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人類の基本命題=我を認識したときに発する素朴な疑問 自己に対する疑問:「私は誰?(What is life?)→生物科学 環境に対する疑問:「ここはどこ?(What is universe?)」→物理科学 現代学問論(2011年6月7日,14日,21日) 担当 大学院理学研究科物理学専攻 領域横断物理学専担講座 量子物性物理学大講座 生物物理学研究グループ 教授 大木和夫 http://www.bio.phys.tohoku.ac.jp この授業で使用した図表は次のアドレスで参照できます。 http://www.bio.phys.tohoku.ac.jp/~ohki/gakumon.html

PowerPoint プレゼンテーションohki/gakumon/Jun14.pdf定常状態(Stationary state): ・その系にある分子の分布(割合)は時間的に変化しないが、平衡状態ではなく非平衡

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  • 人類の基本命題=我を認識したときに発する素朴な疑問

    自己に対する疑問:「私は誰?(What is life?)」 →生物科学

    環境に対する疑問:「ここはどこ?(What is universe?)」→物理科学

    現代学問論(2011年6月7日,14日,21日) 担当 大学院理学研究科物理学専攻 領域横断物理学専担講座 量子物性物理学大講座 生物物理学研究グループ 教授 大木和夫 http://www.bio.phys.tohoku.ac.jp

    この授業で使用した図表は次のアドレスで参照できます。http://www.bio.phys.tohoku.ac.jp/~ohki/gakumon.html

  • 日本での科学技術研究の方針 平成23年度の文部科学省予算の重点事項 (元気な日本復活特別枠) 新成長戦略としての ・ライフイノベーション ・グリーンイノベーション

    ‘innovationの主要な意味は’renewal’、‘improvement’であり日本語では技術革新と

    訳されることが多い

    ・ライフイノベーション→生命科学←”What is life? ・グリーンイノベーション→環境科学←”What is universe”

    これらは人類の基本的な命題である。

    大震災の原発事故でエネルギーも再び重要な課題となっている。

  • グリーンイノベーション

    地球環境

    月を周回飛行するアポロ11号の宇宙船から撮影された,「地球の出」

    NASAが地球周回する衛星から

    撮影した本来の色の写真を繋ぎ合わせた。

  • この基準により、生命探査計画で火星に到達した惑星探査機で生命の存在しない安定状態(平衡状態)にあることを確認した。

    ガイア仮説 GAIA Hypothesis

    地球自身が一つの生命体であるとする考え方であり、J.E. Lovelockが提唱した。

    「地球生命圏(ガイア=ギリシャ神話の大地の女神)工作舎」

    NASAの生命探査計画に参画した。

    ・惑星に生命が存在するかの基準として、その大気組成が平衡状態か非平衡状態かを調べることを導入した。

    地球自身が一つの生命体と考える「地球生命体」を提唱した。

  • カオス(混沌)から始まった世界はまず、大地の女神ガイアが生み、ガイアは眠りながら、天空ウラノスを生んだ。ウラノスはガイアの子であるが、夫でもあり、二人は男神として、境界の神オケアノス、コイアス、ヒュペリオン、クレイオス、イアペトス、農耕の神クロノスを生んだ。女神として、記憶の女神ムネモシュネ、掟の女神テミス、テテュス、ポイベ、ティア、レアを生んだ。これらは12巨神と呼ばれる。 さらに、3人の百腕巨人(ヘカトンケイル)、3人の一眼巨人(キュプロクス)と多くの巨神族を生んだ。しかし、天空の神ウラノスは権力を奪われないように巨人族を地下のタルタロス(地獄・奈落)に幽閉した。ウラノスは雨を降らせ、湖や海を作った。

    ガイア(ギリシャ神話の大地の女神)

    ところが、ウラノスが子供達を奈落に閉じ込めたことに怒ったガイアは息子のクロノスに鎌でウラノスを殺害させた。ガイアから支配者の権利を譲られたクロノスは姉のレアと結婚し、新たな神々の王となった。

  • 地球大気と他惑星大気との比較

    ・地球の大気には二酸化炭素が極めて尐なく、酸素が存在する。・地球の温度では水か液体で存在できる。

    金星と火星は平衡状態にあるが、地球は非平衡状態にある。 生命の存在

  • 地球上での生命の誕生と進化における物理学(エネルギー)

    無生物の物質世界(平衡状態)から生物・生態系(非平衡状態)の世界へ

    平衡状態(Equilibrium state):

    ・内部では反応が起こっていても順反応と逆反応の速度が等しいのでその系にある分子の分布(割合)は時間的に変化しない。 ・外部から、熱(エネルギー)も物質も入らない孤立系では存在する元素は最終的に平衡状態になる。 定常状態(Stationary state): ・その系にある分子の分布(割合)は時間的に変化しないが、平衡状態ではなく非平衡状態の一つである。

    ・時間的に変化しない状態を維持するために外部からエネルギーを供給し続けねばならない。 生物の生きている状態は定常状態である。

  • 生物を物理学で理解するためのキー・ワード

    2mcE

    エネルギーの本質的な形は質量であり、エネルギー(E)と質量(m)の等価を

    示すアインシュタインの関係式で表される。(Cは真空中の光速度)

    平衡状態と定常状態(どちらも時間が経過しても変化しない)

    平衡状態 定常状態

    平衡状態は外部からのエネルギーに関係なく維持されるが定常状態を維持するには必ず外部からのエネルギーが必要となる。

    如雨露に水を入れて持ち上げる。=外部エネルギー

    エネルギー エネルギーは形を変えるだけで無くなることはない。 熱、電気、化学、運動、位置(重力)、原子力など

    エネルギーの最小に落ち着いた状態

    水の流れはあるが水面の位置は一定

  • 宇宙と地殻(地球)における元素の存在量 (Si=1としHeとNeは除く)

    原子番号 元素 宇宙 太陽表面 地殻

    1 H 4 ×104 5.1 1.4×10-1

    6 C 3.5 1 2.7×10-3

    7 N 6.6 2.1 3.3×10-4

    8 O 2.2 2.8 ×102 2.9

    14 Si 1 1 1

    ・地球に生命が誕生したとき、地上に、さらには、宇宙に存在する元素が構成材料として用いられているはずである。

    ・Siを除けば存在量の多いH、C、N、Oが生物の主要な構成元素である 。

  • 人体の元素組成(乾燥重量の%)

    炭素 50 酸素 20

    水素 10 窒素 8.5

    カルシウム 4 燐 2.5

    カリウム 1 硫黄 0.8

    ナトリウム 0.4 塩素 0.4

    マグネシウム 0.1 鉄 0.01

    マンガン 0.001 沃素 0.00005

    元素 % 元素 %

    ・人体の最大の構成分子はその60%以上を占める水である。

    ・人体の4大構成元素は宇宙に存在する4大構成元素と一致する。

    特殊や希有な元素でなく、豊富に存在する元素により生命が誕生していることは、生命の誕生が自然な過程であったとも推測できる。

    ・原子番号で鉄までの元素は核融合反応で形成されるが、それ以上の元素は超新星爆発で形成される。

    生体元素では銅(29Cu)、亜鉛(30Zn)、沃素(53I)が鉄(26Fe)より先の原子番号をもつ元素である。

  • 平衡状態における分子生成の原理

    ある元素組成からなる系の平衡状態は

    を最小にする状態として見出される。

    (n:i結合の数, Ei : 結合エネルギー, i:共有結合の型)

    A≒Σni・Ei

    炭素(C)と水素(H)と酸素(O)の原子を同じ数だけ入れた系で充分な時間の後に平衡状態になったとき、水の分子はH-O-Hなので、1モルの水分子の結合エネルギーの総和はH-O 110.6 kcal/mol ×2であり、2酸化炭素分子はO=C=O なので、1モルの2酸化炭素分子の結合エネルギーの総和は174kcal/mol×2であり、この他にも水素分子H2、酸素分子O2、1酸化炭素分子、メタンなどが生成する。原子の数に制限

    があるので、その中で生成が可能な分子について全分子の結合エネルギーの総和が最小な状態が平衡状態で生成する分子の分布となる。

  • T.L. Cottrell "The Strength of Chemical Bonds"[Butterworth, London & Washington D.C. 1958]

    結合型

    C-C

    C=C

    C≡C

    C-H

    C-N

    C=N

    C≡N

    C-O

    C=O

    C-P

    C=P

    C≡P

    C-S

    結合エネルギー

    [kcal/mol]

    82.6

    145.8

    199.6

    98.7

    72.8

    147

    212.6

    85.5

    174

    62

    65

    結合型

    H-H

    H-N

    H-O

    H-P

    H-S

    N-N

    N=N

    N≡N

    N-O

    N=O

    N-P

    N=P

    N≡P

    結合エネルギー

    [kcal/mol]

    104.2

    93.4

    110.6

    77

    83.0

    21

    100

    225.8

    53

    145

    50

    138

    結合型

    O-O

    O=O

    O-P

    O=P

    O-S

    O=S

    P-P

    P=P

    P≡P

    P-S

    P=S

    S-S

    S=S

    結合エネルギー

    [kcal/mol]

    41

    119.1

    84

    120

    112

    48

    116.7

    55

    54

    84

    CHNOPS元素系の主要菜共有結合の平均結合エネルギー

  • 化合物 平衡濃度 化合物 平衡濃度

    Water 2.24 Carbon dioxide 0.88

    Nitrogen 0.50 Methane 0.12

    Hydrogen 0.18×10-1 Ammonia 0.15×10-3

    Carbon monoxide 0.54×10-4 Ethane 0.34×10-7

    Formic acid 0.25×10-9 Acetic acid 0.25×10-9

    Methanol 0.73×10-11 Formaldehyde 0.13×10-11

    Ethylene 0.88×10-13 Hydrogen cyanide 0.73×10-13

    Methylamine 0.64×10-13 Acetaldehyde 0.81×10-14

    Ethanol 0.92×10-15 Acetone 0.92×10-17

    Ketene 0.19×10-17 Methyl ether 0.30×10-19

    Formamide 0.24×10-20 Glycine 0.48×10-21

    Acetylene 0.11×10-22 Lactic acid 0.20×10-23

    Acetamide 0.11×10-23 Ethylene glycol 0.62×10-24

    Benzene 0.52×10-25 Alanine 0.97×10-27

    Furan 0.14×10-28 Pyrole 0.31×10-30

    Pyridine 0.16×10-30 Cyanogen 0.77×10-31

    Benzoic acid 0.65×10-31 Pyruvic acid 0.31×10-31

    Pyrimidine 0.13×10-31 Phenol 0.10×10-31

    Xylene 0.17×10-33 Benzaldehyde 0.12×10-35

    Naphthalene <10-38 Anthracene <10-38

    Asphalt <10-38 Oxygen <10-38

    元素組成C2H10NO8の系における化合物の分布平衡(1気圧、 500 ℃)

    [concentrations in moles per mole of total carbon]

    [Dayhoff, M.O., Lippincott, E.R. and Eck, R.V. (1964) Science 146, 1461-1464]

    アミノ酸 [glycine, alanine]

    生体分子合成の基本分子 [formaldehyde, hydrogen

    cyanide]

    核酸塩基の基本構造 [pyrimidine]

    エネルギー代謝の重要分子[ethanol, acetic acid, lactic

    acid, pyruvic acid]

  • ・地球上に存在量の多いH、C、N、O(Siを除く)は平衡状態で微量の生体基本分子を生成する。

    平衡状態で生成する生体分子(C2H10NO8閉鎖系)

    [Dayhoff, M.O., Lippincott, E.R. and Eck, R.V. (1964) Science 146, 1461-1464]

    Acetic acid

    H2O

    CO2

    N2

    H2

    CH4

    NH3 Hydrogen cyanide

    Formaldehyde Pyruvic acid

    Glycine

    Alanine

    Pyrimidine Lactic acid

    Ethanol

    Phenol

    Formaldehyde(HCHO),Hydrogen cyanide(HCN)を介して、アミノ酸、糖、核酸塩基など各種の生体分子を生成する。

    平衡状態では生物に必要な量の生体分子や新規の生体分子は生成されないので、エネルギーが供給する状態で生体分子が生成するシステムの存在が必要となる。

  • ミラーの化学進化実験装置 [Miller, S.L.: Science 117 (1953), 528-529]

    原始的な大気に雷を想定した放電のエネルギーを与えることで、基本的な生体分子を生成させた実験装置

    酸素(O)は水蒸気で、炭素(C)は

    メタンで、窒素(N)はアンモニアで、水素(H)は水素ガスで供給した。

    エネルギーを与えれば平衡状態から脱することが出来る。

  • 熱水鉱床(=海洋でのエネルギー源の発見) 熱水鉱床は海底拡大域の高温の地殻に海水がしみ込み熱せられて湧き出す現象として、1977年にコリスがガラパゴス海嶺の探査で発見し、熱水鉱床の周りに200種類以上の新種のぜん虫や軟体動物,節足動物が見つかっている。地球内部から放出される全熱量の13%は、熱水を介して消費され、仮に 熱水の温度を50℃~400℃とした場合、100万年~1000万年間で全海水と同量の海水が熱水循環サイクルを通過することになる。

    2600 mの深梅は、400 ℃近い熱水から硫化水素が噴き出し、硫化水素を使ってエネルギーを得るバクテリアが存在している。チューブワームは口も内臓も消化管もない生物でその内部には重量の90 %にもなる硫化水素で生きるバクテリアを詰めている。

    イオウ酸化細菌はイオウ元素を硫酸までに酸化するエネルギーで、NAD(P)HとATPを得ている。

  • 太陽エネルギーの地球生態系による利用

    地球上で得られる最も安定なエネルギー源は太陽である。

    1年間に地球が受ける太陽エネルギーは0.4~1×1025 J/year なる。

    ☆植物により太陽エネルギーを利用した炭素の同化作用

    が行われている。

    地球上の全植物は1年間に地球上で炭素原子(C)を2000億トン同化して、炭水化物にしている。 1モルのCO2を固定するのに4.8×10

    5 Jのエネルギーが必要であり、全体では 8.4×1021 Jが利用されている。

    全太陽光エネルギーの0.084%~0.21%が光合成に利用されている。

    食物連鎖 (太陽エネルギーを変換する植物が出発点となる)

  • 食物連鎖 Food chain

    植物により炭水化物に変換された太陽エネルギーは食餌として食べた動物により順次に利用される。

    CO2

    地球生態系は太陽エネルギーにより維持されている。

  • 葉緑体中のチラコイド膜に存在する電子伝達系

    NADPHを生成

    電気化学ポテンシャルの勾配を形成し、H+-ATPaseでATPを生成

    H+

    膜の一方に溜まったH+が膜内にあるH+-ATPaseの中を流れて軸を回転させATPを合成する。

    高エネルギー電子(2e-)

    高エネルギー電子(4e-)

    光合成細菌のエネルギー変換系が統合された。

    H+-ATPase

    H+

    ATP ADP

    進化のある段階で寄生した。

  • 太陽電池と燃料電池による葉緑体とミトコンドリアの類似サイクル

    太陽光エネルギーによる水の電気分解で水素と酸素を生成する。

    水素の酸素による酸化で生成する仕事(エネルギー)

    水素

    H2 酸素

    O2

    水 H20

    太陽

    水 H20

    酸素

    O2

    太陽電池

    水素

    H2

    燃料電池

    C - ( H 2 O )

    カ ル ィ ン 回 路

    ク レ ブ ス 回 路

    脂 質 ・ 蛋 白 質 ・ 糖 質

    C O 2 2 H 2 O

    O2

    2 N A D P H 3 A T P

    2 H 2 O

    O 2

    N A D H A T P

    太陽エネルギー

    光合成系

    電子伝達系

    ミトコンドリア

    葉緑体

    動物細胞と植物細胞には進化のある段階で寄生した細菌がミトコンドリアとなった。

  • 生体の基本的な高エネルギー分子

    ΔG=-7.3 kcal/mol

    ATP(Adenosine TriPhosphate)

    E0‘=-0.32 V

    NAD(Nicotine Adenine

    Dinucleotide)

    (自由エネルギー変化)

    (酸化還元電位)

  • ニコチンアミドの酸化型と還元型と電子の移動

    酸化還元電位がE0‘=-0.32 Vのとき、酸化型

    と還元型の濃度が等しい。

    E’=Eo-(RT/nF)ln([還元型]/[酸化型])

    酸化型 還元型

    リン酸(PO4)が結合しているのは光合成系に存在するNADPHであり、存在しない構造がミトコンドリアに存在するNADHである。

  • 生体内でのエネルギーの利用

    ブドウ糖(グルコース)の酸化

    [試験管内(体外)]

    [生体内]

    C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O + 686 cal/mol

    解糖系 2ATP

    2NADH=6ATP

    ピルビン酸→アセチルCoA

    2NADH=6ATP

    TCA回路 6NADH=18ATP

    2FADH2=4ATP

    2ATP

    ・ 以上の代謝経路で1分子のグルコースから38分子のATPが生成 (277 kcal/mol)

    砂糖(蔗糖)=ブドウ糖+果糖

    Sucrose=glucose+fructose

    主食(ご飯、パン、麺)

    デンプン=多糖(炭水化物)←太陽エネルギーを変換

  • 原始生命の誕生と進化

    生命の誕生した原始海洋に生成されている高エネルギー分子を利用して、生体高エネルギー物質のATPを生成する原始的な反応はピルビン酸キナーゼ(pyruvate kinase)で触

    媒されるカップリングした反応と考えられる。

    ホスホエノールピルビン酸→ピルビン酸

    (phosphoenolpyruvate) (pyruvate)

    ADP+Pi ATP

    ホスホエノールピルビン酸は加水分解でΔG-14.8 kcal/molの自由エネルギーを放出する

    ので、このエネルギーが生物が生きる(定常状態を維持する)ために使われた。

    進化とはエネルギー利用システム(物質代謝系)の進化である。

    原始発酵系

    原始海洋に存在する高エネルギー物質には限りがあるので、次に利用できる物質が必要になる。

  • ATP

    ATP栄養となる有機化合物Aからエネルギーを得る母種生物(0)

    B→A Bが用可能

    Aが枯渇するとBをAに変換する酵素を作る変異種(1)が繁殖する

    C→B→A   Cが用可能

    ATP

    Bも枯渇するとCをBに変換する酵素を作る変異種(2)が繁殖する

    ATP

    Cも枯渇するとDをCに変換する酵素を作る変異種(3)が繁殖する

    D→C→B→A Dが用可能

    生物進化の代謝系からの説明

    生物進化 代謝の進化 栄養の様式

    母種生物(0) A Aが利用可能

    [Horrowitz, N.H.: Proc.NAS 31 (1945), 153]

    酵素蛋白質の遺伝的な変化が類似な分子の利用を可能にする。

    この酵素蛋白質により代謝経路が伸展する。

    この過程を順次に進めることで物質・エネルギー代謝の経路を伸展させた過程が生物の進化となった。

    生物の進化とはエネルギーの利用形態が進化することである。

    藻類、植物により太陽エネルギーが利用できるようになった。

  • 解糖系(Glycolysis)

    原始発酵系

    Acetyl-CoA

    TCA cycle

    CO2とH2Oを生成し、ATPへのエネルギー変換が完結する。

  • 古い土壌の中の鉄やウランの酸化の程度の解析から、22億年前から19億年前頃に大気中の酸素濃度急増したこと考えられる。

    西オーストラリア、シャーク湾のハメリンプールに現生するストロマトライト

    シアノバクテリア(藍藻)は光合成をする生物であり、その誕生により太陽光エネルギーにより二酸化炭素(CO2)と水(H2O)から糖(C6H12O6)が生成される。

    光合成生物の誕生による太陽光エネルギーの変換と酸素を含む大気環境

    シアノバクテリア(藍藻)

    現在の大気中に存在する酸素の40 %は熱帯雨林の

    植物によって生成されている。

  • 環境・エネルギー・生物

    枯渇するエネルギー資源 ・石油の全世界埋蔵量は1兆バレル程度で最新の報告によると可能な採掘年数は33年、枯渇年数は79年である。 ・天然ガスの全世界確認埋蔵量4兆8700億cfであり、可能な採掘年数は45年であり世界平均の天然ガス枯渇年数は106年と推定された。 ・ウランの埋蔵量は547万トンで可能な採掘年数は100年程度である。 ・石炭埋蔵量は5,475億トンで可能な採掘年数は133年とされている。

    1バレル(バーレル、barrel)は159 リットル 1 cf (Cubicq Feet)は12リットル

    二酸化炭素濃度と地球温暖化

    太陽エネルギーは枯渇しないエネルギー資源として、地球の生態系を定常状態(生きている状態)に維持し続けている。

    枯渇しないエネルギー資源

  • 世界の穀物生産量 (小麦、米、とうもろこし、大麦)

    1997/1998年 19億1200万トン

    2005/2006年 19億6277万トン

    2011年 22億2646万トン

    世界の総人口 69億4468万人(2011年6月現在)

    1人あたりの穀物消費量 (1石=150 Kg)

    先進国 128 Kg/年 発展途上国 172 Kg/年

    22億トンの穀物は146億人を扶養できる。

    しかし、全穀物生産の半分近くは家畜の飼料に用いられている。

    9億5600万トン(2004/2005年の予測)

    家畜を1Kg肥らせるには、牛:8 Kg 豚: 4 Kg 鶏: 2-3 Kg の穀物が必要である。

    世界の漁獲量は1950年の2000万トンから、2000年には90000万トンを超えたが、乱獲による資源の枯渇が懸念されている。

    ヒトのエネルギー源としての食料

    仙台藩 62万石

  • 人工光野菜工場

    長野県南安曇郡三郷村の野菜工場

    2000年4月3日掲載 信濃毎日新聞

    ナトリウムランプを太陽の代わりの人工光とし、全体をコンピューターで管理により、温度23度、湿度80%に保っている。種まき作業もロボットで行い、リーフレタスやフリルアイス、サラダ菜を培養液で栽培している。

    無農薬栽培のため、病原菌や病害虫から野菜を守るクリーンルームになっている

    農業、林業、水産業、畜産業などの第1次産業は太陽エネルギーで生産物を得る産業であり、人工光野菜工場のエネルギー源が石油、天然ガス、原子力などの場合は本来の意味の農業とはならない。

    世羅野菜工場(カゴメ・広島)