 掲載ページ p. 1-10 発行年月 発行年月 1984年 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化 誌名 光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化

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光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化

誌名誌名 光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化

著者著者 金井, 龍二

掲載ページ掲載ページ p. 1-10

発行年月発行年月 1984年

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化 誌名 光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化

昭和59年度(1984)

農林水産業における自然エネルギーの効率的

利用技術に関する総合研究事業成績書

     担 当課題

光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化

構報センター

   担 当 者

埼玉大学理学部 金 井 龍 二

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昭和59年度・農林水産業における自然エネルギーの効率的利用技術に関する総合研

究事業成績書

担当課題名=光合成・光呼吸における葉構造・細胞内器官の機能分化

研究担当者:金井龍二(埼玉大学理学部)

研究成果

(1>研究園的

  C4植物は児かけのうえで光呼吸を示さないが、光呼吸に関与するグリコール

 酸経路の酵素活性は存在する。C3植物では、この光呼吸経路は葉肉細胞内の3

 種のオルガネラ(葉緑体、ミトコンドリア、パ一盛キシゾーム)間を往復するこ

 とによって成り立っている複雑な代謝経路である。C4植物ではその光合成経路

 が葉肉細胞(Mc)と維管束鞘細胞(BSC)と呼ばれる2種の緑色細胞の分業

 と協働によって成り立っており、光呼吸のグリコーール酸経路の酵素系に関し、両‘

 継胞の各オルガネラにどのように分化しているかを明らかにすることは、C3植

 物の光呼吸鋼御の機構を解明する上で重要な手がかりとなる。

  昨年度、われわれは種々のサブタイプのC壕植物から両細胞のミトコンドリア

 を単離して、光呼吸のCO2放出に関与するセリン・グリシン代謝系の酵素を比

 心したところ、この酵素系はBSCミトコンドリアには存在するが、MCミトコ

 ンドリアには欠失していることを明らかにした。また、この光呼吸活性における

 両細胞ミトコンドリアの分化が普遍的に見られることを示した。

  本年度は、第!に光呼吸に蘭与する今一つのオルガネラであるパーオキシゾー

 ムの役割について検討した。すでにC4植物のMC葉緑体には光呼吸の出発点と

 なるRuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼが欠失していることが知られて

 いるので、光呼吸の観点から考えるとC4植物MCパーオキシゾームは、一見し

て無用と思われる。そこで、グリコール酸代謝経路の酵素活性をC3植物やC4BS

 Cのパーオキシゾームと比較してみた。また、C4MCパーオキシゾームが光呼

 吸以外の役割を持つ可能性を検討するため、種々のマイクロボディーに局在する

 他の代謝経路の酵素活性も比較した。

一1一

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 第2に、懸案であった光合成・光呼吸のエネルギー代謝におけるC3植物MC、

C4植物MC、 BSC間の明らかにするため、各々の単離細胞プロトプラストを用いて、

暗明移行時におけるATPレベルとエネルギー。チャージの変動をしらべた。

②研究方法

  パーオキシゾーム単離のため主に用いたC4植物材料はNAD-ME型のキビ

 (Pαπ‘cμ7πm‘Zぬceω濡、 USDA、 P.1.Nα196292由来の種子を増殖したもの)

 であるが、一部PEP-CK型のグリーンパニック(雪印種苗)も試みた。 C3

 植物の葉パーオキシゾームはコムギ(農林6エ号)発芽後1週間の葉から単離した。

 グリオキシソ㌧ムの単離にはヒマ種子(山田晃男氏の好意による)を1日水に浸

 してから切りきざんだ。

  細胞内アデニンヌクレオチドレベルの測定に用いた植物材料は主にPEP-C

 K型C4植物のローズグラスとグリーンパニックである。これらC4植物の生育

 条件および葉肉細胞プロトプラスト、維管束鞘細胞菓または同プロトプラストρ

 分離・精製法は前年度までの報告に従った。

  ショ糖密度勾配遠心法によるパーオキシゾームの分離

  α3Mマンニトール液に懸濁したC4植物MC、 BSCプロトプラストは20μm

 ナイロン網を通すことにより細胞膜を破壊し、1,300Xg3分間遠心して葉緑体を

 沈殿させる。この操作はパ一戸キシゾーム中に葉緑体の混入を防ぐために有効で

 ある。上清を32~55%(w/w)ショ糖の直線密度勾配液にのせ、垂直ローー里心

 (SV-288)で28,000 xg 60分間遠心して各フラクションを分取し、それぞれの

 オルガネラのマーカー酵素の活性を測定することにより、単離したパーオキシゾ

 ームの純度を検定する。同様の操作により、コムギ葉パーオキシソ㌧ムが分離で

 きる。

  また、グリオキシゾームを単離するため、ヒマ胚乳をα5Mショ糖(100mM

 トリシンーKOH(P壬{7.8)、0。1%牛血清アルブミン、1mM EDTA、α6%

 PVP、5mMDTTを含む)中で細かくきざみ、ミラクロースで濾した液を1,300

 ×g5分遠心した上清を上記の密度勾配遠心にかけた。

一2一

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 酵素活性の測定

 カタラーゼはH202の消費を240 nmの吸収変化により測定し、グリコール酸

オキシダーゼは反応産物のグリオキシル酸とフェニルヒドラジンの反応により生

成するフェニルヒドラゾンを324nmの吸収変化として測定し、ヒドロキシピル

ビン酸レダクターゼはグリオキシル酸またはヒドロキシピルビン酸を基質とし、

NADHの340nmの吸収変化を測定した。セリン、アラニンまたはグルタミン酸

をアミノ基供与体としたアミノトランスフェラーゼ活性の測定には〔1-14C〕

グリオキシル酸を基質として用いた。

 脂肪酸のβ酸化系のうち2種の酵素活性を定量した。βヒドロキシアシルCbA

デヒドロゲナーゼはアセトアセチルCOAを基質とし、エノイルCoAヒドラター

ゼは前記酵素の存在下クロトニルCoAを基質古して、何れも340nmの吸収変化

を測定した。

 またグリオキシル酸回路のマーカー酵素であるリンゴ酸シンターゼとインクエ

ン酸リアーゼ、それに尿酸オキシダーゼはそれぞれ常法にしたがって活性を測定

した。

 酵素活性はいずれも、単離したマイクロボディーの蛋白質当りで表示したくμ

モル/rng蛋白質/分)ので相互の比較が可能になった。

 細胞内アデニンヌクレオチドの定量とエネルギー・チャージ

 MC、 BSCの単離細胞またはプロトプラストを0.5Mソルビトール液(50m

M且£PES~K:OH(pH Z O)、1mMMgC12、エmM CaCI2、α1%牛血清ア

ルブミンを含む)に懸濁し、暗処理または光照射中に~定量(500μ4)のサンプル

を取り出して、直ちに①氷冷した7.5%HCIO42ml中に投入、または②一72℃に

冷却した5mlメタノール(0.1N-HCI O25 mlを含む)中に投入し、すばやく撹

減したのち同温度下で30分放置する。

 抽出液にKOHを加えて中和し、メタノールは35℃でN2を通気して除いた後、

アデニル酸の定量に用いる。

 螢のルシフェリン・ルシフェラーゼはATPに対し特異性を持ち、次の反応に

よりATP1分子当り1ケの光子を放出するので、これをATPフォトメーター

一3一

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(Monolight-400、ALL社製)で測定する。

                ルシフェラーゼ還元型ルシフェリン+ATP一ト02一一一一→酸化型ルシフェリン+AMP

                 Mg 2+                       ÷PPi+CO2+ラ陰子

 サンプル中のADPおよびATPは、抽出液にビルビン酸キナーゼ(PK)お

よびアデニル酸キナーゼ(AK)を加えることによりATPに変換してから上記

の測定をする。

         PK  ADP+PεP一一砂ATP+ピルビン酸

          AK  AMp+ATP一…一磁2×ADP

(3)本年・度の研究成果

  C4植物MC. B$Cパーオ‡シゾームにおける光三二関連酵素活牲および他

 の代謝系酵素活性の比較

  キビ(NAD-ME型C4)では両細胞プ環トプラストから葉緑体を除いたの

 ち密度勾配遠心にかけることにより、パーオキシゾームを他のオルガネラからほ

 ぼ完全に分離することができた(國1)。同様の方法により0植物コムギ葉か

 らパーオキシゾームが、またヒマ胚乳からはグリオキシゾームが単離できたので.

 これら4種のマイクロボディーについて、光呼吸のグリコール酸経路(表i)、

 グリオキシル酸罎路および脂肪酸のβ酸化経路(表H)の諸酵素の活性をマイク

 ロボディー蛋白質当りで比較した。

一4・一

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図エ キビ葉肉細胞プロトプラスト(MP)と維管束鞘細胞プロトプラスト(BP)

  抽出液からパーオキシゾームの単離

5Q20

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 昨年度も予備報告したが、C4植物キビの光呼吸関連酵素はカタラーゼ、グリ

コール酸オキシダーゼ、アミノトランスフェラーゼなどいずれもC3植物よりは

活性が低くC4のMCとBSC間ではMCパーオキシゾームの活性が低かった。

一5一

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表1 種々のタイプのマイクロボディーにおける光呼吸関連酵素活性の比較

   酵素活性はμモル/胆9マイクロボディー蛋白/分で、カッコ内の数字は実験回

  数を表す。ヒドロキシピルビン酸(HP)レダクターゼのB例は基質として耳

  Pを用いた場合、Aはグリオキシル酸を基質とした場合を示す。

P. miliaceurg peroxisomes

Bundle sheath 潤eも・phyU

Wheat me$QPhyll

 perOX工somes

Castor beanend。$perm

91yoxysomes

       一3Catalase(x10        >

G工yCOlate oxldase

Glyoxylatea蒲inotransferase

壬{ydroxypyruvate reductase

  4.5→・1.4(10)

  ユ4.4+4.5 (7)

Ser- 5.9+1.1 (3)

Ala- 7.8+2.4 (3)

G】.u- 6.4+2。5 (3)

A6.9+3.O(7)

B  17.2     (1)

L8+O.6(11)

5.8+1。4 (6)

3,8+O.1 (2)

2.8+O.5 (2)

2.3+0,工 (2)

3,6+0.6 (7)

13.7    (1)1

12.O+2.5 (7)

34.7+6.3 (7)

馬。・9  (1)

エ2.9   (1)

10.8   (1)

3,’ W+O.7 (フ)

17・7  (1)

3.2 (i)

0.14(1)

0.07(1)

表1 種々のマイクロボディーにおける尿酸オキシダーゼ、グリオキシル酸回路お

  よび脂肪酸β酸化の諸酵素活性の比較

   *印は2回の実験の平均値、n. d.は検出限界以下を表す。酵素活性の表示は

  表1と同じ。

 P. mi、iaceum peγ℃XI somes        レJheat

 Bundle sheath    卜~esoρhy11     ’『晦esて〕やhyll

E=xp. I  Exp. 11   Elxp. 王  Exp. 王工 Peroxl somes

Castor bean

endQspeγ腎m

GlyQxysornes

柄alate synthase

Isocitrate lyase

6-Hydroxyacy1-CoA

  dehydrogenase

Enoy1-CoA hydratase

Urate oxidase

n,d.・

n.d.

0.フ0

1.45   2.70

0.01

0,36

L52

0.008

翫d.

n.d.

2.32

n.d.

n.d.

0.25☆

1.29索

0.OB☆

0.24

0.53

4,02

25.3

0.01

一6一

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その傾向はC3(1)>C4BSC(約%)>C4MC(約%以下)であった。しかし、

ヒドロキシピルビン酸レダクターゼは例外で、C4MC、BSC共に高い活性が見

られた。グリコール酸経路が逆向きに働らくとき、この酵素はセリン生合成系と

して働く可能性を示唆するものとして興味がもたれる。.

 ヒマ胚乳のグリオキシゾームに局在するグリオキシル酸回路のマーカー酵素で

あるリンゴ酸シンターゼとインクエン酸リアーゼはC3、C4MC、 BSCパーオ

キシゾーム共に検出されなかったが、脂肪酸β酸化に働らく2種の酵素および尿

酸オキシダーゼは弱いながら活性が存在した。したがって、C4植物両細胞のマ

イクロボディーは葉パーオキシゾーム型であると結論された。C4MC細胞の葉

緑体とミトコンドリアは光呼吸経路の酵素を欠失しているに対し、.パーオキシゾ

ームが低活性とは言え、同経路の酵素系を保持していることは興味あることであ

る。C4MCパーオキシゾームが光呼吸以外にも生体内で未知の機能を果してい

る可能性は残る。

 C4MC、8SC細胞内アデニンヌクレオチドレベルの変動

 C4植物から単離したMCプロトプラストを暗処理後に光照射するとどのC4

種でも葉肉細胞内のATPは1~2分で急増し(図2)、これに対応してAMP

レベルが低下する。ADPレベルには大きな変動はないが、これは恐らく、C4

MCのアデニレートキナーゼ活性が極めて強いことと関連するものと思われる。

(ローズグラスで実測した同酵素活性はMC、 BSCでそれぞれ1409、36μモル

/狙9クロロフィル/時であった。)

一7一

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図2 ローズグラスから単離した葉肉細胞プロトプラストおよび維管束鞘細胞束(B

  SS)に光照射した時の細胞内ATP、 ADP、 AMPレベルの変動

             Chior1s gαyαηα

    醗CP〔Purity:92暑)

E。(=. (0.42)(0。70)(0.75〕

愉窒

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00

ΣAXP=104+24

 (0.83)

  ○    (

OATP△ADP    500A~1P

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        Σ:AXP=83+22

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 これに対し、BSC内のATPレベルに対する光照射の影響はC4サブグルー

プにより異なっていた。トウモロコシ(NADP-M£型)では光照射によりA

TPレベルはゆっくり増加し、対応してADPが減少した。しかし、 PEP-CK:

型のローズグラスでは予想に反して光照射によりATPはむしろ著しく減少し

た(図3)。この傾向はオキザロ酢酸(OAA)を加えてもあまり変化しない点

が注目される。しかし、同BSS内のりンゴ酸含量は光照射により著しく減少す

ることが観察されているので、おそらく、光照射により細胞内のリンゴ酸がOA

AになったのちPEPカルボキシキナーゼによる脱炭酸反慰に使われてATPが

消費されるものと思われる。

一8一

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図3 ローズグラスの単離BSSに光照射した時の細胞内リンゴ酸の減少とアデニ

ンヌクレオチドの変動

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(問題点と次年度計画)

 C4植物葉肉細胞のマイクロボディーがいわゆる未分化型でなく、葉パーオキシ

ゾーム型であることをキビについて明らかにしたが、他のC4植物群、特にNAD

P-M£型でもそうなのかどうか、今後この群がらパーオキシゾームが単離できる

かどうかにかかっている。また、C窪葉肉細胞パーオキシゾームには比較的HP盈

活性が高いことと関連して、このマイクロボディーが光呼吸以外にも生体内で未知

の役割を荷っている可能性に興味が持たれる。

 細胞内ATPレベルの変動の研究はC4植物では数少ないが、 C4光合成におけ

る2種の細胞の分業と協働をエネルギー代謝の面から解析することはC4光合成及

び光呼吸の制御を考える上で極めて重要な課題である。そのため、今後は両細胞か

ら単離した葉緑体によるC3化合物(ピルビン酸、 PEP、グリセリン酸など)の

膜透過性と細胞内エネルギーレベルの変動を関連付けた研究を計画している。

一1G一

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