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NICU災害シミュレーションにおける 役割遂行率の上昇 地方独立行政法人 那覇市立病院 NICU 山里 春華 1. はじめに 東日本大震災から約5年半が経過した。あの時受けた衝撃のどれだけが、今それぞれに残っているだろうか。あの時 必要だと痛感した、どれだけの災害対策が今、できているだろうか。 当時、患者に寄り添い、犠牲になった看護師を讃えた記事があった。その方の父親は 「娘を誇りに思う」 と。一方で は、患者を残していった医療者への非難の声も多くあり、私たちの在り方に、不安がよぎる。 被災地の看護師約7割にうつ症状、約3割に PTSD の疑いがあるという記事もある。災害時の対応について、取り決 めが浸透しておらず、その場で、自分で判断しなければならない状況だったとしたら…。後に残るのは、どんな想いな のだろう。 地震の少ない沖縄で、本腰を入れて災害対策に取り組む施設は多くはない。しかし、“もしも”は、本当に最後まで “もしも”であってくれるだろうか。 両親が、大切なベビーを安心して預けられるよう、また、自分たちを大切に思う人のために、スタッフ自身もしっかり 守れるようにと、今回の取り組みを始めた。 2. テーマ選定 災害対策という点で重要度・安全面での必要性が 高く、また、いつ起こるか予測不能であることから 緊急性も高いと判断。上司方針もあり、テーマとして 「災害対策が不十分」を選定 3. 現状把握 【方法:災害シミュレーション(2回)】 設定:1月の平日の日勤帯に震度6強の地震発生(火災なし、避難命令あり) 3-1)災害発生時~避難完了までの状況 *地震発生直後から揺れがおさまるまで、1 人を除いた全看護師が患者の安全確保をし続け、自助をしなかった *アクションカードを確認したスタッフはおらず、各自が各々の判断で行動し、リーダーへの報告はないまま、バラバ ラに避難 看護助手は患者と避難。スタッフから看護助手への指示や安否確認などの声かけなし 保温を意識して避難できたスタッフはおらず、また、災害時のために備えてある物品は、何も持ち出されなかった *母が面会中の児は母にて抱っこ。その他はナース 1 人がベビー1 人を抱っこして避難。重症避難用の人員が足り ず、一度避難したスタッフが各々の判断で応援に戻り、避難方法の相談をしたが、超重症児は避難させられず、退 室。患者を置いて避難することに、涙を浮かべるスタッフも見られた 評価項目 問題点 災害対策が不十分 16 1 退院調整が後手後手 14 2 消耗品のチェックに時間がかかる 11 4 物品が不足して気づくことが多い 11 4 シーネ固定法によるライントラブル 13 3 1回目 2回目 合計 平均 避難指示発令から 避難完了までの時間 6分30秒 7分28秒 13分58秒 6分29秒 避難方法の 相談に要した時間 3分36秒 4分25秒 8分01秒 4分01秒 1回目 2回目 避難状況 重症2名を残し避難 相談に 62%もの時間 を要したが… 重症児の避難は 困難であった

NICU災害シミュレーションにおける 役割遂行率の上昇 · 2016-09-14 · NICU災害シミュレーションにおける 役割遂行率の上昇 地方独立行政法人

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Page 1: NICU災害シミュレーションにおける 役割遂行率の上昇 · 2016-09-14 · NICU災害シミュレーションにおける 役割遂行率の上昇 地方独立行政法人

NICU災害シミュレーションにおける 役割遂行率の上昇

地方独立行政法人 那覇市立病院

NICU 山里 春華 1. はじめに

東日本大震災から約5年半が経過した。あの時受けた衝撃のどれだけが、今それぞれに残っているだろうか。あの時

必要だと痛感した、どれだけの災害対策が今、できているだろうか。

当時、患者に寄り添い、犠牲になった看護師を讃えた記事があった。その方の父親は 「娘を誇りに思う」 と。一方で

は、患者を残していった医療者への非難の声も多くあり、私たちの在り方に、不安がよぎる。

被災地の看護師約7割にうつ症状、約3割に PTSD の疑いがあるという記事もある。災害時の対応について、取り決

めが浸透しておらず、その場で、自分で判断しなければならない状況だったとしたら…。後に残るのは、どんな想いな

のだろう。

地震の少ない沖縄で、本腰を入れて災害対策に取り組む施設は多くはない。しかし、“もしも”は、本当に最後まで

“もしも”であってくれるだろうか。

両親が、大切なベビーを安心して預けられるよう、また、自分たちを大切に思う人のために、スタッフ自身もしっかり

守れるようにと、今回の取り組みを始めた。

2. テーマ選定

災害対策という点で重要度・安全面での必要性が

高く、また、いつ起こるか予測不能であることから

緊急性も高いと判断。上司方針もあり、テーマとして

「災害対策が不十分」を選定

3. 現状把握

【方法:災害シミュレーション(2回)】 設定:1月の平日の日勤帯に震度6強の地震発生(火災なし、避難命令あり)

3-1)災害発生時~避難完了までの状況

*地震発生直後から揺れがおさまるまで、1人を除いた全看護師が患者の安全確保をし続け、自助をしなかった

*アクションカードを確認したスタッフはおらず、各自が各々の判断で行動し、リーダーへの報告はないまま、バラバ

ラに避難

*看護助手は患者と避難。スタッフから看護助手への指示や安否確認などの声かけなし

*保温を意識して避難できたスタッフはおらず、また、災害時のために備えてある物品は、何も持ち出されなかった

*母が面会中の児は母にて抱っこ。その他はナース 1 人がベビー1 人を抱っこして避難。重症避難用の人員が足り

ず、一度避難したスタッフが各々の判断で応援に戻り、避難方法の相談をしたが、超重症児は避難させられず、退

室。患者を置いて避難することに、涙を浮かべるスタッフも見られた

               評価項目

   問題点

上司方針

重要度

緊急性

安全性

実現性

日常業務効率

評価

順位

災害対策が不十分 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ △ 16 1

退院調整が後手後手 ◎ ◎ ○ △ ○ ◎ 14 2

消耗品のチェックに時間がかかる ○ ○ ○ △ △ ◎ 11 4

物品が不足して気づくことが多い ○ ○ ○ △ ○ ○ 11 4

シーネ固定法によるライントラブル ○ ○ ○ ◎ ○ ○ 13 3

1回目 2回目 合計 平均

避難指示発令から避難完了までの時間

6分30秒 7分28秒 13分58秒 6分29秒

避難方法の相談に要した時間

3分36秒 4分25秒 8分01秒 4分01秒

1回目 2回目

避難状況 重症2名を残し避難

相談に 62%もの時間を要したが…

重症児の避難は 困難であった

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3-2)役割遂行率

3-3)災害シミュレーション後の聴き取り調査

【リーダー:2名】得点

(各満2点)

自分自身の安全確保 0

全スタッフの安否確認 0

スタッフへ受け持ち患者・家族の安否確認、安全確保指示

2

病棟の被災状況把握 0

師長へ報告・指示受け 0

避難準備指示 0

医師とトリアージ確認 0

避難命令に基づき、避難指揮 2

避難経路・集合場所指示 1

全員の避難・待機状況の把握 1

必要物品の携帯(ワークシート、チェックリスト、PHS) 1

合計(満22点) 7点

【スタッフ:8名】得点

(各満8点)

自分自身の安全確保 1

受け持ち患者の被災状況を確認 4

受け持ち患者・家族の安全確保 4

ME機器等の作動状況確認 5

リーダーへ報告 0

家族の対応 4

トリアージに基づいた順番で避難準備 7

保温に留意 0

避難経路・集合場所の確認 0

リーダーへ伝達後、トリアージ順に避難 0

合計(満80点) 25点

【看護助手:2名】得点

(各満2点)

自分自身の安全確保 0

直母室にいる患者・家族の誘導 0

避難経路の確保 0

病棟の被災状況確認・報告 0

家族の対応 0

リーダーの指示のもと、避難協力 0

合計(満12点) 0点

災害時の役割全 114 項目中 遂行できたのは 32項目

(全体の 28%)

*パートナーやリーダーとの確認や報告がなく、各自の判断・考えで動いたため抜けや重複があった

*自助=責任放棄と捉えている

*日々行っているトリアージが、災害時の搬送に有効でなく、多くの迷い・葛藤・心苦しさがあった

*患者の避難優先になり、物品や保温への意識が下がる

*災害時に、その場で判断するには難しいことが多くあった

《リーダー役》

*一気に避難したから、どのベビーが避難したか、誰

が残っているのかの把握ができなかった

*スタッフも、誰が行って、誰が戻ってきているのか分

からなかった

《看護助手》

*患者さんと一緒に逃げればいいのかなと思ってい

*自分が何をすべきか、優先順位も分からなかった

*シミュレーションをして初めて、助手にもできること

は何か考えた

《家族役》

*看護師が子どもの酸素を OFF するか、酸素ボンベ

を準備するか考えている間に取り残された感じがし

て、パニックになった

*避難する時に、誰についていっていいのか分から

なかった

《医師》

*重症を残すか連れて行くかの判断が 1人でできる

自信がない

*判断が正しかったか疑問が残る

*頭が真っ白になって、まず何をしたら良いのか分

からなくなった

*回路がどうなっているか、機器がどこにあるか、い

ざって時のために分かってないといけないと感じ

*担当していない児のトリアージは誰がするのか?

《スタッフ役》

*何をしたら良いか分からなかった。しばらくウロウロ

していた

*やるべきことを知ってはいたが、実際はできなかっ

*自分の安全なんて全く考えてなかった

*自分も子どもがいるので、自分の身も守りたいと思

ってしまった

*お母さんもいる中で、患者より自分の安全を優先

して良いのか迷って、結局できなかった

*重症の対応は日頃から煮詰めていた方が良いの

ではないか

*酸素は?循環作動薬は?迷うことだらけだった

*向こう側の患者はパートナーが見てたから分から

ない

*A(重症)の安否確認ができたから離れたら、次は

パートナーがそこにいた

*コットフードでの移動は危険と判断して、1人ずつ

抱いていったが、それだと人員が確保できない

*患者で精一杯で、物品のことまで意識できなかっ

た。何が必要かも分からない

*連れて行くのに精一杯で、冬の設定なのに、病衣

1枚で連れて行ってしまった

*避難した後なかなか戻れず、実際も戻るのは難し

いと感じた

*連れていけない子どもたちがいて、とても悲しい気

持ちになった

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4. 目標設定

「何を」 → NICU災害シミュレーションでの

各自の役割遂行率を

「いつまでに」 → H27年12月までに

「どうする」 → 現状の28%から60%にする

5.活動計画

6. 要因解析

NICU

災害シミュレーションにて

各自の役割を遂行できていない

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7. 要因の検証

8. 対策の検討

各自が災害時の役割を把握できていないだけではなく、役割がスムーズに遂行できるシステムも整っていない

【要因①災害時の役割を把握できていない

/アンケート調査】

役割を把握しているスタッフは

1人もいなかった

【要因②災害時の対応を訓練する機会がない/実態調査】

*災害対策の担当なし

*年間計画に定期的な訓練の予定なし

*災害対策訓練やマニュアルの見直しは、2012年に取り組まれて

以降、行われていない

【要因③重症の搬送基準に矛盾がある/資料調査】

トリアージは赤まで!!

「置いていきたくない」という想いから、超重症でも黒(避難しない)

判定はせず。日々のトリアージ確認は、酸素や輸液の有無、保育器

収容の有無等、状況別に色分け。医師との確認は徹底されていない

【要因④定められている軽症児の 搬送方法が危険/実態調査】

*現在の取り決め →軽症児はコットフードに2~3人乗せて搬送 ・階段の半分以上の幅を占める ・支えがないため、落とす危険性大! ・足下が見えない ・約7Kg~10Kgの重量 →搬送者の負担大!

【要因⑤必要物品の配置がバラバラ/実態調査】

(●)災害時必要物品 定位置はなくバラバラ!個人の判断で、よく場所が変わる

危険!

【要因⑥NICU看護助手の 災害時の役割が定められていない

/実態調査】

→全員、役割があることを知らなかった。当院では、看護助手への災害対策指導は各病棟に任されているが、NICUにおける看護助手の役割を明文化したものはなく、災害マニュアルの保管場所の説明も行えていない。

災害時に役割を遂行できるには

避難方法の

見直し

役割の整理

日頃の備え

災害時の対応の訓練・指導

【1次方策】 【2次方策】

必要物品の管理

スタッフ・リーダーの

災害時の役割の明確化

NICU看護助手の災害時の

役割調整

重症患者の

搬送基準の見直し

軽症患者の安全で

効率的な搬送方法の検討

【3次方策】

②安全な搬送具の購入

①トリアージ基準の見直し

③アクションカードの修正・個々への配布

⑦看護助手用アクションカードの作成・配布

⑥NICU看護助手への委譲役割の明文化

⑧口頭災害シミュレーション

④災害発生時フローチャートの作成

⑨避難経路ツアー

⑩災害時必要物品の保管場所を一元化

⑫災害時チェックリストの管理場所変更

⑪必要物品の見直しとスタッフへの周知

⑤NICU看護助手の役割の明確化

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9. 対策の実施

1)トリアージ基準と搬送方法の見直し

2)安全な搬送具の購入

3)アクションカードの 修正・個々への配布

4)災害発生時

フローチャートの作成

6)口頭災害シミュレーション( 対象:その日入院中の患者 )

【ディスカッション】

*安全確保方法

*避難準備方法

*どの順番で誰がどの患者を連れて行くか

7)避難経路ツアー

8)災害時必要物品の保管場所を一元化

10)災害時チェックリストの管理場所変更

9)災害時必要物品の見直しとスタッフへの周知 11)マニュアルの整理・必要情報の追加

5)看護助手の役割調整

何度も検討を繰り返し 効果的で効率的な シナリオを作成!

《強調》

*自助の肯定

*保温方法の統一

*避難前の伝達の徹底

*パートナー間の連携体制

全員携帯できるよう 名札入れに入るサイズ

災害物品の 持ち出しと

保温具の 配布役割を 委譲☆

すぐに取り出せる ワークシート裏へ

煩雑な マニュアルの中から

~トリアージ方法~ *毎朝 10時までに、日勤リー

ダーと新生児当番の医師と

で行う

*トリアージ【赤】【黒】の児

は、適切かどうか、毎週火曜

日のカンファレンスで評価

*【黒】とした場合は、その理

由を主治医が掲示板へ記載

*日々トリアージは行うが、

【赤】【黒】の災害時の最終

判断は、その場にいる医師

とする

*避難は原則として緑→黄→

赤の順序で行う

トリアージ基準は、

全国の推奨案へ戻し

搬送方法は、

より分かりやすく

実現可能なものへ

→ NICUに関わる全医師・

看護師へ周知!

非常口の開け方から どこに辿り着くかまで

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10. 効果の確認

【有形効果】

1)災害対策に関するアンケート調査(対象者18名 回収率100%)

【無形効果】

1)日々のトリアージの変化

2)搬送時の安全性の向上

災害時の新生児用搬送具を購入したことで、搬送時の安全性と効率の向上につながった

3)効率的な災害対策訓練の実現

4)病棟の整理・整頓

災害時必要物品の定位置を決めたことで、病棟内の整理・整頓につながった。また、必要物品の持ち出し漏れ防止

や必要物品の周知、不足物品への気づきにも繋がった

0

18

0

5

10

15

20

対策前 対策後

自分の役割が

分かる

0 100%

Q1:災害時の自分の役割が分かる Q2:災害対策後

災害対策への意識は向上しましたか

18

00

5

10

15

20

はい いいえ

災害対策の

意識が向上

100%

Q3:対策以前と比較して、災害時の

対応に関する不安は軽減しましたか

14

13

0

2

4

6

8

10

12

14

16

はい 変わらない いいえ

対応について

の不安軽減

78%

《QC活動以降》 医師から、 「酸素は使っているけど、休憩もできるから黄色でいいかな」 「保育器に入っているけど、安定しているから黄色だね」 →患者の状態で“トリアージ”判断できており 日々の確認がより避難行動に繋がるものになった

《QC活動以前》 「酸素を投与しているから赤」 「保育器に入っているから赤」

→その日の状況を“色分け”していた

その日入院中の患者を対象にした口頭災害シミュレーションの導入によって、病棟スタッフが少なく、

災害シミュレーション用の人員確保が困難な NICU においても、より現実的で、様々な入院患者に対応でき

る災害対策訓練が可能となった。また、検討を繰り返し作成した、“シナリオ”をもとに進行することで、

多忙で状況のよめない NICU においても、約 15 分という時間で、業務への負担はなるべく軽く、そしてよ

り具体的なディスカッションを交えて実施できるようになった他、進行するスタッフによる、口頭シミュ

レーションの質のバラツキを改善した。さらに、リーダー・スタッフ・看護助手それぞれの役割が分かる

ことで、役割の重複がなくなった

2) QC活動前後、各2回の災害シミュレーションにおける役割遂行率の比較 (各 リーダー:2名、スタッフ:8名、看護助手:2名)

0 20 40 60 80 100

全体

看護助手

スタッフ

リーダー

対策前 対策後

32% 91%

31% 90%

0% 83%

28% 89%

目標《各自の役割遂行率 60%》

に対し、対策後は 89%!

目標達成!!

☆自助と保温も 100%遂行!☆

医師・看護助手も 全員意識向上!

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5)PNS導入による災害時の弱点への対策がみえた

口頭災害シミュレーション時に、パートナー間での連携の

重要性を強調した結果、声の掛け合いが格段に増え、

パートナー間でスムーズに担当患者全員の状況の

把握や避難準備ができた

6)避難状況把握の効率化が図れた

避難前のリーダーへの伝達を義務づけた結果、ワークシートを

用いて、その場でチェックが行われ、避難状況が即座に把握できた

また、各々に避難し、自己判断で応援に戻っていたスタッフの

指揮がとれるようになった

7)看護助手の役割を明確にし、委譲役割を調整したことで

避難行動全体がスムーズになった

【波及効果】

1. 院内放送が聞こえない NICUだが、非常警報は聞こえることが確認でき、

スタッフの安心へ繋がった

2. 11月に保育器のトラブルによって起こった、数日間・長時間の NICU停電への

初期対応がスムーズにできた

3)看護師対象に始めた取り組みであったが、医師や看護助手も一緒に災害シミュレーションを行ったことで、

医師からの「トリアージの変更点をカンファレンスで説明しましょうか?」との申し出や、看護助手からの

「年1回の看護助手研修に、災害対策をリクエストします」等の声が聞かれ、NICU全体の災害対策への

意識が向上。「今後も災害シミュレーションをやってほしい」との声が多く聞かれた。

11. 標準化と管理の定着

12. 反省と課題

今回の取り組みを通して、人に“想い”があるからこそ、トリアージ通りに動くことの難しさを学んだ。だからこそ、原則

としてのルールが必要であり、訓練が必要なのだと思う。しかし、多忙な医療現場では、業務をこなすことで精一杯な

のが現状である。その中で、継続して災害対策に取り組めるシステムの構築が、重要な課題である。ただ役割を周知

したら終わりではない。共通認識を持って、心の葛藤を減らし、それぞれが納得のいくように。災害を乗り越えて、また

看護師として、医療者として働けるように、日頃の教育や相談を丁寧に実施していく。それが大切なのだと思う。災害

対策に答えや終わりはない。小さな取り組みで、大きな効果を発揮する災害対策。“最善を願い、最悪に備える”。そ

んなチームでありたい。