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2019年度 経営システム工学入門実験Bライフサイクルエンジニアリング1
目次
1.1 概要
1.2 寿命分布
1.3 累積ハザード法によるワイブルパラメータの推定
1.4 実験の手順
1.5 考察とレポートの作成
1.1 概要
3実験のスケジュール
第1週:寿命分布とその推定
寿命の概念
累積ハザード法によるワイブル(Weibull)分布の推定
第2週:部品寿命と部品リユース
部品リユースの仕組み
ライフサイクルシミュレーション(LCS)
LCSによる部品リユースと部品寿命との関係の把握
第3週:部品リユースのための部品共通化戦略
部品リユースのための部品共通化戦略
LCSによるライフサイクルシナリオの評価
1.2 寿命分布
5製品・部品の機能と寿命
要求機能レベル < 実現機能レベル
機能レベル
時間
要求機能
実現機能
寿命
製品や部品の寿命は,基本的には,要求される機能とそれらが実現する機能が次の関係を満たさなくなったときに尽きると考えられる.
故障
6寿命データ
観測時間と故障数
残存機器数の変化
いま,ある台数の機器を一斉に使い始めたとする.時間の経過とともに機器に故障が発生した場合,故障した機器は修理せずに廃棄するとする.
この結果,残存機器数(故障せずに稼動している機器数)は時間とともに減少していく.
このとき,各機器の使用開始から故障するまでの時間を集めたものが寿命データである.
xx
xx
x
12345
t1t2
t4t5
t3
時間
機器番号
t3 t1 t2 t5 t40
t3 t1 t2 t5 t40残存機器数
時間
543210
7寿命データの整理
0
5
10
15
20
20 40 60 80 100 120 140 160 180
×100時間
各時間区間で故障した機器数.
→ 後述の,故障時間密度関数
f (t) に対応.
0
10
20
30
40
50
60
70
20 40 60 80 100 120 140 160 180
×100時間
各時間区間の最初の時点における残存数.
→ 後述の,信頼度関数 R (t) に対応.
8信頼度関数,故障時間分布関数,故障時間密度関数
[信頼度関数]
横軸に動作時間,縦軸に初期台数に対する残存機器の割合をとると,時間とともに単調に減少する曲線が得られる.これを,信頼度関数と呼び,R(t) で表す.
[故障時間分布関数]
一方,縦軸に故障の累積数を初期台数で規格化した値をとると,使い始めてから機器が故障するまでの動作時間の分布関数となる.これを,故障時間分布関数と呼び,F(t) で表す.これは,信頼度関数と次の関係がある.
F(t) = 1 R(t)
[故障時間密度関数]
故障時間分布関数が微分可能なとき,
f(t) = dF(t)/dt
を故障時間密度関数という.これは,時間間隔(t, t+dt) において機器が故障する確率を示す.
故障
時間
分布
関数
故障
時間
密度
関数
時間
時間
信頼度関
数
時間0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
9故障時間分布関数と故障時間密度関数の計算
寿命試験の結果をもとに,R(t), F(t), f(t)の求め方を考える.機器使用開始後の経過時間をt (t = 0, t1, t2, ...)で表し,
N(0): 使用開始時点での機器の総数
N(ti): 時刻 ti で故障していない機器の数(残存数)
N(ti1) – N(ti): 時間区間 (ti1, ti] において故障した機器の数
とすると,N(ti) 残存機器数
R(ti) = =N(0) 総機器数
N(0) N(ti) 累積故障機器数F(ti) = =
N(0) 総機器数
N(ti1) N(ti) 故障機器数f(ti) = =
N(0) 総機器数
10故障率
[故障率]
ある時点で残存している機器のうち,その後の単位時間に故障するものの
残存数に対する割合を故障率という.
故障機器数故障率 =
残存機器数
[故障率関数]
時刻 t まで故障しなかったという条件のもとで,時間間隔(t, t+dt)で故障する
確率は次式で表され,これを故障率関数と呼ぶ.
時間
残存
数
titi-1
ti-1~ ti間での故障数
ti-1における残存数
前頁の表現にならえば,
となる(f (t)との違いに注意する).
)()()(
tRtft
)1()}()1({)(
tN
tNtNt
11故障時間密度関数と故障率関数
50台の装置の故障時間を調べた例.
00.10.20.30.40.50.60.70.80.9
1
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 800.000.020.040.060.080.100.120.140.160.18
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
時間(×100) 時間(×100)
故障時間密度関数 f(t)最初に存在していた50台のうち,各時間区間でどのくらいの割合が故障したかを示す.
故障率関数 (t)各時間区間の最初に動いていた台数のうちその時間区間でどのくらいの割合が故障したかを示す.
故障
時間
密度
関数
f(t)
故障
率関
数(
t)
12故障時間密度関数と寿命
MTTF
f(t) f(t)
B10ライフ
10%
故障は,確率的に起きる事象と考えられるので,それによって規定される寿
命も確率分布に従うことになる.このような場合の寿命の設定に用いられる
のが,MTTF(Mean Time To Failure;故障までの平均時間)やB10ライフで
ある.
0)(MTTF dttft 1.0)(
10
0
Bdttf となる時間
時間 時間
1.3 累積ハザード法によるワイブルパラメータの推定
14ワイブル分布
代表的な故障時間分布関数としてワイブル分布が知られている.
これは,スウェーデンの科学者W. Weibullが1939年材料の破壊強度の分布として提唱したものである.
形状パラメータ,尺度パラメータにより様々な寿命データに適合可能である.
11MTTF
)(
exp)(
exp1)(
1
1
m
tmt
ttmtf
ttF
m
mm
m
m : 形状パラメータ : 尺度パラメータ
m,
また,平均故障時間は,以下の式で与えられる.
15ワイブル分布のパラメータ
形状パラメータ m:分布形が変わる.故障率関数とは以下の関係がある. m<1:DFR (Decreasing Failure Rate)型 m=1:CFR (Constant Failure Rate)型 → 指数分布に一致
m>1:IFR (Increasing Failure Rate)型 尺度パラメータ :時間の単位を与える.これにより時間軸が伸縮される.
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0 10 20 30 40 50時間
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0 10 20 30 40 50時間
1m
21
m4m
2m 1m
21
m
4m
2m
f (t)とmの関係 (t)とmの関係
16バスタブ曲線
機器の故障分布は,その原因となる劣化・故障の特性に依存する.複雑な機器の場合は,
そのライフサイクルの中で,故障の特性が変化し,次の3つの期間に分けられる.
初期故障期:機器の使用開始直後は,設計・製造上の欠陥によって初期故障が発生する可
能性があるが,時間とともにこれらの原因が取り除かれる.このため,この期間の故障率は,
時間とともに減少するDFR(Decreasing Failure Rate)型となる.
偶発故障期:機器が安定して作動している状態では,故障は偶発的に発生すると考えられ
る.そのために,故障率は一定のCFR(Constant Failure Rate)型となる.
摩耗故障期:構成要素の劣化が進展し始めるために,故障率が時間とともに増加するIFR(Increasing Failure Rate)型となる.
以上のことから,機器の故障率は,時間とともに下図のように変化すると考えられる.これを
その形状からバスタブカーブ(bath-tub curve)と呼ぶ.
初期故障期
摩耗故障期
偶発故障期
時間
故障率
規定の故障率
17累積ハザード法による故障分布の推定
故障分布がワイブル分布に従うと仮定して,寿命データから,ワイブル分布のパラメータを推定し,F(t), f(t), (t)を求めることを考える.
そのための方法として,一般に広く用いられている累積ハザード法を適用する.
一般に,故障率 (t) と信頼度 R(t) の間には以下の関係がある.
故障率は医学統計の分野ではハザード関数(あるいは,ハザード・レイト)と呼ばれている.この値を時間 (0, t) で積分したものを累積ハザード関数と呼び,H(t) で表す.
F(t)=1R(t)から,
となり,累積ハザード関数 H(t) と分布関数 F(t) とは1対1の関係にある.
これより, F(t)を求めるためには, H(t)を推定すればよいことが分かる.
t
dtttR0
})(exp{)(
t dtttH0
)()(
)(1)( tHetF
18累積ハザードの求め方
時点ti における故障率(ハザード) (ti)は,以下により推定できる.
したがって,累積ハザードは,近似的に以下の式で求まる.故障台数
ti+tti
t
真壁肇,信頼性工学入門,日本規格協会
における未故障機器数
における故障機器数
i
iii t
ttttt ),()(
tti i
ii
ttii
iit
ttttttH::
),()()(ˆにおける未故障機器数
における故障機器数
19寿命データ
観測時間と故障数
残存機器数の変化
いま,ある台数の機器を一斉に使い始めたとする.時間の経過とともに機器に故障が発生した場合,故障した機器は修理せずに廃棄するとする.
この結果,残存機器数(故障せずに稼動している機器数)は時間とともに減少していく.
このとき,各機器の使用開始から故障するまでの時間を集めたものが寿命データである.
xx
xx
x
12345
t1t2
t4t5
t3
時間
機器番号
t3 t1 t2 t5 t40
t3 t1 t2 t5 t40残存機器数
時間
543210
20累積ハザードの求め方
寿命データ データ順位(i)
故障までの時間
tiの直前における未故
障数
(ti, ti + t)の故障数
故障率(ハザード)(ti)の推定値
累積ハザードH(ti)の推定値
× t1
× t2
× t3
× t4
× t5
1
2
3
4
5
t1
t2
t3
t4
t5
5
4
3
2
1
1
1
1
1
1
1/5
1/4
1/3
1/2
1/1
1/5
1/5+ 1/4
1/5+ 1/4+1/3
1/5+ 1/4+1/3+1/2
1/5+ 1/4+1/3+1/2+1/1
具体的には,以下のような表を作成して,累積ハザードを推定することができる.
×が故障の発生を示している.
ハザードは,その時間区間での故障数(一つずつ故障するので1)を直前の未故障数で割って求められる.
21ワイブルパラメータの推定
前頁の表より求まった H(t) にワイブル関数を当てはめて,ワイブルパラメータを推定する.
ワイブル分布の分布関数 F(t) は,
これと, から,
両辺の自然対数をとれば,
ここで,ln H(t) = Y, ln t = X, m ln = B とおけば,
これより,図に示すように,縦軸に lnH(t),横軸に ln t をとって H(ti) をプロットしたものに直線を当てはめ,その傾きと X 軸切片より,m とを求めることが出来る.
mt
etF
1)(
)(1)( tHetF m
ttH
)(
lnln)(ln mtmtH
BmXY
Y
X
)(ln tH
ln t傾きが mを与える
0=m lnt m lnよりが求まる
xx
x
1.4 実験の手順
23実験の手順
(0) 来週の準備:ライフサイクルシミュレータ(LCS)のインストール
(1) 実験器具の確認
(2) Excelを用いたワイブル分布の計算
Excelでワイブル分布の計算とそのグラフ表示ができるようにして,パラメータの変化によりワイブル分布の形がどのように変化するかを調べる.
(3) シャボン膜の寿命測定
針金の輪の中に,シャボン液の膜をつくり,その寿命を測定する.
(4) 累積ハザード法によるワイブルパラメータの推定
Excelを用いて,累積ハザードを求める表を作成する.
表を基に,Y 軸に lnH(t) を,X 軸に lnt をとったグラフを描き,形状パラメータ m と尺度パラメータ を求め,シャボン液膜の寿命分布の特性を調べる.
24(0) 次週の準備:ライフサイクルシミュレータのインストール
“¥¥LABFSRV01¥common¥経営システム入門実験B¥LCE¥LCS”フォルダを自分のPCのデスクトップにコピーする.
フォルダ内の“setup.msi”をダブルクリックし,下記の手順でインストールを行う.
25
①シミュレータのファイルメニューから“開く”を選択し,②デスクトップの“LCS”フォルダ内の“test.prj”を選択し,③“開く”を押す.
④右上の,“次へ”を4回押す.⑥左下の“シミュレーションの実行”を押す.
「データ変換が終了しました.プログラムを終了します.」のメッセージが出ればテストは完了.⑦ “OK”ボタンを押して,プログラムを終了する
(0) 次週の準備:ライフサイクルシミュレータの実行
①
②
③
④:4回押す
⑥
⑤:結果保存先が,“ C:¥RecycleSim¥Result “になっていることを確認する
⑦
26(1) 実験器具の確認
各班に写真1で示す実験器具がそろっていることを確認する.
トレイ
シャボン液(後から配布する)
針金
ストップウォッチ
写真1 実験器具
27(2) Excelを用いたワイブル分布の計算
“¥¥LABFSRV01¥common¥経営システム入門実験B¥LCE¥第1週”
フォルダ内の“Weibul雛形.xls”を自分のPCのデスクトップにコピーし,
ファイル名を半角の学籍番号(例:1X19C001)に変更する.
そのファイルを開き,ワイブル分布のF(t),f(t),(t)を求める式をセルに
設定し,t を0~50まで変化させたときの各値を求める.
この際,形状パラメータ m と尺度パラメータ は,別のセルに値を設
定するようにし,計算式中ではそのセルを参照するようにする.
計算された F(t),f(t),(t) の変化を示すグラフを散布図を用いて描く
(マーカはつけない).
形状パラメータと,尺度パラメータの値を変更し,グラフの形がどのよう
に変化するかを調べる.
与えた m とに対してMTTFとB10ライフを求める.
MTTFは,Excel上で t・f(t) を累積して求める.
B10ライフは,F(t)が 0.1 になる t を求める(ちょうどよい値にならないとき
は前後の値を直線補間して求める).
28(3) シャボン液膜の寿命測定
針金で写真2のような輪を作る.大きさはトレイにおさまれば適当でよい.
シャボン液をトレイに深さ1~2mm程度入れる.
輪をシャボン液に浸けて膜を張らせる.
膜をはってから,消えるまでの時間をストップウォッチで計る.なるべく条件を一定にするように姿勢,風の影響等に気をつける.
データは20サンプルとる.結果は,ワイブル分布を計算したExcelファイルの「累積ハザード法」のシートに記録する.
写真2 針金で輪を作る 写真3 輪にシャボン液の膜をつくり寿命を測定する
29(4) 累積ハザード法によるワイブルパラメータの推定
*計測結果を班内で共有し,以下の作業は各人が行う.
Excelファイル上に,累積ハザード値を求める表を作成する.
Y 軸に lnH(ti) を,X 軸に lnti をとってデータをプロットし(散布図を使う),これに直線を当てはめる.
直線を当てはめるには,グラフのデータ点を右クリックして,近似曲線の追加機能を使用する.
近似直線の傾きと X 切片からワイブルパラメータを求める.
近似直線の式を表示させるには,「近似曲線の追加」のオプションタブで「グラフに数式を表示する」にチェックを入れる.
求めたワイブルパラメータを,(1)で作成したシートに与えて, F(t),f(t),(t)のグラフを求める.
シャボン液膜のMTTFとB10ライフを求める.
1.5 考察とレポートの作成
31考察とレポートの作成
レポートには以下のデータを記載する.
累積ハザードの計算表
lnH(ti) ,lnti をプロットし,直線を当てはめたグラフ
近似直線式
求めたワイブルパラメータ(形状パラメータ,尺度パラメータ)
求めたワイブルパラメータを用いて描いた F(t),f(t),(t) のグラフ
MTTF,B10ライフの値
シャボン液膜の寿命分布に関して以下の考察を行う.
推定したワイブルパラメータの値から,寿命分布の特性を考察する.
寿命に影響する要因を考察する.
必要に応じて追加実験を行い,考察した要因の寿命への影響度合いを検討する.
レポートの提出
レポートはMS-Wordで作成し,印刷したものを提出する.
レポートの提出と同時に作成したExcelファイルを,“¥¥LABFSRV01¥common¥経営システム入門実験B¥LCE¥第1週¥提出”フォルダに提出する.(ファイル名は,半角の学籍番号(例:1X19C001)とする.)
実験時間内に完成できない場合は,10月28日(月)9:00までに実験室に提出する.