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慶應義塾大学教職課程 (日吉)「教育評価論」第 5 テスト冊子の作成 文部科学省 国立教育政策研究所 総括研究官 やま もり こう よう (教育心理学) [email protected] 平成 27 5 18 この内容は個人的見解であり 国立教育政策研究所の公式見解ではありません

150518 教育評価論 第5講

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慶應義塾大学教職課程 (日吉)「教育評価論」第 5講

テスト冊子の作成

文部科学省国立教育政策研究所

文部科学省

国立教育政策研究所

総括研究官やま山もり森

こう光よう陽

(教育心理学)[email protected]

平成 27年 5月 18日

この内容は個人的見解であり国立教育政策研究所の公式見解ではありません

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はじめに

本日の出席とスライド

本日の出席

https:

//questant.jp/q/150518

本日のスライド

http://bit.ly/eduass150518

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はじめに

本日の内容

1 テスト項目作成の留意点

2 テスト冊子作成の考え方

3 テスト項目とテスト冊子作成の手順

4 本日の課題

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 3 / 43

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テスト項目作成の留意点

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

その1

■テスト項目の問題点 ・問題文がきわめて漠然としているため出題の意図が見えづらく、解答として何を求めているのか

が曖昧になってしまっている。 ・また、解答を絞るための限定が問題文に少なく(「冷凍食品で不足する」という要素のみ)、加え

て「もの」という意味に広がりのある名詞を用いているため、多様な解答を許してしまう。 ⇒このままでは「愛情」という解答を誤りであると否定することはできない。

■テスト項目の修正案 冷凍食品ばかり食べていると、手作りの食事に比べて不足がちになる栄養素があります。その栄養素の中でも、牛乳に多く含まれ、骨や歯

をつくるはたらきをもつ、ヒトの体内に最も多く存在するミネラルは何でしょうか。

■修正のポイント ・「冷凍食品」の語を残すことを考え、その比較対象として「手作りの食事」の語を問題文に加えた。(ただし、冷凍食品の語は解答を導くた

めの必須要素ではないため、切り捨てて全く別の問題文をつくることも可能である) ・問題文中の「もの」を「栄養素」「ミネラル」とすることで、解答として求めている内容が具体的にどんな種類のものかを明示した。 ・さらに、解答となる栄養素(カルシウム)が多く含まれる食材の例や栄養素の働き・特徴を示すことで、多重に限定をかけ、一義的な解答

ができるよう問題文を修正した。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

・テストの問題点 ・「戦闘」と「銭湯」のどちらの解釈でも意味は通じる問題文となっている。そのため、正解をひとつに絞れない。 ・「戦闘」という漢字が書ける生徒にとっては、どちらが正しいのか識別が難しく、一定以上の能力を持つものが不正解となる可能性が

ある。

・テスト項目の修正案 ・“家の近くの”銭湯に行く。 →銭湯は、場所を表す名詞なので、場所を修飾するような語句を付加する。 ・銭湯で“体を洗う。” →銭湯での動作を書くことで、戦闘と区別できる。 ・父と“石鹸をもって”銭湯に行く。→石鹸という単語を使うことで、銭湯を連想させる。

・修正のポイント 本来、教師が生徒に求める答えを書いてもらうためには、問題文中に、誤答が生まれないような配慮をするべきである。漢字の問

題では、問題文に修飾語を付加させることで、生徒に答えを連想させるという取り組みが必要であると思う。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

• し

問題点 • 写真が不鮮明で分かりづらい 問題となっている対象が判別しにくいため,そもそも何を問うているのかわからず,推測で判断するしかない. →推測での解答となるため,写真に似ているものであれば解答となりうる.

• 設問が,「以下の名称を答えなさい.」など,一義的な解答に結びつく文となっていないと予想される

修正点 • 写真をカラーにする,白黒でもコントラストや彩度を調整するなどして,写真が細部まで分かりやすいようにする.また,写真が不鮮明になってしまう場合は,イラストを用いる.

• 設問中に「情報機器の名称を答えなさい」など解答を限定する説明を加える.

• 名称だけでなく機能を説明させたり,機能説明の述べられた選択肢を選ぶ問題と合わせて出題したりすることにより,答えてほしい解答以外の答えを導きにくくする.

実際の画像

昆布班の解答 メインメモリ(主記憶装置)

昆布班 その1

修正のポイント • 推測しなくても解答を求められるようにする. • 本来の解答を導くために解答を限定させる要素を増やす.

• 写真を見て機器の名称を答えさせるという出題者の意図を変えない修正方法

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

◎問題点→1つの日本語に対して1つの英単語が対応するとは限らないため、答えが一様に定まらない。授業の際によくある間違いとして”print”を挙げておくと良かった。

◎修正案→「宿題」を英単語で記しなさい。(hから始めること)

◎修正案のポイント→「宿題」という意味を表す英単語はhomeworkの他に”assignment”も挙げられるが、hから始まると補足することによって答えを一種類に限定することが出来る。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

その1

◆出題意図 ・「うってかわって」という言葉の意味を理解しているかの確認 ・「うってかわって」という言葉を文章で応用できるかの確認 ◆問題点 元の問題文では「うってかわって」という言葉の意味を複数通り解釈できる可能性があり、

正解を一義的に定めることができない。ゆえに左図のような回答も間違いとは言えない。 ◆修正案 前後の文章と意味が通るように、「うってかわって」という言葉を使って下線部にあてはまる

文を作りなさい。 昨日は雨が降っていたので、今日の野球の試合は中止になるのではと心配していた。 天気が回復してくれたので、今日は試合ができそうだ。 ◆修正のポイント ・前後の文章で、ここでの「うってかわって」という言葉の意味を一義的に限定させる。 ・言葉の意味が分かっていないと、回答できない。 ・自力で、文章に応用させる過程を確認できる ⇒従来の出題意図を保持したまま、正解を一義的に設定できる。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

<テスト項目の問題点> 問題文が漠然としていて、出題者の意図に反して解答に幅ができてしまっていること。

<テスト項目の修正案> 1989年、ベルリンの壁が崩壊したが、そのきっかけとなった政治的な出来事について次の語句を使って具体的に説明しなさい。(旅行

許可書、規制緩和)

<修正のポイント> ・「理由」を「きっかけとなった政治的な出来事」とすることで、問題文をより具体的にした。 ・指定語句を使わせることで、解答の幅をより狭めた。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

z 問の問題点

「有名・ ・

な・

言葉」と指定してあるので、この「ぎゃあ~!」という解答は誤答だ

と言わざるをえないが、「板垣死すとも自由は死せず」を引き出すには指定が曖

昧だった。 z 修正案 ・「最も適切なものを答えなさい」という注を付け加える ・「新聞で報道された」や「彼の運動を象徴する」という指定をする 最も適切な、と指定することで、生徒に出題者が何を答えさせようとしている

のかを考えさせ、問題意図を理解した上で解答をさせることができる。また答え

の内容を詳しく指定し、正当を一つにしぼることができる。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

昆布班 その2

問題点 「Good night.」 しかつくれない情報を与えられていない!! 状況説明がなく、出題意図が不明 → 複数の解答作成が可能

課題画像

改善点 「おやすみなさい」と書いた吹き出しをイラストに挿入 Or 「別れ際の夜のあいさつ」という説明文を挿入

修正のポイント 出題者の出題の意図や、求めている解答を理解しやすい問題づくりを!

昆布班の模範解答:Good night.

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

◎問題点→問題文に”あなた”と書かれていることや”食べられる”という可能を表す言葉が入っていることによって、問題を解く生徒の主観が入ってしまう。また、りんごをA君とBちゃんとあなたの3人で分けるということが問題文に明記されておらず伝わりにくい。

◎修正案→①りんごが8個あります。これをA君、Bちゃん、Cさんの3人で分けます。

A君が3個もらいBちゃんが2個もらうとCさんは何個もらえますか?②りんごが8個あります。

A君が3個もらいBちゃんが2個もらうと何個余りますか。

◎修正案のポイント→①Cさん、という新たな人物を登場させ、3人で分けるということを明記することによって生徒の主観が入らないようにした。また食べるという表現を分けるという言葉に変えることによって、可能の意味で解釈が出来ないようにした。

②3人で分けるという設問を何個余るかと言い換えることで、一義的な解答を導き出せるようにした。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

その2

◆出題意図 生物学的に有機物に分類される物質の知識量を問う

◆問題点 元の問題文では有機物という文字を書くのか、有機物に分類される

物質を書くのか判断できず、一義的に正解を定めることができない。

ゆえに左図のような回答も間違いとは言えない。 ◆修正案 生物学的に有機物(有機化合物)に分類される具体的な物質を、で

きるだけたくさん書きなさい。 (例)デンプン、エタノール、、、 ◆修正のポイント ・詳しい説明を加え、問題文の意図を明確化させる ・解答例を示し、解答方法の具体的イメージをつけやすくする ⇒正解を一義的に設定できる。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から教育評価論(第 3講) 課題 <塩酸>

図 1 課題の問題文と解答例

次の文の[ ]に 当てはまる語句を答えなさい。 ※複数当てはまるが、そのうちの 1つを答えればよい。

塩酸に[ ]を入れると 二酸化炭素を発する。

図 2 修正案

1. テスト項目の問題点 ◎あてはまる“文”では、問題文の意味が通りにくく、空欄内 に入れる内容が限定されない。

◎解答の Key Wordが“塩酸”のみであり、塩酸に入れること のできるものは無限に存在するので、解答が限定されにくい。

◎解答例が複数あることを示唆しているが、どのような解答 を選んで空欄に埋めればよいのか明確な指示がない。また 1種類の解答だけか、複数挙げるべきかわからない。 考察:塩酸に入れるものとそれに応じて発生するものを同時に

問おうとしたために、このような問題文になったと思わ れる。

2. テスト項目の修正案と修正のポイント 変更点は赤字で書いてある。 ◆修正案 (図 2) 修正のポイント ☆空欄の 2つ目を“二酸化炭素”に限定することにより 空欄に入れる内容は「塩酸に入れると二酸化炭素を発する

もの」になる。解答には「石灰石」や「貝殻」などが考え

られる。また、「炭酸水素ナトリウム」などを解答に望む場

合は“語句”を“物質名”に変えればよい。 ☆注釈の内容に、解答が複数あることと、そのうちの 1つ を答えればよいことを明示した。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題からテスト項目の問題点

今回のテスト項目は、漢字の書き取り問

題であり、与えられた例文を参考に空欄補

充の形で回答するものである。問題作成の

都合上、例文はなるべく短いものにしたか

ったと思われる。 実際に回答例を見てみると、今回出題者

側が回答させたかった漢字は、『格好』であ

る一方、回答者(生徒)は『滑降』と答え

てしまった。例文上はどちらの漢字を当て

はめても意味が通じるため、正答を一つに

限定出来ないような出題をしてしまったこ

とに問題があると考えられる。

テスト項目の修正案

例文を修正し、『格好』のみに限定出来るような内容にすればよいと思われる。 (修正前)「はでな『かっこう』をした男」 (修正後)「最新の流行を取り入れた『かっこう』良い服装」 修正した際のポイント

『格好』という、外から見た事物の形や姿、身なりを表す言葉を適切に選択できるよう、

例文内に『服装』という単語を取り入れた。

図 1:『かっこう』の回答例

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

テスト項目の作成(ピーマン班) その1

『問題点』関心を問う問題で設問が雑すぎて、答えに幅ができる。さらに、まだ読んでない昔話から読みたい昔話を事前に知ってないと書けなく、理由もはじめは興味本位で詳しく書くのは難しい。

『修正案』事前に昔話をいくつか紹介して、その中から1つの作品の感想を書かせる。

『修正のポイント』生徒の昔話への関心を解に引き出せるように感想を書かせる。感想文は小学一年生でも取り組んでいるから、取り組みやすいと考えた。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から教育評価論(第 3講) 課題 <変態>

図 1 課題の問題文と解答例

次の文章の下線部の言葉の意味として最も適切なものを

あとの選択肢(

ア)

から(

エ)

の中からひとつ選んで答えなさい。

父ちゃんは、駅のホームで裸のままのお札を差し出した。

選択肢

(ア) 衣服を身につけていない状態

(イ) 覆いがなくむき出しの状態

(

ウ) 隠し事をしていない状態

(

エ)

所持品を持っていない状態

図 2 修正案

1. テスト項目の問題点 ◎問題文の“あなたの思ったこと”を書くとは、自分の意見や 考えを述べることと同じであり、そもそも採点の対象になり えない。

◎「父ちゃんは、裸のまま」なのか、「裸のまま(の)お札を出した」のか明確に判断できる要素がない。また、この意味のと

り方によって解釈が大きく変わってしまう。 ◎与えられた文章が短すぎて、どのような状況なのか憶測の域 をでない。

考察

何が問われているのか、 何を考えさせようとしたのかが

正直全く伝わってこない問題。

試験からこの問は削除するべき

だと思う。

2. テスト項目の修正案と修正のポイント 変更箇所は赤字で書いてある。 ◆修正案 (図 2)

修正のポイント ☆元の出題者の意図が全くくみ取れな かったので、こちらで“裸”の言葉の 意味を問う問題として扱った。選択肢 は文章中の前後関係によってどれも その意味になり得るものである。文章 に“裸のまま「の」”を付け加えるこ とで、“裸”の意味を限定している。 それに応じて解答も決定されるよう になっている。 ☆選択肢の配置と長さ、語尾を揃えた。 ひとつ選んで答えることを明示して いる。

◆修正案補足 もし文章が物語等の引用の場合は、この文の前後を状況が推測

できる要素を含むまで引用し、裸のままお札を出す意味などを

問うようにする。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

• 問題点

①「6字以上の英文」は出題者の明らかなミスで

あり、解釈によって回答がばらつく

→アルファベット6文字以上 または6語以上

→上限もあるべき

②絵だけでは状況が伝わりにくく、測りたい

英語能力とは違った力を必要とする

→「続く言葉」は誰の言葉なのかの解釈でも

回答が違ってくる

③出題者の求めている正答が見えてこず、

回答を絞れていない

→Good Morning. といった簡単な応答

or

「朝の会話」というテーマでの自由英作文

• 修正案(1)

ねらい:Good Morning. を会話の中で使う

ポイント:状況を説明し語数を指定して回答を一意にする

ken ②

次の絵は、お母さんが子どものKenを起こしているところです。目がさめたKenの朝のあいさつを2語の英文1文で答えなさい。

• 修正案(2)

ねらい:朝の会話に関する自由英作文

ポイント:上限・下限を定めてある程度ばらつきが無いよう

にしている。特別に問いたい文法事項があれば、

穴埋め問題や並び替え問題の方が適している

次の絵は、お母さんがなかなか起きない子どものKenを起こしているところです。この後に続くお母さんの言葉を想像して、6語以上の英文1文を書きなさい。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

その1

■問題点• 問題に情報量が少ない• 「オショクジケン」があいまい

■修正案• 「オショク事件」に書き換える• 「事件」をなくす• 「オショク」による結果を書く(逮捕など)

■修正のポイント• 「オショクジケン」の表現のあいまいさをなくした

• すべて漢字で書くとすると「御食事券」とかく場合もあるので、「事件」の部分を明確にした

画像

Fig1. オショクジケン

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Page 22: 150518 教育評価論 第5講

テスト項目作成の留意点

前回の課題から

・テストの問題点 ・「戦闘」と「銭湯」のどちらの解釈でも意味は通じる問題文となっている。そのため、正解をひとつに絞れない。 ・「戦闘」という漢字が書ける生徒にとっては、どちらが正しいのか識別が難しく、一定以上の能力を持つものが不正解となる可能性が

ある。

・テスト項目の修正案 ・“家の近くの”銭湯に行く。 →銭湯は、場所を表す名詞なので、場所を修飾するような語句を付加する。 ・銭湯で“体を洗う。” →銭湯での動作を書くことで、戦闘と区別できる。 ・父と“石鹸をもって”銭湯に行く。→石鹸という単語を使うことで、銭湯を連想させる。

・修正のポイント 本来、教師が生徒に求める答えを書いてもらうためには、問題文中に、誤答が生まれないような配慮をするべきである。漢字の問

題では、問題文に修飾語を付加させることで、生徒に答えを連想させるという取り組みが必要であると思う。

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テスト項目作成の留意点

前回の課題からkingyo

• 問題点

①「これ」という言葉や矢印を使った表現は

プリント上ではどこを指すかわかりにくく、

想定したように解釈してもらえない可能性が

ある

②同じこのイラスト全体を示す名称であっても、

「きんぎょ」ではなく「さかな」と書かれても

正解にせざるを得ないし、より詳しい種類を

知っている知識の深い子どもにとって、どの

種類なのか悩んでしまう悪問になりかねない

③おそらく小学生対象の問題と思われるが、

Q&Aはわかりにくくないだろうか

• 修正案(1)

ねらい:小学校理科で、金魚の見た目と名前の一致を図る

ポイント:さかなの種類名で「ょ」で終わるものと指定する

ことで、「きんぎょ」以外の回答をなくす

このさかなは、なんというさかなでしょう? (ヒント:さいごのもじはちいさい「ょ」です)

こたえ._____ょ_

• 修正案(2)

修正案(1)のこたえ部分を変更、ヒントはなしにする

ねらい:小学校国語で、小さいひらがなを書く練習

ポイント:文字数と字の大きさを枠で指定して

「きんぎょ」のみが正答となるようにする。

また、イラストではなくカラー写真の方が

わかりやすいが、余計なものが写っては

ならないなどといった注意点がある。

こたえ.__________

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 23 / 43

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

テスト項目の作成(ピーマン班) その2

『問題点』画像から解が一つに特定できない。

そのため、生徒に混乱を与えたり、適切に学力を測れない。

この場合は「ー」と半濁音の使い方を測る問題と思われる。

『修正案』問題の差し替え、例えば「スプーン」など。

『修正のポイント』白黒印刷・小学1年生の知識・字数を考慮すると、スプーン

は解として一義的に定まると考えた。

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 24 / 43

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テスト項目作成の留意点

前回の課題から

その2

画像

■問題点• 「どこ」の表現があいまい

■修正案• 「接している都道府県をこたえよ」に書き換える

■修正のポイント• 「どこ」のあいまいさをなくした

Fig2. 海

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 25 / 43

Page 26: 150518 教育評価論 第5講

テスト冊子作成の考え方

Page 27: 150518 教育評価論 第5講

テスト冊子作成の考え方

発揮された能力の程度を見積もる工夫

であるため であると考えられる

課題に対する出来具合

評価規準に照らし合わせた能力の程度

出来を求めるだけでなく

能力の発揮・伸長を意図した支援を可能にする

課題に対する出来具合だけではなく,育成・評価対象の能力の発揮,伸長,定着の状況を推定できるようにする。単なる「テスト対策」に陥ることを回避する。

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 27 / 43

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テスト冊子作成の考え方

項目に応答させる形式:段階評価

300 400 500 600 700 800

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

Item response function

Ability

Pro

babi

lity

of a

cor

rect

res

pons

e

300 400 500 600 700 8000.

00.

20.

40.

60.

81.

0

Item response function

Ability

Pro

babi

lity

of a

cor

rect

res

pons

e

300 400 500 600 700 800

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

Item response function

Ability

Pro

babi

lity

of a

cor

rect

res

pons

e

Figure 1: 項目と特性

Figure 2: レベル表

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 28 / 43

Page 29: 150518 教育評価論 第5講

テスト冊子作成の考え方

テスト冊子が持つべき性質

−4 −2 0 2 4

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

Item response function

Ability

Pro

babi

lity

of a

cor

rect

res

pons

e

Figure 3: 複数項目の項目特性曲線

項目を多めに用意することで段階を増やす慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 29 / 43

Page 30: 150518 教育評価論 第5講

テスト冊子作成の考え方

観点別評価のためのテストテスト項目の作り方 56効果的な形成的フィードバックの方法

通過率

評価規準に対してCに相当する生徒が正答可能な項目

評価規準に対してBに相当する生徒が正答可能な項目

評価規準に対してAに相当する生徒が正答可能な項目

○○なことができれば,この評価規準を上回る(A)と評価可能

○○なことができれば,この評価規準を満たす(B)と評価可能

Figure 4: 観点別評価を行うためのテスト冊子の考え方

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 30 / 43

Page 31: 150518 教育評価論 第5講

テスト項目とテスト冊子作成の手順

Page 32: 150518 教育評価論 第5講

テスト項目とテスト冊子作成の手順

テスト項目とテスト冊子作成の大まかな流れ

大まかな流れ評価規準(達成目標)を設定する評価規準(達成目標)に対して,どのようなことが出来れば「おおむね満足」「十分満足と言えるか」を検討する。「おおむね満足」といえる状況を判断可能なテスト項目と,「十分満足」といえる状況を判断可能なテスト項目をそれぞれ設定する。

このようなテストの利点0点でC,1点で B,2点で Aという対応関係が成立単なる正答数の積み上げでは観点別評価は不可能

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 32 / 43

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テスト項目とテスト冊子作成の手順

評価規準の設定

社会的事象から学習問題を見いだして追究し,社会的事象の意味について思考・判断したことを適切に表現している。

評価の観点及びその趣旨

第3・4学年の評価の観点の趣旨

第5・6学年の評価の観点の趣旨

地域における社会的事象から学習問題を見いだして追究し,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて思考・判断したことを適切に表現している。

(1)「身近な地域や市(区,町,村)の様子」の評価規準に盛り込むべき事項

(1)「身近な地域や市(区,町,村)の様子」の評価規準の設定例

学年ごとの評価の観点の趣旨

内容のまとまりごとの評価規準に

盛り込むべき事項

図2 指導要録通知における評価の観点及びその趣旨,学年ごとの評価の観点の趣旨と評価規準作成のための参考資料における内容のまとまりごとの評価規準に盛り込むべき事項,評価規準の設定例の関係(小学校第5学年理科「科学的な思考・表現」の例)

(2)「地域の人々の生産や販売」の社会的な思考・判断・表現の評価規準に盛り込むべき事項

• 地域の人々の生産や販売の仕事の様子から学習問題を見いだして追究し,それらの仕事に携わっている人々の工夫について思考・判断したことを言語などで適切に表現している。

(2)「地域の人々の生産や販売」の評価規準の設定例

• 地域の人々の生産や販売の仕事の様子について,学習問題や予想,学習計画を考え表現している。

• 地域の人々の生産や販売の仕事の工夫を自分たちの生活と関連付けて考え適切に表現している。

・・・教科の目標 単元の内容

単元の評価規準に反映

評価規準の設定例

・・・

Figure 5: 評価の観点及びその趣旨,学年ごとの評価の観点の趣旨と評価規準に盛り込むべき事項,評価規準の設定例の関係(小学校第 3学年社会「地域の人々の生産や販売」の例)慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 33 / 43

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テスト項目とテスト冊子作成の手順

評価規準の設定

Figure 6: 評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料(http://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html)慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 34 / 43

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テスト項目とテスト冊子作成の手順

評価規準の設定

評価規準の設定例と単元の内容が一致

•天気の変化と雲の量や動きなどの関係について予想や仮説をもち,条件に着目して観察を計画し,表現している

•天気の変化と雲の量や動きなどを関係付けて考察し,自分の考えを表現している。

評価規準の設定例

天気の変化(1)雲の動きと天気の変化

単元の内容

•天気の変化と雲の量や動きなどの関係について予想や仮説をもち,条件に着目して観察を計画し,表現している

•天気の変化と雲の量や動きなどを関係付けて考察し,自分の考えを表現している。

単元の評価規準

「設定例」を単元の

評価規準として利用

(a) 「評価規準の設定例」をそのまま利用できる場合(小学校第5学年理科「科学的な思考・表現」の例)

評価規準の設定例を単元の内容に合わせて具体化

•走の運動遊びや跳の運動遊びの行い方を知るとともに,運動をする場や使用する用具などを変えながら,いろいろな運動の仕方を見付けたり,競走(争)の仕方を選んだりしている。

•走ったり跳んだりする動きを知るとともに,友達のよい動きを見付けている。

評価規準の設定例

かけっこ・リレー遊び

単元の内容

•かけっこやリレー遊びの行い方を知り,走る順番や低い障害物の走り越し方等を工夫しながら楽しく運動している。

•友達の走り方からよい動きを見付け,まねをしようとしている。

単元の評価規準

単元の評価規準の

設定

(b) 「評価規準の設定例」を単元の内容に合わせて具体化する必要がある場合(小学校第1学年体育「運動についての思考・判断」の例)

図3 単元の評価規準の設定

Figure 7: 単元の評価規準の設定慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 35 / 43

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テスト項目とテスト冊子作成の手順

テスト項目の設定とテスト冊子へのまとめテスト項目の作り方 56効果的な形成的フィードバックの方法

通過率

評価規準に対してCに相当する生徒が正答可能な項目

評価規準に対してBに相当する生徒が正答可能な項目

評価規準に対してAに相当する生徒が正答可能な項目

○○なことができれば,この評価規準を上回る(A)と評価可能

○○なことができれば,この評価規準を満たす(B)と評価可能

Figure 8: テスト項目の設定とテスト冊子へのまとめ

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 36 / 43

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本日の課題

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本日の課題

テスト項目とテスト冊子の作成演習課題の内容

講義で示した手順に沿って,自身が免許取得を希望する教科(または,それに近い教科)の中学 2年生に対して思考・判断・表現の観点別評価を行うためのテストを作成してください。テスト冊子は,Bと判断するための項目と,Aと判断するための項目 2項目で構成してください。

課題の要件評価対象となる単元を示す。単元の評価規準を示す。Bに相当する項目,Aに相当する項目をそれぞれ設定する。設定された項目について,なぜB(あるいはA)に相当するのかの理由を明示する。

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 38 / 43

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本日の課題

テスト項目とテスト冊子の作成演習

手順評価規準設定のための資料を落手する

担当する教科についての国立教育政策研究所の「参考資料」テスト問題作成のための教科書を落手する

公立図書館に蔵書があることが多い(横浜市立図書館は全館)www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/center.htm

資料を使いながら課題に取り組む

次の講義までの課題グループで,評価規準設定のための参考資料を入手する。グループで,教科書のコピーを入手する。上記 2つの資料を教職ログブックにアップする。

慶應義塾大学教職課程「教育評価論」 第 5 講テスト冊子の作成 平成 27 年 5 月 18 日 39 / 43

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本日の課題

本日の出席とスライド

本日の出席

https:

//questant.jp/q/150518

本日のスライド

http://bit.ly/eduass150518

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