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共生応用化学セミナー Introductory Seminar for Applied Chemistry and Biotechnology (必)、1セメ、火4、受講登録数120 名 坂本昌巳・環境調和分子化学領域・精密有機化学研究室・教授 西山伸・無機・計測化学領域・極限環境材料化学研究室・准教授 全教員・共生応用化学専攻 1.授業の組み立て方と取り組み方 共生応用化学セミナーは、「共生応用化学科でどんなことを学ぶのか」の動機付けとなるセミナー となっている。第 1 回の共生応用化学セミナーではガイダンスを実施し、8~9 人の少人数グループ分 けを行う。その後、イントロダクションやキャリアプランに対するガイダンスを行った後、各研究室 で実施する研究テーマに関する講義、輪読会、実験などに参加する。また、参加した各研究室でレポ ートの提出(計4つ)により評価する。 2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント 全体的に平均点以上の評価を得られている。 特に問23 の班構成は高評価が得られている。これは、120 人の学科編成ゆえ小グループ(8~9 人)で の長所が際立った結果と考えられ、また各研究室での具体的な実習や教員、研究室学生との双方向の コミュニケーションを実現できた結果と考えられる。 問 25 は、 3.7ポイントの結果が出ているが、実習内容や時間の物足りなさを感じる意見も見られた。 意見の中では、時間の関係上15 ある研究室のうち4つの研究室での演習参加と限られている為、他の 研究室の演習に参加してみたい等の意見も見られた。 3.今後の授業改善について 問 25 の結果については、より深い知識や実習に関する興味をもたせることが出来た結果の意見と 考えることも出来る。この興味を如何に発展させ研究室配属まで維持、継続していく環境やシステム の整備が今後の課題だと考えられる。また、シラバスや授業内容の情報開示を改善し、自主的な予習 や復習の指針となるような資料となるべく工夫をすることや、各研究室間での情報共有と連携をより 深めることが重要と考える。 さらに、具体的な研究についての理解のみならず卒業後のキャリアデザインを含めての視野の広い 興味に対応出来る機会としての役割をより考えて行きたい。 学科内の 1 年生と研究室との連携、交流を深めて行く為のきっかけとなるセミナーでもあり、この 講義を機会に講義外でも教員や先輩学生との活発な交流が行われて行くことを期待している。

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共生応用化学セミナー Introductory Seminar for Applied Chemistry and Biotechnology (必)、1セメ、火4、受講登録数120名

坂本昌巳・環境調和分子化学領域・精密有機化学研究室・教授

西山伸・無機・計測化学領域・極限環境材料化学研究室・准教授

全教員・共生応用化学専攻

1.授業の組み立て方と取り組み方

共生応用化学セミナーは、「共生応用化学科でどんなことを学ぶのか」の動機付けとなるセミナー

となっている。第1回の共生応用化学セミナーではガイダンスを実施し、8~9人の少人数グループ分

けを行う。その後、イントロダクションやキャリアプランに対するガイダンスを行った後、各研究室

で実施する研究テーマに関する講義、輪読会、実験などに参加する。また、参加した各研究室でレポ

ートの提出(計4つ)により評価する。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

全体的に平均点以上の評価を得られている。

特に問23の班構成は高評価が得られている。これは、120人の学科編成ゆえ小グループ(8~9人)で

の長所が際立った結果と考えられ、また各研究室での具体的な実習や教員、研究室学生との双方向の

コミュニケーションを実現できた結果と考えられる。

問25は、3.7ポイントの結果が出ているが、実習内容や時間の物足りなさを感じる意見も見られた。

意見の中では、時間の関係上15ある研究室のうち4つの研究室での演習参加と限られている為、他の

研究室の演習に参加してみたい等の意見も見られた。

3.今後の授業改善について

問 25 の結果については、より深い知識や実習に関する興味をもたせることが出来た結果の意見と

考えることも出来る。この興味を如何に発展させ研究室配属まで維持、継続していく環境やシステム

の整備が今後の課題だと考えられる。また、シラバスや授業内容の情報開示を改善し、自主的な予習

や復習の指針となるような資料となるべく工夫をすることや、各研究室間での情報共有と連携をより

深めることが重要と考える。

さらに、具体的な研究についての理解のみならず卒業後のキャリアデザインを含めての視野の広い

興味に対応出来る機会としての役割をより考えて行きたい。

学科内の1年生と研究室との連携、交流を深めて行く為のきっかけとなるセミナーでもあり、この

講義を機会に講義外でも教員や先輩学生との活発な交流が行われて行くことを期待している。

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分析化学実験 Experiment : Analytical Chemistry (必)、3セメ、月3-4、受講登録数117名

全教員

1.授業の組み立て方と取り組み方

溶液化学を基本とした分析化学実験を通じて,化学実験の基礎的な器具の使い方やレポートの書き

方を学ぶことを目的としている。夏の暑さによる想定外の実験結果や予期せぬ学生の失敗などに悩ま

されながらも一人の怪我もなく無事終了することができた。学生諸君や担当教員・チューター各位に

感謝する。

約2割の学生が高校時代に化学実験を行っていないことから,修士・学部4年生がチューターとな

りチューター一人に学生3名の割合で化学操作の基本を教え込む導入実験から始めた。沈殿滴定,酸

化還元滴定,イオン交換分離とキレート滴定,沈殿形成による定性分析といった無機系分析と薄層ク

ロマトグラフや液液抽出による有機物の分離・同定といった有機系の分析の合計6テーマを実施した。

学科の学生は2等分され隔週で実験を行う。実験と「分析化学」講義のペースが完全には合致しない

ことから,実験開始前に30分程度の実験講義を行った。実験終了時には実験ノートを担当教員が査読

し,教員の承認を得たところで実験を終了するようにした。実験レポートは1週間後に提出すること

にしたが,ほとんどの学生が期限を守り提出することができた。また各回の 優秀のレポート提出者

には賞状を授与した。なるべく多くの学生が受賞できるように配慮した。総じてレポートはよくでき

ており,感心させられるものが多かった。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

実験前の講義はviewgraph形式による30分程度行った。おおむね好評であったが,不十分なまま実

験に取り組んでしまうテーマもあった。特にイオン交換分離とキレート滴定の実験は理解者が少なか

った。それ以外の実験は,多くの学生がレポートを書きながら内容そのものも含めて理解するにいた

ったようだ。「分析化学」講義と並行して進められたが,相乗効果がでたのではないかと考えている。

学生からの指摘にもあったが,服装の乱れが指摘されている。学生間同士でもそのような安全意識が

芽生えているのは「安全工学」講義の反映と思われる。

各実験においては簡単な質問からかなり高度な質問まで提示したが,数名は実験に対して自分なり

の視点から実験を見つめたり,更に深く調べたりしたような我々にとって驚きのあるレポートが提出

されていた。従ってそれらのレポートに優秀賞を与えた。成績は秀9%,優68%,良15%,可7%,不可

1名であった。学生実験に対しての可という評価であるが,学生はもちろん全実験を実施していたが,

レポート内容に手抜きがあるためのやむをえない判定と考えている。

3.今後の授業改善について

優秀レポート賞の授与は学生にも好評であるため引き続き行っていくこととしたい。実験授業で

も大切なことは,事故の無いよう指導することであり,今後もそのための指導を徹底させる。

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安全工学 Safety Engineering (選必),3セメ,月3-4,受講登録数125名(奇数クラス65名,偶数クラス60名)

島津省吾・バイオ機能化学講座・バイオ触媒化学分野・教授

唐津 孝・環境調和材料講座・エネルギー変換材料化学分野・教授

藤浪眞紀・環境プロセス講座・計測化学分野・准教授

赤染元浩・環境調和材料講座・環境調和有機合成分野・准教授

町田 基・環境調和材料講座・環境セラミックス分野・准教授

1.授業の組み立て方と取り組み方

科学技術の複雑化・高度化・細分化,国際競争力の強化といった言葉にいいあらわされるように,

日本の技術者・研究者を取り巻く環境はますます厳しくなっている。企業をはじめとした社会一般か

らも大学あるいは大学院の卒業生に即戦力,即専門家を求める傾向が強まっており,安全に関しても

大学の専門教育の中で基礎的・概論的なレベルで一定の教育がなされることが期待されるようになっ

ている。本講義はこのような状況に鑑み開講され,本年で3年目である。今後,学生実験,卒業研究,

そして社会での技術者としての活躍を前提として講義の中身を決定している。講義内容(担当教員)

は,労災事例(町田),高圧ガス(島津),化学物質(唐津),危険物取扱者(赤染),放射線(藤浪)

であり,各1日2コマ(労災事例と危険物は各2日4コマ)である。受講生は2年生のほぼ全員が履

修している。

2.学生による授業評価結果,ならびにそれに対するコメント

肯定的コメントとしては,危険物等の資格試験に直結する実践的な内容に興味を引かれた学生が多

かった。高圧ガスと危険物取扱者は化学系の実務で活かせる共生応用化学科卒に相応しい資格である。

危険物取扱者は既に昨年度から受験に必要な証明書発行を教務係と連携整備し,11月の国家試験が受

験可能となっている。 上位の甲種危険物取扱者にH17・H18 年度の入学生が既にそれぞれ 3 名,8

名が合格しており特筆に価する。通常,化学系大卒や高専卒(千葉大2年終了時相当)が受験し3割程

度の合格率である。3 セメ終了で受験資格要件を満たすのは,化学を基本にした共生応用化学科のカ

リキュラムが資格取得に適したものとなっていることの証左である。

3.今後の授業改善について

「安全」は,作業を想像し,その危険を認知(危険予知)し,そのための防御を考えることから始

まる。その意味では,現時点(本格的な実験が始まっていない)でそれを学生に要求するのは無理で

ある。上記の頭のみで解答できる問題およびその試験対策が功を奏し,試験に合格したとしてもそれ

が真の安全作業が万全にできる学生を育てたことにはならない。本講義で大切なのは,「法」のみなら

ずその根底に内在する法の精神,先述した「安全作業」とは何かということを具体的な事例を紹介し

ながら,学生に意識させることにある。それが主眼であることを我々は忘れてはならない。

危険物の資格試験に関連した講義に関しては,その考え方の延長にあるものと位置づけ,それを目

的化することなく,資格取得がその一つの成果の表れとしてとらえたい。ただし,そのためには危険

物試験の模擬試験も実施し,本試験との相関をとりつつ現在実施の方式を維持し,さらにデータを積

み重ね,学生に提示することにより資格取得に向けたモチベーションの向上を図る。

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共生応用化学実験 Experiment: Applied Chemistry and Biotechnology (必)、5〜6セメ、水・木5〜7、受講登録数122名

全教員

1.授業の組み立て方と取り組み方

本学科の専門教育の総仕上げという位置づけで,無機分析化学,物理化学,有機化学,高分子化学

の4分野に関わる基礎実験法を習得させる。受講者を4グループに分け,各分野の実験室を四半期ご

とに移動させる形式である。前身の物質工学実験の重要項目はほぼ踏襲しながら,環境化学やバイオ

サイエンスにかかわる実験項目を導入した。

分野や担当教員によって多少異なるが,実験開始前に 30 分程度の実験講義を行うこと,実験終了

時に各々の実験ノートを査読し承認を与えたのちに実験終了とすること,などは,共通項として挙げ

ることができる。

分析化学実験でしっかりと器具の使い方やレポートの書き方を学び取っていたのであろう。学生た

ちは,より専門性が増し深化した項目のすべてを,殆ど戸惑うことも無く,スムーズにこなした。ほ

とんどの学生が期限を守り,実験レポートを提出することができた。総じてレポートはよくできてお

り,感心させられるものも多かった。また,一人の怪我もなく無事終了することができたことも大変

喜ばしい。学生諸君や担当教員・チューター各位に深く感謝する。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

アンケートでは,各設問ともに,ほぼ平均値を超えるものであった。学生諸君や担当教員・チュー

ター各位の努力と熱意の賜物である。

裏面のコメントをみると,「実験によって,講義で学んだことをより深く理解できた」とかいた者が

多数居た。一方,手順や運営においては,手厳しいコメントも散見する。「無駄な待ち時間が長い」「分

野によって教科書が詳しく書かれていない」「試薬秤量のたびに行列ができる」「教科書と違うことを

させられたりした」「(一部)密度が薄い実験がある」。これらについては,我々の工夫で改善できそう

である。

特に多かったのは,「実験器具が汚く,足りないことが多々」「老朽化がひどい」「壊れた装置を直し

てほしい」など,インフラに関する苦情である。これらの声に一度に応えるのは難しい。現時点では

「我慢してくれ」と云うほかないが,共生応用化学実験は,本学科カリキュラムの主菜である。少し

ずつでも恵まれた実験環境を実現してゆくことは,学生の化学研究への興味を維持する上でも重要だ

と思われる。

3.今後の授業改善について

化学実験は習得するべき技術や考え方がきわめて多く,限られた時間ですべてを教えることは難し

い。少しでも教育コンテンツを上げるために,本年度も教員間で多くの議論を重ねてきた。複数の分

野で実験内容の改良/改訂が行われ,その集大成として,現在,共生応用化学実験のテキストの第2

版が印刷中である。来年度の変化に期待するところ大である。また上述したように,運用面の工夫で

教育密度を向上させる余地はまだまだありそうである。この点において,今回学生から得た指摘は大

変参考になった。

後に,分析化学実験で定着した「優秀レポート賞」の授与システムは,学生にも好評であると聞

く。共生応用化学実験に導入してもよいかもしれない。

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赤染 元浩 Motohiro Akazome 環境調和分子化学領域・環境調和有機合成研究室・准教授

立体化学(選必)、3セメ、火4、受講登録数51名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

本科目は、共生応用化学科で立ち上げた新しい科目であり2年目である。有機化学 I~Ⅲ(3~5

セメ)では理解しやすくするため、内容を複雑にする「立体化学」の扱いは 小限である。本講義で

は、有機化学 I~Ⅲの履修を前提に、有機分子の構造や反応中間体・遷移状態のもつ立体に重点をお

いて立体化学と反応機構から有機化学を総括している。学部での有機化学に授業はこれが 後である

から、立体化学の概念を深め、応用的かつ複合的に扱われる大学院入試レベルに達する必要がある。

十分な思考時間をとるため毎回宿題レポートを課したが 終的な受講生は 51 名であり昨年並みで

あった。講義は、毎回授業のポイントを板書で説明し、関連する課題(A4で2ページ)を翌週までに

解答する。次の授業前半でその課題の解答・重要理解項目をパワーポイントで説明し、学生各自は赤

ペンのみを使用し、自らの解答をチェックする。授業の前半が終了すると課題を回収し、次の項目の

へ移る。各自の赤ペンによる自己採点を確認し、誤解や理解不足はレポートに青ペンで加筆し、次の

授業の 初に返却した。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

受講理由(問 1)で、シラバスを見て関心を持ったから(22)が も多かった。単位を取りやすそ

うはゼロであった。学科全体の平均と比較してどれ位の意味があるのか分からないが、問11の宿題は

理解の助けとなった4.04(+0.18)、教員の声が良く聞こえる4.20(+0.22)、授業で質問した2.51(+

0.37)は平均より高かった。特に問 4 の履修済み科目を発展させる内容は 4.50(+0.35)と平均より

と高かった。しかしながら、去年よりも全体に評価が低くなった。自由記述から有機化学が得意な学

生や大学院試験を視野にいれている学生からは実力がついた・役に立った・有機化学が整理できたと

好意的な意見が多かったが、一方であまり得意でない学生からは理解できなかった・レベルを下げて

欲しいという意見も多かった。 終的に、問12の授業進度で3.17(-0.77)や問16の授業内容の理

解3.13(-0.33)の結果からすると、全体の内容を減らす必要があると判断する。

3.今後の授業改善について

昨年の初年度の問題点を改善したつもりであるが、去年のように手探りで授業を進めなかったので

一方的な説明や授業の進行になったと反省する。また、昨年は初年度だったので課題に一生懸命課題

に取り組んでくれたが、一部改訂ものの大部分の昨年と同じ課題なので昨年返却したレポートを入手

し、写した学生も見受けられた。じっくり考えないと結局のところ理解が深まらないので残念である。

今後の授業改善として、項目や課題を精査し減らす。また、板書による丁寧な説明を増やす。理解度

を確認するために小テストなどを取り入れる必要があると考える。

受講生の配属研究室も調べたが、有機化学系の講座に配属されている学生が多いが、良く理解して

いる学生は有機化学系の学生ばかりではない、6セメになると有機化学の理解に個人差が大きくある

ことを実感する。次年度も、なるべく多くの学生のより一層の理解が深まるように努力する。

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阿久津 文彦 Fumihiko Akutsu バイオ機能化学領域 環境調和高分子材料研究室・教授

高分子化学(必・選必)、4セメ、月2、受講登録数137名

環境適合性高分子材料(選必・選択)、6セメ、火2、受講登録数57名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

担当している2科目とも同じ教科書を用いている。高分子化学では、2人の教官で担当しており、

前半が高分子合成、後半が高分子構造・物性を教えている。前半の高分子合成を担当している。時間

数が限られているので教科書に記載されている内容の説明が理解できるように心がけとともに、教科

書の理解を深めるための簡単な演習をおこなっている。高分子合成では、その内容をさらに深く理解

させるための説明と簡単な演習を行っている。講義は、板書を中心に行っている。OHPやパワーポ

イントを使うと講義が早くすすみ、ノートを取る時間が少なくなることを懸念しているからである。

環境適合性高分子材料は学科改組が行われたことで、講義内容も見直し、教科書に記載されていない

近の話題となっている事柄(新しい合成法、環境問題、生分解性高分子、酵素触媒重合等)につい

てはパワーポイント、映像等を用いて補足している。評価は、中間試験、期末試験とレポートを総合

して評価している。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

高分子化学:今年度は前半の終わりにアンケートを実施したが、集計が後半の部分と合算された。全

体の評価は、学科の平均をやや下回った。高分子化学の内容は、学生にとっては新しい内容を多く含

んでいるために、有機化学や、物理化学の基礎が理解できていないと難しい面がある。理解度を上げ

るためには、板書の仕方、演習を考慮し改善を図りたい。

環境適合性高分子材料:昨年に比べると声の聞きやすさ、板書の見易さ満足度は改善していて、学科

の平均となっているが、理解度は、平均をやや下回っている。また、進度が速すぎるとの評価がある

が学問の進歩により内容が多くなったためとも考えられる。内容を厳選して、一部を大学院の講義に

写すなど改善したい。また、レポートを課して、返却しているが、その結果をフォローする時間が取

れていないので、この点も考慮すれば理解度が向上する可能性があるので次年度は考慮したい。

3.今後の授業改善について

アンケートの結果から、板書については、昨年に比べると改善しているが、次第に書くスピードが

早くなり多少見にくくなるように思えるので、この点を注意してさらに改善したい。100 名を越える

教室では、マイクを使用しないと後ろの方は聞こえにくいと思われるので使い方を工夫したい。また

設備の更新を要望したい。

今年は、より詳しく、また新しいことも紹介しようとし進度が早かったような評価が出ているので、

次年度は内容を少し減らして分かりやすい講義を目指したい。

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一國伸之 Nobuyuki ICHIKUNI

バイオ機能化学講座・バイオ触媒化学教育研究分野・准教授

物理化学I(必修),3セメ,月1,受講登録数64名

共生応用化学実験(必修),5-6セメ,水・木3-5,受講登録数125名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

「物理化学I」は共生応用化学科においては1年後期の専門基礎科目(物理学DI)に続く科目であり,必修科

目となっている。この点をふまえ,『物理学DIの継承・発展』を重要視している。授業の進め方としては,「プロジェ

クター類は使用せず板書を中心としたものとする」,さらに「授業中に教科書を開かなくても良いように」,という

2点に気をつけ取り組んだ。前年度授業での評価コメントを考慮し,小テスト・演習等を講義2回に 1回程度は

実施するようにして,理解度の向上を狙った。

2.学生による授業評価結果,ならびにそれに対するコメント

「物理学DIの理解」,「物理化学への興味」を受講開始時に問うたところ,リップサービスもあったとは思うが,

「ある程度理解してきたし興味もある」との答えが多数であった。これは,物理化学に対してもやる気を見せて

くれる学生たちに違いない,と張り切って授業を行った結果がQ5「教員の声は聞こえたか」(4.8),Q6「板書の見

やすさ」(4.4)と高い数値につながったのであろう。ただ,例年のことであるが,裏面の記述には「板書は読みや

すかった」という意見の他に「板書が多い」という意見があった。数式は多くならざるを得ないが,それだけだと

わかりにくいと考え,解説の文章も加えた事が,筆記量につながってしまったものであろう。張り切り過ぎもほど

ほどにということか。

小テスト・演習などは数多く実施したが,これが理解の助けになったと評価されていた。Q8「重要事項をわか

りやすく解説」についても4.5 と高い評価が得られ,「今年の学生たちの授業の理解度は例年より上がっている

に違いない!」と大いに期待していた。ところが,である。Q16「授業の理解度」は 3.3 とあまり芳しくなかった。昨

年の3.1よりはアップしたのだが,学科平均の3.5よりも低い評価である,残念な結果であった。なぜであろうか。

集計結果をよくよく見てみるとQ14「準備学習・復習」の項は,12時間程度が最も多くそこから長い方にも短い方

にも対称的に減少している。通算で12時間ならば各授業後に 1時間弱の復習時間があり,さほど不足はない

と言いたいところだが,中間テスト実施前日の勉強時間がこれに含まれているに違いない。となると,実質的

には予習・復習をほとんどしていない学生が大多数ということであろう。

3.今後の授業改善について

小問題をある程度実施しないと理解度の向上にはつながらないであろう,来年度もこの方式は継続してい

くつもりである。ただ,問題を解く時間,解答の提示などに授業時間が削られるので,毎回実施することは難し

いと感じている。あとは予習復習へ時間を割いてもらうことが大事であろう。ただ,隔週で午後に学生実験が

あるので,課題形式で演習問題を出すことなどは必ずしも効果があるかどうかわからないので,様子を見な

がら検討する必要があるだろう。

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岩舘 泰彦 Yasuhiko Iwadate

共生応用化学科・環境プロセス化学講座・極限環境プロセス科学教育研究分野・教授

無機化学Ⅰ(必修)2セメ、月3、受講登録数126名、(西山准教授との分担)

無機構造化学(選必)6セメ、金4、受講登録数74名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

1年次の「無機化学Ⅰ」は必修科目で、3年次の「無機構造化学」は共生応用化学科応用化学コー

スの選択必修科目であり、受講学生の化学への習熟度や無機化学系科目への関心度、さらに教科自身

が目指す指向に大きな違いがあるので、講義の仕方を変えなければならないと認識している。必修の

科目では、必然的に受講学生数も大きくなり、その科目への関心度に大きな個人差が認められる。基

本的な内容を多く含むので、教科書を利用しながら、できうる限りOA機器を使用して、図表を用い

たわかりやすい講義に努め、学生の理解度を高めることに努めている。「無機化学Ⅰ」では、今後化学

全般で用いられる英語の technical termを意識的に紹介し、講義に盛り込むようにしている。また、必

修や選択必修科目では、講義 初のイントロダクションが極めて重要で、この成否によって学生のそ

の後の向学心が左右されると考えており、いろいろなエピソードを交えた話をすることに努力を払っ

ている。(コース)選択必修科目では、是非聞いておきたいと考える学生が聴講に来てくれるので、で

きうるかぎり印刷物等の資料をふんだんに提供し、専門性の高い内容にまで踏み込めるよう配慮して

いる。特に3年次での講義では、学生にできるだけノートを取らせるように講義形式を変えている。

「無機化学Ⅰ」は、原子の構造から化学結合論、アルカリ・アルカリ土類金属の各論までをほぼ網

羅する内容である。「無機構造化学」は回折論の基礎からそれを結晶や非晶質体へ応用するところまで

を収めるようにした選択必修科目であり、化学技術者として必須の物質の構造解析の理論と実験手法

を習得させるための講義である。「無機構造化学」の非晶質材料に係わる部分は、若干専門性が高く、

とかく結晶に偏りがちの無機化学に構造不規則系の理念を導入した講義となっている。これら2科目

を受講することによって元素に関する各論を除く無機化学の全体像を理解できるよう企画されている。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

上記2科目に係わる1-17の設問は、それらを項目ごとに相対的に評価すると、一般に必修科目での

評価が低めで、選択必修科目で相対的に高い評価を得ていた。この種の現象は、これまでも他の教科

で認められており、一般的な傾向であるかもしれない。講義への関心度の違いが影響していると思わ

れるが、講義の仕方を改善しながら今しばらく、注意深く動向を注視したい。必修科目を実施した施

設の環境は整備されていたかの設問に対し、前年度授業評価の結果と比べ、改善のあとは認められる

が、設問5および6で低い評価が与えられていた。これは、2クラス開講にしたものの、そのうちの

1室は依然として大人数を細長い奥行きのある部屋に収容したために、声が良く聞こえず、板書やプ

ロジェクター像が見えにくいとの評価に結び付いているようである。3年次開講科目では、その内容

は比較的高度であるにも拘らず、一定水準以上の理解度・満足度を得られたことや「授業内容の量と

進度が適切であったか」の項目において、相対的に評価が高かったことを喜ばしく感じている。

3.今後の授業改善について

必修科目において2つの小さめの講義室で同時開講することにより、上記の問題を解消するよう環

境を整え学生諸君の理解度の向上を図りたい。真剣で緊張感を保ちつつ和やかな雰囲気で講義ができ

るよう努めたい。

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上川 直文 Naofumi Uekawa 無機・計測化学講座・セラミックス化学教育研究分野・准教授

無機化学II(選必)、3セメ、木1、受講登録数126名

環境適合無機材料(選)、6セメ、火1、受講登録数66名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

担当している2つの講義については、適した教科書となる書籍が無いことから毎回プリントを配布

しそれに従って講義を進めることを基本としている。黒板を用いた説明とプリントを用いた説明を併

用して理解を深められるよう基本的な事項を中心に時間をかけて説明するよう講義を行っている。ま

た、説明だけの講義では学生の興味関心を持続する事が困難なため、今年度から展示実験などを見せ

ることにより学習への興味を引き出すような試みを講義へ取り入れることとした。本年度は環境適合

無機材料の講義において2回実験を行った。具体的にはゼオライトの吸着能と粘土鉱物の水和と陽イ

オン交換性に関する実験および雲母などの天然鉱物の観察である。実験の内容は初歩的で特別なもの

ではなかったが、実際の材料を直接観察したり、その材料の特性について体験する事ができて学生も

講義で扱った材料に関して興味がわいたようである。今後無機化学IIにおいても学習の理解を深め

るのに役立つ展示実験などを考案して実践できればと考えているところである。

また、無機化学IIのような基礎的な科目に関しては理解の定着に問題演習などが必須であるが今

年度の講義では講義2回に 30 分程度の時間しか演習を行うことができなかったので次年度は演習問

題のレベルと量を検討しなおしてより効果的な問題演習を行いたいと考えている。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

無機化学IIと環境適合無機材料では全体的に環境適合無機材料の方が各設問において良い評価が

得られた。これは、講義の扱う対象が限定されており履修する学生の履修目的もはっきりしており学

生の関心と講義の内容がうまくマッチングしたためであると考えられる。これに対して、無機化学I

Iの学生からの評価があまりよくないように思われる。これは、講義内容が総覧的であることから学

生が興味関心を持続する事が難しいためではないかと推測した。

次年度は、無機化学IIの講義内容を改善することを一つの大きな目標とする予定である。これに

関してはより学生の理解しやすいプリントの作成などを心がける。また実際の材料や現象と無機化学

IIでの学習内容の関係を明示するようにし学生自身が学習目標を見つけて意欲を高められるように

工夫する予定である。

3.今後の授業改善について

今後の改善については上記でも述べたように無機化学IIの内容改善を重点的に行う。特に、実際

の現象や材料との関連を重視しながら説明を行うよう講義内容を改善する。また、受講学生数が多い

ことから個々の学生の理解度などを簡便かつ効果的に把握することのできる演習の実施方法なども検

討していく予定である。

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梅野 太輔 Daisuke Umeno 共生応用化学科・バイオ機能化学講座・バイオマテリアル研究分野・准教授

生化学1(必/選必) 4セメ、火2、受講登録数106名

共生応用化学実験(必) 5〜6セメ、水木3〜5、受講登録数122名

生物基礎実験 4セメ、受講登録数50名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

本年も生化学1は「化学者のための生化学」を心がけた。応用微生物学や合成生物学などの 新コ

ンテンツを遠慮なく盛り込んだ。消化不良は否めないが,完全消化も薄気味悪い。学生たちが縦じわ

を寄せながら苛々しながら聞き,家に帰るなり教科書を開く講義を目指した。

不評の教科書も改めた。詳しく学びたい者には,より高度な教科書を買い,それを使って独習する

よう勧めた。何人もの学生が「自分の見つけた」教科書を大切にしているのを見て嬉しかった。テス

トは2回。答案は昨年度よりもはるかにレベルが高く,うれしい驚きを得た。私の講義は下手なまま

であるから,自ら読み解いた教科書に導かれた理解である。まさに我が意を得た結果といえる。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

「(だんだん)声が聞こえなくなる」「字が汚い」「専門用語を使い過ぎ」。これらの指摘は相変わら

ず減らない。しかし昨年は,「こんな講義は廃徐すべきである」(←原文ママ)と書く者さえいたこと

を思えば,本年に多少の進歩を認めてもよいのかもしれない。

項目別の点数は,いずれも平均点付近をうろついており,価値ある情報は抽出できなかった。そも

そも,平均点の,これまた学科平均との比較である。項目もまた項目である。無駄を削ぎ落とした「こ

れだけは」教育に適応して千葉大にたどり着いた学生諸君。「シラバスとの整合性」「進度の適切さ」

「わかりやすさ」「たとえ話の工夫」などを繰り返し尋ねることで,彼らの自立心と知識人としての自

覚を蝕む心配は無いのだろうか。やる気を出す工夫,予定調和性…これらは初等教育で求められるス

キルである。学問が学生に歩み寄るのではない。学生が学問によじのぼるのである。

大学時代は,「知識にはオチがあり,統一規格でインストールできる」という迷信からの脱却に腐心

すべき時期。学生諸君の頭に可能な限り負荷をかけること(同意をとりつけたほうが紳士的であるが),

学問(教員)の不確かさと,それ故の魅力を伝えること,我々という知の実践例を批判的に解析させ

ること…。知的生産人を創る大学の役割は,もっと他にあるように思えるのである。

3.今後の授業改善について

自分の課題は,講義の方針やレベルがふらつくことである。100 名強の受講生には,求めるものに

温度差がある。始めは温度の高い学生に焦点をあわせて元気よく発進するのであるが,途中で「その

他大勢」の負の波動に意地を張り通せず,下方修正を繰り返す。3年とも,これをやった。学科のBest

Teachers3氏に打ち明けたところ,「なかなか難しいもんですよ」「時間かけて工夫するほかないです

ね」「工夫すれば,7割を満足させることは可能です」…自力で這い上がってこいということであろう。

日頃学生に云っている台詞が,皮肉なほど自分に当てはまる。

特に10月末は課外教育活動(iGEM)がたてこみ,準備も体力も極小化する。この時期,講義に「ば

たつき感」→「なんちゃって感」が現れる。優秀な学生はこれを見逃さない。来年度は,この状態に

陥らないことを第一義としたい。講義も人生も,リベンジの年という位置づけである。

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小熊幸一 Koichi Oguma 環境プロセス化学講座・計測化学教育研究分野・教授

分析化学(必)、3セメ、火2、受講登録数 131名

環境計測科学(選)、4セメ、月3、受講登録数 120名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

担当している2科目とも板書で講義を行っている。図や表を書く際に時間がかかるという難点があ

るが,学生がノートをとるためには板書のスピード程度で講義を進めるのが経験上適切と考えるため

である。また,両科目とも,ほとんど毎週のように数問の課題を出してレポートの提出を求め,復習

のきっかけを作った。

学生には、なぜその科目を学ぶのかの動機付けが必要であり、マスコミで話題となっている環境化

学に関連することや工業材料の開発や品質管理で分析化学が貢献している例を折にふれて話している。

「分析化学」は溶液化学が中心で,後に物理化学の授業で学習する様々な化学平衡を先行して取り

扱うため,根本まで十分に理解することを求めず,分析化学の分野でそれらの平衡を如何に利用して

いるかが理解できればよしとしている。すなわち,分析化学に利用される種々の化学反応を熱力学の

考え方で如何に解釈するかを学ぶことを目標にしている。

「環境計測科学」では,主として溶液試料を対象とする機器分析法を扱っている。分離と定量の両

者をかねる各種クロマトグラフィーと,光の吸収,放出を利用する光分析法に重点をおいている。各

分析法の原理を説明した後に,それをどのように利用するのかを理解させるため,検量線の作成法を

具体的に示すなどの工夫を試みた。また,様々な分析装置を説明する際,研究室に保管してある部品

類を授業中に回覧するようにした。

2.学生による授業評価結果ならびにそれに対するコメント

復習のために毎週レポートの課題を与え,講義の 終回に全課題の解説を行ったことは多くの学生

から評価された。

「分析化学」は,溶液内反応を扱うため,どうしても計算が主になりがちである。そのため,2セ

メの終わりまでに関連する実験をほとんど体験していない初学者には具体的なイメージがつかみにく

く,この科目は分かりにくいとの意見が毎年多くみられる。何回か演示実験を行って興味を引くよう

に心がけてきたが,この科目の内容から考えて限界があるように感じている。

「環境計測科学」において,勉強の動機付けになることを期待して,研究室で実際に展開している

研究例を交えて分析機器の説明をしたところ,学習意欲の高い学生に好感を持たれた。そのため,

後の授業では,機器分析が社会でどのように役だっているかを示すため,学部2年生には若干レベル

の高い研究例をあげて解説することを試みたところ,完全に理解できないまでも「機器分析」に興味

を持ってくれたように思われる。

私の授業では私語や携帯電話の使用を厳しく禁止している。アンケートの意見の中に、静かな環境

を保つように心がけたことに感謝する学生が複数存在した。

3.今後の授業改善について

今年度をもって定年退職するため,授業の改善について触れるのではなく,今年 も印象に残った

ことを記したい。2年生の中に,小職が共生応用化学科のホームページに寄せた「丸暗記からの脱出」

に賛同し,勉強のやり方を変えた学生が現れたことがそれである。授業の目的は知識の伝達を主たる

目的とするが,それ以上に大事なことは学生に対し発展性のある主体的な勉強方法を身につけさせる

ことである。教職歴 後の年に,この主張を一人でも理解してもらえたことを嬉しく思う。

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小倉 克之 Katsuyuki Ogura

共生応用化学科・環境調和有機合成分野・教授

基礎有機化学(必修)2セメ、水2、137名

1. 私の授業の組み立て方と取り組み方

この授業は、共生応用化学科一年生を対象として基礎専門で、必修である。また、私が大学教員と

して担当する 後の授業で、かつ次年度からは開講されないという状況の中で取り組んだ、いわゆる

背水の陣と位置づけられるものである。

内容はこれまでと同じで、これから化学を学ぶ学生にとって基礎になる「原子核と電子」を基本に、

水素、炭素、酸素という三つの元素、時としては窒素をも用いて、分子の性質、化学反応、さらには

三次元での考え方を教えている。高校までの化学とは違い、「覚える」のですなく「理解する」ことを

念頭に、講義を進めた。教科書を使うが、各章で重要なことを黒板で説明、そのあと教科書をプロジ

ェクターで示しながら、その応用などについて追加説明する。時として、分子模型を使い、またアニ

メーション映像を使い、できるだけリアルに表現した。

背水の陣の授業では、 初に前期に習った「基礎化学B」について試験をし、これまでの知識を復

習させた。さらに、昨年度の期末テストの問題を全員に配布し、授業の終わりの内容をイメージさせ

た。正式な中間試験(30分テスト)を11月末に行い、69点以下のものには追試を行い、それ以外の

ものはレポートの提出。追試の結果、悪いものは追々試を行った。追々試の日に都合がつかないもの

は、個別に追々試を行い、試験のあとに少し説明や会話をした。ただし、期末試験では追試はなしで

ある。今回のやり方は、「Teaching」ではなく「Learning」に対する一つのやり方ではなかったかと、

後になって感じている。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

今回のアンケートでは、2-12 および 17 の設問が授業に対する評価で、他のものは学生個人の問題

と考えられる。今回の授業のやり方がよかったのか、少し高い評価点(4.68-4.24で、平均4.39)にな

った。17の設問「全体を通してこの授業に満足しましたか」に対して4.305であり、大人数の必修科

目としては、まずまず評価のように思える。

今回、中間試験の追々試、そして聞きに来る学生との会話を通して、出来ない学生の多くは、本当

に 初の基本的なことが理解できないためで、それさえ分かればどんどん次に進めることができるこ

とが実感できた。

3.今後の授業改善について

この 30 年間、主に低学年の必修授業を担当したが、後々になってあの時の授業が印象に残ってい

るとの話をたまに聞くことがある。今回の授業を終え、アンケートの裏面に10人ほどがコメントを書

いてくれた。そのほとんどが「わかりやすかった」や「親身になって、あるいは熱意をもって教えて

くれた」などで、「一年間ありがとうございました。来年もできることなら先生の授業を受講したかっ

たです。」とのコメントを読んで、30年間の苦労が報われた気持ちになった。

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掛川 一幸 Kazuyuki Kakegawa 環境調和材料講座・環境セラミックス教育研究分野・教授

セラミックス化学、6セメ(選、選必、選)、金3、受講登録数58名

固体化学(選必)、4セメ、月4、受講登録数126名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

私の担当は、固体化学とセラミックス化学である。固体化学は、非晶質、結晶質の原子レベルでの

構造を化学的見地から講述するものである。具体的な資料としては、結晶模型などを回覧している。

また、5号棟3階の突き当たりに展示コーナーを設けている。セラミックス化学では、多くのセラミ

ックス材料を回覧している。暗記ではなく、理解が重要と考え、スライドは極力画像としている。私

の授業では数式も多出する。私の学生時代には、数式が天下り的に出てきた。「この関係はこの式に従

うのだ」と。私は式の本質を理解させたい。そのため、どういう理由で 初の式がたてられて、それ

をどういじることにより 終的な式になるのだと言うことを示すようにした。ただし、これに関して

は、学生が書き写すだけの作業になりがちである。下に示すように、今後改良を試みる予定である。

昨年度までも小テストを毎回行っている。これに関し、毎年少しずつ改良を行っている。本年度は

主に次の2点に関して新しい試みを行った。①割当番号の配布、②各回につき2回の小テストを行う。

①の内容は以下の通りである。昨年度までは、小テストの際に、学籍番号をマークシートとしていた。

内容は記述式である。学籍番号の部分をマークシートにすることにより、成績の転載の時間を効率化

して、その分を採点に費やすことが目的である。学籍番号は7桁あり、学生にとってマークの時間が

負担であると考えた。そこで学生それぞれに3桁の割当番号を与えた。これにより学生のマークの負

担の軽減を試みた。また、合格者発表や、呼び出しに関してもプライバシーが守られると期待した。

②に関しての内容は以下の通りである。昨年度までは、1つのテーマに関しての小テストは1回であ

った。うまくできなかった学生は、本来復習をしっかりとすべきであるが、事実上そのような学生は

多くない。そこで、正答率の少なかった問題に関しては、しっかりと解説をして、2回目の小テスト

で、似た問題を出すことにした。ただし、同じ問題ではなく、理解なしには解けない問題である。こ

のことを学生に伝えることにより、解説をしっかりと聞いてもらうことが重要であると考えた。特に、

小テストで出す問題は、各回の重要なポイントであるから教育効果が上がると期待した。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

2科目とも評価はほぼ平均値であった。本年度は上記②を実行するために大変な労力を使った。受

講生が184名で、各回2回の小テストを14回行ったわけであるから、合計5千枚以上の小テストをチ

ェックしたことになる。このような労力を払ったにも拘わらず評価が、昨年を上回らない理由を考え

てみた。まずは、上記割当番号を初めて採用したことでの混乱が挙げられると思われる。割当番号を

忘れてきた者、ダブって割当番号を取得した者など、混乱が生じ、このことへの不満があったのでは

ないかと推測される。名前を隠して誤りの解答の悪いところを指摘した。これも不評をかった。

3.今後の授業改善について

毎回の小テスト自体については、大変好評であった。また、小テストにより確実に理解度が上昇し

たと考えられる。小テスト自体、上記のように学生の理解度を上げるのに有効であるため続けたい。

なお、本年度採用した割当番号に関しては不評であったので取りやめにしたい。

また、「スライドの切り替えが早すぎる」との意見が見られた。多くのスライドは、理解に役立つよ

うに画像にしている。学生が「早すぎる」と感じているのは、おそらく式の誘導部分と思われる。こ

の点は、以下のように改善したい。まず、 初の式がどのようにしてたてられるのかを説明し、その

後の部分を自分で誘導させる。そして解答例を配布し、自分の誘導を検討させる。

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唐津 孝 Takashi Karatsu 環境調和材料講座・エネルギー変換材料教育研究分野・教授

有機化学Ⅰ(選必)、3セメ、水1、受講登録数132名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

この授業に加えて、専門基礎科目(普遍)で情報画像工学科1年生を対象とした基礎化学 B(2セ

メ、必修、火1、受講登録数80名)を担当したが、それについては別冊子の普遍科目での授業評価で

報告したい。有機化学Ⅰは、有機化学という一連の体系化した講義科目群の中で、連続した基礎化学

B、基礎有機化学の科目の上位に位置し、有機化学Ⅱ、Ⅲへと継続する中間に位置している。有機化学

Ⅰ〜Ⅲではジョーンズ著「有機化学」を共通の教科書として指定し、始めから約1/3の、7章までを

講義範囲としている。選択必修科目ではあるが、ほとんどの学生が受講しており、有機化学を志向し

ていない学生にも興味をそそる様、社会問題に関連する身近な話題を取り上げる工夫にも取り組んだ。

本講義では、基本的に教科書の中身に準拠して講義を行っている。図、表を正確にきちんと見るこ

とができるようにパワーポイントファイルを用意して説明している。本年からパワーポイントファイ

ルの中から重要なもの、テキストに無いもの、空白欄に穴埋め式にメモを取らせるためのものを選別

し、印刷して学生に配布した。出席を効率よく確認するために、ミニ演習を実施した。受講者数が多

い事もあり、演習後解答を説明し、各自に採点させる。これか、宿題を提出させ、出席として集計し

た。可能な限り、有機物の多様性や、特徴に触れてもらえる様に、光学異性体の匂いをかがせたり、

立体化学がわかる分子模型を自作させるなど工夫したが、十分評価されず残念である。さらに工夫し

てゆきたい。学内で開催された国際学会の見学を許可した所、10名ほどの希望者があり好評であった。

講義に演習を加えるなど、内容が盛りだくさんになったせいか、全体的に駆け足になってしまった。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

昨年の授業アンケートでは、講義資料の明示の方法、理解を助ける工夫、進度などほとんどの項目

で低い評価だったため全体としても学生の満足度が低い結果に終わった。そこで、本年度はこれらを

改善すべく高い意欲と熱意で授業に取り組んだ。その結果、授業評価でも著しい改善を達成する事が

できた。その結果、問12の進度と問2のシラバスとの一致度で約0.1ポイント学科平均よりも低かっ

たが、他のすべての項目で平均よりも0.8-0.1ポイント高い評価が得られた。特に高いポイントは、

問15質問しましたか(+0.8p)、問11宿題レポートが理解に役立ったか、及び問5声が良く聞こえたか

(+0.7p)、問10質問、宿題で理解度をチェックし解り易く解説したか(+0.6p)、問3履修済み科目を

発展させる内容か(+0.5p)、などであった。問16、17の理解度(+0.3p)、満足度(+0.14p)はまだま

たであるのでさらに改善を図りたい。

以下にアンケート裏の特記事項について意見があったものを以下にまとめた。良かった点は、①項

目ごとに注意事項や細かい説明があり良かった、②毎回簡単な宿題を課していた点、③質問に丁寧に

答えてくれた点、④重要な項目を“ここはテストに出るよ”と言ってくれた点、⑤授業以外の学会の

話などをしてくれた点、⑥学会を見学できる機会を作ってくれた点。改善すべき点は、①進度にばら

つきがあった。②前半は基礎有機化学でやっているので後半にもっと時間をかけるべきだ、③教科書

が高価なのに使用頻度が低い、④プロジェクターの利点が生かせていない、強調したい部分が伝わり

難い、データの羅列は見難い、立体的な図や色分けが必要な図だけに使用して黒板も使用してほしい、

⑤パワーポイントの資料の印刷で細部が見難かった、⑥教科書の演習問題の解答集が欲しかった。

3.今後の授業改善について

講義内容が多いこともあり、シラバス通りに進行できない事があるので各回の内容を吟味し、回の

途中で授業日を跨がない様にしたい。また、パワーポイントと板書のバランスの改善をはかりたい。

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河合 剛太 Gota Kawai 非常勤講師(千葉工業大学・工学部・生命環境科学科)

分子生物学入門(専門選択必修・専門選択科目)、4セメ、火5、受講登録数28名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

昨年度と同様に,分子生物学あるいはそれに関連する広い分野のトピックスについて,その要点を

分かりやすく紹介することを心がけて,授業の準備を行った.講義はパワーポイントによって行い,

図表等の資料については縮小版を配布した.また,配布資料には説明の文章をあまり書かず,できる

だけ学生がノートを取るようにした.内容としては,それぞれの分野の基礎を押さえることと, 先

端の研究の紹介を行うことをバランス良く配分することを心がけ,自分自身の研究に関連する内容の

回には,それについても簡単に紹介した.なお,昨年度の授業評価アンケートで内容が多すぎるとい

う評価が見受けられたため,昨年度に比べ,若干,分量を減らした.

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

授業評価アンケートの回答者は25名で,昨年度の27名と同程度であった.授業評価アンケートの

多くの設問についておおむね学科平均と同程度の評価であり,講義の運営に大きな問題はなかったよ

うである.ただし,「学生の理解度をチェックしたか(問10)」および「宿題,レポート等が理解を助

けるのに役立ったか(問 11)」については,平均値を下回っていた.幅広い内容を紹介していく授業

で,毎回授業の内容が大きく異なることから,宿題やレポート等を課すことが少なかったためである

と思われる.

「この授業で質問をしましたか(問15)」については平均値が2.25で,学科平均よりも若干良いと

はいえ,非常に低い数字となっている.授業の途中,あるいは終了時に質問を促しているが,学生か

らの質問は非常に少なかった.昨年度の反省を踏まえ,今年度は若干分量を減らしたが,それでもま

だ内容が多く,質問が出にくかった可能性が考えられる.また,質問しやすい雰囲気作りも必要かも

しれない.

授業は,パワーポイントを使って行っているが,図を書き写す必要がなく,話の内容に集中できる

よう,パワーポイントの大半の内容を配布資料として配布している.また,重要な内容(文やキーワ

ード)については,配布資料に含めず,学生にノートを取らせる(あるいは配布資料に書き込みをさ

せる)ようにしている.「スライドは見やすかったか(問6)」については,4.24と比較的良い数字と

なっており,また,「わかりやすかった」とのコメントもあったことから,方針には問題がないと判断

している.

3.今後の授業改善について

各回の内容について,さらに精査し,不必要と思われる基礎的な部分などを削除することによって,

重要な概念やメカニズムなどの解説に時間を割き,余裕をもって質疑応答ができるよう準備をしたい.

また,簡単なレポートあるいは宿題を課すことによって,学生の理解度を深め,またその状況を把握

することを心掛けたい.

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岸川 圭希 Keiki Kishikawa

生体材料化学講座・生体ナノ材料化学教育研究分野・準教授

生体分子の化学(必)3セメ、木1、124名

共生応用化学実験(共通)(必)5-6セメ、水木3-4-5 、29名

共生応用化学セミナー(必)1セメ、火4、9名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

「生体分子の化学」について述べます。教科書に沿って授業を進めていますが、教科書を離れ、学生

が興味をもてるトピックスも入れ、授業に奥行きを持たせるよう配慮しています。この授業は、必修

で124名受講(他学科は選択)なので、回収したプリントのチェックやテストの採点は、多くの時間

と労力が必要ですが、共生応用化学科にとって重要な授業なので、丁寧な授業を、と考えています。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

アンケートの読取機器の感度に、問題があるようで、アンケート回収数は 90 枚でしたが、55 枚とし

かカウントされていませんでした。私の方で、コメントに必要な設問について再計算したところ、ほ

とんどの場合、値は向上しました。問5:4.78→4.80、問6:4.38→4.68、問8:4.49→4.67、問9:

4.18→4.53、問10:4.45→4.43、問12:4.24→4.70、問16:3.27→4.43、問17:4.00→4.69、とな

りました。以下、自分で集計した値を使用して、コメントを行います。

(1) 声は良く聞こえたか(4.80、昨年:4.21)、板書は見やすいか(4.68、昨年:4.56)-----2

号棟 202 室の音響が悪かったので、セメスターの途中で19号棟110 室に授業の場を移しました。

一部学生からは、駅から遠くなったことへのクレームがありましたが、声がよく聞こえるようにな

ったことや、黒板の字が見やすくなったとの声も多く聞かれました。大きな可動式の黒板が4枚あ

るので、大きな字で書いても沢山の内容が記述できるのもよかったと思います。ただ、毎回、教室

の床にゴミが散乱していているのがとても気になりました。

(2) 理解を助ける工夫(4.67)、興味を持たせる工夫(4.53)、進度は適切か(4.70)-----毎回、

重要ポイントを書いた穴埋め式の用紙を配布し、授業を聞きながら、言葉を入れてもらいました。

授業終了後回収し、チェックして、次の授業で返却しました。質問や意見も書いてもらい、次の授

業で、わかりにくかったところを解説しました。

(3) 授業内容を理解できた(4.43)、授業に満足した(4.69)-----必修科目としては良い方だと

思いますが、理解度を5.0に近づけたいと思います。

3.今後の授業改善について

理解度を上げるために、「重要ポイントプリント」をもう少しわかりやすく、視覚的にも印象に残

りやすいものを考えたいと思います。また、興味を持てるような題材を、数多く効果的に取り入れ

る工夫が必要だと感じています。

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岸村小太郎 Kotaro Kishimura 他4名

共生応用化学科・非常勤講師

有機工業化学(選)、5セメ、金、5、79名

1.授業の組み立て方と取り組み方

石油化学工業を例に取り、化学産業をとりまく経済情勢、社会環境、企業における研究開発および

生産活動に触れることで、化学産業における企業活動の実際を理解してもらうことを目的に授業を組

み立てている。具体的には、主要な化成品やプラスチック製品等の身近な素材を取上げ、その開発の

経緯や製造方法、さらには注目される新素材およびその開発動向を企業において実務に従事している

5名の技術者と研究者が、それぞれのテーマを分担して、資料の収集・作成、紹介を行っている。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

H18年度の評価結果から、H19年度の講義に際しては以下の2点の改善を図った。

① 授業の重要事項をわかりやすく解説する。

② 質問や宿題などで学生の理解度をチェックし,その後の授業で理解度に応じた説明をする。

今回の学生による評価結果を見ると、上記2点についての評価点が上がっており、改善の効果があ

ったものと判断する。

一方、今回の評価結果で、「教材は、授業の理解に役立ちましたか?」の評点が低い。教材(プレゼン

資料)は、基本的に講師担当者が作成・編集している。今後は、授業内容により即した内容の資料作

成を工夫したい。

3.今後の授業改善について

昨年度に引き続き、以下の方針で授業の継続的な改善を図っていく。

○ 授業の重要点の明示; それぞれの講師担当者は、日頃 講義に慣れていないため説明するだけで精

一杯になり、なかなか重要事項を分かりやすく説明できるスキルが身についていない。これをカ

バーするために、各担当授業の中で(例えば冒頭で)重要点を明示し、授業にメリハリをつける。

〇 質問や小テストによる学生の理解度のチェック; 授業の中で質問や小テストにより学生の理解度

をチェックし、その後の授業で理解度に応じた説明をする。

〇 グループ討論の実施;「化学工業の実際」の中で05年度から取り入れているが、学生にとって新

鮮な体験であり、多くの学生が生き生きと取組み、自ら考え発言している。企業での技術者の業

務の一端を理解することにも役立つので、今後もこれを継続していきたい。

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岸本 渡 Kishimoto Wataru 情報画像工学科・情報画像プロセス講座・情報通信ネットワーク教育研究分野・准教授

コンピュータ処理(選必)、4セメ、水2、受講登録数54名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

私が共生応用化学科で担当させて頂いているコンピュータ処理についての報告をここでさせて頂く。

講義はTAを担当してもらった修士課程の学生に、昨年度のパワーポイント形式の講義資料を基にweb

ブラウザで見ることのできる講義資料を作成してもらった。担当のTAの学生に非常に熱意があり、毎

回とても良い講義資料を作ってくれるため、私自身が大変勉強となった。一方で、熱意があるため、

資料の内容が高度になりがちであったため、受講者には難しすぎる場合があったようである。授業時

間中に演習の時間を設けて、プログラミングを実際に行ってもらうため、実習の状況を見ることによ

って、学生の理解度を測ることができ、TAの学生も受講者の理解度に応じた資料を作って来てもらえ

る様になっていった。昨年度までの講義の経験はあるが、個々の学生がどの程度の予備知識をもって

いるのかについてはまだ掴みきれずにいた。昨年度と同様に詳しく書かれた教科書を指定し、その教

科書にそって1章を1,2回かけて行なうような内容とすることにし、講義では教科書の各章の主題を

簡単に説明した後に、課題のプログラムを作成して提出してもらう形をとった。

プログラミングにおいて人のプログラムをまねして覚えるのは上達のための良い方法である。選ん

だ教科書には沢山の例題プログラムが記載されており、文法についても詳しく解説してあるので、そ

の日の講義での主題を簡単に説明し、後は教科書を参照しながら自分で考えることによってプログラ

ミングの方法を身につけるのが良いのではないかと考えている。プログラミングは詳しく説明をする

よりも、自分で手を動かして作成し、コンパイラーから返される様々なエラーを自分で解決すること

によって身につけるのが時間はかかるが一番有効な方法であると思われる。今年度は、一般的な説明

と課題として出すプログラムのおおよその構成の説明を簡単に行った後、課題に取りかかってもらっ

た。プログラミングに慣れてもらい、プログラミングをする必要が出てきたときに、独力で作成でき

なくても、どのようなことが必要となるのかということは分かるようになってもらうことを目標とし

た。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

結果の中では、16(この授業内容を理解できましたか?)、17(全体を通して、この授業に満足しま

したか?)という設問に注目しているがどちらも学科の平均よりも下であるので講義の説明の仕方の

より一層の工夫が必要である。課題についてもっと説明して欲しいという要望があったので、次年度

はもう少し課題に基づいた説明をしてみようと考えている。

3.今後の授業改善について

授業の説明の仕方(講義資料、説明内容)の改善を心がけたい。プログラミングに対する理解度に

個人差が大きいので、特に課題の内容を適したものに出来る様に工夫をしていきたい。

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北村 彰英 Akihide kitamura 環境調和材料講座・エネルギー変換材料教育研究分野・教授

有機化学Ⅱ、4セメ、火1、受講登録数127名

1.授業の組み立て方と取り組み方

今年は共生応用化学科3期生の講義である。2 年生の選択必修科目ということで、本来ならば中規

模教室で熱心な学生を中心に丁寧な授業を行うというイメージであるが、実際には大部分の学生が受

講する、受講者数127名という大人数のクラスである。昨年は150名を越えていたので、授業環境は

幾分改善されたといってよいかもしれない。

このような状況では手を抜くとすぐ学生から不満が出るので、かなり注意をして授業を行った。ひ

とつは定時スタートである。1時限なので、8時50分に必ずはじめた。学生たちも8時45分には教室

に入り、レポートを提出し、はじまるのを待つという習慣がついた。終わりは定刻より10分早くした。

この10分間で質問を受け付けることにした。必ずしも質問をする学生は多くなかったが、質問してい

ても次の授業に遅刻しないという安心感を与えることは重要と思う。結局、休講も遅刻も一度もなく

終えることが出来た。

授業は原則として教科書に添っておこない、特に重要な点をパワーポイントを用いて説明し、さら

に重要なところを黒板に書くという方法をとった。一番注意をした点がパワーポイントの使い方であ

る。以前のOHPもそうであったが、一般に両者とも学生の評判は好ましくない。一枚のパワーポイン

トにかなり時間をかけて説明することを心がけた。

毎回問題を出し、次の週に提出してもらい、出席点とした。解答は黒板で授業のはじめに説明した。

また正月休み前に問題を大量に出し、 後の2回の授業はその問題を解くことによる総復習を行い、

終回にテストをおこなった。この期末テストと出席点で評価点をつけた。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

受講者数は127名のうち、単位を出さなかったのは25名。不可の率は20%であった。もっとも、

授業に出てこなかったのが8名いたので、実質は約14%の不可率になる。この値は例年とほぼ同じで

ある。アンケート結果は非常によく、満足度をきく設問17の値が4.21であり、平均の3.75を大きく

上回っている。これも例年と変わらない。ほとんどの項目が平均を大きく上回っていたが、進度が適

切かという項目と、理解できたかという項目が平均以下であった。かなり丁寧に教えたつもりである

が、学生としてはきつい授業であったのであろう。

3.今後の授業改善について

大人数の講義はその質の維持が大変である。かなり注意を払って授業を行ったが、それにも増して

学生はよく頑張ったと思う。この授業で単位が取れれば、どこにいっても恥ずかしくないだけの実力

がついたといえる。授業改善という面でいえば、来年度から教える範囲が少なくなる。学生の理解度

に合わせて進度調整が出来、演習も含めることが出来るので、学生にとってはかなりわかりやすい授

業になると考えている。

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串田 正人 Masahito Kushida 生体材料化学講座・バイオプロセス化学教育研究分野・准教授

基礎化学A(必)、1セメ、水1、受講登録数123名

熱統計力学演習(必)、2セメ、木1、受講登録数130名

共生応用化学セミナー(必)、1セメ、火4、受講登録数120名

共生応用化学実験(必)、5,6セメ、水・木3、4、5、受講登録数118名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

「基礎化学A」は化学を志向して大学に入学したばかりの第1セメスター1年生向けの,しかも基

礎化学という化学への導入の科目であることを絶えず意識しながらの講義であった.高校までの暗記

中心と思われがちな化学の授業を少しでも脱却し,自ら問題を認識し,普遍的な問題解決の手段・方

法を少しでも身につけられるように意識しながらの授業を行った.昨年度は結晶構造を理解するため

に,学生自身に実際に結晶構造のモデルを作ってもらった.実際に手を動かしたこと,3次元構造が

分かったと受講生に興味を持ってもらったが,一方で簡単すぎた等の意見も聞かれた.今年度は主に

板書での説明で行ったが,一部分かりにくいとの指摘も聞かれたのでさらに教材のバージョンアップ

を図った.「熱統計力学演習」は演習の授業であるので,学生自身に実際に解答を板書・解説させた後

に補足説明をおこなった.また演習問題をほぼ毎回出し,学生がよく研究室に質問に来るようにして,

自主的に学べる場を提供した.

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

学生の勉学意欲を問う設問で全体の平均値とほぼ同じか標準偏差/2程度上回っていた.特に予習復

習に関しては全体の平均値が下がっている中で,この授業の平均値は特に高かった.これは,ほぼ毎

回10-15問程度の予習復習を兼ねた宿題を出していたこと,またその結果オフィスアワーのみでなく

頻繁に学生が研究室に質問に来てくれる良い結果になった.また,授業内容への興味,理解および知

的刺激さらに専門基礎科目としての適切さ,学部専門科目への橋渡し等の項目に関しても全体の平均

を上回る高い評価を得られた.一方授業の計画性,授業教材,授業の進度および板書の文字等に関し

ては全体の平均値下回っており更なる工夫を行っていきたい.アンケート回答者 115 名中 42 名

(36.5 %)がシラバスを見ていないと回答した.シラバスは受講する学生と我々教員との授業内容やテ

ストおよびそのテスト結果の評価に関する「契約書」に相当するものである.Web 上および授業初日

に紙ベースの詳細なシラバスを配ったが,さらに周知徹底するよう心懸けていきたい.

3.今後の授業改善について

今回の授業で初めて「大福帳」を用いた.「大福帳」は毎回授業の 後10分間を使ってその日の講

義の不明な点や,授業への要望を書いてもらい,次回の授業までに全員に簡単なコメントを付けて返

却した.学生は毎回文章を書くことで表現力やコミュニケーション力を養い,私にとっては学生の要

望を次回の講義で改善できる点が良かったので今後も続けていきたい.高校と大学での授業内容の違

いもさることながら,授業方法しいては化学のみならず科学全般の学問に対する真摯な受け止め方を

学生と考える場を提供することができればと思っている.

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幸本重男 Shigeo Kohmoto 生体材料化学講座・生体ナノ材料化学・教授

有機構造解析(選必)、5セメ、月2、受講登録数 130名

基礎化学A (選) 1セメ、金2、受講登録数 88名 (参考)

セミナーI (必) 5セメ、火4、受講登録数 10人

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

有機構造解析(共生応用化学科3年生対象)の講義の目的は、有機化合物の構造決定法を学ぶこと

にある。種々のスペクトルの原理の理解と同時に、実際に自分でスペクトルを解釈して構造決定がで

きるようになる事を主眼としている。従来6セメで行っていたものが作年度より共生応用化学実験と

の兼ね合いにより5セメに変更になった。これを踏まえ、関連する有機化学の基本事項の説明を加え

るようにした。講義の性格上、スペクトルの説明が多いので昨年度までは教科書のスペクトル図のコ

ピーをコメント入りでわかりやすくし、パワーポイントで大きく映し解説していた。しかしながら、

パワーポイントによる説明はどうしても早くなりがちであり、実際に早すぎるとの指摘があったので

今年度は板書により行った。教科書の重要事項をまとめたもののコピーを配布し、学生の理解を高め

るようにしている。講義の性格上、学生自身による演習が非常に重要であるが、内容が多岐にわたる

ため、例年、どうしても演習に割く時間が不足しがちであり、今年度もその感は否めないが、内容を

厳選して減量化し、なるべく演習にも時間が使えるように努力している。また、演習の不足分を補う

ために演習問題をレポートとして課している。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

設問1では、学科全体の値より、(b)のシラバスを見て関心を持ったとの回答がかなり高く、授業

内容に関して興味を持っている学生が多い。学部共通設問の設問2~9に対しては、若干学科平均よ

り低い評価であった。とくに設問6の板書等の見易さに関する設問が3.39と学科平均および、この講

義の例年の評価に比べて非常に低かった。これはスペクトル図等すべてを板書したためかなり無理が

あったものと思われる。学科共通(講義・演習)の設問10~17に対してはおおむね学科平均程度

であるが、設問10の質問や宿題による理解度チェックとその後の授業における理解度に応じた説明、

設問11の宿題・レポート等が理解を助けるのに役立ったかとの設問の評価は4.14および4.35と学

科平均よりも高い。今後とも良質の問題をレポートとして課していく事が重要である。昨年度は授業

内容の量を考慮した進度の適切さに関する設問12の評価が低かったが、本年度は学科平均となった。

これは板書により、パワーポイントを利用するよりもかなり説明がゆっくりとなったためと思われる。

講義の性格上、スペクトル図を多用するが、パワーポイントと板書をうまく合わせて行っていく必

要性を痛感した。従来パワーポイントが非常にわかりやすいという学生のコメントがある反面、補足

のために適宜、板書を行っているので、教科書、パワーポイント、板書の3つを見なければいけない

ので混乱するとのコメントも昨年度はあった。受講人数の多い講義を如何にきめ細かく行うかが問題

となる。

3.今後の授業改善について

演習問題を自分で解くことにより理解を深めることがこの講義の性格上、不可欠である。教科書も

含めて適切な教材作りを行い、講義の内容に興味を持つ学生が多く増えるように努力していきたい。

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小島 修一 Shuichi Kojima 共生応用化学科・非常勤講師 (学習院大学)

生化学II (選) 5セメスター、月2、受講登録数61名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

内容としては本務校でも担当している講義と類似している部分が多いため、進め方などに関しては

それに倣って、プリントと板書を中心に行った。学問の専門分野上、学生にとっては、板書をノート

に筆記した方が理解が深まる、との本務校での経験に基づき、OHP やパワーポイントは使わず、図に

関してはプリントを多用した。それゆえ、板書の量は多くなったものの、それに合わせての説明のた

め、それほどスピードの速い授業とはならないように心掛けた。また難しいと思われる所に関しては

繰り返し丁寧に説明するようにした。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

評価に関してはおおむね平均点となった。ただ板書の量が多かったので「時々字が見にくくなる」

や「話すスピードがしばしば早くなる」との指摘を頂いたので、これらの点に関しては今後も念頭に

入れて授業を進めて行きたいと思う。毎回出席を取っていたためか、履修希望者はおおよそ全員出席

して、私語も殆んど無く、熱心に授業を聞き入っていた、との印象がある。

ただ、「宿題などで学生の理解度をチェックし~」の設問に関しては厳しい指摘を頂いたが、この点

に関しては非常勤という事から、千葉大学にいられる時間が少なく、また本務校での忙しさを加味し

て、若干寛大なご評価を頂ければ、と思う。その分、期末試験が近づいて来た頃に講義全体のまとめ

を1回分かけてゆっくり行ったためか、期末試験の成績も良好で、正確に理解している学生が多く(満

点も数名いた)、その点では今後も「まとめ」はしっかり行っていきたいと思う。

3.今後の授業改善について

上にも記載したが、「板書の字が見にくくなり、話すスピードが速くなる」との指摘を頂いたので、

これらの点に関しては今後も常に気にしながら授業を進めて行きたいと思う。また も評価の低かっ

た「宿題」の件に関しては、どのようにすべきか、今後も検討していきたいと思う。

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斎藤 恭一 Kyoichi Saito

生体材料化学講座・バイオマテリアル教育研究分野・教授

化学英語1(必) 3セメ,金2限,122名

化学英語2(選必) 4セメ,金2限,61名

1. 私の授業の組み立て方と取り組み方

「化学英語1」と「化学英語2」を2年生向けに用意している。4年次の卒業研究や,その後の企

業や大学院での研究活動に役立つように,実用的な内容を心がけている。「科学英語」を習得するため

の心得として,つぎの3項目を教えている。(1)方法論なくして上達なし,(2)精読なくして速読なし,

そして(3)研究論文なくして創造なし。

2. 学生による授業評価結果および今後の授業改善について

「褒められて伸びるタイプなんです」と訴えてくる学生がいる。「でも,そんなの関係ない」と判断

して,私は大いに叱ることにしている。しかしながら,この授業評価に限れば,「私も褒められて伸び

るタイプ」なので,スコアのよいアンケート項目を調べることにした。一番高いのは「5.教員の声

はよく聞こえましたか?」である。「化学英語1と2」について,それぞれ4.77 と4.87 である。小

学6年生から高校2年生まで東急線の踏切の脇の町工場2階に住んでいたという環境要因により,私

の声は大きくなった。「立って,腹に力を入れて,喧嘩の勢いで英文を読め」と学生に指示している。

本来“内気な”私が,生徒の前で,それを実践しているので,評価が高いのだと思う。

「化学英語1,2」とも,授業には辞書を持って来るように学生に指示をするのだけれども,受講

者約 100 人のうち半分が電子辞書を持って来る。持って来ない残りの半分は隣の友人の電子辞書を

覗き込んでいる。電子辞書に入っている英和辞典はほとんど“GENIUS”という辞書である。しかし,

私はこの辞書を気に入っていない。私は“LIGHT-HOUSE”を愛用している。もちろん,電子辞書

を持っていない私は,この“LIGHT-HOUSE”を持って講義に出かける。先日,講義室の一番前に

陣取っていつも熱心に講義を聴いてくれている学生に「君は高校のとき,英和辞典はどこの使ってい

た?」と少々期待して聞いたところ「“GENIUS”でした」と応えた。私は内心で「どいつも,こい

つも GENIUS か」と少しムッとして,「じゃあ,genius の意味を知っているのか?」と問い詰めた

ら「天才」と正解だった。続けて,教壇に持ってきた私の“LIGHT-HOUSE”を持って見せて「こ

っちの方が使いやすいぞ!“LIGHT-HOUSE”の意味を言ってみてよ」と同じ学生に頼んだら,即

答で「軽い家」とまじめな顔をして答えた。“軽い家”と“天才”の英和辞典,なるほど“GENIUS”

が売れている理由をここに至って理解した。研究もさることながら,これからは“化学英語”の講義

にもっと力をいれなくてはならないと私は決意した。

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坂本 昌巳 Masami Sakamoto バイオ機能化学講座・バイオ機能分子化学教育研究分野・教授

光化学(選必)、6セメ、木2、受講登録数70名

グリーンケミストリー(選必)、6セメ、月2、受講登録数70名

基礎化学B(選必)、2セメ、月1、受講登録数15名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

光化学は光化学の基礎的な理論から生体系、身の回りの光反応、応用技術に関して平易に講義した。

当該学科の教育課程ではあまり馴染みのない分野であったために、基礎的な部分を中心に内容を選ん

で理解させることを心がけた。特に重要な事項は繰り返し説明し、毎回の講義の終わりには10分間程

度で、その時間に講義した内容から小テストを行った。しかし、励起状態の化学は彼らがこれまで学

んでこなかった分野であるために一部の学生には理解しにくい部分もあるとおもわれる。昨年度の授

業評価アンケートでは内容を考慮した場合の進度が早すぎるとの評価を受けて、今年度は少し、ゆっ

くりと進度を落としてより理解度を確認しながらの授業を試みた。ほとんどの項目で平均点以上の評

価を得た。その他、発展させる内容だったか(4.4)、分かり易く説明する工夫(4.2)、声の大きさ(4.2)、

興味を持つような工夫(4.3)に関しては高い評価が得られている。全体的な満足度も4.2の評価を得

ているが、さらなる工夫が必要であると感じている。

グリーンケミストリーは、2年目の科目でありオムニバス形式で授業を行っている。昨年度は初め

ての授業で、昨年度の意見を参考に有機化学における環境調和型化学の取り組みを解説したが、講義

の進め方と内容についてさらなる工夫する必要があると感じている。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

光化学に関しては、本授業に対する学生の「満足度は」(4.2)であったが、「理解度」が(3.6)であ

った。授業後は質問にくる学生もあり、深く興味を持った学生が数多くいた反面、全体的に深く興味

を持って理解して貰うにはさらなる努力が必要であると感じた。

3.今後の授業改善について

光化学では授業に進度と理解度に応じた説明に関して課題がある。受講生にとっては馴染みのないこれまでに

学んでいない励起状態の化学であり、また、基本的な内容と応用までの広い範囲をカバーするため、より丁寧に説

明しわかりやすい授業を心がけ理解度を向上させたい。この分野は日々新しい発見と技術の開発がなされており、

基礎教育を重視しながらも新しい内容を取り入れて魅力ある講義にしたい。その他、グリーンケミストリーに関し

ても各論の説明にとどまらずより深く考えるような講義になるように改善していきたい。

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笹沼 裕二 Yuji Sasanuma バイオ機能化学領域・環境調和高分子材料教育研究分野・准教授

高分子物性 (選必、選)、5セメ、月4、受講登録数59名

物理化学III(選必)、6セメ、金2、受講登録数38名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

昨年度から執筆をはじめた「高分子物性」の教科書も今年度は随分と充実してきた。「第一章 高

分子鎖のモデルと分子の広がりの評価」、「第二章 高分子溶液理論」、「第三章 高分子の固体物性」。

学部の授業に加え、大学院の授業である「高分子物理化学」の内容も加筆した。まだ授業内容を全て

網羅するには至っていないが、随分カバーでできている。著作権の問題から他書の複写は許されず、

図を独自にトレースするため、これに手間取りなかなか捗りにくいが、今後、「高分子の構造」と「レ

オロジー」に関する章を追加したい。このテキストはPDFファイルにしてWeb上で公開している。受

講生は無料でダウンロードできる。

テキストを作成したことによる利便性、すなわち学生に無償で教材を手元に提供できるメリットは

あるが、反面、以前は板書していた式の誘導などは、テキストを読み上げるか、プロジェクターで投

影することで済ますことが多くなった。授業はよく進むが、板書をノートに書き写すことによる理解

が薄れ、手を動かす運動がなくなり睡魔の誘惑に負け、居眠りをしている学生が目立つようになった。

試験前にテキストを読めばよいという安心がよくないのであろう。宿題に課していた演習を授業時間

中に行わせるなどしてみたい。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

「高分子物性」の授業評価の自由記述欄には、「テキストは細かい説明もしてあり分かり易かった」、

「先に各章の全範囲のテキストが入手可能で全体を眺めることができた」、「××書店の本より分かり

易かった」などの主にテキストに関する好意的なメッセージを受けた。一方、「テキストの内容は良い

のですが、重要なところとそうでないところが見分けにくい」、「テキストに誤りが目立った」などの

指摘も受けた。改善して行きたい。集計の結果としても、「教材は、授業の理解に役立ちましたか」の

問いに4.29で学科平均の4.02を上回ったが、昨年度の4.54には及ばなかった。2年目で授業通りの

テキストがあるのが当然と思ったのだろうか。独自の設問としてテキストに関する質問をいくつか板

書で追加したが、回答した学生はわずか3名。授業評価とはこのようなものかと正直落胆した。期末

試験の際にアンケートを配布したが、試験の出来不出来によるその時の学生の感情が評価に影響し、

わずかの時間で投げ遣りに記入したりする。真摯な態度でアンケートに答えてほしい。

3.今後の授業改善について

ここで述べることではないかもしれないが、大学院の授業「高分子物理化学」は「高分子物性」に

続く授業として準備している。「高分子物性」を受講していなかった学生が「高分子物理化学」の受講

を希望したが、この授業は2名の教員で7コマずつ分担しているので、学部授業の復習の余裕はない。

さらに、この年代の学生が受講した「高分子物性」は2名の教員による並行開講であったため、両者

の授業内容が一致していなかった。1回目のガイダンスに出席した学生の多くが2回目以降に姿を消

した。さらに学部から2年間のブランクがあるため、「高分子物性」の内容は忘却の彼方という学生も

少なくない。学部と大学院の授業の連続性にも工夫しなければならない。

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佐藤智司 Satoshi Sato

共生応用化学科・環境プロセス化学講座・資源反応工学教育研究分野・教授

化学工学基礎(選必)4セメ、金1、138名(共生応用化学科2年)

反応工学(選必)5セメ、金2、47名(共生応用化学科3年)

グリーンケミストリ(選必)5セメ、月2、66名(共生応用化学科3年)

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

担当している化学工学系2科目については「板書」講義を行っている。学部教育では、方程式、グ

ラフなどを理解することが重要と考えている。教科書で十分説明されていない内容を図解し、学生に

ノートを取る速度と同程度の時間を使って板書している。理解度を上げるため復習を兼ねた複数レポ

ート提出を学生に求めている。一方、「グリーンケミストリ」では、理解の助けのために自作プリント

を配布している。

2. 学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

化学工学基礎について述べる。授業評価アンケートの各設問に対し学科平均以上の評価を得た内容

は次の通りであった(回収数92)。「教材は、授業の理解に役立ちましたか?(平均4.46)」「教員の声

はよく聞こえましたか?(同 4.84)」「授業の重要事項をわかりやすく解説するような努力がなされて

いましたか?(同 4.07)」「質問や宿題などで学生の理解度をチェックし、その後の授業では理解度に

応じた説明をしましたか?(同 4.14)」「授業では、レポート等が理解を助けるのに役立ちましたか?

(同4.23)」

講義内容の理解度を上げるため復習を兼ねたレポート提出を合計7回学生に求めた。レポートを課

した場合には復習を実行しているように見て取れる。この他に「数式と現象との相関がわかりやすく

説明されていた」の評価を得た。一方で、「板書が見づらい、もう少し整理して書いてほしい。板書の

順番がわかりにくい。落ち着いて話してほしい。」という意見があった。また、12 月に記述式で同様

の評価アンケートを実施し、類似した意見をもらっていたので、その反省の上にそれ以後の授業を行

った。12月のアンケート後「以前よりずっと講義が聞きやすくなった」という意見もあった。

履修登録者138名中、121名が期末試験を受験した(内110名合格)。来年度よりこの科目は学科の

一部コースの学生には必修科目となるため、自主的な学習を促す工夫をしていきたいと考えている。

追試験の実施による成績の再評価も検討予定である。

3.今後の授業改善について

2年次学生を主とした100名以上の学生がすべて満足のいく講義は非常に難しいが、途中履修放棄

者を含む32名を不可とした。中間試験の実施等により学生のより自主的な「学習」「勉学」を促すよ

うな講義内容を工夫したい。自分自身の講義改善のモチベーションを維持するために授業評価アンケ

ートを期の終わりだけでなく途中で実施して、講義に利用してみた。引き続き、見やすい板書講義に

心掛けたい。

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島津 省吾 Shogo Shimazu 資源プロセス化学領域・触媒化学教育研究分野・教授

錯体化学(選必) 5セメ、火3、95名

物理DI 熱統計力学入門(必) 2セメ、水2、92名

化学セミナーⅠ(必) 6セメ、火5、8名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方『錯体化学』

【授業の手法】 学習効率を高めるために以下のような方法を行っている。(1)教科書「コットン基

礎無機化学第3版」。国際的に広く使用されており、内容が新しく偏りが少ない。(2)毎回授業内容

に沿った問題(教科書より5問程度)を出し、レポート提出させた。(3)ホームページ

(http://chem.tf.chiba-u.jp/~shimazu/sakutai/index/)に、レポート問題、解答、レポート提出状

況の確認、参考資料のダウンロードを掲載した。質問はメールでも可能。HPへのアクセス件数は授業

終了時で1700件程度、学生1人当たり平均約18回閲覧したことになる。(4)授業は、板書を基本

にして、受講者には馴染みの薄い錯体化合物の記述方法を分かり易くしている。(5)試験を中間2回

と期末1回の3回行い、平均点を 終評価としている。

【授業の構成】 錯体化学の内容は無機化学と有機化学の基礎知識が必要で、受講生には難度の高い

内容であることから、導入は理解しやすい命名法から始め、立体化学や構造を導入部とし、化学結合

に関する配位子場理論を6-8回に行い、中間点ストの後、後半部に反応について講義をしている。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

15項目に及ぶ5段階評価で、錯体化学は設問17「全体を通しての満足度」が4.1点であり、学

科の平均が3.8点であることと比較して、相対的に良好と評価されていると判断できる。

特に、設問2「シラバスとの一致」、設問11「宿題」、設問12「内容量」が、4.3~4.4点で高く

評価を受けた。宿題については、難度の高い内容であることから問題を選定し、教科書を丹念に読ま

ないと解答が得られない様にし、さらにHPに解答を掲載して、自分でも復習しやすいように工夫し

た。このあたりが評価されたものと考えている。学生のコメントの中には、教科書の本文を読まなく

ても解答が得られるものと勘違いしているものも有り、授業開始時に方針を徹底する必要がある。

実際に前年と比較して、3回の試験の平均点は69.2点と前年の65.0点を大きく上回っていた。し

かしながら、設問16「授業内容の理解」が 3.5 点(学科平均 3.5)と理解度については、思ったほ

どの評価を得ていない。理解度と満足度は、必ずしも理解度と一致していないことがわかった。

3.今後の授業改善について

授業では、質問が少なく学生のアンケートでも 1.7(設問15)で、学科の平均 2.2 を下回った。

HPの更新が遅れ気味であった。これらの点を少しずつでも改善していきたい。また、理解度が 3.5

点であるので、授業の項目毎に検討する必要がある。

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関 実 Minoru Seki 共生応用化学講座・バイオ機能化学分野・教授

生物化学工学(選必),6セメ,月3,受講登録数39名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

本講の目的は,生物反応システムの解析・設計・計測等に関わる基本的な考え方を理解させること

である。生物に関する基礎的な知識の欠如と化学工学の理解が不充分であることを前提に,これらに

関する必要 小限の内容を補完しつつ,本分野の基本的な考え方を一通り理解させるよう努めている。

講義では,板書と講義内容を要約した独自のプリントを利用し,必要に応じてOHPを利用して,

Visualなイメージも熟成されるように努めている。講義内容の要約プリントは,完成されたものでは

なく,重要な点を中心に多くの空欄があり,その場で空欄に記入する作業をすることによって,講義

の内容が整理され,理解が深まるように配慮している。また,必要に応じて,クイズやホームワーク

を課し,演習の要素も取り入れている。注意していることは,なぜそのように考えるのか,あるいは,

なぜそのようなことを行うのかを理解させることで,比較的身近な事例を例示することで,現実的・

実用的な観点からも当該内容の重要性・意義を了解できるようにしている。

2.学生による授業評価結果,ならびにそれに対するコメント

問 2(講義内容とシラバスの一致)の結果は学科平均を若干下回った。学生の理解度をテストしな

がら進度を調整した結果と考えられる。順番と内容はシラバスに正確に準拠しており,事前告知もし

ているので,少人数の場合に教育効果の観点から許容される範囲であればと考えている。

問3~問11(講義の構成・手法)は,いずれも,4.2(5点満点)を上回っており,学科平均と比べ

ても高評価であるが,このことが前項に記した教える側の意図も反映された結果であれば幸いである。

問12(講義の進度)も平均以上ではあるが相対的には低めである。本講の内容を不充分とする学生

と過剰と感じる学生の共存が示唆される。3 年生にもなると意欲に加えて学力面でも上位層と下位層

の差が開いてきているので,レポート・ホームワーク等を活用したきめ細かな対応が必要になろう。

問15(質問の有無)は,2.1と学科平均と同程度の低いレベルにある。学生が質問しやすいように,

全員に対するアンケートやメールの利用などの工夫をしたい。

問16(理解度),問17(満足度)は,いずれも学科平均を上回っているものの,3.867,3.964と十

分とは言えない。一方,ほぼ全回の講義に出席している(問12)にも拘わらず,講義の予習・復習に

費やす時間は平均すると通算でわずか 10 時間強(問 13)と考えられる。この程度の時間は恐らくレ

ポートやホームワークのために必要な時間であったと思われる。十分な時間があるのにも拘わらず自

主的な学習をせずに,「講義が理解できない」,あるいは,「満足できない」と回答することには違和感

を覚える。しかしながら,現状を受け止めて次項のような改善をする。

3.今後の授業改善について

本講義の2単位には90時間の学修が必要されているので,少なくとも60時間程度の自修時間が必

要となるにも拘わらず,前項にあるように,実際は10時間強である。学修時間が足りないために理解

できない学生が出ることはある意味では当然なので,自主的に学修することの意義や予習・復習の重

要性を意識させるような啓蒙をすると同時に,レポートやホームワークの質・量の向上を図ることに

よって自然とそのような習慣が身に付くように努めようと考えている。また,自主学修を助けるため

に,発展的な学修を意図した教科書的なものを準備することも考えている。

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袖澤 利昭 Toshiaki Sodesawa

環境プロセス化学講座・資源反応工学教育研究分野・准教授

物理化学Ⅰ(必)、3セメ、金4、受講登録数 69名

触媒化学(選必)、6セメ、水2、受講登録数 83名

エネルギー資源工学(選)、7セメ、受講登録数 32名

1. 私の授業の組み立て方と取り組み方

担当している3科目は、必修、選択必修、選択科目とそれぞれ異なるため、科目によって授業の組

み立て方と取り組み方がそれぞれ異なっている。

必修科目である物理化学Ⅰについては、教科書を使用してその内容に従って授業を進めた。基礎科

目なので、理解を深めるため毎回教科書の演習問題を授業中、小テストとして学生に解く時間をもう

けたり、または宿題を課すなどを心がけた。

選択必修科目である触媒化学に関しては、参考書の中の重要事項を中心に効率的な授業を心がけた。

授業の理解を深めるため、授業中の小テストおよび宿題などを課した。

エネルギー資源工学の授業は、エネルギーおよび資源に関してのデーターがその時

の世界の社会情勢および経済的な状況により大きく変化するため、常に新しいデーター

を使用して解説するように心がけた。また、 新の科学技術を分かり易く講義する工夫も行った。な

お、この授業は都市環境システム工学科の選択科目にも指定されており、多数の受講生が履修した。

2. 学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

一般に設問10において、「質問や宿題などで学生の理解度をチェックし、その後の

授業では理解度に応じた説明をしましたか?」についての評価が相対的に低いように思える。毎回一

人一一人の小テストおよび宿題を数十枚チェックして、間違っている箇所には、赤字で添削などを行

い、返却するときには、重要な間違いおよび共通の間違いについて解説をするなどそれなりの工夫を

行ったつもりである。また、設問9の「内容の理解に役立つ具体的な例題、例え話やサンプル等が示

され、興味を持つように工夫されていましたか?」についても低い評価であるが、授業中何回か具体

的な例をし示したのであるが、今後より一層の努力をするつもりである。

3. 今後の授業改善

2.で述べた設問9および10での評価を改善するための工夫をより一層努力すると

ともに、常に理解度を高めるために重要事項を分かりやすく解説するとともに反復などをして授業を

進めるように心がける。

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谷口 竜王 Tatsuo Taniguchi バイオ機能化学領域・生体模倣高分子・准教授

生体模倣高分子(選必)、5セメ、月4、受講登録数 73名

グリーンケミストリー(選必)、6セメ、月 1、受講登録数 68名 生体機能材料学(選)、7セメ、水5、受講登録数 27名

共生応用化学実験(必)、5,6セメ、水木 3-5、受講登録数 125名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

平成 19 年度は、昨年度に引き続き「生体機能材料学」(物質工学科開講科目「生体機能化学」から

の継続科目)、「グリーンケミストリー」(小倉、坂本、佐藤、阿部の各先生との分担)、「共生応用化学

実験」(高分子化学系)を担当した。また、今年度から新たに「生体高分子化学」(中平先生との分担)を担当することになった。「生体機能材料学」では、基本的に「生体機能化学」の内容を踏襲した講義

とした。「グリーンケミストリー」では、昨年度は高分子の種類と特徴から環境適応型高分子の開発お

よび研究動向を紹介したが、今年度はバイオマスの利用を中心とする内容を取り扱った。「生体高分子

化学」では、生体分子と高分子との相互作用から高分子材料の設計までを講述した。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

「生体機能材料学」のアンケート回答は、項目番号 15(質問をしたか)を除いて、いずれも学科平均

を上回った。裏面のコメント欄を見ると、講義の進め方が早すぎるという意見と遅いという意見が半々

であった。7セメ開講の本講義の受講生は、好奇心をもって聴講する学生と単位卒業制度を利用する4年生あるいは過年度生が入り交じっていることは把握していたものの、バランスをとることが難しか

った。「グリーンケミストリー」では、板書が多いとの指摘があった。テキスト(ISBN4-621-04577-6)では担当分野の内容が十分ではないため、参考書(ISBN4-06-154300-8)をベースに肉付けして説明を行

った。しかし、参考書を購入した数が少なかったようで、板書の内容を照らし合わせながら咀嚼する

時間がなくなってしまったと受け止めている。「生体高分子化学」は、初めにどのレベルから講義を始

めればよいのか手探りしていたため、後半に講義のスピードを上げたが、「生体機能材料学」や「グリ

ーンケミストリー」と同様に板書の量と講義のスピードに対するコメントが多く見受けられた。講義

内容の取捨選択を行い、メリハリをつけることが必要であると考えている。

3.今後の授業改善について

今年度で「生体機能材料学」の講義は終了するが、今年度から担当した「生体高分子化学」に一部

の内容を取り入れていく予定である。また、多くの受講生が興味を持っている生体関連材料に実際に

使用される高分子を紹介するのはもちろんであるが、単純に高分子材料を案内するだけでなく、基本

的なメカニズムに裏付けされた設計指針などを修得できるよう講義の準備を進めていきたい。「グリー

ンケミストリー」では、板書の内容が復習できるように資料をプリントで配布するなどして、受講生

の理解の向上に努めたい。また、「共生応用化学実験」で担当する高分子化学系分野の実験では、講義

と実験とを連携させ、実際に手で触って合成する面白さを体験できるよう、平成20 年度からの内容を

改訂した。内容が盛りだくさんになっていること、実験スキルとして必要な難易度の高い実験器具(装置)の組み立てが減少してしまったことなどいくつか懸念すべき問題があることは認識しているが、授

業で学んだ内容が実験で体現できるよう継続的な改善を心がけたい。

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中平 隆幸 Takayuki Nakahira バイオ機能化学領域・生体模倣高分子教育研究分野・教授

高分子化学(応用化学コース:必、他コース:選必)、4セメ、月2、137名

生体高分子化学(生体関連コース:選必、他コース:選)、5セメ、火2、72名

医用高分子論(選)、3セメ、木2、受講登録数28名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

共生応用化学科2年後期開講「高分子化学」は、昨年とおり後半8回を担当した。授業は必修ある

いは選択必修科目であり、受講生が137名と多いことに加え、授業回数が限られていることから、昨

年同様、私語禁止を徹底し、OHP等を使わずに板書とし、学生が授業に集中しやすいようにした。

3年前期開講の「生体高分子化学」は、今年から前半7回のみを担当した。中間、期末試験との総

合点で評価した。授業は、パワーポイントによる説明をメインとした。

「医用高分子論」はメディカルシステム工学科2年前期開講の選択科目であり、入学時の個別試験

において化学が課されないので化学とくに有機化学の基礎を解説しながら、前半、後半に高分子の基

礎と応用をそれぞれ講義した。パワーポイントを多用したが、板書も重視した。講義に加えて、高分

子液晶とオムツの主要材料である吸水性高分子について簡単な実験をやってもらい、高分子材料への

理解を深めさせた。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

「高分子化学」は、担当の後半部分の授業評価を昨年と同様に別個に行ったが、今年は集計時に前

半、後半を一緒に処理されてしまい、全体としての評価となった。項目11「宿題、レポート」以外の

項目(とくに項目6「板書などの見やすさ」)で学科平均を下回った。学生のコメントからみて後半部

分に関すると思われるものに、「私語を注意し、授業が騒がしくなかった」、「教員の熱心さが感じられ

た」、「説明がとても詳しくわかりやすい」などがある一方、「教科書がわかりにくい」、「板書が見にく

い」、「レポートの解説がほしい」、「早口になるときがある」などもあり、この点を改善する。

一方、「生体高分子化学」の前半7回を後半8回とあわせて評価を受けた。「高分子化学」の受講を

前提とし、工学部であるので合成高分子との関連で生体高分子を扱ったが、「生体をもっと重視して

欲しい」、「板書を多くしてほしい」とのコメントがかなりあった。それもあってか、項目4「教材」、

項目5「教員の声」、項目6「板書」、項目 12「進度」で学科平均を下回った。シラバスの記述を改

訂する。 「医用高分子論」については、今年度はほとんどの項目、とくに、項目6、17で当該学科平均より

大きく下回った。今年度の受講生は、昨年の 14 名から倍増となったため、化学をとくに好きな学生

以外にも大勢受講したものと思われる。履修済みが望ましい基礎化学A、Bを、一方のみか、あるい

は両方とも履修していないことが昨年以上にうかがえ、履修を前提としないで授業する必要がよりい

っそうあったと思われる。一方、実験がおもしろく、ためになった、バイオマテリアルの話を聞きた

かったとのコメントも相変わらずあり、化学の割合を減らす方向で検討したい。

3.今後の授業改善について

引き続き、板書の改善、授業内容ならびに進度の工夫を講じる。

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西山 伸 Shin Nishiyama 共生応用化学専攻・共生応用化学コース・無機・計測化学領域・准教授

無機化学I 、2セメ、月4、受講登録数126名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

無機化学Iの私の担当する部分については、基本的にプレゼンテーションソフトを用いて、スクリ

ーンに表示しながら講義を行っている。また、スクリーンに表示した内容はオンラインでWebから取

得できるようにしている。講義の内容は、教科書にあるものに解説をつけたものであり、基本的には

シラバスで示した範囲を教科書に沿ってすすめている。ただし、数式などは単位系を改めたり、解説

をつけたりしている。

無化化学 I は今年度から全体を 2 つに分け、前半と後半で人数を分けることで 60 人強に抑えるこ

とができた。120 人強では教室の構造上、マイクを使っても全員に聞き届かせるのが困難であるので

適当な処置だったと考える。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

全体的に平均より低い結果となった。しかし、1年生にとっては初めての専門科目であり、それな

りの高度なことを講義しているため当然の結果と考える。特に、履修済み科目を発展させる内容かど

うかの問いは、高校までの化学や物理の内容を発展させているかどうかが学生によって相当異なるた

め、平均的に評価を得るのは難しくなっている。また、教員の声が良く聞こえないという意見に関し

ては依然配慮する必要はあるが、教室の後ろの方には声が良く通らないことは分かっているので、部

屋に十分に余裕をつくり改善されているはずである。期末のテストで講義の理解度はそこそこあった

が、質問が少なかったことについては講義の敷居が高かったことが原因と言えるだろう。

3.今後の授業改善について

全体に評価が低かったことについては真摯に受け止める必要がある。しかし、取り組み方を含めて

大きな改善の必要があるとは思えない。評価の低さは、高校の課程について 近の化学の授業の進展

具合をこちらが把握していないせいもあると思うので、より質問が活発に出やすいよう、導入におい

て敷居を下げた講義を行い、より興味をもたれるように改めたい。また、気軽に質問が出来るような

雰囲気を心がけたい。

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服部淳彦-Atsuhiko Hattori

共生応用化学科・非常勤講師

(現職:東京医科歯科大学・教養部・生物学・教授)

生物学入門 (選)、3セメスター、火5、受講登録数106名

1. 学生の授業評価、ならびにそれに対するコメント

授業は「板書」による講義スタイルである。大多数の学生が、高校で生物を履修していな

いため、パワーポイントによる一度に多くの情報を与えるスタイルではなく、手と脳を同時

に働かせる「手書き」による、一つ一つ知識を積み上げていくスタイルにした。

授業評価の中で、比較的評価の高かった項目は、「教員の声は良く聞こえましたか?」

(4.87)、「板書、OHP、スライドなどは見やすかったですか?」(4.82)、「授業の重要項

目を整理して示し、分かりやすく解説するような工夫がなされていましたか?」(4.76)、「こ

の授業は興味を持つように工夫されていましたか?」(4.71)、「質問などで学生の理解度を

チェックし、その後の授業では理解度に応じた説明をしましたか?」(4.69)、「全体を通し

て、この授業に満足しましたか?」(4.60)であった。

一方、比較的評価の低かった項目は、「履修済み科目をより発展させる内容でしたか?」

(3.70)、「あなたはこの授業で質問しましたか?」(3.19)であった。

2.今後の授業改善について

評価の高かった科目は、さらに向上するように努力するとともに、評価の低かった項目に

関しては、今後改善していきたいと考えている。特に、他の科目との関連性を十分認識した

上で講義を行うことが必要であると感じた。また、「授業の理解度」に関しては、レベルを

もう少し下げ、基礎の基礎から説明する必要がある。今後努力していく所存である。ただ、

教えている内容は、大学1年生(教養)レベルの「分子生物学の基礎」であるため、理解度

を上げるためには、やはり授業時間を拡大するか(例えば生物学入門IとⅡを開講する)、

あるいは高校レベルの生物学を教える補習コースのようなものを設ける必要があると思わ

れる。今後の検討課題としていただければ幸いである。

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藤田 力 Tsutomu Fujita バイオ機能化学講座・バイオ機能分子化学教育研究分野・教授

有機化学Ⅲ(選必)、5セメ、水2、受講登録数107名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

有機化学I-IIIでは、教科書「ジョーンズ有機化学 上、下」に沿って有機化学の本質を学ぶ。知

識の習得ではなく、有機化学における様々な現象や反応について基本的な原理や原則をより体系的に

理解させることを目的としている。有機化学Ⅲでは、有機化学 I、Ⅱに引続き、アルコ-ル、カルボ

ニル化合物、カルボン酸とその誘導体、含窒素化合物の化学について学ぶ。学部レベルで学ぶべき事

柄を密度濃く教えるので、予習・復習が不可欠である。すでに知られている膨大な有機化学反応を全

て覚えることは不可能であるが、基本となる反応およびそのメカニズムを理解すれば恐れるにあたら

ない。有機化合物命名法・反応のメカニズム等に関しては、教科書に記載されていることを眺めただ

けでは身に付かないので授業中極力演習を入れ、さらに毎時間宿題を出し、必ず自ら書けるようにす

るために宿題は採点後返却し、特に間違えの多かった問題は授業中にもう一度解説することにより、

より理解を深めさせるようにした。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

評価点の低かった項目が3つあった。そのうちの2つである、Q6. 板書、OHP、スライドなどは、見

やすかったですか?(3.58)とQ7.教室の設備など、環境は整備されていましたか?(3.41)に関して

は、受講生が多く教室が小さいため後方の席からは見にくかったようなので次年度はもう少し広い教

室を割り当てて欲しい。もうひとつのQ12.授業内容の量を考慮すると、進度は適切でしたか?(3.72)

は、有機化学として学ぶべき内容が多いので授業についていくためには、教室で初めて教科書を開く

のではなく、事前に読みしっかり予習・復習する必要があることを第1回目の授業で説明したにも関

わらず、教科書を全く読まない学生がいたようである。この事は、毎回復習を主とした宿題で、解答

として教科書の記述をそのまま書けばよい問題にもかかわらず0点が約10名いた事から明らかであ

る。また、「板書が多い」との指摘が数名からあったが、反応メカニズムなどは教科書を眺めるだけで

なく実際に学生自身に書かせるため板書して説明している点を理解して欲しい。その他の項目のアン

ケ-ト結果は、概ね良好との回答を得た。

3.今後の授業改善について

有機化学 I、Ⅱの内容を授業1回目の宿題に出したが、極めて出来が悪い学生が多かった。今まで

に学んだことはしっかり身につけて欲しい。予習・復習を実行し、不明な点を質問に来る勉学意欲の

ある学生に関しては、従来通りの方針でも良いと思われるが、毎回のように遅刻してくる学生、真面

目に宿題をやらない学生、期日までに返却宿題を受け取りに来ない学生等に対しては、有機化学のみ

に限らず、大学で学ぶということの意義・重要性等をよく理解させるなどの対応策を早急に講じる必

要がある。

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藤浪 眞紀 Masanori Fujinami 共生応用化学科・環境プロセス化学講座・計測化学研究分野・准教授

機器分析(選必)、5セメ、金4、受講登録数100名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

物質の分析手法は物理的な相互作用を励起に利用した機器分析にシフトしている現状がある。企業

での分析業務は上記の機器分析なしには語ることはできない。ところが,現在の化学系学生が学んで

いるカリキュラムとこれらの機器の理解に必要としている学問領域にずれがあり,学部学生にはなじ

めないものになっていると思われる。

本講義では真空とは何か?から始まり,電子との相互作用を利用した走査型電子顕微鏡,オージェ

電子分光法,X 線をプローブとした X 線光電子分光法,イオンをプローブとした二次イオン質量分析

法,ラザフォード後方散乱法,探針をプローブとした走査型トンネル顕微鏡,電子の反粒子である陽

電子消滅法といった表面分析法を概説した。いずれも相互作用が化学というよりは物理をイメージさ

せ,かつそれらの(高価な)機器を見たことも無い学生にこれらを講義することは大変難しいが,

Viewgraphは時として役には立ったと考える。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

学生による授業評価は単なる授業の方法論を問うアンケートではなく試験結果であると私は考えて

いるので,試験結果から学生の理解度や評価をコメントしたい。中間試験では,学生自ら問題を作成

し解答させた。期末試験では,電子・イオン・電磁波それぞれのプローブと固体との相互作用を自分

なりに記述させた。両方とも参考書・ノート持込可である。相変わらず解答に論理性のないものがほ

とんどであり真に理解している学生は1割に満たない。基礎・応用面とも理解度が低く,講義の感想

を読むとどんなことに役に立つのかわからないというものが目立った。基本的な物理的な物の考え方

ができていない,現象に関して思考をしていないところに大きな問題点があると思う。教える方もそ

の点を踏まえての講義を考えなければならない。

3.今後の授業改善について

学部3年生の講義としてはまだまだ難易度が高すぎたようだ。定量的な事項を多くした講義にしよ

うとしたのが災いしているのかもしれない。基礎重視で電子・電磁波・イオンの固体との相互作用に

特化するか,原理は簡単に説明し応用面にのみ特化するかどちらかを強調するようにしたい。

教科書などを指定すると,多種類そろえなくてはいけないため躊躇していたが,推薦するようにし

た方がよいかとも思う。

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星 永宏 Nagahiro Hoshi 共生応用化学科・資源プロセス化学領域・表面電気化学研究室・准教授

電気化学(選必)4セメ、水1、128名

量子化学(選必)5セメ、木1、62名

1.私の授業の組み立て方と取り組み方

聴講後すぐに復習することが、知識を定着させる上で重要なので、全科目でほぼ毎回講義内容に関

連する宿題を出している。次の授業までに大学院生に採点してもらって、受講者の理解度をチェック

している。次の授業の冒頭に採点済みの宿題と模範解答を配布した上で、解説を行うと同時に、誤り

やすいポイント説明して、授業内容を理解する支援を行っている。

15回ある講義の2/3は板書中心だが、教える内容が多いため、終盤の1/3は穴埋め式のプリントを

配布して板書とノートテイクの時間を節約している。学生の眠気を防止するために、時々簡単な問題

を出し、学生を指名して口頭で解答させている。

2.学生による授業評価結果、ならびにそれに対するコメント

評価結果は量子化学も電気化学も大差ないので、主に受講者の多い電気化学を取り上げて述べる。

文中の( )内の数値はアンケート評点の平均値である。

[学部共通] 今回は予定通りに講義が進み、シラバスと異なることはしていないにもかかわらず、

シラバスとの一致度は満点ではない(4.71)。教科書を指定し、毎回のように補足プリントを配布して

いるので、教材は役に立ったとの評価が多い(4.55)。地声が大きいので、声は聞き取りやすいという

評価を得たが(4.77)、一部に声がだんだん小さくなって聞き取りづらいとのコメントもあった。次年

度は注意する。板書やスライドは見やすいとの評価が多いが(4.63)、一部で板書が汚いとの指摘もあ

るので、字をできるだけ丁寧に書くよう心がける。分かりやすい説明を心がけているので、説明の工

夫に対してはまずまずの評価である(4.6)。授業に興味を持つよう工夫されていたかに関しては、電極

やセルの写真をスライドで見せたりしたためか、そこそこの評価である(4.37)。毎回宿題を出して添

削していたため、学生の理解度のチェックおよび宿題・レポートの項目は高い評価を得た(4.76 と

4.77)。授業の進度も適切との評価である(4.59)。授業中質問をする学生の割合は低い(1.81)。100人

を越える大人数の講義なので、やむを得ないかもしれない。授業内容の理解度はあまり高くないとい

う自己評価だったが(3.57)、期末試験の成績はこれまでで 高であった。追試でも全員が合格してお

り、過去に例のない優秀な学年といえる。授業への満足度が幾分高いのは、こちらの努力を評価して

もらった結果と感じている(4.26)。

3.今後の授業改善について

穴埋め式プリントの評価は過去に賛否両論だったが、今年度は板書よりも分かりやすいとの評価が

多かった。穴埋め部分を工夫し、眠気覚ましの質問を頻繁にするようにしたことが功を奏したと思わ

れる。

講義中に学生の集中力が切れないように、適宜雑談を交えるのは有効だが、なかなか実現できない。

緊張感と笑いが伴う楽しい講義とすることを目指したい。